ウマ娘 SS短編集   作:本田直之

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尻尾ハグ アルチヨ・シチユキ

大勢の客で賑わう遊園地を前に、私、サクラチヨノオーは期待に胸を膨らませていた。隣に佇むアルダンさんも微かであるが笑みを浮かべている。何を隠そう。今日はアルダンさんと一緒に遊園地に遊びに来たのだ。アルダンさんは病弱な体質と実家であるメジロ家の方針もあり、こういった場所に行く機会はあまりなかったらしい。これを聞いた私は二人でのささやかな遊園地豪遊計画をたてたのだ。いつもの私からしたらいささか大胆な行動かもしれない。でも、彼女との学生時代の楽しい思い出を作りたいという欲が勝ってしまったのだから仕方ない。

 

「…えぇ、構いません。予定を空けておきますね」

 

「ありがとうございます!」

 

アルダンさんから了承を貰ってからは、数週間前から準備を進めた。遊園地の見どころやスポットを調べ上げ、手作りのパンフレットを作ったりした。思えば私もテンションが上がっていたのだろう。予定の日までの時間はとても長く感じた。

 

そして当日

 

「落ちるうううううううう!!!!」

 

「ふふふ…こういうのも新鮮ですね」

 

遊園地に入ってからは事前に計画したルートを案内する。人気のアトラクションで絶叫したり、園内のグルメに舌鼓をうったりした。時間はあっという間で、気付けば日は落ちて日の入りまで1時間ほど。体感時間の短さに驚きながら時計を見て、予定にあるパレードまで時間があることに気が付いた。余った時間を座って過ごすのも勿体ない。どうしようかと思案していると、アルダンさんが近くにある観覧車に乗ろうと提案してきた。待ち時間もそこまでなさそうだったので、私は彼女の提案に乗った。

 

「わあ~~~~~~!!」

 

結果としてこれは大正解だった。時刻は丁度夕暮れ時。下に見える街並みが茜色に照らされている。それはとても神々しくて、思わずゴンドラの窓ガラスに手をついて見入ってしまった。暫く外を眺めていると、尻尾に何だかくすぐったい感触がする。そちらに目をやると、アルダンさんの尻尾が私の尻尾に1周2周と絡まってきていた。

 

「え…あ…アルダンさん!?」

 

ビクリと体が震えた。この行為は一般的に『尻尾ハグ』と呼ばれるもので、特別なパートナーにやるようなものだからだ。固まる私とは対称的に、アルダンさんは何ともないような雰囲気だ。尻尾ハグについて指摘してもそれは変わらない。それどころか―――――

 

「私にとってチヨノオーさんは特別なので間違っていませんよ。それに、さっきみたいに喜んでいるチヨノオーさんを見ると私…嫉妬しちゃいます」

 

臆面もなく言い切った。夕日に照らされたアルダンさんはとても美しくて…

バクン、バクンとレースの終盤のように脈打つ心臓の音を聞きながら、私はアルダンさんの傍に座り直した。アルダンさんの特別になれているという歓喜と一連の流れに対しての恥ずかしさがまじりあい、顔が熱を帯びている。多分今の私は全身真っ赤になっているに違いない。なんにせよ、アルダンさんは私に対しそういう感情をさらけ出しているのは確かだ。

 

「なら…」

 

もう少し踏み込んでいいのかな。そう思った私は、ほんの少しだけれど前に踏み出すことにした。体を傾けてアルダンさんに寄りかかる。彼女の艶やかな髪の感触が心地よい。

 

「…もう少し、こうしていてもいいですか?」

 

アルダンさんは少し驚いた後、優しく微笑んだ。

 

「心ゆくまで…」

 

絡まる尻尾。肌に感じる温もり。ゴンドラが地上に着くまでしばしの時間が掛かる。それまでは、この二人だけの空間を楽しむことにしよう。

 

 

 

~~~~~

 

 

アタシは、ユキノ…ユキノビジンと良好な関係を築いていた。最初は彼女が目指す『シチーガール』に私が近かったのもあると思うが、今では内心を吐露するような間柄だ。そんなある日、さも当然の様に尻尾を絡めてきたことがあった。所謂尻尾ハグと呼ばれるもので、特別なパートナーに親愛を示す行為だ。アタシが驚いて指摘するも当人はぽかんとしていて。

 

「地元の友達とはとろっぺつやってたンです!」

 

と純粋な目で言うものだから、この行為の意味を教えるのも億劫になってされるがままを受け入れていた。でも、そんな日々に変化が訪れる。人気ドラマ『Loveだっち』の最終回にて尻尾ハグが披露されたのだ。これにより学園は尻尾ハグの話題で持ち切りとなった。これだけ騒がれたら当然ではあるが、尻尾ハグの持つ意味についての話題がユキノの耳にも入ったらしい。アタシに会うなり慌てた様子で頭を下げてきた。

 

「シチーさん、あたしアレの意味を分かってなかッた…本当におもさげながんす…」

 

「いいよ謝らなくて。アタシはユキノとなら尻尾ハグしたいし」

 

ぺこぺこするユキノに頭を上げさせる。実の所、彼女との尻尾ハグは嫌ではなかった。むしろそれだけの親愛を向けてくれているのだと嬉しいぐらいだ。よくよく考えればこういう風にアタシが表立ってしっかりと好意を伝えたことは無かった気がする。それを伝えるとユキノは白い頬を紅潮させた。アタシ自身も顔が熱くなってきた。

 

「あたしもシチーさんとしてるとはっかはっかして…もっとしてたいなって…」

 

「なら問題ないじゃん。これからも…ね」

 

「はいぃ…」

 

無論その後の尻尾ハグの時間が長くなったのは言うまでもない。

 

 

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