切り貼りして編集
結果として短めのお話に……倍以上の文章がカットされてんだぜ?
つまり私の構成力不足が露呈した訳です
今更? そうですね……
ある少女の旅【後編】
「教えてお爺さん、あの娘の旅は終わるのでしょうか?」
老人の孫、アーデルハイドが祖父に問いかける。
女ながらに男装し、過酷な旅を続けているとしか見えない少女。
銃で武装し、この街とお祭りを護る為に祖父達と共に戦ってくれた少女。
なのに自分はお礼一つ言えぬまま、黙って旅立ちを見送る事しか出来なかった。
しかも陰ながら……あの娘の前に立つ資格が自分にあるとは思えなかったから。
「もちろんだ」
アーデルハイドの祖父が自信タップリに笑う。
「終わらない旅なんて、どこにもないのさ」
そうだと良い。
あの娘が無事に旅を終える時が来るのなら。
「あの娘は強い、きっと無事に旅を終わらせて故郷に帰る……そして」
「そして?」
アーデルハイドは祖父の言葉の続きを待った。
「平凡な暮らしに飽きたらマタ旅に出るのさ! 今度は気楽な旅だと良いがな」
そうだな……きっとあの少女にはソレが似合う。
二人は黙って旅人が去った方角を見つめていた。
音楽のお祭り
あれから、道沿いに進み続けたボクはスイス中央の街ルツェルンに到着した。
季節は夏、本来なら有名なルツェルン音楽祭の時期だ。
数年前からグスタフ・マーラー・ユーゲント管弦楽団がレジデンス・オーケストラとして指名されていて、何も無ければ見事な演奏が披露されていた筈だ。
残念ながら、今年は中止……今後、この音楽祭が開かれる事は無いのかも知れない。
でも、音楽が無くなった訳では無かった。
「小さな音楽祭?」
ボクが街に入ると、チラシを渡された。
残念ながらエミールはお留守番。
街に入る前に隠して来た。
この街を出たら、召喚して合流するつもり。
せっかくの景色を一人で見るのは味気ないけど、エミールを見せたら此処の人達がどんな反応をするか分からない。
さみしい気もするけど、人心が荒れて久しい。
だから、このご時世で音楽を楽しもうと言う人達がいる事に驚いた。
ボクは何時もの旅姿で偽装の為にトランクを背負っている。
少々小柄でも特別に目立つ存在じゃない。
元々、スイスには観光客が多いし、この騒ぎで帰れなくなった観光客が徒歩で帰ろうとするのも不自然じゃない。
ボクの血の1/4はドイツ系アメリカ人だし違和感が酷いって事も無い筈……と思いたい。
小さいから、子供に見える以外は外見上の問題はないだろう。
それが問題なのかな、子供だと舐められたんだろうね?
何度か追いはぎに会った。
勿論返り討ち、街中には出て来ないみたいだけど。
油断をする気は無いけどね。
最初は警戒もしたんだよ?
「貴方は旅行者かしら? 少しでも楽しい思い出を作って帰って頂戴!」
柔らかに微笑むお姉さんに毒気を抜かれたのは確かかな?
気が付いたらチラシを受け取っていたよ。
宿を取って、部屋を借りる。
一階の隅、何時でも逃げれる様に準備はしておく。
ちなみに代金は食料だった……人類が産み出した偉大な発明”貨幣”はその価値を失いつつある。
通貨と言うものの信用はガタ落ちだ。
チョコレート3枚で二泊させてくれるってさ……食事は自分で用意する。
まあ、その方が良いか。
食事に毒や薬を盛られる可能性もある。
他人の用意した食事はヨーロッパでは無理かな?
暫く食事は持ち込んだペットボトルとカロリーバーだな。
しかも、どうどうと食べるのも問題かもだ。
飢えた人間は何をしても不思議じゃない、殺して奪う……何時、この選択肢を選んでも不思議は無いんだ。
ボクみたいな余所者は特に気を付けないとね。
寝床を確保したボクは宿を出て周囲を探索する。
用心の為に荷物は持ち歩く。
隙を見せると余計な騒ぎになりかねないからね。
スイスには一年以上の食料備蓄があるから飢えた街と言う印象は無い。
でも今年の収穫は怪しいし、今後も無事に収穫出来る保証も無い。
そんな中での音楽祭というチラシ、ボクがあっけに取られても無理はないだろう?
先程の女性を含めた若者たちが総出でチラシを配っている。
湖畔の公園で簡易コンサートを開いて楽しもうと言う趣旨らしい。
高名なオーケストラは来れなくなっても、此処には音楽家の卵が沢山いる。
人心が荒む中、ソレを少しでも慰めようとする、この企画……こんな善意が報われると良いと思う。
高名なるスイス傭兵
皆はスイス傭兵を知っているだろうか?
現在はスイス人が傭兵となるのは原則として禁止されているが、18世紀までは”血の輸出”とまで呼ばれ貧困国であったスイスに食い扶持と安全保障をもたらした。
言葉は悪いが飢えた兵は基本時に勇猛で強兵だ。
戦って勝たねば飢えるのだ。
負けて逃げれば飢えで死ぬのだ。
そりゃあ強いだろう、弱ければ死ぬのだから。
原則として禁止とボクは言った。
例外があるから……それがバチカンのスイス衛兵だ。
ローマ法王の警護を担当する儀礼的な要素の強い警察的な兵隊とされている。
本当に?
このメガテン要素テンコ盛りな世界で普通の儀礼兵がローマ法王の警護を務めると?
そんな訳が無い!
ボクは常日頃疑っていた。
スイス衛兵はローマ法王の霊的警護をも請け負う精鋭では無いのかと。
答えは……
「お前、霊能者だな? 何所から来た、何処へ行く?」
三人のイカツイ老人、引退したスイス衛兵なのだと言う。
右手が懐に……ジャケットの内側にはショルダーホルスターだな?
聞けば、自警団的な役割を担っていると言う。
ならボクには目的を隠す意味が無い。
素直に答える。
「イタリアからスイスに入った。ドイツに行く」
ってね?
「目的は?」
「ある呪物の発見と破壊」
「呪物? それは何だ?」
「魔導書」
「……スイスに仇名す気は無い。それで良いのか?」
「うん」
戦いになっても勝てる相手だ、別にボクが恐れる程の相手じゃない……
でも、ボクは老人に弱い。
スグに絆されるんだよね。
理由は自覚してる。
祖父と重なるからだね。
思えばセツニキ先生やグラ爺に懐いてたのもコレがあるからなのかもだ。
「そうか……ようこそルツェルンへ! 若いのがお祭りを企画したようでな。良かったら楽しんで行ってくれ」
ボクに笑いかけてそう言ってくれた。
不信、警戒、欺瞞と人情、怪しむボクがいて、信じて見たいボクもいる……
ボクでもコレだ、本当の一般人のストレスや警戒心はどれ程のモノか? 相互不信、不和を煽る悪魔の策略。
コレを行っているのが自称天使だと言うから救えない……聖四文字は天使に自立を促し見守っているって話を聞いたが、子供が悪さをしたならキッチリ叱れ! コレを放置するのは只の育児放棄だ。
天使に成人があるのかは知らないが、親から自立出来てないなら、貴様の教育不足だ。
親としての責任を取れ! ボクとしては声を大にして言いたい。
面倒事になるのが目に見えてるから言わないけどさ。
エロイカの演奏を背後に
一日経った。
散歩をしてたら、音楽祭の会場に来ていた。
お昼を過ぎには音楽祭が始まるらしい。
流石は音楽の街。
皆が楽しそうだ。
腕前は劣る、素人や音楽家の卵達……プロに劣るとしても、聴衆を楽しませようとする気概に差は無い。
本気で演奏し、本気で楽しもうとしている。
食料を絞り、お酒も制限されている、警戒状態。
それでも音楽は制限されていないとばかりにステージが組みあがって行く。
幸い、雨の心配はない。
夕暮れに備えてだろう、篝火すら準備されている。
「皆、楽しそうだ……ストレス発散の機会があるのは良い事かもね」
じゃあ、そろそろ行こうか。
邪魔をしようとする無粋なヤツラが来ているからね。
ボクの目には西から来るペ天使共が見えていた。
「おや、お前さんも行くのか?」
「お客は黙って音楽を楽しんでも良いのにのう」
「老兵に任せておけば良いんじゃぞ?」
昨日会った元スイス衛兵達、他にも街のあちこちからフル装備で集まって来る。
総勢100名を超えた。
「若いもんが、皆を元気づけようと頑張っている」
「なら年寄りが応援しなくてどうするってな」
皆、笑っている。
そうか、コレがスイス傭兵の強さの理由、その一つだ。
自分の為だけじゃない、家族を仲間を助けるために笑って死地に行ける。
日本人のボクには良く分かる感情じゃないか。
ボクらの祖先が最期まで戦った理由なんだから……
彼らの主武装はSturmgewehr57。
つまりはSIG SG510のスイス軍向け輸出仕様だね。
現在はより軽量のStgw90に変更されているのに、彼ら老兵は手に馴染んでいるからと現役時代の愛銃を買い取り、悪魔退治に使用していたらしい。
国民皆兵を国是とするスイスだから、イザと云う時にはStgw90、つまりはSIG SG550自動小銃が支給されるんだろうけど……
老兵達と語らいながら歩く。
暫くすると老兵達のリーダー格なのだろう白髪白髭の偉丈夫が手を挙げて合図する。
全体停止。
そろそろ接敵かな?
「貴様らは讃美歌だけ歌っていれば良いものを!」
街外れ迄来た時に不愉快な声が響いた。
やっぱり来た。
プリンシパリティを中心としたペ天使の群れ。
熟練の老兵がサッと散開し遮蔽を取りながら、射撃を開始する。
「流石ベテラン、無駄な動きは無し。見事なモンだ」
ボクも関心しつつ、三八式を呼び出す。
狙撃をするならコレだよね? さあ、アリサカライフルの恐ろしさを欧州のペ天使共に思い知らせてやろう!
背後からは音楽祭が始まったのだろう。
イタリア語の原題に由来する『エロイカ』の名で呼ばれることも多い、ベートーヴェン 交響曲第3番 変ホ長調 作品55『英雄』の演奏が聞こえて来た。
歓喜の歌
「貴様ら無駄な抵抗を!」
無駄ねぇ……何匹ペ天使が落とされたか数える事も出来ないのだろうか?
偉そうに宣うアークエンジェルを狙撃する。
「ごぼぉあ!」
変な悲鳴を上げてMAGに返るペ天使。
ボクらは御機嫌で撃ちまくる。
なんせ敵は呆れる程に多い、空が三分にぺ天使が七分だ! 局地的にだし、直ぐ割合は減るけどね。
敵は弱い、補給が続くかだけが問題。
本来ならね。
ペ天使にとっては残念な事に此処にはボクが居る。
ボクが持ち込んだ愛好部式退魔用7.62mmNATO弾、万の単位で持ち込ませて貰ったよ。
それでも人数が多いし一人当たりの弾数を考えると、潤沢とは言えないんだけどさ。
現代戦では一人当たり200発以上携行するのが当たり前。
とは言え無駄弾を撃たないベテラン揃い。
余裕で足りそうだね? ボクの三八式実包の方が数は少ないかもだ……基本的には沖縄に多めに渡したしね。
まっ、ボクも無駄弾を撃つ気は無い。
「そろそろ死んどけ?」
何十分戦ったのだろう? あるいは一時間を超えたか? ボクが敵のリーダーであるプリンシパリティを撃ち抜いた時には背後から聞こえる音楽はベートーヴェン 交響曲第9番。
日本では第九と略称で呼ばれる『歓喜の歌』に変わっていた。
同時にペ天使達も全滅。
こちらは負傷者こそ居れど、損害ゼロ。
完勝だ! ボクらは音楽を邪魔しない様に静かに喜んだ。
そして、最後まで街外れで、この小さな音楽祭が終わるまで聞き入っていたんだ。
敵がペ天使だったから血生臭いとは言えないけれど、物騒な恰好のボクらが邪魔するのは無粋だろう?
日暮れまで音楽を楽しんで、終わった頃それぞれ家路についた。
リーダーが家へと辿り着き、お孫さんかな? アーデルハイドさんと言う女性相手にしどろもどろだ。
あれはチラシをくれたお姉さんかな? 世間は狭いとは言うけどスイスで実感するとは思わなかったな。
戦場ではアレだけ威厳があったリーダーでも家族には弱いと見える。
皆クスクス笑いながら家路へ着く。
少しずつ減っていく老人達。
暫らくはお休み、また街の危機には立ち上がるのだろう。
ボクも宿に戻る。
食事がある訳でも無い、ベットで寝る為の部屋。
それでも宿の主人の顔には笑みがある。
今日は音楽で癒されたのだろう。
はしゃぐ子供の声も聞こえる。
ああ、宿代にチョコレートを欲しがったのはそう言う訳か。
子供に甘味を食べさせたかったんだ……
少しほっこりした気分で眠りにつく。
寝るのは最小限、油断はしないし出来ないけどね。
戦友からの贈り物
翌日、旅立つ時に呼び止められた。
そこに居たのは白髪白髭のリーダーと三名の老兵。
目立たない様に街外れまで移動したんだけどな?
本気の隠形じゃなきゃベテランにはバレるか……
「これを持っていけ」
白髪白髭のリーダーからライフルを差し出された。
Stgw57、SIG SG510の方が馴染みがあるし言いやすいな。
通常弾だけど弾も込めてある30発のマガジンも5個くれた。
思わず、首を傾げるボク。
「お前さんのアリサカライフルは良い銃だが、こっちでは弾の補給も容易じゃないじゃろう?」
「それに、弾を節約する様子も見てたぞい。弾切れも近いんじゃろう?」
「ナニ、儂らの銃は如何とでもなるでな。強力な退魔弾の礼だと思って持っていけ」
最初に知り合った老兵たちも口々に進めてくれた。
「……有難う」
一言だけお礼を言って受け取る。
「なに、お前さんのくれた弾丸が無ければ死者が出ただろう。とうてい礼には足りんさ」
「気持ちが嬉しいよ」
「こちらこそだ、有難う戦友」
二人で握手する。
ゴツイ手だ。
この手で敵兵を殺し、悪魔を滅ぼしながら家族を仲間を護って来たのだろう。
ボクはヤッパリ老人に弱いみたいだ、こういうチョイ悪系の爺には特に……
でも、どっかで見た気がする顔だな? スイスに知り合いはいないし、髭もじゃの知り合いはいないんだけどな?
涙を見せる前に旅立ってしまおう。
「じゃあもう行くね、エミール!」
「はいはい」
エミールを召喚し銃を仕舞って、跨る。
ギアをローに、クラッチを繋ぎ、アクセルを捻る。
流石にここで襲い掛かって来るような真似はしないだろうけど隙は見せない方が良い。
旅立ちの前にチョットしたやり取りを終える。
左手を軽く振って発進。
「元気でな、お前さんのトライが成功する事を祈っとるよ」
背後から声を掛けられた、トライ?
ああ、スイスだとラグビーが人気なんだっけ?
返事はせずに立ち去る……暫くして、ふと気付いた。
「あのリーダーって ”アルムおんじ” にそっくりじゃなかった?」
そう言えば、アーデルハイドの愛称ってハイジだよね?
「あはっ……あははは!」
「いきなりどうしたのさ? キノ」
ボクはエミールが怪訝な声色で質問するのを無視して暫らく笑ってた。
ある少女の旅【前編】
「一つ聞いても良いかね?」
その質問をされた少女はバイクに跨ったまま黙って頷いた。
「何故、故郷に戻らないのだ?」
「故郷はもうありません。第二の故郷と言える場所なら出来ましたけどね」
「そうか、悪い事を聞いたな」
少女は首を横に振る。
「助けたい人達がいるんです」
遠くを見つめる目は鋭い。
「なんで、あんな事をしているのか。黒幕の思惑は知りません……でも、ボクが其れを叩き潰します」
少女の声には強い決意が込められていた。
「では」
片手を上げて、振り向きもせずバイクが走り出す。
その姿を、白髪髭面の偉丈夫と元部下だった三人のスイス衛兵。
そして妙齢の女性が見守っていた。
いつも通り戦闘はアッサリ
だって今更キノがレベル30代に苦戦するはずないでしょ?
元スイス衛兵も霊的エリートだし最低でもレベル20代、ガイアの退魔弾を持った状態では鴨撃ちですよw