私たちは今、暗闇の中を走っている。
衛宮士郎という人物を凛が蘇生したのはいいのだが、結局そのまま放置をしてしまったため、急いでその人物のところへと向かっているのだ。
・・・恐らくはこの世界の衛宮士郎も私と同じようにセイバーを呼ぶのだろうと思いながら。
私たちがついたころにはすでに一人のサーヴァントが去った後だった。
そして残った一つのサーヴァントの気配。
「この気配・・・気を付けてアーチャー。」
「心得た。」
そしてその気配の主は突然現れる。
見ただけでわかる。
否、見なくてもわかった。
あの時、俺を救ってくれた一人のサーヴァント。
だが、見とれるわけにはいかない。
すぐさま、黒白の中華系の双剣を投影する。
そのうち一つを投擲する。
もちろん、それはたやすくはじかれる。
突然だがこの剣の特性は互いに引き合うことだ。
「なにっ?!」
セイバーが驚いたように声を発する。
無理もなかった。
はじいたはずの剣が再びセイバーの元へ戻ってきたのだ。
本来ならはじかれればここまで引き合うことはしないのだが、少々小細工をしたのもあってセイバーの元へと向かっていった。
だが、それがいけなかった。
「やめろ――セイバー!」
赤い光がセイバーに向かれられる。
それは令呪であった。
対魔力が高いセイバーといえど、動きは硬直する。
私は思わず、すぐさまもう一つの黒い方を投擲した。
やってしまったと後悔する。
セイバーと声に出さなかっただけよかったのだが、マスターである凛の命令なしで敵を助けてしまうのは流石に凛には怒られてしまうかもしれない。
「――チャー!アーチャー聞いてる?」
「――――すまない、凛。少々考え事を・・・。」
「あんたね。一応敵が前にいるのだからそんなことをしてたら命取りじゃないの?」
「ぐっ・・・。」
凛の正論に思わず口ごもるもすぐさま調子を取り戻す。
「それで、どうするというのだ、凛。彼と敵対し今ここで終わらせるか?」
「そんなことはしないわよ。――――。」
で、なんだかんだで不思議な状況になってしまった。
というよりこのそのほとんどが当時の私の未熟さによるものだったのだが。
「何よこれ!窓ガラスが全壊してるじゃない。」
「仕方ないだろ、ランサーっていうやつに襲われたんだから。」
「なるほどね。」
凛はそう会話をしながら、窓ガラスの破片を触ると窓ガラスを直す。
その後の凛の言葉には私にも刺さるものだったがそれを表情にすることはなく、静かに立つ。
セイバーの方を見れば凛の魔術に関心を抱いているようだった。
そして凛は聖杯戦争について衛宮士郎に教えを説いていく。
聖杯戦争とは簡単にいえば、魔術師同士の殺し合いだ。
その報酬が聖杯なのである。
魔法に到達するのも目的の一つであるのかもしれないが、一参加者は聖杯を求めるだけだろう。
結局凛が教会に衛宮士郎を連れていくと言ったので、ともに行くことになった。
「シロウ、私はここに残ります。」
「どうしてだ?セイバー。」
衛宮士郎はそのことをセイバーについて聞く。
一方で私も凛にここに残ると告げる。
「なに?もしかしてセイバーと見た目が似ているのが引っかかったの?」
「・・・そう、なのかもしれないな。」
私は残ったセイバーに顔を合わせる。
セイバーは何か聞きたいことがあったのか二人きりになった瞬間、口を開いた。
「すみません、アーチャー。貴女はなぜそこまで私に近い見た目をしているのですか?」
確かに、今の私とセイバーは見た目がそっくりだ。
もちろん、違う点もいくつかあり、背などがセイバーの方が少し大きい。
しかし、セイバーの目は関心というよりもなんというか不思議な感じでこちらを見ていた。
「――セイバー、君見ているところがおかしいのではないかね。」
私は我慢が出来ずに口を開く。
彼女の目線を観察すれば、すぐにわかった。
そう彼女は自身と私を交互に見ていた。
「・・・なっ、おかしくありません!そんなことよりもその服はなんですか!」
「服だと・・・。」
彼女は服を見ていたのか?・・・確かに体を見ていたのだから別にありえないことではないが。
そう思いつつ自身の今の姿を見る。
――正直に言って恥ずかしい。
パンツが見えるようなスカート。他にもところどころ肌に露出があるところがある。
この露出が普通の服とは大きく異なるため恥ずかしいのだ。
「服についてはセイバー、ひとまず置いておいてほしい。」
「――無理矢理にでも着せられたのですか。」
凛も似たようなことを言っていたような気がするが気のせいだろう。
「――話がずれましたね、アーチャー。」
「そうだな。すまないがその疑問については答えられない。なにせ何故似ているかについては私はわからないからね。」
「・・・あなたの出身は?」
「真名に関わることを教えるとでも?」
「それもそうですね。失言でした。」
真名で言えば、衛宮士郎なのだろうが、この体の真名は私にはわからないので答えようがないのだ。
恐らくは服装と見た目からヨーロッパの国の人間なのではあろうがそれ以外に判断できる材料がなかった。
静かになった空間でセイバーは口を開く。
「やはり、どうしても一つだけ。」
「なんだね。」
「その口調はどうにかならないのですか!アーチャー。」
「なっ。」
君までそれを言うのか・・・。
凛、ランサーに続き三人目だぞ。
「その見た目でそのような口調をしているのは少し・・・その微笑ましいというか。」
「・・・面白いということかね。」
「いえ、そういうことではないんですが。なんでしょう。そうです!頑張って姉を越えようとしている妹のような感じです!」
「あなたたちほんとに姉妹とかじゃないの?」
ふと、気が付けば凛たちが戻ってきたようだ。
違うと否定しつつ、私は衛宮士郎の方に体を向ける。
しかし、衛宮士郎は顔を赤くしてすぐに顔をそらしてしまった。
「・・・明日くらいにあなたの服を用意しないとね。」
そんな状況を見て凛はそう言った。
―――なんでさ。
時刻は午前三時に差し掛かるだろうか。
会話をしていたマスター二人とサーヴァント二人の前に一人の少女が現れた。
「ねぇ。そのお話私も入っていいかしら?」
小さな最強のマスター。とそのサーヴァント、バーサーカーがそこにいた。
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後書き的なやつ
読んでくれてありがとうございます!
今作品のアーチャーはですね、記憶が飛んでいるというわけではありません。
ただ、忘れた記憶。薄れかかっている記憶をもとに戻したいその理念の元行動しています。
なので、衛宮士郎に聞き取りはしても殺しにかかる可能性はあまりないかと。
なんでそうなったのかというと、この世界のアーチャーは守護者生活の中で正義の味方という存在に疑問をもったものの、正義の味方になったことは間違いではないと判断しているからです。
その確固たる証拠を見つけようとしているのです。