【カオ転三次】世界が終わるまでのバイク旅   作:山親父

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以前お借りした社畜ニキの産みの親、埴輪人形様が作品を消された様です
記憶だけで書けるほどには覚えていないので、どうするか考えました
チョット迷ったけど、真っ新な舞台が其処にあると言うならば挑まねばなるまい!
と言う事で17話と22話を修正します

さて、これからどうしようか?(ノープラン)


半終末の始まり

 ココの来日

 

 3月に入って、相模原が落ち着いてきた。

 ココが来て、ボクの別邸は賑やかだ。

 義妹二人が原作ヨロシク、戦闘メイドさんを初めてしまった。そして正実シスターズもソレに続いてしまったのだ。

 一応、正実シスターズ用に寮も作ったんだけど、ココが来るから住まいにして貰おうとボクが大き目のお屋敷を作ったんだよね。そしたら、義妹達が当たり前の様にお屋敷の手入れを初めてしまった。後は流れだ……

 

 恩を感じるのは分かるし好きにさせようと思う。幸いココも義妹達とシスターズの救出メンバーの一人だからね。

 恩義はココにもあるし同居して問題も起きてないんだし……

 ヨナ君とは一波乱あったけど、終わった事だし良いって事にしよう。

 チョット銃撃戦が起こってリビングが壊滅しただけさ(白目)

 

 仕方ない面もある。ヨナ君も自由意思を奪われていたんだけど、被害者達は知らない情報なんだ。

 メシア教が攻めて来たって勘違いするのも当然だ。

 ボクのフォローが甘かった……反省する。

 

 ヨナ君は望まなかったけど、学校には行かせる。

 最終学歴中卒が偉そうには出来ないけど、未だヨナ君の知識は足りない。

 折角学校が有るんだから有効に活用したい。年齢的に中学生かな?

 従妹が事案を起こしそうで怖いし少し離れる時間が居ると思う。6才差か、3~5年後なら素直に祝福出来るんだけどな。

 おねショタを目の前でヤラレルとは思わなかった。もっとも、それを見たから義妹達がヨナ君を敵じゃないって認めた所もあるから良し悪しではある。

 

 せっかく作ったんだし寮はココ分隊に使用してもらっている。

 ココ分隊の八名は頼れる戦士だし、早速異界に潜り始めている。

 強くなったら一旦戻って、ノウハウの交換を指示されているんだって。

 そのあたりはボクの管轄じゃないから好きにして貰おう。

 来日して直ぐ、有無を言わせずバルメ姉の眼を治したボクが言っても説得力ないけどね。

 既に干渉しまくっているんだもの。

 ボクのスキルを組み込んだ”イーグル・アイ”この魔眼をバルメ姉の潰された眼の代わりに埋め込んで貰った。

 今じゃ千里眼まで育ってるから下位スキルになるんだけどね。

 ガンマンには人気があるみたいだけど、日本じゃガンマン自体が少ないから……在庫整理って面が無きにしも非ず。

 小さい頃からお世話になってるんだ、これくらいはしたいよね。

 折角の美人さんだから両目が揃った顔が見たいのが本音だけど。

 無難で使い勝手も良いと思うんだ、スコープ要らなくなるし。

 

 キャスパー兄さまに付喪神の概念を説明したからか、八名全員がFN ブローニング・ハイパワー使いだった。

 しかもベルギー軍に納品された最初期のミリタリーモデルばかりで一年も異界に潜って居れば付喪神化するかもしれない。

 いろんな意味でボク大歓喜である。

 愛好部式ガイア銃と何方が良いのか検証したいって事だと思う。

 ボクの所感だが威力は付喪神の方が上、量産性は圧倒的に愛好部式ガイア銃だと思う。

 愛好部式ガイア銃だって大事にして異界で悪魔を倒し続ければ付喪神になる可能性はある。生きてるうちに出来るかは不明だけど。

 

 ココはボクがあげたSAA ピースメーカー シビリアンを使用してくれている。

 あの時の戦いで付喪神に至ったらしく、スキルは無いけど呼べば応えて手元に来るんだって。

 キャスパー兄さまの銃も同様らしい。順調に装備を強化してるみたいだ。

 あのお守りも身に着けてくれてるみたい。

 あれからカソリックの神父様に相談したら「異国の品ではあるが、従妹がくれたアミュレットです。お使いなさい、親族を思いやる少女の心を無下にするほど神は狭量ではありません」って言われたらしい。

 うん、柔軟で良いね。そういう神父が側にいるのは安心材料かも知れない。

 彼の言う神様の度量が大きいかどうかは議論の余地があるかな? 言わないけど。

 

 ココが来てくれた事で思わぬ効果があった。

 

 相模原派出所の派閥が増えた事で逆に安定し始めたんだ。今までは現地の派閥、八王子や山梨からの外様派閥が鎬を削っていた。

 双方ともボクに恩義があるから、ボクが居るなら問題はない。

 ボクが旅立った時が心配だったんだよね。

 そこにココ率いる海外組派閥が加わった訳だ。鼎立ってこういう状況の事なのかな?

 普通に牽制し合うけど、健全な競争に終始している。

 これならチョットは安心できる。油断は出来ないけど。

 

 

 義妹達の高校編入

 

 二人は城山高等学校って所に4月から編入される。

 どこからと聴かれると困るんだけどね。

 色々手続きが必要だけど、その辺は弁護士さんに丸投げ。

 帰国子女って事にしておく。案外ウソでも無いし……

 この学校ってイデニキの前世では2023年に統廃合して無くなった学校らしい。

 だからって「君の義妹達が暴れて無くなっても誤差だよ」って言うのは違うんじゃないかな?

 学校が無くなったら生徒の受け入れ先は何とかするつもりだけど。

 教師? 大人なんだし自力で頑張れ。

 

 いきなり三年生で受験の準備も必要なのかな?

 本人達が大学進学を希望してるし、止める必要はない。東京の大学は止めた方が良いと思うけどね。

 まあ、色々進学先を調べてるみたいだし、自分で選ぶまでは見守れば良いか。

 

 ボクが義姉ですって挨拶した時の先生の顔は忘れない。ちっちゃくても今年成人のお姉さんだ!

 自制したボクは偉い。自分の霊力を完全に抑えるのは日常生活がしたいなら出来て当然の技能なんだけどね。

 ウッカリ殺気を出したら死人が出る、義妹達が過剰に反応するかもだし……

 

 やっぱり車の免許を取って良かった。この時代の身分証明書として必要不可欠! 言い過ぎかな?

 

 でもチョット変わった車で乗り付けたからって、ボクの学歴を気にするヤツが居るとはね。

 一応、覚悟はしてたし予想の範囲内だけど嫌なヤツだったな。

 

 ボクって、年商1000万越えの個人事業主って事になってるんだけどね?

 退魔関係の収入やら、銃関係の交易やらは表に出せないからダミーだけどさ。

 それを言ったら悔しそうになるのは何でだ? まだ学歴社会な時代だっけ? 黙ったんだから文句は無いって事で良いな!

 高校生達の視線が気持ち良かった♪ そうだろう、そうだろう! 冴羽の獠ちゃんの愛車はカッコよかろう♪

 オースチンミニクーパーS MK-1 1275、シティーハンターの赤いミニ! どうせ乗るなら前世で憧れた車に乗りたいよね。ミーハー? 期間限定? 覚悟の上さ!

 

 しかし、あの嫌味教師に対して義妹達が黙ってるのもコワイよね?

 原作のアノ娘達を知ってるから、最初にワカラセテ置いたから多少は自重するはず。

 暴走したら? 同級生の隼田君に期待だ!

 なんか、暴走せずに陰に隠れて報復しそうな気もするけど……

 

 ともかく、学習意欲が旺盛なのは良い事だ。

 隼田君と機会があったらで良いから北斗君にもフォローをお願いして置こう。

 一応、ボクが保護者だしね。

 お金で済む事なら問題無いけど、世の中、お金じゃ取り返しがつかない事もあるからなぁ。

 

 どうか、あの娘達に壊される人が出ませんように……

 

 

 ガマン出来ずに旅に出る

 

 今回は何所へ行こうかな? あまり遠出をするのもマズイかな? その時の気分で決めれば良いか♪

 知らないからこそ旅は楽しいって面もあるし、細かい事は気にしないで行っちゃおうかな!

 

 せっかく買ったミニだけど、ボクの旅ならエミールじゃないとね♪

「ようやくかい? 随分待たせてくれたじゃない?」

「拗ねてるのかな?」

「そんな事はないけど」

「そうかな?」

「そうだよ?」

 こんなバカみたいな遣り取りも久しぶりだな。

 やっぱりボクは旅が好きだ、偶には一人と一台だけに成らないと落ち着かない。

 ブレーキの操作やランプを確認、問題無し。ウインカーの点灯も大丈夫っと。

「キノ、確認するまでも無く万全だよ?」

「バイクに乗る前の儀式みたいなモノさ。やらないと気分が悪い」

「ふーん」

 ブレーキレバーを握りながら、キックペダルを踏みこみエンジンを掛ける。

 

 バルルン!

 

 エンジンが始動する心地よい音。

 

「さあ、行こうか!」

 

 先ずは厚木まで南下してから国道271号で西に行こう。

 一応はボクの派出所も形になったしね。ハルカ君にお礼を言っておこう。お土産は何が良いだろうね?

 

 トコトコトコトコトコ

 

 大人しいアイドリングの音、体重移動でセンタースタンドを倒す。左右を確認、安全確認良し!

 クラッチレバーを握って、ギアを一速に変更、クラッチを繋いでアクセルを捻り走り出す。

  

 ベンベンベンベンベン!

 

 小さなバイクとの二人旅の始まりだ!

 

 

 厚木に到着。以前なら自然に楽しめた景色なのに、つい仕事モードで見てしまう。在日米軍の進行ルートを想定したり、補給を邪魔するにはなんて考えるのが仕事なのかは不明だけど(苦笑)

 ボクが望んだ立場だけど、最悪を想定しておくのも大事な仕事になる。

 異論は有るかもだけど、メシア教のやらかしと在日米軍の位置を考えると備えずにはいられなかった。

 相模川沿いに北上するだけで山梨迄行けるんだ、途中には補給所まである状態でだよ?

 そして、ボクはヤツラの八王子での所業を実感してるし、必要なら罪悪感すら持たずに米軍を洗脳すると確信できる。実例を知ってるしね……

 だから、山梨まで素通りだけは嫌だったんだ。

 相模原市緑区派出所がどれだけ抑止力に働くかは不明だけど無いよりマシと信じて動くしかない。

 

 厚木に存在してないのに何で厚木基地なんだろうね? 住所としては綾瀬市なんだけど……

 

 横須賀を初め、神奈川には米軍の施設が多い。彼ら全員がメシア教徒とは思わないけど、普通に味方も洗脳するのがメシア教だ。当然ながら潜在的な敵として考える必要がある。

 

「うん、やっぱり神奈川での組織拡大は時期尚早だね」

 

 今、拡大に動いて南下すると守りが薄くなる。やはり、もう少し地固めが必要だな。

 つまり、ハルカ君の負担が増えるのか……大人としては申し訳ないんだけど無理なものは無理だ。

 

「よし、箱根まで行こう。折角旅に出たんだ、暫く面倒は忘れる!」

 

 271号線を西に進めば箱根までスグだ。平日だし車も多くは無いだろう仕事は忘れてノンビリ行こう。

 

 

 知らなかったのか? 仕事からは逃げられない

 

「やらないか?」

 

 霊山同盟の建物に入ってすぐの言葉がコレである……

 

「やりません……」

 

 ネタ半分のジョークなんだろうけど疲れる。

 

「ボクの方は挨拶と現状報告だけですけど、くそみそニキは何かあるんですか?」

 もし、この人がマジで動く事態なら旅は中止して対応しなきゃいけない。

「イヤ、何もない。今の所はだが……」

 なんだろう? 含みがある言い方な気がするけど……

 

「そうだな、五月中には大騒ぎがありそうでな。休むなら今の内だぜ?」

 

 うわぁ、この人が確信しているなら、ほぼ確定だな。しかも、この人が大騒ぎって表現するなら最低でも県レベル、下手すると日本レベルの騒ぎになるって事かぁ。

 

「そうなんですか……」

「そうだな、小康状態は保てるんじゃないか? 日本はだが」

 タロットを手に意味深な事を……しかも、その言い方だと世界レベルの騒ぎって事かよぉ(泣)

「ボクにどうしろと?」

「なにも?」

 どういう事だろ? 手札が足りないって事じゃないの?

 

「この流れは変わらんし、対応も終わってるらしいぜ?」

 じゃあ、なんで教えたんだ?

「何となく……だな。教えて置いた方が良い気がしただけだ」

 霊能者の何となくって、なにか起こる前触れな気がするんだけどね。

「スマンな、見かけたから何となくなんだ。気にしないでくれ」

 無理を仰る……ガイア連合でも指折りの陰陽師にコンナ事を言われて忘れるなんて出来るかぁ!

「心の隅には置いておけ、そう言う事で良いですか?」

「ああ、スマンな。旅に出るなら西が吉だぜ」

 両手を上げて苦笑しながら去っていく、くそみそニキ。

 

 悪気は無いだろうし、親切なのかも知れないが、あの人の悪辣さを知っていると警戒してしまう。

 警戒しても無駄だけどね。

 ボクには運命なんて理解できないし……

 

 気を取り直して挨拶を済ませてしまおう。ハルカ君は元気かな?

 

「ああ、お久ぶりですキノさん。ちょっと待っててください、今この書類を終わらせますから」

 入室したら忙しそうに書類を捌く中学生が居た。

「幾らでも待つから気にしないで。大した用でも無いからね?」

 キノの良心に999ポイントのダメージ……キノは瀕死だ。

 

 くそみそニキ~! 手前は暇してる癖に、子供にさせる仕事量じゃないだろうがよ~!!

 内心腹を立てるも口には出さない、出せない。ボクも同じ穴のムジナだから……

 

「お待たせしました」

 礼儀正しい良い子だな。子供が子供でいられない、それは不幸なんだろうが憐れむのは彼に失礼だ。

 だからボクは毅然として対応しなきゃいけない。

 それが子供に面倒を押し付けた大人の最低限の矜持だと思うから。

「忙しい所を邪魔してゴメンね? これお茶菓子、良かったら休憩の時でにも食べて」

 秘書役をしていた友恵さんに手土産を渡す。忙しいみたいだし手早く終わらせよう。

 

「さて、報告だけど。相模原市緑区派出所の入れ物は完成したよ。中身はコレからじっくり増やして育てなきゃだね」

「そうですか、順調みたいで良かったです。手伝える事が有れば言ってくださいね?」

 ぐふっ、キノの良心にダイレクトアタック。

「大丈夫、人材が足りないのは何所も一緒。ボクの所より広い分大変でしょ? 自分の所を優先してね?」

「そうですか? ありがとうございます!」

 

 早々にお暇する。長居はダメだ、色んな意味でシンドイ。

 ゴメンナサイ、仕事から逃げたダメな大人でゴメンナサイ……

 自分は逃げ出せても、仕事から逃げられない子供の姿に精神攻撃を受けるとは思わなかった。

 

 

 気を取り直そう

 

 こういう時はバイクで走るに限るぜ!

 そんな気分で西へと逃げ出し、気がついたら浜松まで来てたよ。

 そろそろ宿を探さなきゃ……箱根で温泉とか思ってた能天気な朝の自分を殴りたい。

 ビジホで良いや。御飯はせめてウナギを食べよう……素泊まりで食事は外だな。

 

 鰻屋さんは道沿いにイッパイあるし、ホテルも空いてた。今日はご飯を食べたら寝てしまおう。

 逃避かも知れないが考えたって答えは変わらないし、他に名案がある訳でもないんだ。

 気にするだけ無駄。そう簡単に割り切れないのが人間でもある。

 寝てしまおう。少しの時間は忘れられるさ……

 

 

 さて、次の日だ。多少の罪悪感などお腹いっぱい食べて寝てしまえば忘れるものだ……ウソです、チョット引き摺ってます。

 ボクが気にしても仕方ないし周りも助けているのは知ってる。何より、ハルカ君自身が自分の存在意義としてあの場所、仕事を求めている事も聞いている。

 厄介だな、トラウマ……自分は克服しつつあると思うだけに効いた。自己判断は危険だからミナミィネキのカウンセリングは続けるけど。

 彼も何時かは自分を認める事が出来れば良いんだけど。

 自分にも覚えがある、他人が認め許してても自分が認め許せないと意味が無いんだ。

 見守るしかない。距離を置いているボクですらシンドイのに近くで見守る大人達はどれだけキツイのか? 想像するに余りある。

 あの師匠は除く。あのロクデナシはハルカ君が潰れても「ダメだったかぁ!」で済ませてゲラゲラ笑えるタイプだ。

 

 名古屋も素通りしよう。なんか観光する気分じゃないや。

 バイクで風を感じていると嫌な気分を忘れることが出来る。

 走る事優先、こんな時は付き合いが長いからかエミールも静かだし無心で走る。

 ご飯は適当に道沿いの店で食べて、国道23号をひたすら進む。

 

 何時の間にか皇大神宮(伊勢神宮 内宮)に着いてた。

 

 あれ? 何の為に来たんだっけ?

 

 そろそろ、日も沈むな……

 

 認めよう……脳死で走ってた。みんなは危ないからしちゃダメだよ?

 

「うん、こんな時間にお参りは失礼だな。ホテルを探そう」

 太陽神のお宮を訪ねる時間じゃねーや。

 

  

 気を取り直してお参り

 

「昨日は失礼いたしました」

 二拝二拍手一拝、ボクに天照大御神へ従おうなんて気持ちは無い。でも日本人として最低限の敬意はある。

 昨日のアレは流石に失礼だった。

『気にせんでええんやで』

 

 ボクは何も聞いてない。後ろが支えるから早く退こうか。

 

『また来てな~』

 

 聞こえないっつてんだろ!

 

 幻聴に反応してはいけない。

 これからどうしようか?

 ついでだ時間もあるし別宮も見て行こうか。

 月読宮から順にお参り。霊力を出来るだけ絞って、でも完全には消さず一般人並みに残す。

 目立たない様にしないとダメだ……

 次は瀧原宮だな。国道42号を西に進んで大台町まで着た時だった。

「宮川が気になるな……」

 こういうカンは馬鹿に出来ない。

 以前も川に違和感を感じて上流に向かったら何故かヤマタノオロチと戦う羽目になった。

 

「この辺りの妖怪だと牛鬼が有名だけど……」

 

 ぶっちゃけ今のボクだと牛鬼は雑魚だ。

 上振れした個体が居ても楽に倒せる自信がある。

 じゃあ、この胸騒ぎは何だ?

 

「確かめるしか無いか……」

 無視するとシッぺ返しが来る。

 なら早めに対処しないと……犬も歩けば棒に当たるか。

 ふらふら出歩いていたらオカルト事件に当たる事もあるよね。

 

「じゃあ、上流に行くかな」

 多分ダムまでは行けるさ。人目が消えたら全力だな。

 

 やっぱりツーリングはダムまでだった。

 沢登りには時期が早く人は居ない。

 なら、全力を出そう。【千里眼】で確認すると牛鬼淵に異界がある。

 アニメ日本昔話の牛鬼の御話の舞台と言えば知ってる人が居るかも知れない。

 アニメの牛鬼は鬼木五兵衛って人に倒されたことが伝わってるけど、どんな人だったのかは良く分からない。

 もう一度出て来た時は喜五兵衛という鉄砲の名人が退治したとされる。

 この人、牛鬼の他にもオロチ退治もしている。昔のデビルバスターだったんだろう。

「って事は牛鬼かなぁ?」

 正直に言えば不審に思う。

 今のボクは道士として最上位に居るハズ、そのボクの霊感に引っかかる様な怪異ではない。

 一般人の被害を考えれば無視できる怪異じゃないけれど。

 あの時感じた胸騒ぎは牛鬼程度の怪異で感じるとは思えない。

「確かめるには異界に入るしかないのかな……」

 無視して帰りたい気もするけど、それをすると後悔するんだろうね。

「仕方ない、行くか」

 林に入ってから【圏境】で気配を消しての【神足通】で異界の真横に立つ。

「普通の異界だよねぇ?」

 何がボクのカンに引っかかっているのやら?

 一応ボクでも結界は張れる。補助具は居るけど……

 簡易結界の符なら書けるようになったぞ! 五年かけて二つ目だ、凄いだろう(白目)

 ホント、才能ないな……

 結界張って武装してって定番の行動。では行きますか。

 

 手柄争い

 

「なんだこれ!?」

 

 ボクが見たのは倒されてる牛鬼と、その前で言い争う二人の男。

 片方は大弓と太刀を、片方は火縄銃を、それぞれ装備している。

 双方ともに着物に毛皮を羽織った猟師ルック。

 どちらが牛鬼を倒したのかで言い争ってるらしい。

「此処は以前からの儂の狩場や言うとるやろ」

「コイツを殺したんは我じゃ」

「うざこいやつだ、止めを刺したのは儂や」

「なにぃ、その首たたっ斬ってやろうか!」

「言うても聴かんなら、仕方があらへん」

 喜五兵衛だろう鉄砲撃ちが村田銃を撃ち放つ。

「卑怯な……」

 多分、鬼木五兵衛だろう方がMAGになって吸収された。ついでに牛鬼もか。

 

 まて村田銃だって!? さっきまでは火縄銃だったのに?

 

「そこのちいさな天狗、お前も儂の銃の的にしたる」

 

 その手にあるのは三十年式歩兵銃に進化していた。

「なるほど、コレか」

 条件は不明だが、ヤツの銃は条件を満たすと進化するらしい。これでレベルまで上がると厄介だな。

 しかもボクの隠形を見切っている。どうせ敵対済みなんだアナライズするか。

「英傑 鉄砲名人の喜五兵衛 レベル50……本当に?」

 なんか怪しい、こんな芸当が出来るのにレベルが低い? ギミックでもあるのかな? まさか!?

 自分をアナライズしてみるとレベル42。ボクに気付かせなかったのか……

 レベルが大体半分になっている、ココはヤツのホームだ、自分はそのままで侵入者は半減ってとこか。

 単純だけど嫌なギミックだ、そして周囲のMAGを吸収して少しずつとは言え異界が広がっていると……面倒なヤツ。

 そりゃボクの霊感も早めに倒せって言うハズだよ。

 しかも、滅多に他人が来ない山奥だ、発見が遅れて大災害になる可能性もあったのか。

 

 誘導されたかな? くそみそニキか? アマテラスか? まさか両方か? 単純にボクの自爆か?

「戦うしか選択肢はないんだけどね!」

 さあ、銃撃戦の始まりだ!

 

 決闘ならぬ狩り勝負

 

「良う避けんといて」

 

 射程ではボクが不利か……コレもヤツの権能かな?

 つまりボクは誘われていたって事だな。

 慢心していたかも知れない。山梨に戻ったらセツニキ先生達に鍛え直してもらおう。

 サイドステップで避ける。

 微妙に存在する次元をずらして躱す技なのに完全には躱せない。

 ボクの体スレスレを銃弾が通り過ぎたのを感じた。

 レベルが下がっている分、精度が落ちているな。元々、精度は甘いのに……【神足通】も封じられてるのか。

 

 近付こうとしても、一定の距離から近寄れない。無言で金の杯を撃ち放つ。普通に躱される。距離にも仕掛けがあるのか、コレもギミックだな。

 

 ヤツの銃の成長は止まっている。何故かな?

 カノンと金の杯で両手打ち。弾が届かない? 射程距離に不足は無い筈、つまりギミックを解除しないと当てられない? ムカつく……

 

「くたばれや」

 

 掠った? なるほど、相手もボクの権能を見極め始めてるのか……

 銃の進化が止まったのは何でだ? ボクが入ってすぐに進化が始まり、今は止まってる。

 切っ掛けはボクが持ち込んでいる筈だよね?

 

 つまりは銃だ。

 

 掠ったって事は装備の銃無効が働いていないって事だよな?

 苦手とか言ってらんないぞ。頭を回せ? 考えろボク……

 

 持ち込んだ銃はカノンと金の杯、どちらも古い銃だ。

 金の杯自体は新しい方だけど設計は古い1911年。

 カノンはもっと古い。うん? ヤツの銃も古い。最初が火縄銃だったから新型の銃に進化したイメージが強すぎた。

 でも村田銃は1880年に採用で三十年式歩兵銃の設計は1897年……どっちもカノンよりは新しいけどガバメントより古いぞ!?

 つまり、ボクの装備を解析して設計思想を自分の銃に取り入れるのがヤツの権能か!

 元が日本製の火縄銃だ。だから日本の銃に限定されている!

 より古い銃なら何でもイケルって可能性は……ないな! あるなら、もっと強力な銃だってある。

 例えばモシン・ナガンだ。アレは7.62mmだし、フィンランドの狙撃兵によってイメージ的にもアリサカライフルより強い筈だ。

 じゃあ、互角に戦うのに必要なのはなんだ?

「ちっ、喰らった」

 太ももをチョット抉られたくらいだけどダメージが残る。

 

「次こそ当てる」

 猟師の顔だな、ボクは獲物ってか! あれっ、違和感が有るぞ?

 

 ボクはコノ戦いを決闘だと思った、そう思い込んでいた。でもヤツにとっては狩りでしかない……

 

 つまり、この勝負ってお互いが獲物で狩り勝負!?

「そういう事か!」

 ボクはあるライフルを呼び出して構える。

「使わせてもらうよ創くん!」

 三八式歩兵銃。今は沖縄に居る友人がプレゼントしてくれた品だ。

 

「気付いたか」

 5発の銃弾を撃ち尽くした喜五兵衛が新しいクリップを装填する。

 同じアリサカライフル。だから射程距離も威力もお互い同等。戦いもこれで対等!

 年式は違えど性能に差は無い。三八式は三十年式をより壊れにくく頑丈にしただけの代物だ。だから基本性能は同じ、ヤツも銃の更新はしていない。

 ヤツと同じ銃での狩り勝負。これが対等に戦うための条件だ。

 

 迂闊にオーボエ*1を出さなくて良かった。

 出していたら、今頃バレットM95*2にでも撃たれていた可能性がある。

 

 後は腕の差が決める。貴様はそう思っているんだろう?

 同じ条件で戦うのが貴様の目的だものな? 銃関係のギミックは破れ、お互いハンデは無いって思っているんだよな?

 トンデモナイ間違いだ! ボクの銃は友人からのプレゼントなんだぞ。

 

 南雲 創、ガンスミスニキと呼ばれる彼が手掛けたライフルが、たかが権能で手に入れた促成のライフルに劣る事は在り得ない!

 

 アリサカライフルで撃ちあう。お互いが放った弾丸同士がぶつかり合い軌道を変える。

 双方共に動揺は無い。時代を代表するであろう鉄砲撃ち同士の銃撃戦だ、お互いにその位はするだろうとの思いがある。

 お互いが最高最適の射撃を続ける。だから同時に弾切れする。

 

「めんどい……」

 喜五兵衛が再度クリップを装填する。だがボクはしない。

 

「着☆剣!!」

 三十年式銃剣を着剣して突撃だ! 【神足通】を封じられてもボクには【縮地】がある。

 手札が少ない分、使える技は磨きぬいて来たんだ。

 そして世界最高峰の槍使いとも戦って来たんだ!*3 猿真似だが貴様には通じる!

 さらに言えば、コレはガンスミスニキが手を入れた銃だぞ? 世に名高い三八式だぞ? どんなに乱暴に扱ったって壊れるものか!!*4

 アリサカライフルを使うなら銃剣突撃はたしなみだ!*5

 思い知るが良い!!

 

「突撃ィィー!!」

 

 後の事は語るまい。

 

 日本キノちゃんの勝利である

 

 

 そして終わりが始まった

 

「負けたなあ」

 喜五兵衛が呟く、その顔は満足そうだ。

 

「そうだね、ボクの勝ちだ」

 

「儂はな、神様に窘められて殺生を止めた」

「そうだね」

「せやけどなあ、儂の技。単純に殺生で終わらせられるの悔しかったんや」

 気持ちは分かる。

 生涯をかけ磨いた技を単に殺しで片付けられては堪らない。

 そもそも止めたのは本当に神か? 狩られる側の悪魔に騙されたのでは無いか?

「その顔は分かっとるんやな。儂は騙されたのとちゃうか? そんな考えが消えなんだのやに……」

 返す言葉が無い。

「だからな、儂の技を誰かに見したかったんやに」

 技の継承か、ボクにも分かる時が来るだろうか……

「ただの自己満足や、誰かに継いでもらおうとは思とらん。そもそも互角やったしな」

 微笑みながら薄れていく。

「儂に勝ったんやで褒美をやる」

 スキル継承か? これで拒否したら空気読めないなんてモノじゃないな。

「そんなに警戒しやんといて。悪いモノとちゃうで」

 受け入れるかどうかはボクが選べるらしい……ならまあ。

「上手い事、活かしてくれや。それにしたかて、最後は豪快やったなあ」

 喜五兵衛は満足して消えて行った。

 

 喜五兵衛がボクに残した技、スキルは銃を強化するもの。

 半生を共にした銃を強化する技。

 すなわち付喪神用スキルカードの作成スキルだった。

 

 

 異界は消え、余韻を残して静寂が戻る。

 水の流れる音……

 ボクは牛鬼淵を見やると【神足通】でエミールの元へ向かった。

 

 気分転換は終わり。

 一度山梨に戻って鍛錬する。いつの間にか慢心してたんだと思う。

 心身共に鍛え直さないと……

 

 それから相模原に行って人員の手配。銃職人や見習い職人を工場に集め、事務員を募集する。

 信頼できる人を小父さんが集めてくれたから楽は出来たけど、面倒くさいしボクには向いていない。

 だからと言って投げ出したりはしないけど……

 本質的にボクに出来るのは戦う事だけ。

 今でもそう思う、けど中学生に任せきりってのはダメだ。

 だから足掻こう。

 新たな故郷になった山梨を守る為なら頑張れる。

 

 そして、年度が替わり暫らく経ったある日、ICBMが発射されたのを知った。

*1
キノがペイロードに付けた愛称

*2
自衛隊が使用する対物ライフル

*3
グラ爺やランサーニキ等と死亡上等の模擬戦

*4
限度があります

*5
違います




三重弁は恋する方言変換様にお世話になりました。間違いがあっても広い心でお許しください

血涙鬼・彼岸様、創君から銃剣付きの三八式歩兵銃、貰った事にしちゃいましたw
ちなみに流石の三八式でも無理があったらしく、再調整が必要になってます
 
アリサカライフルについての補足
三十年式歩兵銃とその系譜は設計者の有坂成章の名前から
アリサカ・ライフル(Arisaka rifle)と呼ばれています
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