紅の騎士   作:ロールクライ

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視点はアーチャーに戻ります


六日目3と七日目1

 

 

 

 

 

「――疲れたな。」

 

そう思わず口に出す。

今日はキャスターといい凛といいセイバーといいいろんな人に困らされたものだ。

 

…全員、女性だな。

まあ、たまたまだろう。私の見た目と話し方からからかいやすいと判断されるのだろうな。

 

そう思いながら屋根の上で座る。

英霊にとって――

 

否、サーヴァントにとって睡眠は必要ない。

 

しかし、セイバーは別だ。

マスターが未熟であるのも大きいだろう。

だが、セイバーは少々特殊ともいえたからな。

 

 

――――衛宮士郎は憧れたから正義の味方を目指した。

それは、衛宮士郎に残された最後の感情。

 

始まりが憧れただけ。そう、正義の味方という存在が綺麗だったから憧れた。

 

それが成すことが美しいから憧れた。

 

――そう、美しいから。

 

その言葉に体が惹かれる。

 

エミヤシロウにでも衛宮士郎にでもない。

 

だが、正義の味方を目指し、それを成し遂げる男を美しいと感じた。

 

そう、あの時私は衛宮士郎の言葉に納得したわけではない。

 

決して信念を曲げない、その姿が美しいと――感じた。

 

私としてはナルシストもいいとこだが、感じたものは仕方ない。

 

正義とは何か。――わからない。

美しさとは何か。――わからない。

完全な機械に慣れたなら、こんなことを考えることもなかったのだろう。

 

 

同時に色褪せた記憶が気になった。

 

今思い出せることは少ない。

 

――衛宮士郎という男が始まった災害。

そして、正義の味方になると誓った日。

セイバーとの日常。

遠坂との日常。

イリヤスフィールとそのサーヴァントを破った日。

どれも朧気だが、その程度の記憶しかない。

 

いや、そもそも守護者になる前の記憶がその程度しかない。

 

…否、違う。

一つ。

まだ覚えていたことがあった。

 

ローマだ。

あの街並み。あの風景。

そしてその歴史を、――――

 

 

 

「――――チャー?聞こえてる?!アーチャー!」

 

ん?ふと、気づけば、マスターである凛の声がした。

声のする方を見れば、屋根の上に立った凛がいた。

 

「…なんだね。君はいつからかサーヴァントの真似事でも始めるようになったのかね?」

 

皮肉めいたようにそう言った。

だが、マスターである凛はそれを無視しながら私の横に移動する。

 

「いやね。そろそろ聞いておこうと思って。あなたが聖杯に願うことって何かな、って。マスターなんだし、きくのは不思議じゃないでしょ?」

 

凛は改めたようにそういった。

 

「…記憶が混濁している以上。あなたの真の願いはわからないかもしれないけど、衛宮くんと話してあなたの様子が少しおかしかったのよ?」

 

まるで…感謝しなさいとも言っているように聞こえるその質問に私は若干いい淀みながら、答える。

 

「以前の私なら別の願いを言っていただろうな。…そうだな。聖杯に願うほどではないとも。ただ、生前に色褪せた記憶が見たい。私が私として生きた始まりを、それが知りたくてね。」

 

「…アーチャー、それってあなたの記憶が戻ることはないってこと?」

 

「いや、これはそうだな。生前、それも死ぬ直前のときにはすでに過去の記憶がなかったということだ。――もちろん、何も覚えていなかったわけではない。モザイクがかかったように淀みはあれど、少しばかりは覚えている。それこそ、私という存在が生まれたときとかかな。」

 

凛はその言葉に興味深そうに見る。

だが、すぐに顔を変えてこちらに言う。

 

「そう。なら、いいわ。」

「何がだ?」

「だって、アーチャー。あなたったら深刻そうな顔をしてたからね。今はそうでもないみたいだけれど。よかった、じゃあアーチャーの記憶のためにも勝たなきゃね。」

 

凛はそう言って拳を出す。

私もそれに合わせて拳を突き出す。

ああ、本当に

 

「あなたがマスターでよかった。私も君を勝たせたいと思う。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日が変わる。

 

学校での日常はいつもと変わることはなく、学校に現れた術式を無力化していく。

そしてもはや日常となりつつある、屋上での衛宮士郎と凛の会議。

 

私はそれを見ながら、辺りに気を配る。

霊体化していてもできることはある。

戦闘こそ、できなくともナニカの起こりを見ることは――――!

 

「凛!」

 

私はすぐさま、マスターである凛へと声をかける。

それはすぐさま、作動し、重い空気がのしかかる。

 

「宝具――か!」

 

地面が、空気が赤く染まっていく。

幸いと言うべきか、多少の影響はあれど凛も衛宮士郎も動くことはできるようだ。

 

「何よこれ!神秘の秘匿もクソもないじゃない!」

 

凛が怒ったように口を出す。

だが、そこは問題ではない。

問題なのは、今この場にいた一般の生徒たちだ。

 

「――慎二だ。」

 

衛宮士郎がそう口に出す。

凛も私も動きを止める。

 

「どういうこと?衛宮くん。」

「だから、慎二がこの結界を張った犯人だ。――あいつ、何を考えてるんだ。」

 

心当たりがあったのか、それとも教えてもらったのか確証があるように衛宮士郎はそう言った。

魔術回路を通したのか魔力がほとばしる。

そしてそのまま、衛宮士郎は慎二を探しに走り出した。

 

「戯け!一人で行っては元も子もないのだぞ!」

 

私が静止しようとするも凛がそれを止める。

 

「アーチャー、今はサーヴァントについて考えましょう。他のサーヴァントの気配はある?」

 

私としていたことが少々焦っていたらしい。

凛は冷静に戦況を判断したようだ。

――深呼吸をする。

やはり、衛宮士郎とともにいると調子が狂う。

だが、それは今はどうでもいい。

サーヴァントの気配を探るべく集中する。

 

数は――二つッ!

 

「凛、後ろだ!」

 

そこに現れたのは暗いローブを纏った妖艶な女性。キャスターであった。

 

「もしかしてあんたが、この結界を!」

「…何か勘違いをしているのではなくて?私はただ、サーヴァントの気配を確かめにきただけよ。」

 

キャスターは揶揄うようにそう言った。

 

「…あなたたちがこの結界を張るような人物ではないと、こちらは知っていますからね。ねぇ、可愛いアーチャーさん。」

 

キャスターはまたもや揶揄うようにこちらを見るのだが、先ほどのそれとは違う。どこか、いやらしいようなそんな視線だ。

…ゾクッとした感じをぬぐい捨て私は武器を構える。

 

真紅の剣をキャスターへと向ける。

しかし、キャスターは戦う気はないのか、そのまま消えていった。

 

「アーチャー、衛宮くんのところへと急ぐわよ。」

「ああ、わかっているとも。」

 

複数の影が襲い掛かる。

だが、この身はサーヴァント。

この程度で止められるようなものではない。

 

――わかる。

 

蛇のようなそれがこちらを見る。

現れたのは、ライダーと

 

それに近接で戦う男性であった。

恰好を見るに教師だろうか。

 

その後ろでは、衛宮士郎と間桐慎二が言い合っていた。

 

「あれって葛木先生?!」

 

凛が驚いたように口にだした。

腕付近に魔力を纏ったそれは、確実にライダーに肉薄していた。

 

「…アーチャーのサーヴァントか。」

 

こちらに気づいたのか少し後ろに下がる。

そのさらに後ろにはキャスターが現れる。

 

「ご無事ですか?!」

「ああ、多少傷はあるが動くのに問題はない。」

 

サーヴァントが3基、マスターが4人の状況が作り出され全員の動きが止まる。

 

「まさか、先生がマスターだったとはね。」

 

凛のその言葉に葛木先生は反応を見せるも、ここは戦場。

恐らくサーヴァントを除けば、この場で最も実戦の経験があるであろうそれは冷静に戦場を見ていた。

 

「…初めは驚きましたが、好都合です。」

 

誰もが話そうとしない静寂の中、キャスターがそう言った。

好都合…か。

私の嫌の予感なのか、キャスターのその目はこちらと衛宮士郎そしてライダーに向けられていた。

 

衛宮士郎を見ているのはセイバーが目的だからであろうか。

かくいう衛宮士郎も流石にまずいと判断したからか、手の甲にある令呪を光らせていた。

 

 

初めに動いたのは、――

 

 

――私であった。

 

瞬時に投影、発射された矢はライダーの方へと向けられる。

ライダーは後ろにいるマスターを危惧してか、矢を全て自身の持つ釘のような短剣ではじく。

 

瞬時に畳みかけようと、葛木宗一郎が動き出す。

キャスターは完全に援護に回るようだった。

 

私は干将・莫邪を投影し、格闘をするライダーと葛木宗一郎に近づく。

一瞬で起こったその攻防は、次へ、また次へと続いていく。

驚くべきは、葛木宗一郎の技術。

腕にはキャスターの魔術をかけられた形跡もあったが、それ以外にキャスターの魔術の気配はない。

つまりはほとんど、生身でサーヴァントと戦っているということになる。

 

幾多の戦闘をこなしてきた私でも見たことのないようなその拳は次になにがくるかを想起させない。

さしずめ初見殺しと言ったところか。

一度、逃げられることを想定していないようなその拳は確実にサーヴァントに攻撃をあてる。

 

 

だからこそ、気づかなかった。

ライダーの後ろにすでにキャスターがいることに。

 

「――――何っ?!」

 

キャスターの持った曲がったナイフは確実にライダーに突き刺さっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

______________________________

 

 

 

 

 

 

 

後書き的なやつ。

 

本作のネロエミヤさんが皮肉屋ではない理由について話そうと思いまして。先に言っておきますが、別に皮肉を言わなくなったわけではありません。

必要があれば、罵倒も挑発も行います。ですが、そもそも皮肉を言う必要がなければ、言わないような感じになっています。

ですが、言わない一番の理由は見た目が関係しています。本来の自身の姿ではないためか、本来この姿(ネロ)の風評被害を案じているのです。

…なら、口調とかも変えればいいのにね。

 

見た目について現在のエミヤは恥ずかしさを紛らわすために赤い外套を使っています。なので、ネロのドレス+赤い外套を使ってか前と背中をうまいこと隠しています。

ちなみに見た目を変えたのは凛とセイバーに怒られた時、どうせなら、戦闘中の服も変えようという話題が出たためです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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