ウマ娘 SS短編集   作:本田直之

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皇帝、同期に会う

府中近郊に店をかまえるとある居酒屋。美味な一品料理が周辺で話題になっている以外は、特に何の変哲もない店舗。そこに、あるウマ娘達が集まっていた。

 

「おっ、ルドルフやんけ」

 

「ごめんね忙しい時に」

 

「トレセンの仕事の方は良いんですか?」

 

「大丈夫だ。今日は早く雑務を終わらせてきたからね」

 

「そりゃ良かった」

 

トレセン学園の生徒会長を務める私—――シンボリルドルフと、事前に席について待っていた四人目のウマ娘。少し前のウマ娘レースファンであれば、その顔に覚えがあるだろう。

ビゼンニシキ、スズパレード、スズマッハ、ニシノライデン――――

私と共にクラシックを走った同期のウマ娘達だ。この集まりは、スズパレードが企画した同窓会であった。単に久々に顔を合わせたいという理由による企画だったが、普段忙しい私自身も乗り気だった為にあっさり決まり、お互いのスケジュールを調整して今日に至る。

 

「それで、どうだルドルフ。うちのヘリオスは」

 

「マイルでは獅子奮迅の活躍をしている。君の言う通り素晴らしいウマ娘だったよ。ギャル語に関しては一知半解だが」

 

「まぁ、そうだろうな」

 

暫くは、お互いの近況についての話が続いた。ビゼンニシキはウマ娘の養成施設に所属し、後進の育成に励んでいる。ダイタクヘリオスは彼女の教え子の一人だ。スズパレードはURAに就職し、トゥインクルシリーズを盛り上げる企画をプロデュースしている。ニシノライデンは実家の蹄鉄業を継いでいた。スズマッハはテレビ局でレースの実況解説をしている。道は違えど、それぞれが新しい場所で頑張っている。それが分かっただけでも、今回の同窓会は価値があった。そして話題は私の事に移る。

 

「大変でしょ?生徒会長…」

 

「ああ…だが、やりがいのある仕事ではある」

 

スズパレードは若干心配そうに尋ねた。彼女は仕事の性質上私と関わることが多いので、私の職務のおおよその実態は把握している。確かに自分のトレーニングと学園についての諸々の統括の両立は厳しいが、私の『夢』の実現にはこれも必須。私の『夢』。「ウマ娘誰もが幸福になれる時代」については、彼女達も知るところだ。今考えていることをつらつらと語って聞かせた。ある種傲慢かも知れないが、それでも私が目指したいものを。

 

「そっか…相変わらずしっかりしてますね、ルドルフさんは」

 

「なぁ、うちらで手伝えることあらへんか?」

 

「手伝える範囲ならな」

 

感心した表情のスズマッハ。協力を申し出るニシノライデン。肯定するビゼンニシキ。自分で語っておいてなんだが、ここまで協力的な反応が返ってくるとは思わなかった。昔は彼女らと衝突することもあったし、全てが肯定的な思い出ではなかったから。

 

「良いのか?」

 

私は問うた。なぜ彼女らは私に協力的なのかと。そうして返ってきたのは――――

 

「何水臭いこと言ってるのさ。同期でしょ私達」

 

「世代の代表に対して、頑張ってほしいと思うのは可笑しいですか?」

 

「エゴかもしれんが、私達を打ち負かしたお前には胸を張って進んでほしいんだ」

 

いや、深く考えるのは野暮だった。話はもっと単純で、それでいて嬉しいものだった。勇往邁進。私の好きな言葉だ。それでは、皆の言葉通りに進ませてもらうとしよう。私の力の及ばない所は、遠慮なく頼らせてもらおう。

 

「ありがとう」

 

今日は、久しぶりに心の底から笑えた気がした。

 

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