最初は特に気にしていなかった。同期のおふざけの延長としてたまたま愛してるゲームが選ばれ、たまたま抽選でスカイさんが相手に決まっただけ。今の今まで、あっさり終わると思っていた。当然だろう。たった一言「愛してる」と呟くだけ。なんら難しい事ではない、数秒で終わる単純な遊び。なのにーーーー
「あ……」
「愛してる」と呟こうとした口の動きが止まる。目の前にあるスカイさんの顔。何時も見ている筈の表情。それを正面から見た段階で、私の思考が硬直する。彼女の顔は、こうも綺麗だっただろうか?
思わず言葉を区切った私。そんな私をからかうように、スカイさんはいつもの笑みを浮かべる。
「あらあら〜?どうしたのキング〜何か思うことでもあるんですかね〜?」
「…何でもないわよ」
大丈夫よ私。何ら問題はない。たった五文字の言葉を口にするだけ。それだけでいい。それだけでいい筈なのに。
ドクンーーーードクンーーーー
この胸の高鳴りは何だ?胸を締め付けるような気持ちは?これじゃまるで、異性に告白でもするような。
頭に浮かんだ考えを振り払う。いやいやいやいや、あり得ない。そんなはずはない。スカイさんは同性。そう、ただの同級生だ。トゥインクルシリーズを競い合う一流のライバルで、気の許せる友人で、一見怠惰なようですしっかりとした信念を持っていて、私が辛い時は支えてくれる、大切なーーーー
妙な方向に逸れようとする自分の頭に否定の言葉を言い聞かせるも、頭の中を駆け巡るのはスカイさんの顔。今まで育んできた彼女との記憶。記憶の中のスカイさんはとても輝いて見えた。何故このような記憶が脳裏をよぎるのか。余りにもわかりやすく単純な答えだ。こうなると認めざるを得なかった。私はスカイさんのことがーーーー
「キング?」
黙ったままの私の様子に気付いたのか、スカイさんが顔を覗き込んでくる。いつもより近い距離。空色の瞳も、透き通る肌も、首を傾げる動作も、全てが美しいと感じた。彼女を構成するあらゆる要素が私の琴線に触れている。
「ーーーーーーーッ」
早鐘を打つ心臓。レースでもここまで鼓動が早くなったことがあるだろうか。頬が僅かに朱を帯びるのを感じる。心のままに告げてしまえば、この胸の熱も少しは冷えてくれるのだろうか。ああ、これはまるで…愛しい人への恋慕のようで。
お母様が見たら何と言うだろう。ふしだらな娘と糾弾するだろうか。でも、私は胸に募る思いを言葉にしたくて。今までの葛藤が嘘のように、すんなりと言葉になった。
「ーーーー愛してる」
言ってしまった。しかも、自分でも信じられない位の甘ったるい声で。今の私はとんでもなく恥ずかしい顔をしているに違いない。
「え……あ………」
一瞬硬直したスカイさん。その後、私の言葉をゆっくり咀嚼するような数秒の沈黙の後、顔全体が真っ赤に染まった。
「二人ともアウトデース!!!」
「エル。空気を読みなさい。」
「ケ!??」
余談だが、その後グラスさんとエルさんは追いかけっこを繰り広げ、私とスカイさんは暫く口をきけなかった。