紅の騎士   作:ロールクライ

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衛宮士郎視点です。



六日目2

 

 

 

 

 

気が付けば、椅子に座って寝てしまっていた。

遠坂は学校のイメージと違ったからっもしかしたら家に埃がたまってるかもと思って見渡してみれば、すごくきれいだった。

 

初めは召使でも雇っているのかと思ったがそれも違うらしい。

掃除も料理もする必要がない。

それは何もする必要がないということだ。

正直、落ち着かない。

だから椅子に座って毎夜やっている魔術の鍛錬でもしようと思っていたのだが、すっかりうたた寝をしてしまっていたようだ。

 

…アーチャーの正体は未だによくわからない。

見た目と夢に出てきた劇場を考えれば、ヨーロッパの英霊とは思うのだがそれで弓を使う英霊なんか調べても出てこない。

 

 

ふと、遠坂たちの声が聞こえた。

どうやらアーチャーの罰ゲームは終わったようだ。

 

「――おつかれ、アーチャー。」

 

少し服を変えたアーチャーに惹かれるもやはりセイバーと似ていると思いながらそう言った。

 

 

「…少しはこちらの気持ちを考えたらどうかね?衛宮士郎。」

「アーチャー!口調。」

「…。」

 

「すまん遠坂、セイバー。アーチャーと二人で話できるか?」

 

遠坂とセイバーを収めつつそう言った。

遠坂もセイバーもアーチャーですら、驚いたような顔をしていた。

すぐに調子を戻していたようだがセイバーだけは不服なのか少しムスッとしていた。

 

「何?衛宮くん。もしかしてアーチャーが気になったとか?」

 

「――はぁ?!何言ってんだ、遠坂。少し…気になることがあるだけだ。だから、そんな顔をするな。セイバーも。」

「…何をいうのです。シロウ。決して私はそのような顔はしていません。決して。」

 

そんなセイバーと俺との会話にアーチャーはふっと笑う。

 

「…なんでそこで笑うんだよ。アーチャー。」

「いやなに。少し、似たような状況に心当たりがあってな。」

 

…それはアーチャー自身のことだろうか?と思いつつ、なんとかセイバーと遠坂を説得し二人きりとなる。

 

 

「それでなんだと言うのだね?まあ、だいたい推測はできるが。」

 

アーチャーはそう言った。

まるで俺の言いたいことがわかっているみたいな感じだったが俺は気にせず口を開く。

 

「…じゃあ、一つ目だ。まず、アーチャーは生前とかでセイバーとかかわりはあったのか?」

 

アーチャーはその質問に眉を動かしたがそのまま答える。

 

「どちらかと言えば、ある。しかし、別に血縁でも何でもない。見た目が似ている理由も私は知らん。それに…」

「それに?」

「そもそも私は本来の体ではない。」

 

本来の体ではない?

それはつまり…

 

「逸話とかが混ざってとかそういうタイプってことか?」

「いや、それこそありえん。凛から聞いたかもしれないが、私には記憶に少々混雑している。だが、逸話が混ざってこの姿になったということはないはずだ。」

 

…はぐらかされた、確証もないのにそう思った。

俺はさらに続ける。

 

「…俺とは何か関係があるのか?」

 

そう言った。

本来なら確実にないと言えるだろう。

だが、俺の本能が確実にあるとそう言っている。

暫く考え込むアーチャーだったが、頭の整理がついたのか顔を上げて言う。

 

「――関係がないわけではない。だが、それを今は答えるつもりはない。それよりも私から聴きたいことある。」

 

アーチャーからか?

…俺がアーチャーに疑問を持つようにアーチャーもそうなのかもしれない、と思いアーチャーの質問を待つ。

 

「君はなぜ、正義の味方になろうと思ったんだ?」

「――は?」

 

開いた口が塞がらない。

正義の味方…それは衛宮切嗣という男がなりたかったもの。

そして、俺が目指しているもの。

まさか、それが同じなのか?アーチャーも正義の味方に憧れたとか?でも、それだけで、夢にまででるような関わりができるだろうか。

そんな疑問を持ちながらアーチャーの問いに答える。

 

「…ただの憧れだよ。じいさん…ああ、俺を育ててくれた親父がなりたかった。その夢が綺麗だったから憧れたんだ。」

「――それだけか?」

 

アーチャーの言葉に俺は驚きを隠せなかった。

それだけ…ではなかったと思うけど、きっかけは確かにこれだ。

 

「衛宮士郎、本当にそれだけなのか?」

 

アーチャーの問いの真意がわからかった。

でも、これだけはわかる。

間違いなく俺は答える選択を間違えた。

 

アーチャーが竹刀を出す。

なぜ、今竹刀なのか問うとアーチャーは「すぐにわかる。」という。

竹刀が俺に手渡される。

 

「構えろ、衛宮士郎。」

「――え。」

 

そこからは早かった。文字通りの意味で。

 

「がっ!」

 

竹刀が俺にぶつかる。

壁にたたきつけられた俺はすぐさま立ち上がる。

 

「衛宮士郎。お前は救いたいから人を救うのか?そこに、自身の感情はあるのか?」

「何を、言ってるんだ。アーチャー。」

「子が親に憧れるのは当然だ。だが、それは同時に呪いでもあった。それは自身からあふれたものではないはずだ。衛宮士郎、本当に"それだけ"なのか?」

 

…それだけ。

その言葉がひどく頭に残った。

 

何度も何度も竹刀で打ち付けられる。

 

「…アーチャーは後悔しているのか?」

 

アーチャーは答えない。

おそらく、アーチャー自身も答えを出せていないのだろう。

 

「アーチャー。アーチャーが後悔しているかはわからない。でも俺は、俺のこの誰かのためになりたいという願いは間違いなんかじゃない。この行為がたとえ、偽善でもそれは美しくて綺麗なもののはずなんだ。」

「その人生が機械的なものだったとしてもか?」

 

「ああ、――俺は正義の味方になることに後悔なんてしない。それに俺はアーチャーに助けられた。一人でも多く救えられるのなら、それがどんなにすごいことなのか俺は知っている。アーチャーに追いつくとまではいかなくとも俺は、正義の味方になりたいんだ。」

 

「――そうか。」

 

アーチャーは竹刀を消す。

それと同時に俺がもっていた竹刀も消えた。

 

アーチャーは微笑む。

それに少しドキッとするもすぐに本調子に戻す。

 

「衛宮士郎。すまなかったな。どうやら私は少し思い違いをしていたらしい。」

 

そんなアーチャーの姿が俺と鏡で映しているように見えた。

 

「アーチャー、ありがとう。俺も覚悟ができた。」

 

「…ふん。」

 

「ちょっと!アーチャー、何事?!」

 

気が付けば、遠坂たちが近くにいた。

セイバーにいたっては鎧すら着ている。

 

俺は急いでセイバーと遠坂に弁明しようとするもアーチャーが止めてくる。

 

「…あきらめろ、そして私と同じ道を辿れ。」

 

その顔は先ほど罰ゲームを受ける直前のアーチャーの顔だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、何をしていたのです。シロウ。」

 

セイバーの顔は険しい。

それはもう大層ご立腹なのだろう。

不満げにこちらを見ている。

 

「いや、少しアーチャーに鍛えてもらおうと。」

「…それは私ではいけないのですか?」

 

セイバーが露骨に残念そうにする。

 

「ああ、いやそういうわけじゃ。」

「――なら、これからは“私”が教えます。それでいいですね?アーチャーも。」

「ああ、私は別に構わん。」

 

ふっと、笑みを浮かべながら腕を組むアーチャー。

 

「…それに私が教えるよりもセイバーが教えた方がいいだろう。私はアーチャーなのだからな。」

「ほとんど剣で戦ってるアーチャーが何言ってんのよ――。」

 

遠坂はアーチャーの言葉にすぐに反応する。

確かに、アーチャーが弓を使っているところはバーサーカーと戦うときに一回見ただけだ。

それ以外は基本的に剣しか使っているところしか見ていない。

 

「すまなかった、セイバー。でも、アーチャーの剣技がなぜか俺に合う気がするんだ。」

 

これは事実だ。

アーチャーが今まで戦っているところを見て、黒白の夫婦剣を持っている状態の戦い方が俺に合っている気がしたのだ。

 

「…つまりシロウは自身のサーヴァントである私よりもアーチャーの方が練習相手として優れている、と?」

「いや、そういうことが言いたいわけじゃ。」

 

なんか…底なし沼にはまってしまった感じだ。

どうしたものかな。と考えながら、アーチャーと遠坂の方を見れば、あっちはあっちでひどく怒られている。

 

…勝手に遠坂の敷地で練習したからってわけではなさそうだ。

 

「――――聞いているのですか!シロウ。」

 

やべ

 

遠坂たちに気を取られすぎて完全にセイバーを忘れてしまった。

俺の次から何かしらするときは何をするかセイバーに宣言するようにと言われた。

 

なんでさ。

 

 

 

 

しばらく続いた説教が終わって聖杯戦争の話になった。

遠坂もいつもはパトロールをしているらしいのだが、俺の家までついてくるようだ。

――藤ねえは用事があって今日は俺の家には帰ってこないのが救いだろうか。

 

俺の家に向かう最中の空間はとてもじゃないが、居心地の良いものではなかった。

 

セイバーはアーチャーの方をジトッとした目で見ており、遠坂は遠坂でそんなセイバーとアーチャーを見ている。

こんな目を合わせているのに言葉一つも交わさないのはどうかと思うのだが…

 

「そうだ、衛宮くん。近いうちに私、あなたの家で過ごそうと思うの。」

「ぶふっ…」

 

思わず、吹く。

 

「遠坂…あのなぁ。一応、俺は男子だぞ?」

「別に構わないでしょう?衛宮くん、あなたにそんな度胸もないでしょうし。」

 

何も言い返せない。

助けを求めにセイバーの方を向く。

セイバーはアーチャーの方を見ていたのだが、こちらの視線気づくと状況を察したのか口を開く。

 

「私は構いません。リンほどの魔術師であれば、シロウの成長にもつながる。なにより――」

「何より?」

「アーチャー、と話をつけることもできそうですしね。」

 

そう言って、セイバーはアーチャーの方を見る。

アーチャーはその視線に困り果てているようだ。

 

でも、セイバーの視線は敵意ではなさそうだった。

どちらかといえば…なんだろうな?

まあ、なんでもいいかと思い、今日の夕飯をどうするか考えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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