ウマ娘 SS短編集   作:本田直之

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ショタ、永世三強withタマに会う

よく覚えている記憶がある。年に1度のトゥインクルシリ―ズファン感謝祭。その広大な会場の一角で、小学生に上がったばかりの俺は周りを見渡しながら不安げにしていた。トゥインクルシリーズファンの両親に連れてこられたのは良いものの、感謝祭特有の人の波に流されて迷子になってしまったのだ。

 

「おとうさん?おかあさん?」

 

その場でクルクルと首を動かすも両親の姿は無く、見知らぬ人の群れが見えるだけだ。かれこれ数十分そんな状態だったと記憶している。寂しさと不安で泣きだしそうになった時だった。

 

「君、どうしたんだ?」

 

一つの影が俺の前に屈みこんだ。銀色の髪で額に菱型の髪飾りを付けたお姉さん。頭のてっぺんにある耳がこの人がウマ娘であることを示していた。若干鼻水を啜りながら親とはぐれたことを説明する。動揺しているのか発せられる言葉はたどたどしかったが、お姉さんは何も言わずに聞いてくれていた。

 

「オグリ!急にどうしたん?急に走ってしもて」

 

「タマ、この子迷子みたいなんだ」

 

「大方人ごみで逸れちまったって感じか」

 

「あらあら~~~」

 

暫くするとお姉さんの仲間らしい三人のウマ娘がやってきた。関西弁を話す銀髪のお姉さん。狐の面を付けた勝気なお姉さん。一番大柄でおっとりしたお姉さん。中々個性的な面々だった。菱型のお姉さんが事情を説明し、四人は俺の両親を探すことで一致した。俺は言われるがままに手を握り、お姉さん達の後をついていく。

 

「本部の方が良いんじゃねぇか?アナウンスも掛けられるしよ」

 

「せやな。そっちの方が――」

 

お姉さんは何やら話していた。見知らぬ人と歩くことに不安でいっぱいだったが、手を引いていたおっとりしたお姉さんがこちらを向いて笑顔で励ましてくれた。

 

「大丈夫ですよ。おとうさんおかあさんもすぐ見つかりますからね~~~」

 

俺を不安にさせないように言ってくれてたのだと思う。当時は酷く落ち着いていたのを覚えている。そのお姉さんは母に似た安心感があった。いつの間にか、涙はどこかに引っ込んでいた。

結局アナウンスで呼び出された両親がやってきて、無事に戻ることができた。物凄い勢いで謝り倒す両親。まぁまぁと宥めるお姉さん達。後に知ったことだが、お姉さん達はトゥインクルシリーズで活躍していたG1ウマ娘だったらしい。なんにせよ、この時に俺はウマ娘に対し明確な憧れを抱いた。あの時の彼女たちはとてもカッコよく、優しく、綺麗に見えたから。そして今―――

 

「不束者ですが、本日からよろしくお願いします!」

 

こうして、トレーナーとしてトレセン学園に足を踏み入れようとしている。当面の目標はウマ娘を二人三脚で支えること。あの時のお姉さん達と同じように、悩める子を導けるようになりたいと思う。

 

 

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