読者さん、コレ書き始めた時の暫定の名前、9話だったんですよ?
時間軸では1話の続きだったりします
私はミホ。”西隅ミホ”。八王子の私立女学校から、此処、大洗の公立高校へ転校してきた。
家族仲は祖母を除けば、良い方だったと思う。
祖母は何時からか私の事を狐憑きと呼び始め、無視したり罵声を浴びせる様になった。
決定的だったのはフィリピンで私が事件に巻き込まれかけた事だ。
父が仕事でフィリピンへ行き現地で事故に遭って入院する事になった。
家族皆で見舞いに行くという、私は行きたくなかったのだが、祖母に我儘を言うな言われ、私の意見は黙殺された。
見舞いの後、夜のフィリピンを観光中だった家族と逸れた私は、ある大量殺人者に殺される寸前だったらしい。
気が遠くなり、獣臭い男に抱えられて、連れ去られそうになった事は覚えている。
その時に「ミホを離せ!」って怒ってくれた人が居た気がするのだ、その声には聞き覚えがあった。
軒野木乃、去年、大火災で亡くなった友人の名前だ。私には彼女が助けてくれた気がしてならない。
その時には、もう私の意識はなかったし、証拠も何もない。けれど、何故か確信していた。
私は実際に居合わせ、病院へ連れて言ってくれた人にも、「亡くなった友人が助けてくれた」と言っている。
私を助けてくれた方は、八王子で建築業を営む人で一度会った事がある。
木乃とその祖父の葬儀を取り仕切っていた人だった。
フィリピンには商談で来ていたらしい、資材の買い付けだそうだ。
その方”九島喜太郎”さんは私を馬鹿にすることなく。黙って聞いてくれた後ポツリと……
「良い友達だったんだな」
そう言ってくれた。
とても良い人でポロポロと泣く私に声をかけ「もう大丈夫だ。ご家族も直ぐ来られる」そう言って励ましても下さった。
「迷惑をかけるな狐憑きめが!」
だから、家族のハズの祖母の罵声が余計にカンに触った。
「ふざけんな婆! 孫が殺されかけても体面の方が大事か!?」
言い返されると思っていなかったのだろう、暫く沈黙し、次の瞬間、悪鬼のごとく顔を真っ赤にして杖を振り上げた祖母に対して、喜太郎さんが
「お止めなさい、今のは貴女が悪い」
そう言い切って止めてくれた。
ハッキリ言って格が違う。クソ婆はブツブツ言っていたが何もできずにホテルへ戻ったらしい。
日本へ戻ってからは更に酷くなり、私は家族から距離を取る事にした。
私の事は兎も角、亡くなった友人への侮辱だけは許せない!
私へと振り上げた杖を拳でへし折ってやった時の無様な姿。
殺気を抑える事なく拳を向ける私が怖くなったのだろう。
失禁、脱糞とこれ以上ない程の恥をさらし、相手にしているのが何時もイジメていた、出来の悪い孫では無く、何時でも自分を殺せる格上の存在だと初めて気付いた様だ。
そのまま気絶した祖母を無視して、私は家を出る事を宣言し、ここ大洗の高校へ転校してきたのだ。
持って来たのは着替え等の身の回りの物と亡くなった唯一の友人からのプレゼント。
不器用なあの娘が指に針を刺しながら作ってくれたクマのマスコットだけだ。
家具や家電は必要になる度に買い足せば良い。
始めての一人暮らしは快適だ。
煩わしい祖母が居ないだけで、こんなに楽になるなんて……
家事の手間など、アレの相手に比べれば無いも同然だった。
偶に、姉の寂しそうな電話もあるが、私はもう実家に帰る事は無いだろう。
逆に姉がこちらに来れば良いのだ。大学だって東京に限らなくても良いと思う。
良い子の姉には無理かも知れないが。
こちらでは仲の良い親友が二人も出来た。普通に話せる友人の数も大幅に増えた。
一応実家はそれなりの資産家なのでハイエナみたいな連中が近付いて来るがスグ離れる。
私が実家を継ぐ見込みは無いからね。
それでも友人として付き合おうとしてくれた人も居たのに……あの婆め!
転校して直ぐ、私が借りた古めのマンションの近くにあったバイク屋さん。木乃の影響でバイクに興味があった私が覘いてみた事で出会ったのが”
彼女はこのバイク屋さんの一人娘でミリタリーも趣味だとか、木乃が居たら話が弾むのだろうな? そう思わせる少女だ。
「ミホ殿もバイクに興味があるでありますか?」
特徴的な喋り方は木乃とは重ならない。その方が良い、他人と重ねて見るのは木乃にも
そのままバイクの話で盛り上がった。
私がバイクを買うなら、この店にしよう。そう思える良い店だった。
ある日の事だった、私が狐憑き呼ばわりされる原因となった、幽霊としか思えない存在がクラスメイトの”佐緒里さん”に近付いて来た。
思わず” 破ぁ!! ”ってしてしまったのだが、本人も悪寒がしていたとか、友人の
誰にも信じてもらえずにいた私にとって、それがどれだけ救いになっただろうか? これを信じて聞いてくれたのは亡くなった木乃だけだったから……
木乃は「じゃあ、ミホに聞けば幽霊が居る場所わかるんだ? 見つけたら教えてね?」って笑ってた。
「危ないよ?」
そう言う私に「うん、だから教えてくれた場所には絶対行かない!」って真剣な顔で答えた。
絶対を強調するホラー嫌いの友人に思わず笑うと、木乃は笑って、こう言った。
「大体、ゲームならともかく現実で危険に近づいてどーすんの。そーゆーのって危険を避ける為の力じゃないの?」
「ミホに便利な力があるとしても、それを態々使う必要なんて無いんだからね? まあ、私にはミホの言葉の真偽はわかんないけど……ミホは冗談なら、冗談だって言うもんね」
笑顔でそう締めくくった、木乃の言葉は救いだった。
そして今、木乃の様に私を信じてくれる友人が二人も居る。私はそのことが嬉しくてならない。
私にとって、二人が親友と呼べる存在になるまで、それほど時間はかからなかった。
私達はこの三人で集まり、遊ぶ様になった。
3月に入ってから、
どうせならバイクもお揃いにする? って話も出たけど、それはどうだろう……背の高さも好みも違うのに、無理にお揃いにするのは問題が出る可能性が高いと思う。そう指摘すると
ついでに実家をオススメするのも忘れない
結局、一緒に免許を取る事に……あまり乗り気に見えなかった佐緒里さんも「二人が免許を取れば、二人がバイクで出かける様になるでしょぉ、置いてけぼりは嫌だよ」との事。
学年が変わった頃には、私達全員が普通二輪免許を所持していた。
幸いクラスは一緒だった。私達は、また一年仲良し三人組を続けられる。
バイクは
買ったのはホンダのGB250クラブマン。グリーンとアイボリーのツートンカラー、オーソドックスな黒いシート。一目ぼれしたバイクだった。
一応CB400FOURを見せてもらったけど、私には大きい。私よりもダイブ小さな木乃が乗りたがっていたけど、あの娘には大きすぎるだろうと思う。
『私だって、もっと伸びるもん! おっきくなるんだからね!』って幻聴が聞こえた気がした。
「やっぱり4フォアは私には大きいですね。クラブマンにします」
気に入ったバイクに乗るのが一番だよ、そんな木乃の口癖を思い出す。
4フォア、4フォアって五月蠅いクセに一番のお気に入りは小さなモンキーで、写真を見たが似合っていた。サイズ感もぴったりで……これを言えば拗ねるんだろうな。
思わず思い出し笑い。
あの娘は思い出になり、心が疼く事も無い。
寂しさを感じない訳ではないが。
「おお、ミホ殿はクラブマンですか。ヤマハ党のわたしとしては真逆を選びました!」
そう言って、
「少々脚付きが悪いですが、ソコは気合であります」
とはいえ、ローダウンしたり、ハンドル周りを交換したり、既にカスタムを初めているようだ。
「でも、もう弄り始めてるよね? ローダウンとか」
「バレたでありますか……」
二人で顔を見合わせ笑い合う。
佐緒里さんは何を選ぶんだろうか? この後は二人で色々想像して話が弾んだ。
今日は皆でツーリングだ。慣らしがてら大洗を巡ってみようって企画だ。
どんなバイクを選んだのかは集まるまでのお楽しみ
待ち合わせ場所に付くと佐緒里さんは既に到着していた。後ろにあるのはカワサキ製バリオスⅡのエボニーカラー、250㏄のバイクだ。意外なチョイス……
「ヤッホー、待ってたよ~、ミポリンはクラブマンでユカリンがセロー? 大体予想の範囲だね~」
「貴女が予想外過ぎなのでありますよ……てっきりビックスクーターでも選んだのではと考えておりました」
「意外性の女、さおりん? いいかもね」
佐緒里さんが笑う。
「ただ、黒系の色は夏が地獄でありますが……大丈夫でありますか?」
「ありゃ、そこは考えてなかったなぁ。まあ、頑張るしかないね~」
フルフェイスヘルメットが2人でオフロードヘルメットが1人。
色はそれぞれ白が私で、薄いグレーが佐緒里さん、
バイク用のショルダーバックには木乃から貰ったマスコットを内側に入れて落とさない様に取り付けてある。
これ、すっかりお守りだね。コレがあると木乃が見守ってくれる気がするのだ。
全員揃ったのだし、ツーリングに行こう。
三人で大洗の町を走り出す、今日は何所に行こうか?
こうして私達の行動範囲はバイクのおかげで飛躍的に広がり遊びに行く場所も増えた。
時が流れ、秋も終わりが近づいた頃の事だ。
「ミポリンさぁ、こっちに越して来てから近場しか観光してないでしょ? 今度、長距離ツーリングで周ってみない?」
佐緒里さんの提案に
「二人が付き合ってくれるなら、喜んで行くけど何処行くの?」
「オカルトパワー持ちなミポリンが一緒なら、そーゆーとこ行ってみたいかも?」
おとがいに指を当てながら考え込む佐緒里さん。
「わざわざ、オカルトスポットと称した廃墟巡りならパスしたいでありますが……わたしは見えるだけでありますので」
「ああ、そんな如何わしい所じゃなくって……手接神社の河童とか岩間山の十三天狗とか茨城には、その手の伝説があるからさぁ」
なるほど、観光地の中でオカルト系の伝説を持つ場所を案内したいと言う事か?
「そういうのって、万が一、本物なら私の手には負えないと思うけど……」
わざわざ危険に近づく必要は無いのだが……
「でも本物って出るのかな? 伝説って大げさだったり、尾ひれが付いたりしてない?」
「本物だったとしても、大昔のお話だし、名残りみたいなのが見つかれば御の字かなって思うんだけど」
それもそうか、観光地だもんね。危険があるなら、すでに被害が出てるのか。
「なら、行くだけ行って見る? 何もなくて当然、観光のつもりで行くなら問題ないよ」
行くか? 行こう! そういう事に成った。
そして休日、皆と待ち合わせてお出かけだ。
バイクを見ると、つい思ってしまう事がある。木乃と一緒にツーリングできれば、どんなに楽しめたのかと。
新しい景色を見る度に、満面の笑みで「ミホ凄いね!」って子供みたいにハシャグ木乃を思い出す。
悪霊らしきモノは見えるのに、木乃は顔を見せてくれない。成仏しちゃったのかな? それなら良いのだけど……
いや、木乃が現世で迷ってるなんてありえないのか。
木乃だけなら迷子になっても可笑しくないけど、おじいさんが一緒だものね。
「あの子、コート着てる。バイクだけど危なくないのかな?」
「あれは軍でも使われていたディスパッチライダースコートでありますな」
「ふーん、あっ! 裾がズボンみたいになってる!」
「ボタンで留められるようになってるでありますよ」
友人達の言葉に対向車線に目をやると小さなバイクに乗った子が信号待ちをしていた。
小柄な子だけど、男女どちらか判断が付かない、ジェットヘルメットとゴーグルで顔は見えない。体形もコートの所為もあって良く見えないし……
何故か既視感を感じるのだが?
「ミポリーン! 信号かわるよ~!」
友人に呼ばれ、私は頭を一振りするとクラッチを繋ぎバイクを発車させた。
ベィーン!
小さなバイクがすれ違う、港の方から来たみたいだし他県の人かな? バックミラーで確認すると白の富士山ナンバーだった。あのサイズで125㏄以上なのか、その時私が思ったのはそれだけだった。
友人とワイワイ観光地を巡る旅。こういうのは修学旅行以来だ、家族旅行と称する私の元家族との旅よりも楽しい。あんなのと比べたら失礼かも?
徒歩で大洗の商店街を巡るだけでも十分に楽しいが、バイクで遠出をするのも気分が変わって大変よろしい。
私はご機嫌な気分で観光ツーリングを楽しめそうだと考えていた。
「この石岡市には色々と逸話があってね~」
佐緒里さんの解説を聞きながら、バイクで走る。インカムを付けてスマホと連動させれば、走っている最中でも会話ができる、風なんかのノイズは多少あるが問題ないレベルで聞き取れた。
「天狗や竜、茨木童子なんてメジャー所の鬼も住んでいたんだって。茨木童子は親分の酒呑童子がヤラレタって聞いて逃げたらしいけど」
笑いを含んだ会話。キノのおじいちゃんにバイクでのツーリングの話は聞いてたけど、意思疎通には苦労してたみたいなのに、技術の進歩ってすごいなぁ……おっと、バイクを運転中なんだ油断は禁物、事故の元。
城址や古墳なんかのチョット変わった観光地を巡って、今は2時くらいかな?
「で此処が最後の目的地の十三塚北面薬師跡だよ」
此処を舞台にしたお話があるそうで、修行中の旅のお坊様が誰も帰ってこないから行くなと言われた此処に泊まると、夜中に猫が現れて「この寺には大きな人喰いの化け鼠が棲んでいる、退治したいので11匹の猫を連れてきてくれ」と言ったとか、お坊さんは夜の内に猫を11匹も連れて来ると、ネズミと猫達が戦いはじめて、夜明けには相打ちになったという。そこでお坊様は彼らを哀れみ、十三の塚を作って弔ったのだとか。
「まあ、全国各地に十三塚はあるみたいで色々伝承はあるみたい」
大抵は戦死者や落ち武者を弔うためらしい。
「ココみたいにお化けネズミ退治の伝承は珍しい方なのかな?」
確かにネズミとニャンコを弔ってますって言うのは聞かないな。
「天狗や竜はあちこちに言い伝えがあるから珍しい所を選んでみました」
佐緒里さんの趣味でもあるのかな? 猫好きだし。
なかなか風情はあると思うけど、石碑と案内板があるだけ、しかも霊園の敷地内じゃない。
「オカルトスポットは避けるはずでは? 幸いにして変なのは見えませんが」
「ごめんね~、でもやっぱり霊的な何かは無しか」
「まあ、そんなものだよねー、この辺は果樹園があってこの時期なら美味しい柿が食べれるんだけど」
おやつには調度良い時間かな? 確かに小腹は空いたかも?
「提案があるのであります」
佐緒里さんの希望に対して
「ん? なにかあるの?」
「実は母の実家が果樹園を経営しておりまして。僭越ではありますが遊びに行くと言ってあるのでありますよ」
笑いを含んだいたずらっぽい顔。してやったりって感じだ、
「ほんとっ! じゃあ、美味しい柿を食べられる?」
「まあ、お腹的にもカロリー的にも食べ放題とはいかないでありますが」
確かに、それはね……美味しいからって食べ過ぎたら、あとがコワイ。
「それは確かに、じゃあ一人一個かな?」
「それはチョット寂しいので一人二個用意してくれているハズであります」
「やった! じゃ、早速行こうよ!」
「では、わたしに着いて来て欲しいのであります」
「アレ? 朝見たバイクじゃない?」
「で、ありますな」
そういえば信号待ちですれ違ったバイクだ。コートが特徴的で遠くからでも解った。ライダーさんが左手でピースサインを出すと小さく手を振ってくれた。これがヤエーって奴ですね!?
私たちもピースサインを出してすれ違う。ヤエーってのはライダー同士が”ご安全に”って意味でする挨拶の一種で、ヤエーって名前は掲示板でYeahをYaehと書き間違ったのを面白がられて流行ったらしい。
しばらく走って目的地に到着。柿の美味しそうな匂いが漂っている。
「あれ? おばあちゃん、何時もなら並んでる柿がないでありますよ?」
何時もなら店先に売り物の柿が並んでいるそうだが、今は無い。
「
そういうお婆さんの側に段ボールが沢山。
「山梨に送って欲しいってさ、今日の売り上げは大きいねぇ」
ニコニコなお婆さん。なんでも、その場で買った柿を美味しい美味しいって5個も食べて、お土産にって段ボール6つ分も購入してくれたらしい。生産者としては嬉しいんだろうな、そう思える良い笑顔だ。
「チャント
果物ナイフで切り分けてくれる。
「有難うございます」
お礼を言って口に運ぶと確かに甘い! 美味しい! 夢中で食べているとお爺さんがお茶を運んできてくれた。
慌てて会釈。お礼を言いたいが口の中に柿がある。
「ありがとうね、美味しそうに食べてくれて。儂らにはそれが一番嬉しいよ」
お爺さんもニコニコだ。
「さっきの娘さんも美味しそうに食べてくれて、まだ食べたい、でも……なんて迷ってくれて、今日は良い日だね」
長居しすぎた、秋の日没は早い、急がないと日が暮れる。まだ初心者の域を超えていない私達が暗い山道を走るのは危ないかも知れない。
「祖父がもう遅いから泊っていけって言ってくれてるであります」
「迷惑じゃないかな?」
「祖父にしても暗い山道を走らせて事故を起こす方が嫌なのです。ですから泊っていきませんか? 明日も休みでありますし……」
そう言われれば確かにそうかも?
「お言葉に甘えちゃう?」
「そうしようか?」
「では祖父に伝えて来るでありますよ!」
こうして、私達はお泊りすることに。
心のこもった夕食を御馳走になり、歯ブラシなんかも用意していただいて……なんか恐縮する。
その夜の事だ。
私は不思議な夢を見ていた。中央で金色のネズミが苦しんでいる。その周りで猫が12匹、困ったように右往左往している。猫達は私に気付くと助けを求めるような声で鳴くのだ……
思わず飛び起きていた。気が付くと、他の二人も起きている。
「夢、見てた? 猫の夢」
佐緒里さんの言葉に頷く。
「変な夢、妙に気になるんだけど……」
この言葉にも二人で頷く。そもそも三人共が同じ夢を見るって普通じゃない。
「十三塚でありますか……」
確かにネズミと猫が12匹、あの場所の事だろうとは思う。
「正直に言うね。あたしは凄く気になってる」
佐緒里さんの気持ちは分かる。
「危険な気もする。でも行かないと、もっと悪くなる気もするんだ」
どうする? 佐緒里さんの目が問いかけている。
「わたしは正直行きたくありません」
これは
「けど、逃げても逃げきれない気がするのであります。逆に言うと何とかするなら今しかない気が……」
なるほど。
「じゃあ私はね、行くべきだと思ってる。正直、イヤな予感はしている。でも逃げると取り返しがつかない事になる気がする」
三人で目を合わす。
行くか? 行こう! そういう事に成った。
暫らく、バイクを押して
「何、これ?」
目の前の光景に絶句する。離れた位置にバイクを止め、そっと近づいた十三塚。そこには異様な光景が広がっていた。
十三塚の上で光る魔法陣? 六芒星で良かったっけ? ソコから光が塚に降りそそぎ、良くないモノを無理やり起こそうとしている気がする。
「おやおや、ちょうど良く生贄が増えましたぞ」
カソックを着た男。聖職者の装いのハズなのに、気持ちが悪い。アレには死者の恨みが染みついている。
後ろには讃美歌を歌いながら干からびていく女性達。
「それは良い、神の御加護だ」
あれは天使? でも、なんだか禍々しい。アレは本当に天使か?
「逃げられては敵わない。ちょうど、異界も出来そうだ」
天使? が、そう呟くと周囲の景色が変わった。
「閉じ込められちゃった? やっぱ危険だったねぇ~」
何時もの調子で喋ろうとしている佐緒里さん。でもコメカミからは汗が流れている。そりゃコワイよね。
「逃げたくても、逃げ道が無い感じでありますか。絶対絶命でありますかな?」
こちらも強がる
「 破ぁ!! 」
何時もの力を天使? に当てて見るが。
「効かないか……」
「我ら天使に、しかもプリンシパリティたる我にハマが利くはずもなし! とは言え、これは意外な……贄とするより母体とするべきか?」
なんか嫌な汗が出て来た……直感が言っている、アレは私に”女に対する最低最悪の行為”をしようとしている。
「なんとか二人だけでも逃がせないかな?」
小声で呟く。どうやら獲物としてのか価値が一番高いのは私らしい……なら囮としての価値も私が一番高い筈。
「ダメだからね」
「で、ありますな」
二人に袖を掴まれた。そっか私の考えはお見通しか……じゃあどうする?
私の無責任な霊感さんとやらは此処からどうやって逆転する気だろう? 今なら何とかなるってのはどうなったの?
直後の事だ、頭の上からエンジン音が聞こえる。上を見上げると見覚えのある小さなバイクが五芒星を描きながら走っていた。空の上なのに!?
五芒星を描くバイクは六芒星を踏みつぶし、ついには消し去ってしまう。
「これは一体!? オノレ、邪魔建てするか!!」
天使の振りした異形が怒り狂う。放たれるプレッシャーが私達を襲った。
私に走り寄るカソックの男。その手は私に伸ばされて……
「せめて、この娘だけでも」
ドン!
大きな鈍い音、気付けばカソックの男が吹き飛んでいた。
「汚い手でミホに触るな!」
怒りを滲ませた声。この声は? でも、そんなハズは……
バイクから飛び降り、男を蹴り飛ばしたその姿は……
「オノレ正義の敵めが!」
異形から放たれた攻撃。多分衝撃波かな? ソレを軽々とかわして。
「自己紹介かい?」
異形の攻撃を何とも思っていない、驚異だと感じていない。でも私を庇う、その背中に見覚えが……
「オノレ! オノレ~!」
全体に広がる衝撃波。マズイ、二人が!?
「リク、護って」
どこからか飛び出してきた白い大きな犬が二人を庇う。気付くと上空に居たバイクも二人を庇っている。
「ねえキノ、こういう仕事は向いてないんだけど」
「ごめんよエミール。緊急事態だからガマンして」
空を走るバイクだ喋っても不思議じゃない。けど、だけど!
今、バイクが呼んだ名前は!? 私は足から力が抜けてよろめいた。
「まったく、こうならない様にって離れたのにさ……」
いつの間にか私を抱き支えながら愚痴る声に懐かしさが?
「運命ってヤツは度し難いね。ミホ、大丈夫?」
ありえないハズ、でも私を気遣う、この声は……
「木乃?」
まさか、と思いながらも確信する、髪は短くなってるし言葉使いも違う、服装も男装している。でも、此処に居るのは陽だまりの様に笑う、私の友人。亡くなったハズの木乃だった。
「うん、久しぶり。積もる話は後にして、先ずアレを倒して来るね」
そう軽く言って私を座らせると、木乃はあのバケモノに向かって行く。
なんで木乃がとか、危ないから逃げてとか、どうして此処にとか、色々な感情が混ざって言葉がでない。
そんな私に木乃が振り向く。
「大丈夫、ボク結構強いから」
その顔は昔と同じ、陽だまりを思い起こさせる笑顔だった。
「さて、ボクの友人が世話になったみたいじゃないか?」
なんの気負いもなく木乃はソコに佇んでいる。
「せっかくセツニキ先生の嫁と先輩達が綺麗に掃除したのに……お前ら羽虫は何所にでも湧くね」
呆れたような声、あんなバケモノを前にして自然体。
「貴様ごときが私を馬鹿にするなぁ!?」
天使プリンシパリティを名乗るバケモノ、空気が震えているとすら感じる圧力を木乃は意にも介していない。
「御託は良いから、かかって来いよ。雑魚」
木乃の侮辱に耐えられなかったのか、大技を使おうとするバケモノ。
「隙をつかないとは言ってないけどね」
いつの間にか木乃は左手で銃を抜いていて。気付いた時には銃声が響き……バケモノの額には穴が開いていた。
「馬鹿……なっ……」
「敵との力の差も測れないからそうなる。一目散に逃げるべきだったね」
ボクの弾丸からは逃げられないけど……木乃が小さく呟いた。
気付けば世界は元に戻っている。
逃げようとしてバイクに踏まれている、無様なカソックの男。偽装で神父の振りでもしてたのか? 罰当たりめ!
そして、亡くなっている数名の女性達。手を合わせて御冥福を祈っておく。
「どうして木乃が来たの?」
「プレゼントしたマスコット、大事に持ち歩いてくれてるでしょ? それ良い目印になるんだよ」
朝、すれ違った時に気付いて様子を見ていたそうだ。直接じゃなく霊的にって事だけど私には良く分からない。
木乃がどこかに電話すると、数分後に白い鳥が飛んできた。
「夜に鳥?」
「術者からの連絡」
木乃の手に収まると手紙になった。
「後始末には暫くかかるか、今日はもう帰った方が良い、聞きたいことがあるなら此処においで」
その晩はそのまま別れた。翌日、ある神社で待ち合せをしている。大洗の浅間神社だ。
巫女さんに案内されて社務所に通された。
「此処なら外に話が漏れる事はないよ」
「ボクとしては、こちらに関わる事はオススメしない」
「そんな力、なかった事にして普通に暮らした方が良いんだけどね」
木乃はそう言うが、そんな事できるのかな?
「封印の為の術ってあるんだよ? ボクには使えないけど、手配は出来る」
「そして、折角会えた木乃の事も忘れるの?」
「やっぱバレちゃうか……仕方ないかもね。ボクがミホに勝てたことないし」
木乃なりの思いやりではあるんだろう、でも何時バケモノに襲われるかも知れない世界で無防備に暮らすって出来るものか。
しかも、三人居る。才能の差はあれど悪魔と言うバケモノにとって私達三人は質の良い餌になる。
そんな事を聞いて備えずにいられるものか。ましてや、私と違って二人には守るべき家族も居るんだ!
「わかった、そっちの二人も同じで良い?」
「……仕方ないか。色々キツイ話もあるから心して聞いて」
そう言って木乃が話してくれたのは、世界の裏側の話。
悪魔の事、メシア教の悪行の事、木乃が現在所属しているガイア連合の事。木乃が死んだことにしていた訳。
言いたい事もあるが、今決めなきゃいけないのは、今後どうするかだ。私達や守りたい人が無事に暮らせる方法だ。
「ボクから提案できる、もう一つの方法は君達もガイア連合の一員になる事」
「ガイア連合に所属するならボクが推薦出来る。三人共、普通に才能あるし、ここで悪魔退治の仕事をしながら鍛える」
楽な道じゃないし、死ぬかも知れないよ? そう念を押されたが、心は既に決まっている。
「「「ガイア連合に所属させてください」」」
私達三人の声が揃った。
たった一人の友人と友人多数の中の親友二人。言葉は違っても想いは等価なのかも知れません。
西隅ミホ(にしずみ みほ)
名家産まれのMさん
実家は折角、先祖返りが産まれたのに気持ち悪いと虐待する霊能名家失格のクズがトップ
半覚醒状態で不完全ながらもハマを使用できた逸材。Rの上のSR、この時点で覚醒者Lv1→2
キノから贈られたマスコットはガイア所属の術者によって守護の効果を持つように加工されている
転生者の血が材料に含まれるので、それなりに強力なお守りになった。
建部佐緒里(たけべ さおり)
野生の霊能者。上振れ気味のR、低レベルの半覚醒だったが今回の事件で覚醒者Lv1
安芸山縁(あきやま ゆかり)
野生の霊能者。上振れ気味のR、半覚醒で霊視に才能有りだった。今回の事件で覚醒者Lv1
大洗の浅間神社。コノハナサクヤヒメのチェック通過済み
梅昆布ネキの本拠かも知れないし、違うかも知れない。どちらにしても影響力は有りそう
茨城を舞台にする気がある作者さま、この3人娘、現地人としては才能あるんで良かったら使ってやってください
梅昆布ネキ
Lilyala様作【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録 64話から登場(63話では掲示板の名無し)
キノ
1話の後、東へ進んで支笏湖を堪能した後、苫小牧からフェリーで大洗に到着した
ちなみに3人娘が感じていた今ならと言う予感は「キノが介入できる今なら」って意味
4フォア
CB400FOURの略称