ウマ娘 SS短編集   作:本田直之

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スズカとタイキのハグ

「Heyスズカ!!おはようございマース!!」

 

朝のホームルーム前に教室に入ると、聞き覚えのある声が耳に入る。同じクラスのタイキシャトルだ。アメリカから来た彼女は非常に明るく押しが強かった。友人達に抱きつくようなスキンシップも多い。今日もそれは同じで、私に向かって走りこんでくる。

 

「…おはよ」

 

挨拶をし終わる前に眼前にタイキの顔が迫り、身体に軽い衝撃が伝わった。一回り大きな彼女の腕がスルリと背中に回る。それとほぼ同時に柔らかな感触がやってきた。タイキの豊満な胸が私の胸板に押し付けられているのだ。

 

(あ……これ……)

 

身体を包む体温が心地いい。僅かな時間が無限に引き延ばされたような感覚だった。まるで、母に抱かれている様な不思議な気持ち。元々乗り気ではなかった筈の私は、いつの間にかこの感触の虜になっていた。

 

「……スズカ?」

 

タイキの戸惑う声で我に帰った。どうやら私は彼女の抱きしめが終わった後も手を話していなかったようだった。自分のしていた事が理解できて、逃げるようにタイキを離して飛びのいた。

 

「……ッ!…ごめんなさい!…ちょっとボーッとしてて…!」

 

「そ、そうデスカ…」

 

多少は不信感を与えてしまっただろうが、混乱した私は今直ぐに離れたかった。どくどくと高鳴る胸を抑える様に自分の席に座ったが、その後暫くの間気持ちが落ち着くことは無かった。

 

 

 

放課後、クラスメイト達が教室を後にする中、私はタイキに呼び止められた。

 

「ごめんなサイ…ワタシ、余計な事してマスか?」

 

まず口から零れたのは謝罪の言葉。今日の朝の出来事はタイキにとっても衝撃だったらしい。そして、私がハグが嫌いなのではないかと思い至り、その後暫く様子がおかしかった私を見て罪悪感を抱いたようだった。そう話す顔もどこか暗い。

 

「スズカが嫌なら、明日からは――――」

 

「ち、違うの…!!」

 

思わずタイキの声を遮った。彼女は友人だし、スキンシップも積極的に動かないだけで嫌いな訳ではない。マイナスの感情など無かった。あれは、照れ隠しと言うか何と言うか。寧ろ母親の様な安心感があったというか。言葉に詰まりながら弁明する私の顔は、酷く真っ赤になっているのだろう。若干ネジが外れた頭は、タイキに向かって誘うように手を伸ばした。

 

「だから…もっとしてくれても…いいというか…」

 

「ほ、ホントデスカ!?」

 

それを聞いた目を輝かせて抱き着いてくる。友人との誤解は解けたけど、これ以上の頻度でしたら私にとってタイキが特別になってしまうかもしれない。肌のぬくもりを感じながら、ぼうっとそんなことを思った。

 

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