今回は名無しのレイ様作【カオ転三次】故郷防衛を頑張る俺たち と思いっきりクロスしています
クロス系の話が嫌いな人が居たらゴメンナサイ
自衛隊ニキの馬鹿野郎!
べーン ベン ベン ベン!
古い、小型バイクがエンジン音を響かせて南下していく。
「今年の旅は中止かなぁ? とんだサプライズだ」
『つい先月旅に出たのに……もっと走りたいよ』
キノの呟きにエミールが文句を言う。勿論テレパシーでだが。まだ終末は来ていない、2001年は春の頃。
今年は北海道で桜を待ち受ける気だったのだが、自衛隊ニキがヤラカシテ居た事が発覚した。
陸上自衛隊陸将・五島 公夫とショタおじが話し合いをする事に決まったと聞けば、一旦帰って情報収集しなきゃってなるのは当然というか必然と言うか……
事態がどれほどなのか? 時間はどれほどかかるのか? 全く不明な状態で一旦【トラポート】で帰還するのも、問題が起こる可能性がある。場合によっては外交じみた会合に出席しなきゃいけないだろうし、とりあえず素直に帰還中だ。
キノは今年も北海道へツーリングへ行き、ゆっくり観光を楽しむつもりだった。
日本円が役に立つのも何時までか? 手持ちに余裕はあるし、ホテルや旅館に連泊しながらの旅は一般に想像するバイク旅とは違うだろう。
でも苦労したい訳では無し。キノは使えるものは使って、快適にバイク旅を満喫する気だった。
幸い、行きは敦賀からフェリーで北海道へ移動することにして。山梨、長野、岐阜に滋賀、福井とトラブルも無く移動できた。
今回は無理だったが、長期旅行時のキノは時折、支部や派出所に長期滞在していると偽装して本部でレベル上げをしている。
おかげで冬以外も緩やかではあるがレベルは上昇していた。キノは趣味も自己鍛錬も疎かにする気はない。
事情を知ると努力家なのだが、世間一般から見ると、勉強もせず、遊びまわる道楽娘でしか無いのは仕方ない。
お節介な人間が湧く事も有るがキノが気にする謂れもないので雑音として無視する事にしている。
エミールの【オート禹歩】は絶好調だ。
今回の北海道ツーリングでは道央を呼ばれる地域を優先して走ってみた。札幌、富良野、旭川、観光地として有名なのはこの辺りだろうか?
短期間ではあるが、それなりに霊道を整えたと思う。
今回は小樽からフェリーで戻る事にする。前回は苫小牧から大洗への航路を使った。高速道路で東京市内をパスするルートは楽では有るが、コレも何時まで使えるか分からない。
そしてフェリーに乗った所で、話し合いが円満に終わり、緩やかな協力体制を取る事に決まったとスレで報告されたのだ。
部長であるジョゼニキがスレ立てをして実銃愛好部が愚痴を言い合う場所を速攻で作ってくれたのはGJと褒めたい所だ。
一般的な黒札の不満は危険人物に捕まってるなら報告しろ! 俺らを巻き込むな! なのに対して、実銃愛好部の人間の不満は、逃げられないなら、もっと早く合流しろ。余計な苦労したじゃねーか! である。外のスレで言おうモノなら揉め事になりかねない。いち早く、隔離スレでストレスを吐き出させたのは良い判断だったと思う。
急ぐ必要は無くなったのだが、一度は自分で確認しておこう、そう思ったので山梨への帰還予定はそのままだ。
新潟港へ到着してフェリーを降りる。それからは寄り道せずに帰る気だったのだが、どうせ通り道だし……そんな気まぐれで奮闘する仲間の陣中見舞いをする気になった。キノは現在、国道17号線を魚沼に向かって走っている。
やはりキノが走る、趣味以外のもう一つの理由を考えれば一般道を優先したい、高速道路は残れば便利だろうが終末後に長距離を安全に走れるかは怪しい。
田舎ニキ*1にアポはとっていないが、居ないなら居ないで問題ない。配下の代表と顔を繋いでおくだけでも構わない。
なにより、キノとエミールが此処を走ったという事実に意味があった。
「まあ、これの意味も分からないボンクラが幹部って事もないだろうし……」
弱いとはいえタダで霊道が出来るのだから助かる筈。
キノとしては仕事にしたくないので望まれ過ぎるのも良し悪しではある。あくまで趣味のついでで行いたい。
詳しくは知らないが、これから尋ねる田舎ニキが立ち上げたばかりの小さな組織の幹部は、誠実な地元の名家という当たり枠であり、レベル上限は兎も角、デモニカを与えたそうなので戦力的にも問題は無いだろう。
まあ、人柄は判らないが黒札の仲間が信用している以上、問題は無いと思うのだが……
「行ってみなきゃ判らないか」
行き当たりバッタリ。それで良い、それが良い……キノは気まぐれな己の旅を楽しんで居る。
田舎ニキが守護する地
「魚沼か……米どころで有名だけど」
今の所はなんだよね、とキノは考えた。
これから終末が来る。何時来るのかは分からないが近い将来必ず。
今年も田んぼの準備が始まる。先ずは代かきから、トラクターで田の土を細かく砕き、柔らかくする。この時、地中のガス抜きも行って、田んぼ全体に均等に水が行きわたるように平らに整える。キノには聞きかじりの知識でしかないが並々ならぬ苦労と情熱を持って米農家として働いているのだろう。消費するしか出来ないキノとしては素直に尊敬するところだ。
「今年もがんばってね」
これから大仕事を始める田畑を思わず労いたくなったキノは小声で呟いた。
春の希望に満ちた光景。しかし、本当に報われるのか? 何時まで見れるのか? そう知っていれば、見え方も変わる。
当たり前の日常は貴重なのだ。尊いのだ。
何時失われるか分からぬ薄氷の上に成り立つ日常、一般人は知らなくても良かったハズの事実。
失わせてたまるか! と抵抗したのが当時は未覚醒だった”田舎ニキ”だ。この話を聞いてキノは呆れると同時に感嘆した。
そして”ショタおじ”に依る、鬼畜で情け容赦のない修行で覚醒し、資金を集め、借金をしてでも故郷を守るべく奮闘している。
「こんな景色や暮らしを守りたいのかな?」
キノは故郷を失っている。ある意味では自分から捨てている、望んで捨てた訳ではないのだが……
だからかキノは故郷を守ろうと奮闘する彼を応援したくもあった。
そして今、キノ自身もこの景色が気にいった。予定通り、あの荷物を渡すのは此処にしよう。丁度キノにも欲しいものがある事だし。
「さて、行こうか」
キノはエミールに声を掛けると目的地へ走り出す。
『公民館を仮本拠にしてるんだっけ?』
「そう聞いてるね」
エミールの確認に答えを返し、キノは田舎道をゆっくり走って行った。
絶滅危惧種”誠実な名家”九重家
「いらっしゃませ。失礼ですが、お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか」
「初めましてだね。ボクはキノ、キノネキと呼んで欲しいな。黒札の一人と言えばわかるかい?」
始めましての挨拶で本名を名乗らないのは失礼な気もするが、名家を名乗る人間に隙は見せたくない。
本名を知られると呪術の通りが良くなる等の実害もあるし、黒札としてウカツに信用していると思わせる挨拶は、他の黒札の迷惑にもなりえる。
自己防衛の為だから諦めて欲しいとキノは思った。
「黒札様ですか? 私はこの辺りのまとめ役をしています”九重 静”*2と申します」
こちらが失礼な態度でも、相手の態度は丁寧……良心が痛む。謝っておこう。
「ごめんね、本名を名乗ると色々不都合があってね……貴女を軽んじている訳じゃないんだ」
言い訳だけど本当の事、追い詰められてるのは分かるけど、キノが黒札と知った途端の手のひら返しや全力媚売りには辟易しているのだ。
ワンチャンあるかもと魅了の呪詛を試したり、名前から住所を特定して突撃してきたり……先達の苦労もあって、黒札は綽名で名乗る事が多い。
この人は田舎ニキが身内と認めた人間だから地方の名家でも会う気になった。
既に黒札の協力を得ているからかも知れないが、この人は落ち着いていて、無理強いをしてくる気配も無く、ホントに名家か? と疑いたくなる。
「ところで御用の程は? あいにく凍矢さまは外出中ですが……」
うん、誠実な名家ってマダいたんだね……キノはちょっと感動する。
「名代は貴女で良いんだよね? かえって好都合かな」
「と、おっしゃいますと?」
「先にボクの望みを言っておくね。ボクはこの先”何が有っても”バイクで旅を続けたい、だからガソリンの安定供給先を確保しておきたいんだ」
キノが此処、魚沼派出所に望むのはそれだけだ。他に理由は無いし、変に勘繰られるのは嫌だから、速攻で目的をぶっちゃける。
「だから、コレは先行投資。腹芸は嫌いだし出来ないから単刀直入に言っておくよ」
そう言いながらキノがトランクから取り出したのは旧式のガイア銃、拳銃型の物が12丁。
「これはボクら実銃愛好部で使用されなくなったお古だ。ボクらは現在実銃を使用していてね、使われなくなった物を集めて来た」
支援したい人間が居る部員は、支援物資の一つとして既に渡しているが、支援先を持たない部員もそれなりに居る。キノはそういった人間から不用品として買い取っていた。
買い叩いたりはしてないが、ガソリン購入の為に地方にテコ入れしたいと言うと快く譲ってくれる人が多かった。
「ボクらには、もう不要な品だけど君らには有用だろう? 役立ててくれると嬉しい」
そうして、魚沼を守ってくれて、ガソリンを売って貰えればキノにとっても利益になる。
「凍矢さまが居ない方が好都合と言うのは?」
「ボクは直接の面識はないけど、色々話は聞いてる。彼は律儀すぎる気がするんだ、過剰に恩を意識されても困る」
これは取引だからね。キノはそう付け加えた。
「それに、君の立場も固めておきたい。黒札と取引をして援助を引き出した、コレは実績になると思う」
誠実な名家は貴重だ、田舎ニキの為にも失脚してほしくない。
「何故、私にそこまで……」
静は困惑する。自分は普通に礼儀をはらっただけだ、強大な能力者には当然の礼儀だと思うのだが……
「当たり前が出来ない名家って多いんだよ。見た目だけで侮ってきて、力を見せると手のひら返し。そんな人間が多くてね」
愚痴であり情報提供でもある。一般的な俺らの場合、変に媚びると引くか怒るだけだ。メンタルは一般人なのだし……例外はいるけど。
「普通にビジネス的な対応も出来ない、自称名家も多いんだ」
だから普通に取引しようよ……キノの切なる願いである。
「君は誠実で実直な人柄に見える。そんな君に失脚されるとボクも困る。それだけだよ」
ホント、君みたいな人が名家のスタンダードだったら良かったのに……キノの顔色を見て察してくれたようだ。
それだけでキノの好感度は爆上がりである。
既に黒札が腰を据えた地方は良い。だが、其処を外れると、途端に好き勝手に要求する人間が増える。
最低限のビジネスマナーくらいは守って欲しい。そんなことをキノみたいな小娘に言われてしまうのが一般的な地方の名家なのだ。
「さて、次は商売の話だ。ボクとしては先に言った通りガソリンが欲しい、魚沼神社から石油が出たらしいね。そこから精製したガソリン、ボクはそれが欲しい。と言っても、個人的にだから必要な量は多くないんだけどね……」
苦笑しながらキノは続ける。
「だからって油断してると根こそぎ他所に奪われそうで怖くてさ、優先販売権みたいな取り決めをしておきたい」
キノがバイクで消費する分は多寡が知れている。少なくとも大型車やロボとは比べ物にならない位には細やかだ。
「ロボ部なんかが唾をつける前に、必要な分は確保しておきたいんだ」
そんな訳で契約書を作成する事になった。商業規模としては大きくないが、黒札相手でマッカ払い。少しは功績の足しになるのではないだろうか?
猫の悪戯(未遂)
ミイは草むらから様子を窺っていた。
ミイはネコマタである。昔、ミイミイ鳴いている所を保護され無事に育った。戦後、それなりに年を取り、ソロソロ寿命かな? って所で飼い主が殺された。霊能名家のお家騒動に巻き込まれたのだ。
意地でも生き残って仕返ししてやる! そう思って生き足掻いていたら、尻尾が二股に分かれていた……その時には、既に仲間割れで敵は死んでいたのだが。
だから、ミイは霊能名家とか言う存在が好きじゃない。
ココ、魚沼の霊能名家は力を失い、後は消え去るのみだと思っていたのに、何の因果か当主が霊能に目覚め、盛り返す兆しがあるらしい。
ミイはソレが気に入らない、自分の力であれば直接滅ぼす事も出来るかも知れないが、積極的に人間を殺そうとは思わない。
でも悪人が蔓延るのも嫌だった。ココの霊能名家は公民館とか言う、公共の施設を占拠していると聞いた。
公共とは皆の物と言う意味だったはず。皆の物を独り占めにするのは悪い事である。だからミイは九重家と言う人間は悪いヤツだと思うのだ。
ミイは昔、飼い主と約束した。本当に悪いヤツ以外には噛みついたり引っ掻いたりしちゃダメなのだ。
だから、ミイが直々に確かめるのだ。悪いヤツなら噛みついてやる! ゴメンナサイするまで離してやらないのだ! ミイはそう固く決心しているのである。
そう、決意して隙を伺っていたら、後ろから声を掛けられた。
「君は何をしているのかな?」
ビクッ! ミイが後ろを取られた? 人間に? ウソだと思った。だから走って距離をとる。
これは逃走ではない、反撃の為の行動なのだ。
十分走って距離を取った、これで大丈夫! ミイは安全を確保して偵察を……
「なんで逃げるんだい? やましい事でもある?」
また真後ろから声がした!?
「ミ゛ャッ!!」
飛び上がって逃げる。木にも登って三次元移動、これなら人間は……
「やましい事が無いなら、お話しない?」
まだ後ろに居る!? なんで?? ミイはパニックになった。パニックになって逃げだした。ネコマタの自分があらゆる場所を足場に必死で逃げたのだ、流石に引き離せる筈だ。
「フウ、フウ、フウ……」
息が荒い、公民館から随分離れてしまった。これでは偵察出来ない……でも今すぐ戻るのはコワイ。
諦めるか……そう思って振り返ったら、小柄な少女が居た。
「やあ、随分逃げたね? 喉が渇いたでしょ? ネコマタだとお茶はマズイのかな、白湯の方が良い?」
少女の隠形が僅かに緩んでいる。態とかも知れないがミイにはどちらでも良い。漏れてる霊圧でもミイを殺すのに十分な実力者だと分かる。
ミイは自分が弱いとは思わない。でもボスの妖怪に勝てる程ではない……目の前の人間はボスより強い。逃げ道も無いし勝ち目も無い……ミイ死んじゃう?
「みゃぁぁぁぁ……」
ミイは力尽きて倒れた。
比較対象が悪かった
ポーチから水筒を出そうとしたら、ネコマタが気絶していた。
「あれ? ネコマタがこの位で気絶するの?」
キノは疑問に思うが、ショタおじの仲魔と低位の一般ネコマタを比較しちゃダメだろう。
キノは気配を察知するのが上手い。本霊からして生粋のハンターだ獲物の気配に気付けない筈が無い。
ただ、悪意はあまり感じないので、どうしようか迷った。なら素直に目的を聞いて見ようか? キノがそんな気紛れをおこしたのがミイの不幸だった。
どれだけ、ネコマタとして優秀な身体能力を誇ろうが、キノは高位の道士である。自由にやっていたら、そんな立場に居たって感じなのだが、未だ【神足通】には至らないとはいえ、神仙系統の術を使うなら、その道を進んでいるんじゃないかと思う。自分でも良く分かって無いが。
「ボクは霊能者としては外れ値も良いところだからなぁ」
先達の経験が自分の修行に活かせない。キノは先達の教えを参考には出来るが模倣は出来ない、これはキノの弱みであり強みでもある。創意工夫して自分なりの道を創るしかないのだから。
「ところで、この娘どうしよう?」
ネコマタがこんなにアッサリ気絶するのは予想外だ。ショタおじのクソ猫なら、こちらを嬲って遊ぶくらいはするし、騙して悪いがって揶揄って来るのに……
「ネコマタって実は、雑魚だった?」
メガテンシリーズでも序盤から中盤の仲魔って場合が多いはず。雑魚と言えば雑魚だがファンが多い悪魔でもある。ウッカリ雑魚呼ばわりすると集中砲火を喰らうだろう。愛が強すぎるネコマタニキに闇討ちされるかも知れないので注意しよう。
「個体差が大きい悪魔って言い直そう。ウッカリ雑魚なんて言ったらファンに殺される」
愛が強すぎる俺らも居るのだ。ピクシーやネコマタ、モー・ショボーなんかがファンが多い悪魔だろうか?
雪女郎にチュッチュされて一回死んだ伝説のお馬鹿もいると聞く。
キノには分からないが悪魔を性愛の対象として見ている俺らも居るのだ、業が深いとしか言いようがない。
キノの場合、性自認が行方不明と言う理由もあり理解できないが、悪魔をそういう対象としてみるのは普通なのかも知れない。だってミナミィネキが悪魔しょうかんを経営する程度には需要があるのだから。
「結界内に連れ込むのは問題だろうし、近くまで連れてって事情聴取で良いのかなぁ?」
キノにもミイにも不幸な接触だった。どちらかと言えばキノの方が悪いかも知れない。
ココのボスの実力は?
「眼が覚めましたか?」
ミイが眼を覚ました時に最初に見たのは、女性の顔だった。
ミイは、この娘の膝の上で丸くなっていた。今は猫モード、尻尾は二股だが自由に戦えるほどじゃない。疲れすぎて回復モードになっている様だ。
こんな状態、ミイが覚えているのは随分昔、飼い主の膝で丸くなっていた時だ。その頃のミイは普通の猫で喉をゴロゴロと鳴らしながら撫でられていた。懐かしい記憶……目の前の女性と飼い主の姿が重なる。そして、どこか懐かしい匂いもする?
「ミイはミイと言う、ネコマタだ。お前の名前は?」
「ミイさんですか? 私は静と申します」
お互いに自己紹介。ミイは静の両親や祖父母の名前を訪ねた。
聞き覚えがあった。
静の祖母は飼い主の娘だ、ミイは姉妹の様に思っていた。ならミイは、この娘の大伯母になる。
何の事はない、ミイの敵は無様に失敗し、飼い主の血筋は守られていたのだ。ではミイがするべき事は何だろう? この娘を守る……何から?
「なぜ、公民館を独り占めするんだ? それは悪い事じゃないのか?」
「えーと、ミイさんに分かり易く言うと、約束して借りているって言うのが良いんでしょうか?」
借りている……独り占めじゃないのか? なら九重家は悪くない。ミイの孫みたいなこの娘も悪くない?
じゃあ、悪い奴はいないのかな?
「そろそろ良いかい?」
空気を読んで黙っていたキノが話に割って入る。
一瞬ビクッってするもミイは耐える。こいつが敵ならミイは命がけで戦わないといけないのだ!
「様子を見てたって事は、今は敵対する気がないんでしょ? 目的は何だったのかな?」
「ミイはココの奴が悪い奴かどうか確かめに来た、ボスは……貴女か?」
一瞬、お前って言いそうになったが耐える。ミイの後ろには守るべき娘がいるのだ、怒らせると困る。
「ボクはキノ、旅人だ。此処のボスは別の人、今は留守だよ」
キノの答えにミイは迷う。この人ならボスとして問題ない、多分ミイの何倍も強い。ミイたち妖怪のボスよりも強いだろう……でも、この人はボスじゃない。なら静のボスは静を守れるのだろうか?
「じゃあ貴女に聞く。ココのボスはどの位強い? 静を守れる?」
「君が人間を気にするとは思わなかったな。理由はある?」
「静の祖母はミイの妹分だった。ミイは身内を見捨てる薄情モノじゃない!」
「なるほど……君は静さんの御先祖に飼われていたんだね? 質問に答えよう。田舎ニキは強いよ」
キノは断言する。そして、こう続けた。
「今、単純に強さを比べるならボクの方が強いかも知れない。でも彼は故郷を守るために必死だ、直ぐにボクを追い越しても不思議はない」
ちょっとヨイショかな? そうキノは思う。でも半分は本気だ、キノは趣味を楽しんでいる、それがモチベーションに繋がるから。
しかし、彼は故郷を守る事こそが目的でモチベーションなのだ。きっと一心不乱に戦い、強くなるだろう。
「今でも、ここの妖怪に後れを取る事は無いと思うよ」
素質は互角だ、なら戦いの経験と質が問題となる。彼には苦難が待っているんだろうな、何となくの予感。
噂に聞く彼の気質的にも、色々気苦労を背負いこみそうだ。ふらふらと遊びまわるキノよりも強くなる日も遠くはあるまい。
「なら良い、仲間の妖怪達がどう出るかは知らない。でもミイは誓う、ミイは静の味方をする」
実名を掲げての宣言。術者なら意味は分かるだろう、ミイは自分の存在をかけて誓ったのだ。
「じゃあ、今はお帰り。もし妖怪達に動きがあったら、此処のボスに伝えると良い。彼は人情家だから悪い様にはならないと思うよ」
「わかった、そうする。静、元気でね」
ミイは安心して帰ることにする。キノと言う人間はウソをつかない。必要が無い、そのくらいキノは強い。
ミイは一声鳴くと、妖怪の里へ帰って行った。
「ゑ……ミイさんってそんなに強かったんですか!?」
あの状態のミイでもレベル4*3だった。
それを知った静は絶句していた。
覚醒して間もない現地人にとっては命がけでも倒せるか分からない強敵だった。
知らなかったとはいえ呑気にナデナデできる存在じゃ無かったのだ……静は固まっている。
うん、これボクが悪いな。でも、どうしよう? キノは途方に暮れていた。
「弱ってるから大丈夫!」
そう保証したのはキノだ。暴れるなら蹴り一発で倒す自信はあったしウソじゃないんだが……
静さん、未だ固まってるんだけど。ホントどうしよう?
結局、田舎ニキが帰って来るまで静のフリーズは続いた。
「流石はミイの孫。肝が太い!」
一方そんなことを知らないミイは静を自慢に思っていた。
時間軸は 故郷防衛を頑張る俺たち12~15話の間に起こった出来事と想定しています
九重 静さんの一族の設定に手を加えてあります。名無しのレイ様、お許しください。筆がすべったんです。ついでに静さんに味方するネコマタが一匹生えました。これも予定外……
最後の方のキノのセリフ「単純に強さを比べるならボクの方が強い」の部分は自分でも書いてて違和感……
でも作中の時間軸だと、そうなるんですよ。後発の癖に何様だ? とセルフ突っ込みをしながら書いてます(苦笑