ウマ娘 SS短編集   作:本田直之

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キタサンと成長期

「キタちゃん、また大きくなってない?」

 

トゥインクルシリーズをトレーナーさんとひた走っていたある日、ダイヤちゃんがそんなことを言ってきた。正直面食らったと思う。ウマ娘は思春期に急激に成長するが、自分の身体は伸びなくなったし、成長が緩くなって止まりつつあると思っていたからだ。おまけに毎日見ているから成長を実感しにくいときた。幼少期のような成長ならともかく、緩やかな成長には気が回っていなかった。

 

「どこらへん?」

 

「…ちょっと鏡を見てみて」

 

ダイヤちゃんは懐から鏡を取り出すと、私の身体を指さしながら成長の証拠を指摘していった。

例えばスカート。下半身が大きくなったせいか布地が太腿の中程あたりまで上がっていた。中が見える程ではないが心許ない。例えば上着。胴回りが太くなったせいか肌への密着感が大きい。胸の輪郭が若干分かりやすくなっていた。入学時はそれなりに余裕をもったサイズを選んでいた筈だが、私の成長がそれ以上だったらしい。

 

「キタちゃんはウマ娘の中でも育ち盛りだから、もっと気にしてないと」

 

そういうダイヤちゃんの顔は真剣そのもの。私も些か放置し過ぎたと反省し、上のサイズを発注し事無きを得た。でも、私は大事な事を忘れていた。もう一つ、サイズ変更をしておくべき服があったことを。

 

それから数週間後、私は久方振りにG1に出走すべくレース場に来ていた。パドックに出る時刻も迫り、更衣室で勝負服を着替えていたとき。私は違和感に気付いた。

 

「あれ…きつい?」

 

腰の辺りの締付けが記憶にないくらい強い。まさかと思い着用してみると、次々に不味い箇所が明らかになってくる。上着が以前よりギチギチで胸が潰されてしまう。元から短めだったスカートの丈が更に悪化し、激しく動けば足の付け根やお尻の肉が見えてしまいそうだ。ソックスもパンパンで太くなった太腿の肉に布地が食い込んでいる。

 

「ど、どうしよう…」

 

勝負服についても発注しておけば良かったと後悔するものの後の祭り。違う衣装を用意するにしても、レースに間に合わない。かといって、レースを辞退しトレーナーさんや皆の期待を裏切るなんて出来ない。私は数分考えた末に選択した。

 

『●枠□番、堂々の一番人気。キタサンブラック!』

 

「うぅ……」

 

このレースのことを、後にキタサンブラックの関係者はこう語る。当時の彼女は、しきりに自分の勝負服を気にし、終始モジモジしていたという。

 

 

~~~~~~~~~

 

 

出てきたのはよかったものの、私は早くも後悔していた。久しぶりの復帰レースだからか観客の数が多い。パツパツの姿ををこれだけの人に見られていると思うと頭が沸騰しそうだ。内の何割かは衣装のことに気付くかもしれない。スカートの裾を気にしながらゲートに収まる。私は祈るようにその時を待った。

 

ゲートが開きレースが始まった。スカートは問題しかなかった。思った以上に走りに合わせてユラユラ揺れている。お尻がスースーする。これ後ろからスカートの中丸見え―――

 

「わああああああああああああああああ!!??/////////」

 

結局の所、私は他のウマ娘に見られまいと加速し、ツインターボさん並の爆逃げを敢行した。それで勝てたのは普段のトレーニングのお陰かもしれない。

 

 

~~~~~~~~~~~

 

 

その日のキタサンブラックは普段と違った。若干挙動不審というか、周囲を気にしてレースに集中できていない。レース内容も事前のプランとまるで違う暴走の様な逃げ。勝てたから良いものの、トレーナーとしてそれは看過できなかった。レースが終わった直後の彼女を捕まえて事情を聞くことにする。

 

「えっと…そのですね…」

 

キタサンブラックは答えに窮する。今も尚周囲を気にしている様で、目線も泳いでいた。どうやら口に出したくないようだ。私は君が心配なのだと説明し事態の打開について説得を試みることしばし。彼女も根負けしたようで、意を決して話し始めた。

 

「私を見てください…違和感ありませんか…?」

 

言われるがままに勝負服を眺めていると、漸く彼女の走りの原因が判明した。全体的に衣装のサイズが小さくなっている。成長した身体を何とか収めようとしたのかどこもパツパツで生地が伸びきっていた。スカートに至っては中が見えてしまいそうなほど心許ない。なるほど、この状態だからこそ彼女は周囲の目線を気にしていたのだ。サイズは余裕をもって出していた筈だが、成長速度が上だったということか。

 

「……新しい勝負服の発注しておくよ」

 

「は、はい……//////」

 

ジロジロ見られてしまったからか、キタサンブラックの顔はトマトの様に赤かった。

 

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