オグリキャップさん。ローカルのカサマツからやってきた彼女は、瞬く間に世代のトップに上り詰めた。私とは直接レースを走るようなことは無かったが、同期として日常の付き合いはさせてもらっていた。オグリさんがこちらに慣れておらず何処か危うく感じたのもある。色々と世話を焼いたものだ。
「チヨノオーは優しいな」
それがオグリさんの私への決まり文句だった。そんなある日、神妙な顔をしたオグリさんに呼び出された。普段とは様子が違ったので何かあったのかと思ったが、困りごとでは無いらしい。
「ちょっと後ろを向いてくれないか?」
オグリさんに促されるままに背中を向ける。意図を計りかねていると、尻尾に何かが巻き付いてくる感触があった。何かと思えばオグリさんの尻尾であった。
「ヘェ!!?」
「これは仲良しの証だって教わったんだ。チヨノオーには沢山良くしてもらったし―――」
嬉しそうに話すオグリさん。誰にそんな事を教わったのかとか、オグリさんの私絵の感情とか、色々なことが頭を駆け巡りフリーズしてしまう。その後暫くの間固まっていたのを心配され、同期の皆の間で私とオグリさんのよからぬ噂が流れたのはまた別の話だ。
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スカウトされて東京に出てきてそれなりの時間が経った。ようやく生活に慣れてきて、友人と呼べる相手も増えている。
「おはようございます」
「あぁ、おはようアルダン」
このメジロアルダンもその一人。同期という事で絡む機会も多い。私達の中では一回り大人びていて、相談に乗ってくれることもある。かくいう私も今日は相談事があって、話を聞いてもらうことになった。
「友達に親愛を示すのにいい方法はないだろうか」
同期は皆優しくて、私に世話を焼いてくれている。でも、それに対してどうお返しをしていいか分からないのだ。何か送り物をするにしても中身の見当がつかない。
「そうですね…感謝の気持ちを伝えるで十分だと思いますが、しいて言うなら…」
少し思案した後、アルダンは自身の尻尾を私の尻尾に絡めてきた。毛の触れる感触がややくすぐったい。
「これは…?」
「仲良しの証のようなものです。ドラマなんかでもよく見る奴ですね」
唇に人差し指を当て、いたずらっぽい笑みを浮かべるアルダン。私はその回答に満足し、そのままお開きとなった。その後暫くのは言われた通り同期を中心に尻尾を絡めて回ったが、どうも相手の様子が変だった。何か気に障る事だっただろうか?