【カオ転三次】世界が終わるまでのバイク旅   作:山親父

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長くなり過ぎたので分割
次は後編だけど、迷ってる部分もあるんで、また時間が空くかも



キノちゃんアメリカへ行く(前編)

 三老と呼ばれる強者の一人

 

 さて、ボクは未だ嘗て味わった事が無い攻撃を喰らっている。ウソだな、この技は初めてだけど何回も転がされた相手だ。土、美味しい(ヤケ

 

「マダマダじゃのう! これでは深層は無理じゃぞ?」

 

 追撃を転がって躱して立ち上がる。立ち上がった先にも槍の攻撃、必死の足さばきで回避しつつ金の杯で牽制。

 うん、ボクの戦闘って先に敵を見つけて、先に敵を殺すのが最適なのだ。よーいドンで戦うと不利なのである……

 言い訳だ、自覚は有るけど。剣槍使いのグラ爺相手で、この間合いからよーいドンはキツイ(泣

 狙撃を狙うよりはチャンスがあるのがマタ泣ける。

 

 今回も、躱したハズの攻撃を喰らって転がされた。多分、呼吸を読まれてるなぁ……わかっていても避けられない。

 でも、何も考えず単純に撃つだけだと躱されて、ドスッである。

 今回は致命傷を避けてるだけ、マシなんだけどね。

 

「やっぱり強いね、グラ爺は。でもマダこれから!」

 諦めるには早い、チョット脇腹に穴が開いただけ。ボクはマダ戦える。

 

「ほう、ではコレはどうじゃな?」

 

 変幻自在の槍、こんなの躱すのは無理。だからカノンと金の杯に霊力を纏わせ、疑似的な銃剣として使う。カンだよりだけど、防げた。なら、そのまま撃て!

 

「銃弾を斬り払うってグラ爺、凄すぎない?」

 

 当たり前の様に剣で斬り払らわれた。なんか悔しい、ボクは相手の攻撃を必死で捌いてるのに、相手は微動だにせず銃弾を斬る。

 ボクも大概バケモノなのに、ここ星祭神社にはボク以上がイッパイいる。そんな人達に二回勝てってショタおじも無茶を言うよね? 深層がそれだけヤバイんだろうけどさ……

 

「単純な攻撃は無意味じゃからな」

 

 小細工をする時間もくれないのに……ただの愚痴だ、戦場で敵が手加減してくれないとか馬鹿が言うセリフだ。

 

「考えてる暇はないぞ! それそれ!」

 

 連続攻撃、通常攻撃が必殺なんだからシンドイのなんの……

 

「んにゃろ!」

 

 カノンでガンパリィ! 槍先を撃って攻撃をずらす。

 続けざまに金の杯で銃撃! 当たり前の様に躱される。あのお爺ちゃん、銃弾より早いんじゃないか?

 

 ホント、嫌になる位に強いんだから。だからこそ燃える!

 ボクの血が辺り一面に広がる。ボクの霊力も一緒に……あっ、一瞬クラっとした、血が足りないかな?

 このままじゃジリ貧だし、ソロソロ仕掛けるか? でも一工夫しないと当たらないだろうな~?

 

「ていっ!」

 もう一回カノンでガンパリィ。コレは躱されそうだから金の杯でもガンパリィ。んでもって、ペイロードの弾丸を地面に設置。ボクの霊力の範囲なら何とかアポーツ出来る様になった。

 剣の追撃は必死で躱す。

 

「甘いのう! バレておるぞ」

 

 うん、知ってる。グラ爺の権能フィールド内で、感知されない訳が無い。だからコレは囮、バレてても駆け引きには使える……よね? トンデモナイ足さばきで回避しつつ、攻撃が来る。それに合わせてドーン!

 グレネードの爆発、榴弾が炸裂し辺りに破片をまき散らす。ボクの権能が込められたソレはグラ爺のフィールドを一時的にかき乱す。その隙にボクは最期の力を振り絞って【神足通】。

 

「そこか!」

 グラ爺を楯に出来る場所で死角になる場所を攻撃する神速の槍。残念、其処にボクは居ない。

 

「やっ!」

 グラ爺の後ろからカノンで銃撃。全霊力を込めたから躱されたら終わり。ボクが逆にグラ爺の楯になってるから背中も痛い。ハッキリ言えば瀕死。

 グラ爺も反応して躱そうとしたけど、ボクの攻撃の方が一瞬早い。心臓を抉ってボクの勝ち?

 

 グラ爺だとこの位は気合で復活しそうだな……

 残心を忘れないようにしない……と……ヤバイ、血が足りないや……

 

「フム、キノネキの勝ちじゃな。ほぼ相打ちじゃが」

 シエラ婆の言葉が気絶する前に聞こえた。やっと、終わった……そのままボクは気絶した。

 戦闘が終わって、回復スキルがチョットだけ仕事してくれたから、生きてたもん。

 普通なら出血多量で死んでるけど……

 甘めに判定してくれてるのかも、次は文句なしの一本取りたいな……

 

 

 戦い終わっての総評

 

「と言う訳でキノネキがショタおじの試練を超えた訳だが異論はあるか?」

 セツニキが話し始める。

「ないよ」

「ある訳ないじゃん」

「いやホントあたおか難度を良く超えたもんだ」

「「「それな!」」」

 

 確かにな。最も自分から難度を上げた面もあるんだが。

 

 深層探索許可の条件は幾つか有るが代表的なのが

 1:レベル80を超えている事。

 2:自力で下層を踏破する事。

 3:二人以上の先輩深層探索者に一対一で二回以上勝利する事。

 4:ショタオジの手加減した一撃を受けて生き延びる事。

 こんなもんか?

 

 二人以上の先輩深層探索者相手に一対一で二回以上勝利する事。

 コレを早期にクリアするために一日付き合って欲しいと言うんだ。無条件とはイカナイよな? 当然だ、相性の良い相手を選んで、二回勝てば良いなんて意味じゃないんだ。

 だから、相手はランダム。くじ引きで決めた。

 キノネキに対して有利な相性を持つ人間が選ばれたのは、キノネキにはマダ早いって事かとも思ったんだがな……根性で無理やり超えて来た。

 

 俺もヤッテ見たかった……正直、グラ爺が羨ましいとも思う。

 キノネキの全力を引き出す機会なんて滅多にないからなぁ。

 キノネキは自分でも言う通り、先制攻撃が得意だ。だが、それが効かないとなると途端に戦い方の性格を変える。まあ、今回みたいに勝たなきゃいけない理由が無いと、全力で逃げるんだが。

 

 とにかくシブトイ、ガンカタと言う映画のフィクションな戦闘技術を真面目に再現するとか、楽しくて良い。

 武術の才能は無い方だが鍛えられるだけ鍛えた技術と生来の目の良さと直感で致命傷を避け、カウンターを狙ってくる。

 

 一回目の勝利も思いきりが良かった。

 まさか、銃を持つ両腕を断たせて、霊力を纏わせた蹴りで首を蹴り切るとは。

 キノネキ自身は自力で再生できないから実戦ではヤラナイとは言っているが。

 実際、接近戦最強のグラ爺相手でも初見ではギリギリ勝った、もう一人は……

 

「で、あっさりヤラレタ誠一郎ニキ。感想は?」

 

「言い訳はしないよ……キノネキが思った以上にガンギマリだっただけ」

 仲間の質問に誠一郎ニキが淡々と答える。

 

 確かに誠一郎ニキの領域の中で、火炎吸収や無効が使えるのに只の耐性にまで落として自分の身を焼かれても潜み続けて狙撃のチャンスを待つなんて常人じゃ出来ない。

 修羅勢が常人な訳が無いと言えばそれまでなんだが。

 抵抗したらバレるから、無抵抗で狙撃のワンチャンに賭ける、そうしなきゃ勝てないと踏んだのだろう、やはり思い切りが良い。

 

 最初の勝利では素直にスナイパーとして勝利していた。あの隠形は斥候型に迫るだろうよ。

 そして手札がバレて、スナイパーとしての引き出しを晒しながら数回負け、最後の勝負の布石にしている。

 

 ホント、活きのいい若手が増えて嬉しくなるな。

 

 そして狙撃が無理ならガンカタで接近戦を挑んで来るのだ。

 

「グラ爺の感想は?」

「そうじゃのう、あそこまで捨て身で来るとは思わんかった。油断かのう?」

 

 確かに油断と言えば油断、でもアソコまで体を張ったギャンブルに賭けてまで勝利を望む。やっぱり俺も戦ってみてぇなぁ……

 でもコレでキノネキもこれからは深層で戦う仲間だ。

 なら、対権能の鍛錬でもあるバトルロイヤルに参加する事もあるだろう。

「戦う機会なら、これから幾らでもあるだろうさ」

 セツニキは不敵に笑っていた。

 

 

 コルト社の技術はボクが守る! って言いたいなぁ

 

 12月の今、ボクはアメリカに居る。流石に東海岸までは行けないので、代理人を派遣することになるだろう。

 目的はアメリカ銃器メーカーの技術の保護と言えれば一番良いが、産業スパイで終わる可能性の方が高い。

 

 前世では2015年にコルト社は倒産している。

 カナダで買い取った会社がカナダ・コルト社として成立してたから、技術は存続したんだろうが、腕の良いコルト社の職人を引き抜きたい。

 勿論、無理強いしないし出来るならだけど。

 無理ならノウハウだけでもなんとか……うん、これ産業スパイだね。まあ、銃自体が斜陽産業なんだけど……

 この世界では近い将来で、銃が必要なのに造れない増やせないってなりそうだから、何とかしたい。

 

 一応日本でも、ミ〇ベア大森工場の群馬県安中市の松井田工場に生産移転を早める様に動いて欲しいと富豪俺らに働きかけてはいるし、日本で銃が作れなくなる事はないと思う。

 ちなみにミネ〇ア株式会社は、ニューナンブM60や自衛隊の9mm拳銃や9mm機関拳銃を作っている会社だ。それ以外も作る多角経営の会社でボールペンのベアリングや電子部品製造が本業だし、日本の技術力を支える重要な企業だ。

 ここの技術が無事なら日本でも銃火器を作る事は出来る。

 こんな会社をガイアが取り込まない訳も無く、普通に富豪俺らの影響力の範囲だ。

 

 実銃愛好部の技術者メンバーが大森工場に技術習得で出向してて、頼もしい事この上ない。田舎ニキの所のAKコピーは彼らに任せる事になると思う。

ノリンコ(中国)に出来た事が俺らに出来ないとでも?」

 本人達も自信がありそうだった。

 

 ただ、多種多様な銃を此処だけで作ると、お値段が高くなりそうだし、需要を満たせるかも怪しいので、テコ入れが居ると思うのだ。

 

 故にコルト社である。いやまあS&W社とかバレット社とか可能な限りは助けたいけど、資金も伝手も足りないのだ。

 そもそも、ボクが個人でヤル事じゃないとも言う。

 良いじゃないか、コルトの銃が好きだし趣味なんだから。

 

 ショタおじにアメリカ行きたいって相談したら、

「じゃあ、深層探索許可を取れたら行って良いよ」

 と言われたボクの気持ちを考えて欲しい……頭の中が?でイッパイになった。ショタおじの心配もわかるんだけどさ。

 

 ショタおじの攻撃を耐えるのは何とかなった。

 次元を何度もずらして回避しながら火炎耐性を反射にして抵抗する、防ぎきれないダメージで死ぬ直前に吸収へ変更、これまた過剰回復で死ぬ前に、無効へ変化、それでも耐えきれなくて、普通の火炎耐性に変化させて本当に死ぬ前に、死ぬ気の氷結射撃で対抗してギリギリ生き残ったんだけど。

 あんな無茶、もうしないし出来ないヤリタクナイ……

 

 そう思ってたのに、先輩深層探索者相手の模擬戦の相手が誠一郎ニキに決まった時は目の前が暗くなった気がした。

 本霊フェニックスで炎を領域展開して攻撃と回復同時にやる人じゃないですか、ヤダー!

 

 仕方ないので、二度目の勝利はワンチャン一撃死に賭けました。

 ボクが燃え尽きるのと誠一郎ニキが隙を見せるのドッチが早いかのチキンレースです。

 ボク絶対ガチャしない、普段から運を貯めとくんだ……

 

 そしたら次がグラ爺ですよ。

 しかも、ショタおじったら、芋砂はつまらないから禁止ね☆ って軽く言いやがる!

 軽く絶望するよ、ボクの隠形の特徴も権能の射程距離もバッチリ見られてるから、最初からそのつもりだったけどさ。

 禁止されたらブラフにも出来ないじゃないか。

 

 仕方ないから正面突破さ……ズタボロにされたぜ。

 一回目は両腕を囮にしての”霊力の刃付き首蹴り”で勝利。

 

 二回目は何度も負けて殺されて、ある程度は慣れた所で大ダメージで済んだので、流れた血を媒体に使って罠を仕掛けた。

 まともにやったら勝てないから逆張りもしてさ、死んでないのが不思議だよ。

 完全に自爆だけどね。

 でも、アレしか思いつかなかったし、迷ってたらワンチャンも消えるし……

 

 今アメリカに行かないとチャンスが無くなる気がしてさ、でも普通に順番で戦うと時間がかかり過ぎるから無理言った。

 一日だけの約束で、チャンス下さいって。

 相手をランダムで二人に固定した上でボクが納得するまで付き合ってもらったんだ、無様でもクリアしたかった。

 

 お情けで合格させてもらった気もするけど、コレが現在のボクの実力だ仕方がない、運が良かったのもあるけど深層探索許可は取れたんだ、良しとしよう。 

 ソーマの消費は洒落にならない量だったけどね……

 

 一応、一度深層を覘いて、探求ネキこと瑞樹ちゃんの木分身(だと思う)に挨拶してから、チョットだけ探索してみた。

 今回は様子見だし、無理せずスナイパーとしてお仕事。

 うんオーボエ*1はコスパが悪い。

 もう少しマトモなスナイパーライフルの導入を検討しよう。

 今回は探求ネキの基地近くに陣取って、狙撃に専念したから戦えたけど、コレ奥に進むなら狙撃は無理かも。

 

 それにしても敵が強い、当たり前に権能も使う。

 この辺りで使い魔が使えなくなる人が多いのも納得だ。

 うちのリク君? 普通に着いてきたよ? 長野のハヤタロウ君は恩義に厚いらしい、リクの霊格を強化してくれたみたいだ。

 礼儀正しく恩義に厚い、そこらの神を名乗る悪魔はハヤタロウ君の爪の垢を煎じて飲んどく様に!

 でも、入口周辺が限界かな? 奥に連れてくのは無理そうだ。

 

 それはともかく、ボクが直接アメリカに来たのは銃の事だけじゃない。

 此処に祖父の友人がいるんだ、祖父と一緒にボクも死んだことにしたんで、ボクが生きてて死亡を偽装していたって証明するなら、ボクが顔を出すのが一番いい。

 ついでに彼が経営する民間軍事会社をスカウト出来れば嬉しい。戦力強化は急務だし、祖父と共にメシア相手に暴れまわっていたと聞く彼が来てくれれば頼もしい事この上ないんだけども。

 

 

 久しぶりの再会

 

「本当に生きてたのか……」

「お久しぶりです、キャスパー兄さま」

 

 日本だと男の子っぽく話すようにしているが、英語だと女性的な丁寧語になる。

 普段の髪型、服装だと似合わないかもだけど、今のボクはウィッグを着けてお嬢様ルックだ。

 一応変装のつもり、ワンピースなんて久しぶりに着る。

 コートで見えないけど。

 

「やはりメシア教か?」

「はい、祖父はあの狂信者にやられました。殺されたんじゃありません、私を逃がす為に敵を道連れに相打ちです」

 

「孫の為に命をかけたか……キタロウさんらしいな」

 キャスパー兄さまは苦笑している。

 

「フロイドおじ様はいかがなされていますか?」

 キャスパー兄さまの父で祖父の友人だった方だ。

 

「亡くなったよ。丁度キタロウさんと同じころ、死因も同じだ」

 ボクは息を呑む。知らなかった……じゃあ、もしかして狙われたのは。

「そうだ、ココが狙われた。今は自宅に居る」

 ココ・ヘクマティアル。キャスパー兄さまの妹でボクと同年齢。彼女が狙われたらしい。

 

「不義理をいたしました。後でお墓参りさせてください」

「仕方ないさ、俺もキタロウさんの墓には行ってない。お互い様だ」

「ありがたいお言葉ですけれど、それに甘える訳にも……」

 ボクの場合とは事情が違う。とは言っても知ってたとしてもアメリカに来れなかったんだけど……

 

 

「このまま、空港でって訳にも行かないだろう? 自宅に招待しよう」

「お願いいたします」

 

 どうしよう、予定が狂ったぞ? キャスパー兄さまを巻き込んで良いのか? フロイドおじ様なら、今更だけど、メシアと明確に敵対していないキャスパー兄さまをボクの都合で振り回すのは気が引ける。

 

 ボクが悩んでも仕方ないか、とりあえず判断は兄さまに任せて事情を話すしかない。

 

 

 キャスパー・ヘクマティアルの葛藤

 

 キノが俺を訪ねて来たのは理由がある。

 簡単な推理だ、キノはメシア教に狙われた事がある。

 本来ならメシア教徒の多いアメリカに来るのは危険だ。なら危険を犯すだけの理由があるってだけの話だ。

 父の残したPMCの協力だろうか? だが奴らは基本的に仕事中だ、依頼があるなら電話で済む。

 ならアメリカ本土で遣りたい事がある筈なんだが……

 

 妹は悪魔に襲われ、父に命と引き換えで助けられた。ココは武器を持つのは軍人や警官だけで良いと言っていたが、あれ以来考えを改めた。

 悪魔は天使の姿を借りて現れる。

 今のメシア教に居る自称天使を指す言葉としか思えないじゃないか。

 

 俺は余程の無茶でない限り協力するつもりだ。

 キノには秘密にしてたが、叔父の忘れ形見の従妹でもあるんだ。

 俺の父”フロイド”の腹違いの弟、その娘がキノだ。

 父の年上の友人だったキタロウさん、その娘”コノカさん”と結婚して婿入りした叔父”ケイシー”彼らの代わりに親族として出来る限りは力になりたい。

 

 とは言え俺に何が出来る?

 それなりに鍛えてはいるが、軍には関わらず経営者一筋でやって来た俺にキノに出来る事があるのか?

 一介の武器商人でしかない俺に?

 

 要件を聞いて見ない事には始まらんか……

 俺で役に立てる事なら良いんだがね。

 

 キノも妹同様に狙われた以上、もう隠す理由はない。

 写真を見せて説明しよう、俺たちは従兄妹なのだと。

「やっぱり、そうでしたか……」

「知っていたのかい?」

「薄々ですけれど……おじ様が寝室に飾っていた写真にパパが写って居ました。寝室には家族の写真しか飾らないのに……」

 やはりキノは頭も眼も観察力も良い。これならガイアでも有用な人間だろうに護衛が居ないのは不思議だ。

 俺が気付いてないだけか、目立たない方が良いと判断しているのか……護衛が不要なのか……

 一つ目なら良い、二つ目なら、コッチで十分に注意が要る。三番目なら、実力次第だがキノに賭けるのも選択肢だな。

 

 

「なるほどね」

 話を聞けば単純だった。

 要はスカウトだ。

 ただ、モノが銃で、銃が規制されている日本で働くってのが違和感にはなるかもな。

 だが、日本の陸軍が協力している。形の上では陸軍へ納品するための増産体制の構築になるのだろう。

 正確には陸上自衛隊だったか? 陸軍は陸軍だと思うんだが、日本にも色々あるらしいし其処は良い。

 自衛隊に銃器を納品している会社の子会社として、キノが立ち上げようとしている新会社の幹部にコルトの技術者を招きたいって事だ。

 社会的な偽装でいろんな人間の名前が有るが、主導しているのがキノで悪魔退治に銃が要る。

 つまりはソレだけの事だ。

 

「どうでしょう? 無理があるでしょうか?」

 

 キノは心配そうだ。

 確かに人種差別もあるし、好んで日本に行きたい人間は少ないかも知れない。

 チョット前なら無理があった。

 無理ならノウハウだけでも特許切れの銃の設計図だけでも持ち帰りたいらしい。

 以前なら、それでも苦しかっただろう。だが、今なら状況が違う。

 オカルトを知らない、一般の教徒ならともかく、今のメシア教のエクソシストは信用ならない。

 

 俺の友人にも洗脳されそうになったとか、頭に変なモノを入れられてカソリックのエクソシストに助けられるまでは人格が変わっていた。

 そんな目に合った被害者がいる。

 彼らは当然警戒して、デビルバスターを護衛に雇うなど自衛を始めている。

 

 だが事情は知って居ても、自衛が出来る技術者は少ないし護衛を雇える技術者はもっと少ない。

 それなりに希望者は出るんじゃないか? 聞けばキノは、あのガイア連合でそれなりの発言力を持って要るらしい。

 なら、希望者がゼロって事も無いだろう。

 ガイア連合の御陰で日本は安全だしな。

 メシア教信者は弾くとして、カソリックやプロテスタントなら問題なさそうだ。

 洗脳の問題はあるが判別の手段はあるらしいから最終判断はガイア連合に任せれば良い。

 キノはキタロウさんや父の影響でコルト贔屓だが、コルト社だけって訳にも行くまいし、信頼出来るガンスミスなら問題はあるまい?

 条件も悪くないし、差別心の少ない、引退間近の技術者が狙い目かな? 意外と現役にも希望者はいるかも知れないがね。

 大がかりに動く案件では無いし、こっそりデビルバスターに関わる銃関係の業界人に噂を流せば反応はあるだろう。

 武器商人がガンスミスと世間話をしても不思議はないだろう?

 大した手間でもないし、引退した人間や引退間近の人材を優先してリクルートするだけの話だ。

 是が兵器なら国防省が五月蠅いかもしれんが、自衛用の銃だからな。

 

 キノは俺をアメリカでの全権代理人にするって事で、書類まで用意していた。

 元々は俺じゃなくて父に頼む気だったらしいが、俺もメシア教とは敵対関係だからな。

 気を遣う必要はないさ。

 父を殺されて、ヤツラに下るのはアメリカ人として男として在りえない事だからな。

 そうだな、妹は安全の為に日本へ避難させても良いか。

 

 日本ならガイア連合への影響力を持つキノの保護下になる。ココも安全だろう。

 

 親族とは言えボランティアで協力出来るのは此処までだが……キノはビジネスを分かっている様だ。

 なら、今度はキノの手札を見せてもらおう。

 

 

 商談(キノside)

 

 さてと、思ったよりは希望が有りそうだ。

 とは言えキャスパー兄さまも商売人。無料で利用するのは矜持に反するし、意地も見せたい。

 ボク自身の手札は驚くほど少ないけどな!

 

 つまりはガイア連合だよりだね♪*2 

 

「先ず、傷薬を10ダース。これは死にかけの人間でも生き返ると評判だそうですね?」

 

 トランクから、6本づつラッピングした傷薬を取り出す。このレベルの回復薬でも”奇跡の薬”呼ばわりされるって聞いた。全部取り出すか聞いたら、後で指定する場所に収めて欲しいって。

 

「次に実弾式ガイア銃”9㎜拳銃”これはSIG SAUER P220のライセンス生産品でテコ入れしたい企業の製品です」

 

 トランクからトランクが出て来る不思議な光景。後から出したトランクはガンケースに改造してある。

 材料は魔鉄とでも言うべき品で、実銃愛好部自慢の逸品である。

 ミネ〇ア出向組に試作してもらった。教官がテストしたけど普通に中層までは使えるらしい。

 材料の調達しやすさと強度、威力のバランスが絶妙で、ガイア連合以外でも頑張れば量産出来るかも知れない。

 値段はお察しだけどね。コレより威力落ちるかもだけど。

 

「ガイア連合の技術で改造してますけどね。これを10丁」

 ガンケースの中にはずらっと10丁の拳銃。これはこのまま渡せば良いよね?

 

「そして私が作った”簡易退魔弾の製作術式”これを提供します」

 封筒の中に入っているのは英語で書いた術式の解説書とサンプルが幾つか。

 中味を知ったら、実銃愛好部の皆が笑う。てか笑われた……

 簡単に言うと、この術式に従えば最低限の退魔弾ができるだけ。永続しないけどな!

 だから、外部への提供が許された訳だ。

 これでも必死に作ったんだぞ! 普通に愛好部の工場で作られる弾丸より弱いけどな!

 理解できる言語の方が効果が高いから西洋式の術式で英語版、かけた労力の割に威力はショボい。

 だが、ボクでも作れるって事は外部の人間でも頑張れば作れるって事である。

 これはメリットなのだ!*3

 霊力を込めるだけで、最低限だが退魔弾を作れるんだから意味はあると思うんだけどな……

 

 へへっ、笑えよ探求ネキ……ホンキで苦笑されたっけ。

 

 でもまぁ、御陰で外部への飴に使えるのである。

 駄作も使い用だね!*4

 

 似たようなボクの作品に準ガイア銃がある。

 ボクが必死に霊力を定着させたのに、今回提供するガイア銃より劣る駄作である。

 労力と成果が釣り合ってないどころかマイナスだった。

 どうせ、退魔弾に付与するための練習だったから良いんだけどさ。

 

 ボクに製造の才能は無い! 知ってた? そっか……

 

 ボクの手札はこんなモノ……チョット恥ずかしい。

 偉そうに言っても、この程度の品しか用意出来なかった。

 キャスパー兄さま、呆れて無いかなぁ?

 

 

 商談(キャスパーside)

 

 思った以上の物が出て来た。

 キノがガイア連合でソレナリの立場を築いているのは事実のようだ。

 

 どれも素晴らしいが矢張り一番は傷薬か……オークションに出せば簡単に大儲けが出来るだろう。

 金に換えるのは馬鹿だとも思うが。

 俺は金に困っていない。

 そして天使の振りをした悪魔に敵対している。

 わざわざ自分の命綱を使いもしない金に換えてどうする? 

 

 銃はテストしてみないと分からないが、キノの自信の程を見るに使えるハズだ。

 半面、簡易退魔弾の製作術式とやらは自信が無さそうだが……キノの目は信用している。使えない事はマズありえない。

 不安なのはキノ自身で開発した品だからかな?

 推測するに、自分の作品が他の二品と比べると劣ると感じているのだろう。

 キノは昔からシャイで大人しい娘だったからな。

 コレもテストだな。

 

「ふむ、とりあえず銃と弾丸を試してみよう。地下にシューティングレンジがある」

 撃ってみないとワカランさ。

「では特別製の的を用意します」

 キノが取り出したのは、細長い紙。カードと言うには長いし色紙と言うには幅が狭い1/4位か……

「これは?」

「呪符と呼ばれる、術式を書き込んだものです」

 

 ふむ、あんな紙に意味があるのか?

 移動の途中で傷薬を金庫にしまう。ランダムに数本抜き出したモノは俺が持ち歩こう。

 キノが不正をするとは思わないが、どこかでテストしないとな。

 

「おっ!? キノ嬢ちゃんじゃないか?」

 流石は俺が信頼する護衛達。スグにキノに気付いたか……キノの背が伸びてない所為もあるか?

「奴らに狙われて死亡を偽装していたそうだ」

 

「お久しぶりです。今回はビジネスで来ました、個人的な挨拶は後で、皆さんをアナライズしたいんですが良ろしいでしょうか?」

「良く分からんがボスが必要と判断するなら従うさ」

 キノが俺を見る。黙って頷いた。

 

「わかりました。始めます……終わりです」

 

「キャスパー兄さまの護衛は三人共覚醒しています、ガイア基準でレベル5って所です」

 ふむ、霊的な探査と言った所か? 俺の部下は荒事もこなすし悪魔も倒せる。

 弱い悪魔ならだが……

 

「では、兄さま。今から簡易シキガミを出します、普段の銃で攻撃してみてください」

 

 あれは妖怪って奴か? 日本のカトゥーンで見た気がするが。

 ひらひらと動く布が出て来る。

 ハンドガンで攻撃するが効いていない。

 

「これは人間が作り出した疑似的な悪魔です。護衛の皆さんの様に覚醒していないと普通の銃はあまり効きません」

 つまりガイア連合の使い魔か。

 

「あまり? ノーダメージじゃないのか?」

「認識さえしていればですけど、掠り傷くらならって感じですね。普通の悪魔には実体がないので、普通の人間には認識が出来ないことが多いです」

 なるほど、見えないバケモノを認識できれば掠り傷くらいは期待できると……意味は無さそうだな。

「次はコチラを使ってください」

 ガイア銃が入ったガンケースを示す。どれほど違うのか……

 

「なるほど、ターゲットに穴が開いたな、効いてるのか?」

「はい、効いてます。このまま撃ち続ければ滅ぼせますが、これは私の備品なので御容赦を」

 

 ガイア銃は使える。

 これは護衛や部下には標準装備にしたいな。

 なるほどキノが量産しないと俺に廻って来ない訳か。

 

「最後の銃弾の術式は対悪魔戦の時に威力を増すだけなのですが」

 ふむ、証明が難しいか?

「護衛の方で、霊力の放出が出来る方はいますか?」

「わたしが偶にやる」

 チェキータか、人材はいたぞ。それでどうするんだキノ?

「兄さま、先程使用した銃をお借りしても?」

 ふむ、俺の護身用の銃だが、ごく普通のベレッタだぞ?

 

 キノが懐から紙を取り出し机の上に広げる。先ほど見た魔法陣か……

「此処に銃を乗せて……チェキさん、コレに手を翳して霊力を込めてくれますか?」

「あいよ」

 チェキが手を翳す。俺には分からんが作業は終わった様だ。

「兄さま、簡易シキガミをもう一度、撃って見てください。出来ればダメージの無い場所を」

「了解した」

 ダブルタップで撃つ。ふむ、最初の時とは違って一瞬へこんだか?

 

 キノが呼び寄せた簡易シキガミを近くで見ると、二か所穴が開きかけていた。

「霊力があれば悪魔に効く弾丸を作れます。ガイア銃に比べれば威力は弱いし、時間と共に弱まりますが……」

「どのくらい持つ?」

「私が日本で試した時は最長で一週間、威力は2割まで減衰しました。ただし熟練した人間が日本で試したケースでしかないので、アメリカだとどうなるか」

 

 なるほど、それが自信が無さそうだった理由か。

 確かに難しいな……アメリカで我々が使用した場合のデータが必要だ。

 

「低位の悪魔が出る異界でもあれば良いんですが……」

 

 確か、近くに悪魔が出る場所があると聞くが事実だろうか? どうやら俺は情報戦において大いに後れを取っているらしいぞ。

 

*1
XM109ペイロードにキノが付けた愛称

*2
開き直り

*3
自己暗示

*4
ヤケクソ




コレだけヤッテもご都合主義感がでる、グラ爺戦……
キノも試行錯誤の末だからユルシテ

深層探索許可の条件は黒焦げ様の作品を参考にしてます
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