【カオ転三次】世界が終わるまでのバイク旅   作:山親父

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一向に進まない本筋を無視して短編を仕上げる。これを逃避行動と言います。

ジョゼニキを更生させておきました。してるよね?


ジョゼニキの独白

 あの頃のオレは馬鹿だった。

 今更ながらに後悔している。

 

 確かに、星霊神社を訪れただけで覚醒したのは凄いのかも知れない。

 だが運が良かっただけで未覚醒者を下に見るのはどうなんだ?

 ショタおじの厳しい修行で覚醒した人間を下に見るなんてどうかしていた。

 アレを耐えるなんて、それだけで俺より格上だろうに……

 

 オレは天狗になっていたのだろう。

 覚醒してガイアグループに就職した勝ち組になって、絶対に裏切らない可愛いパートナーまで出来た。

 人生の勝ち組、終末だってオレなら乗り越えられる。

 無条件に確信していた、下駄をはかせてもらっただけ、ショタおじのすねかじりの分際で。

 お前は何様だ?

 

 上層も半ばで多少苦戦する様になって、原因を考えた。オレは安直にも攻撃力が足りないと思ってしまった。

 銃が本物ならオレのエッタだって、もっと強くなるし敵だって倒せる。そう思った。

 

 オレも銃を撃ちたい。その気持ちが本物じゃ無ければキノネキに無視されていただろう。

 

 あの頃のオレが恥ずかしい。主人公気取りだったのか? そうかもな、じゃなきゃ15才の少女にタカル様な真似……主人公気取りなら逆にやらないな。あの頃のオレは福本モブ同然か……やべえ、首を括りたくなる。

 

 まあ、その報いは受けたのだが。

 報いと言うには大甘な裁定だったんだけど……後で仲間に言われた「キノネキが寛大で良かったな?」って。

 その通りだ、年下の少女の慈悲に縋って助けて貰ったのがオレだ……しかも、当時はソレを理解して無かった。

 理解したくなかったのかも知れない。本気で恥ずかしい話だ。

 

 しかし、その馬鹿な行動がオレの運命を変えた。

 あの馬鹿をやらなきゃ、あの出会いは無かった。密かに師匠と慕う、あの人との出会いは……

 

 掲示板での事件(大げさかも知れんがオレにとっては事件だ、黒歴史という意味で)の後の事だ。

 流石に当時のオレでは色々と不安があるからキノネキに鍛え直せと言われたのだ。

 

 当然、オレは内心反発した。当時のオレは馬鹿だったからな。

 銃を扱う心構えがなってないと言われたのだ。

 15才の少女に言われれば反発しても仕方ない、そう言い訳をする余地はあるのかもしれない。

 だが、霊能者としては失格も良いところだ。

 当時のキノネキは下層試験に挑んでいる最中だ。

 レベルで言えば50を超えていたかも知れないんだ。

 そんな相手を外見だけで舐めくさり感情だけで反発するなんて……命が幾つあっても足りない。

 しかも、その少女はハンデを乗り越えた上でその領域に至った強者なのにだ……ホント、大馬鹿モノだよ。

 

 キノネキは仲間意識が強い人だった。ある意味ではショタおじと似ている。

 ショタおじも仲間意識が強い人だ、その分転生者以外には冷たいかも知れない。

 

 勿論、ショタおじとキノネキでは強さも影響力も違う、キノネキでは強さは全く及ばないし、仲間と定義する範囲も狭い。だが、一度身内と判断すれば、甘い裁定を下しがちってのは同じだと思う。

 

 あの時、銃を好む仲間認定されなきゃオレはどうなっていたやら。

 エッタに養われるだけのダメ男になっていたかも知れないな。

 シキガミ遠征勢を馬鹿にするつもりはない。ただオレの場合は一度折れたら、どうしようもない所まで落ちそうな気がするのだ、具体的には福本モブみたいな……

 

 話を戻そう。

 キノネキが紹介してくれたのが教官、心の師匠。春戸 満(はると みつる)元1等陸曹だった。

 

 自衛官として定年56才まで勤め上げ、陸戦の何たるかを体現している人だ。

 それもその筈、教官は前世でも帝国陸軍に奉職していた人間だ、戦後も国防に携わり陸上自衛隊に所属していたそうだ。

「儂にはこれしか出来んからな……」

 戦後まで生き残り、元軍人と言うだけで罵声を浴びて、それでも国防のためにと生涯を後輩の自衛官に尽くした。

 生まれ変わっても仲間の為に自衛官になった。

「他の生き方を知らんだけさ」

 教官はそう自嘲するが、一本筋が入った生き方だと思う。誰にでも出来る事ではない。

 

 教官はオレに色々と教えてくれた、戦い方から書類のさばき方まで。

 自衛官が書類さばきまで上手いって? 最初は疑問だった。

「自衛官だって役人だぞ? 書類からは逃げられんさ」

 単純に戦ってれば良いってもんじゃないよな……言われてみれば当然だ。

 そして我が身を顧みて思う訳だ、ガイアに就職って仕事は何だ? ってさ。

 ガイア系企業に就職。聞こえは良い、だが、それは対外的なモノ。

 ショタおじが履かせてくれた下駄。

 ガイアで何を仕事にしていると聞かれた時、オレはなんて答える気だったんだ? 異界で戦ってますって?

 正気を疑われるだけだ、だがキノネキが居場所と仕事をくれた。今ならガイア系の企業で輸入代行業をしているって答えられる訳だ。ウソではないんだぜ? 一応、銃以外も扱うしな。

 

 戦闘訓練では部の仲間が協力してくれたし、上層でキノネキが見せてくれた銃さばきは芸術だった。

 と言うか反則だろ、アレ!? 基本ヘッドショットで全弾命中、悪魔は死ぬ? 人間業じゃない。

 教官もソコは同意見だと言うし、やっぱ修羅勢ってのは別格なんだと思う。

 オレには無理、地道に行こう。そもそもの話、オレが主人公なんて柄か?

 

 うん、柄じゃない。そして冷静に考えれば成りたくもない。

 だって主人公って、あれだろ? 世界からこれでもかって試練を与えられて、話を盛り上げるために悲劇に見舞われて……そんな生き方は嫌だ! よくよく考えればそう結論できる。

 むしろモブで良い、いやモブが良い! オレは悟ったのだ、分相応に生きる分には運命とやらも見逃してくれるだろう、そう信じたい。モブはモブでも福本モブになる気はない……あっさりと死ぬモブも嫌だな、レベル上げは頑張ろう。

 

 力尽きるまで走らされ、模擬戦でなんども殺され、格闘戦を教えられて、書類仕事をしてって生活を一月程は続けただろうか?

 教官も同じメニューを熟しているのに、疲れた様子もない。

「実際に死ぬまで模擬戦が出来るってのは此処だけだが、軍人ってのは体力勝負だ、この位でへばって居る様では使えんよ」

 そう笑う教官はバケモノだ。これで還暦を迎えるってんだから敵わない。

 体力勝負では魔法型のオレが不利。そんな言い訳もできるかもな? でも若さで勝りレベルも同格でそれってどうなんだ?

 模擬戦では魔法も使うアリアリの本気でも勝てないのに? 結局、自分が劣るって認めるしかない。認めなければ成長も出来ない。

 こんな考えが出来るようになったのも教官とキノネキのおかげなんだろうな。

 

 思い起こせば、キノネキに借金をした時の誓約書、コレにサインした時に運命は変わった。

 別にキノネキは不実な真似をした訳じゃない、オレがウカツで残念だっただけだ。

 誓約書の一文に教官の言葉には絶対服従する事ってのがあった。

 後で叱られたよ、「今回は仲間だったから良いが、コレが悪魔や敵対者だったらどうする」ってさ。

 

 確かに、教官に死ねって言われれば死ななきゃいけなくなる。そんなウカツな契約だ。

 

「後でセツニキ先生の講座を受ける事。これ決定事項ね」

 

 キノネキに、こんな事を言われる未熟者がオレだった訳だ……どっちが子供だ? 圧倒的にオレの方じゃないか……赤面しつつ項垂れるだけだったよ。

 

 無知の知ってのはソクラテスの言葉だったか?

 

 オレはようやく、その段階にまでは来れたって事なんだろう。

 イキガッテ偉そうにしてた過去は消えないんだが……

 

 落ち込んでたらエッタが慰めてくれた。うん、明日もがんばろう!

 

 そして次の日、キノネキから来た請求書の額に愕然とした。

 日本円で1500万……これでもサービスしているそうだ。実際、内訳を確認すると本体の購入費、不正な方法なので高くつく。

 キノネキはガイア連合が関与している痕跡を消すために出来うる限りの行動をしていた。

 銃はメシア過激派に流される筈の物を敵対組織に情報を流して横取り。実際に行動した組織に大部分を譲って、幾つもの欺瞞ルートを通す。それらの偽装にかかった代金。

 情報を得る為にも資金は使っただろうに、それは請求されてない。

 最後はフィリピンまで自分で取りに行ってくれていた。

 ついでがあったから自分の分の手間賃はサービスだと言い、偽装工作分も割合で請求してくれていた。

 これ本来なら倍の請求が来ても可笑しくないな……

 しかも、コレがラストチャンスだったら悔やみきれないだろうからってSIG SAUER P239を二丁付けてくれてる。

 流石にあるかどうかも分からない銃は無理だからね? って笑うキノネキに頭が上がらない……

 良い人だよな。そしてイイ女かも知れない、エッタが居なければ惚れてたかもな?

 

 痛っ、エッタ、浮気はしないから大丈夫だって。例え、例えの話だから!

 

 




ジョゼニキ
多分、更生できた。

エッタ
ヘンリエッタの愛称。ジョゼニキのシキガミ

春戸 満(はると みつる) 元1等陸曹 レベル18
予備自衛官の可能性がある。今年で60才
実銃愛好部の初期メンバーでジョゼニキは褒め過ぎかも知れないが経験は本物
前世今世トータルで80年以上陸戦に関わってきた人。定年後に覚醒した
シキガミはナイフ型
普通にマッチョなので、映画「フルメタル・ジャケット」の軍曹を想像してはいけない
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