トレセン学園には理事長が私財を投じて建設した夏合宿施設がある。アスリートの宿泊施設として十分な設備を備える建物だが、その中にあって生徒の憩いの場になっているのが、大きめの大浴場だった。
「ああぁ~~~」
スペシャルウィークは湯船に浸かるなりだらしのない声を上げた。日中のトレーニングで溜まった疲労を洗い流すのは心地よかったらしい。そして、それとほぼ同時にやってきたウマ娘が四人。
「スぺちゃん、余りそういう声を出すのは…」
「良いじゃんそのくらい。風呂のマナーを破ってる訳じゃないんだしさ」
「グラスは気にし過ぎデース」
「…まぁ、多少ジジ臭くはあるけれど」
「ごめん、お待たせ~~!」
グラスワンダー、セイウンスカイ、エルコンドルパサー、キングヘイロー、ツルマルツヨシ。スペシャルウィークを含めた同期の六人は、今日合同でトレーニングを行っていた。通常時は個のメニューでトレーニングしているので風呂の時間が被ることはないので、こういう機会は非常に珍しいと言っていいだろう。半分は折角一緒になったのだから同期トークがしたいというエルコンドルパサーの発案であるのだが。浴槽の隅に集まった六人は、トレーニングの話題で花を咲かせた。本番前の減量等はやはり気になる所であった。そんな中、ふとエルコンドルパサーがスペシャルウィークの変化に気が付いた。
「スぺちゃん、前より筋肉質になってないデスか?」
「確かに…」
他のメンバーも視線を集中させ、それに気が付いた様だった。確かに、以前より全体的に身体が引き締まっている。太ももは筋肉による凹凸ができ、腹部には余分な皮下脂肪が消えたことを示すシックスパックが浮き出つつあるようだった。
「やっぱり分かるよね…ほら、私食べる方じゃないですか」
ジロジロ見られていることを恥ずかしがりつつ、スペシャルウィークはポツポツと語り始めた。ウマ娘として見ても大食いの部類である彼女。しばしば太り気味になる彼女をみかねたトレーナーはトレーニングの強度を食事量を考慮して引き上げたらしかった。前よりきつくなったトレーニングに不満がありつつも、その効果か自己ベストがちょっとずつ更新できてるので文句も言えないのだとか。
「なはは、これは負けていられませんなぁ」
「成る程、相談してみるのもありかしらね」
「羨ましいなぁ…私は身体づくりの方が先決かも」
その独白を聞いてトレーニングについて考えを巡らせる同期達。そこはアスリートであり、ライバルの成長は見過ごせないようだった。切磋琢磨。お互いを高め合う闘志を刺激した瞬間であった。