マヤノトップガンの専属トレーナーになってから何年経っただろう。最初の三年間を成功させることができ、当然の如く契約は延長された。今も尚、ドリームリーグで二人三脚で戦っている。変わったことといえば、マヤノにも成長期が訪れたことだろうか。年齢に伴って身長も伸び、鳩尾当たりだった頭も今や肩のあたりまで上がっている。当然ながら体つきも変わった。アスリートらしく筋肉質になった。でも、それ以上に女性的な体つきに変化したのだ。当初は小ぶりだった胸は谷間が出来るほど成長し、腰は綺麗にくびれ、臀部はより大きくなり、太ももやふくらはぎも太くなっている。所謂モデル体型という奴だ。SNSにおいても言及されることも多くなってきている。それが新たな悩みの種であった。
ドリームリーグでのレース後。地下バ道で待っていると、こちらを見つけたマヤノが駆け寄ってくる。レース結果とレース内容について軽く健闘した後、彼女はいたずらっぽい表情を見せた。何か良からぬことを思いついたのだろう。
「トレーナーちゃん、私もオトナのオンナになってきたでしょ?」
少しの沈黙の後、ふざけてそんなことを話しかけてくるマヤノ。ご丁寧にモデルの様なポーズまで取っている。以前は特に反応しなかったそれも、成長した今ではある種の異性的魅力を醸し出していた。
「…そうだな」
「つまんないの~~」
興味ないそぶりをして目線を逸らす。マヤノは不満げな顔をしているが、それでいい。指導者と教え子という関係である以上、担当を異性として意識することなどあってはならない。少なくとも彼女が卒業するまでは健全な関係を続けなければ。
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「ねぇ聞いてよテイオーちゃん!」
「なにマヤノ」
とある日の午後、自室にて二人のウマ娘が会話を弾ませていた。トウカイテイオーとマヤノトップガンである。どこか不満げな様子のマヤノは昼間の出来事を話した。オトナのオンナアピールにまるで反応しなかったトレーナーについてを。
「私、オトナの魅力ないのかな」
「それはないと思うよ?」
しょげるマヤノに対しテイオーが答えた。間違いなく体つきは大人になりつつあるし、魅力は増しているのだと手のスマホを差しながら説明した。成程、確かにそういった意見がネット上で多く見られるようだ。
「もっとマヤノのトレーナーを観察してみれば?顔赤くなっているかもよ?」
「なるほど~~」
オトナのオンナ談議はそれから暫く続いたという
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近頃担当のマヤノトップガンが顔を覗き込んでくるようになった。どういう心境の変化かは分からないが、こちらとしては面倒だ。向こうに気付かれないよう自然に目線を逸らさなければならない。しかしそんな小細工も長くは続かず、とうとう顔を見られてしまった。
「ふ~ん??トレーナーちゃんたらもしかしてマヤに惚れちゃったりしてる~~?」
顔を見るなりニマニマしているマヤノ。弱みを握ったからいじってやろうという魂胆だろうか。彼女の言うオトナのオンナらしい行為だ。だが、こうなった以上隠す必要も薄れている。否定するよりも堂々と肯定した方がペースを握られない。そう考えた俺はマヤノに向き直って言葉を紡ぐ。
「あぁ、そうだ。言うまでもなく惚れているよ。美人になったしな」
それを聞いたマヤノは硬直した。しばし言葉が理解できないような反応が続いたが、みるみるうちに顔がトマトのように紅潮していく。漫画のキャラなら頭から蒸気が出ているだろうか。余りにも分かりやすい反応。動揺しているのが丸わかりである。
「え―――――――あ――――――」
その後、暫くの間マヤノがよそよそしくなったのは言うまでもない。