【カオ転三次】世界が終わるまでのバイク旅   作:山親父

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キノの電撃戦

 ラインの護りは万全か?

 

 

「あはははは! 奴ら面食らってる!」

 ボクは今、エミールに跨って、ライン川をクルーズ中です。

 うん、字面がオカシイね? でも事実だから仕方が無い。

 

「二輪バイクが水上を走れないなんて、誰が決めた!」

『物理法則に従うなら無理なんだけどね』

 エミールがテレパシーで反論するけど、その物理法則を壊しかけてるのも奴らだし自業自得だな。ヨシ!

 まあ、ボクの相棒は水上どころか空中だって走れるスーパーマシンなんだけどね。

 

 奴ら、普通に道路は固めてたけど水上の警備は甘いのなんの。

 この立地なら武装ボートのニ隻や三隻用意するものだろうに、想定が甘いよ。

 海魔ラハブは出て来る度にボクにやられた事を覚えているのか、ボクの姿を見たら逃げる様になっている。

 ドイツに入ってからは出てこない。

 ボクと言う脅威が自分の力の源に近付いているのを感じているのかもしれない。

 逃げると言う事は復活の為の生贄も品切れかな?

 

「天使さま、このままでは突破されます迎撃を!」

「仕方ありませんね、我々がやりましょう」

 

 五匹のペ天使が飛び上がった所を狙撃する。

「ペ天使が遮蔽も無しにボクの銃弾に耐えられるものか!」

 

 援護射撃は鈍間過ぎて当たりはしないし、障害物が無ければボクが殺す。

 老スイス衛兵の誇りたる、SIG SG510で撃ち殺す。

 そしてペ天使共に従った貴様たちも安穏とはさせない。

 

「見つけた、弾薬の集積所」

 火炎撃*1で撃ち抜く。

 当然誘爆して、周囲に被害が出る。

 食料は勿体ないけど、欲張るのはダメか。

 

「スイスを襲撃したんだ、反撃は覚悟の上だろう? 今更慌てるなよ」

 ゲパルト自走対空砲を発見、ジャンプして上面装甲に豪雷撃*2を撃つ。

 ソレナリの霊的防御は施していたようだけど、レーダーを貫通された上での過電流対策は十分じゃ無かったんだろうね。

『ゲパルト自走対空砲の沈黙を確認』

 人員も死んだかな? 運が悪ければ生きてるか。

 

 死んだ方が運が良いのは何故かって? 即死なら苦しむ時間は少ないからね。

 今生きてても、治療手段がないなら苦しみ抜いて死ぬだけだ。

 そしてペ天使は瀕死の人間が助けを求めても、それに応えない。

 応える力量がないなら救いはある。

 助けたかったが力が足りなかった、これなら仕方が無い。

 助ける為の手段が無かったんだ諦めるしかない。

 でもパワーやプリンシパリティが混じっていたのは確認している、ならソレナリの回復魔法を持っている筈だろう?

 だが奴らは忌々し気にボクを見るだけで治療しようとはしない。

 当然だ、ペ天使にとっては貴様らメシア教徒は便利な家畜に過ぎないんだ。

 そうだな奴隷の可能性もあるし、お気に入りのペットかもしれない。

 その程度だ、メシア教は人間としての尊厳をぺ天使と言う名の悪魔に売り渡したのだ。

 だからボクは此処のメシア教徒を人間と認めない。

 過激な意見かも知れない、だが此処は戦場だぞ? 生ぬるい綺麗ごとが通用する場所じゃないんだ!

 

「万が一、万が一にメシア教の穏健派が混じっているなら。抵抗を止め、頭の上に手を置いて伏せていろ!」

 

 ボクに出来る配慮はしたんだから問題は無い。

 降伏の態度を取り続ける人間が居るなら保護するよ。

 相模原に迎え入れても良い。

 ペ天使が、人間を見捨てた事、無様にやられ続けた事、そしてボク一人に勝てなかった事を周囲に広めてくれれば尚良いさ。

 ペ天使への不信は増大してしかるべきだ。

 生き残った人間にはガイアカレーを食べさせて見ても良いかもね。

 

「そのあたりは勝ってから決める事かな!」

 シュパイヤー川へと左折する。

 暫らく進めば、シュパイヤー大聖堂だ。

 また、左折して上陸。

 

 そして敵兵の目と鼻の先にグレネードを大量に召喚する。

 ドカンと大爆発、バリケード毎敵兵が吹き飛ぶ。

 

「流石はエミールの積載量、惚れ惚れするね」

『褒めても、補給物資しか出ないよ』

 それ、凄く大事だからね? 思わず苦笑する。

 ボクが【神足通】を修めちゃったから、エミールは自信を失いかけていた。

 エミールに乗るより、ボク一人の方が早いって事になっちゃったからね。

 だから、エミールにはキャリアーとしての性能を極めて貰った。

 自分の周囲に大容量の収納特化型の異界を備え、工作機械だろうが魂だろうがその状態の儘に運べる。

 積載量、約20t。

 軍用輸送機とすら勝負出来る積載量を誇るのが今のエミールである。

 

 流石に、生き物は収納できない様にしてある。

 自制心を無くすつもりは無いが、初めから出来ない方が安心だ。

 人間を無理やり時間停止して大量輸送。

 技術的には可能かもしれないが、それはボクの心の一線を超える気がする。

 生きている人間は貨物扱いしたくない。

 だから原則禁止、その方が良い。

 

 さて、バリケードに穴が開いた。

 目指すは大聖堂裏側の東端、其処から回り込んで正面へ出よう。

「突撃ぃ~!」

『レンジャー!』

 エミールが【マハジオ】を連発しながら、防御施設を乗り越える。

 さあ、大聖堂は目の前だ。

 左回りで正面へ向かう。

 バイクに乗ってるからって、右手が銃を使えないなんて思い込みは捨てろよ。

 オカルトだぞ? 反則の一つや二つ想定しとけ?

 馬鹿な! じゃないんだよ、現実を見つめろよ。

 エミールの【マハジオ】ボクの連続射撃に吹き飛ばされる兵士たち。

 時折ペ天使も出て来るが、ヘッドショット一発で片が付く。

 

「たった一人に天使様を含めた二個中隊が全滅するのか!?」

 それだけお前らは弱いんだよ! 今まで強者として弱者を踏みにじって来たんだろう?

 なら、より強いボクに蹂躙されても文句を言うな!

 大聖堂の正面に辿り着いた。

 周囲には黒煙がたなびき、生き残った不運な兵士の呻き声が蔓延する。

 

 そんな中でボクは悠々とエミールから降りて、スタンドを立てる。

 

「今から滅ぼしに行ってやる。首を洗って待ってろ!!」

 

 ボクは中に居るだろうラグエルに宣戦布告した。

 空気が震えるほどの殺気に周囲の兵士が気絶するのが視界の端に見えたが気にしない。

 ゆっくりと近付き、大聖堂の扉を開けた。

 フランス軍によって二度焼かれ、その度に再建された世界遺産。

 1961年の修復で創建当時の姿に蘇り、1981年の世界遺産に登録されたシュパイヤー大聖堂……

 

 心無いペ天使が悪用した事で三度焼かれる事になるかもしれない。

 

 

 俺たちはランボーかコマンドーでも相手にしてるのか!?

 

 俺たちは大隊長の指示で分散して大聖堂内部を護っている。

 外にも二個中隊400名が守備していたのに、戦闘音はもうしない。

 全員制圧されたと言うのか? たった一人の人間に?

 

 入口周辺に居たのはディーターの一個小隊50名。

 扉が開いた途端に集中射撃、グレネードも交えた攻撃はどんな人間だって殺せる火力だったはずだ。

 

 では何故敵はまるで意に介さないで立っているんだ? 弾が当たって無いのか? 弾が無力なのか?

 

 ハリウッド映画じゃ無いんだぞ、コレだけ撃てば物理的に避ける隙間など無いのに!

 

 ヤツは小声で歌いながら、一歩ずつ近付いて来る。

 その一歩で10名前後の兵を撃ち殺しながらだ。

 左手にはガバメントのカスタム銃だろう.45口径、しかし右手に持つのは我が軍のH&K P8では無いのか?

 

 右手の銃を撃ち尽くすと、放り投げ、次の瞬間には新しい銃を握って射撃して来る。

 放り投げた銃は途中で消え、ガバメントも弾切れの度に落とした筈のマガジンが消える。

 何時の間にかガバメントには新しいマガジンがセットされていて弾幕が途絶えない。

 

 ディーターの小隊に続いてクルトの小隊もやられた。

 次は俺の小隊が相手か……

 だが抵抗する手段はあるんだ、正直に言って使う機会があるとは思わなかった。

 仲間の仇討ちだ!

 階段前に設置した重機関銃に合わせて、小隊全員で攻撃する。

 鹵獲した軽機関銃もあるんだ、弾幕の量は今まで以上の筈。

 グレネードも撃って範囲で攻撃もした。

 なのに、何故ヤツは平気な顔で歌い続けているんだ!?

 

 目の前の存在は人間じゃない。

 少なくとも、普通の人間じゃない。

 大隊長が言う、達人だの超人だのと言うレベルを超越している!

 

「バケモノめ……」

 

「残念だけどボクは人間だよ、人間を極めようとはしているけどね」

 

 如何いう意味だ? 奴はガイア連合の所属らしいな、東洋の思想か。

 

「仙人さ、駆け出しのね」

 

「馬鹿な!?」

 

「雑魚が群れても無意味だ、消えろ。この場から去るなら追わない」

 

 ふざけるな! 我々は人類を救う為に泥を被ったのだ。

 貴様のような存在が居るなら……我々が出した犠牲は何だったのだ!?

 

 未来の為に少女を犠牲にした。

 未来の為に仲間の屍を乗り越えた。

 未来の為に天使の力を借りて悪魔を殺して来た。

 未来の為に更なる力が必要だからと都市の住人を殺しつくした。

 全て人類の未来を護る為だったのに……貴様のような存在が居て良いのか?

 貴様の様な存在が人類を護ると言うなら、我らの行動はなんだったのだ?

 

「我々の行動は無意味だったとでも言うのか!!」

 

「むしろ逆効果だったよ。未来を救いたいなら何もしない方がマシだった」

 

「うわああああああ!」

 

 手に持つ小銃を乱射する。

 なのに奴には当たらない。

 奴の体を弾丸が通り抜ける? そう見えているだけか? どちらにしろ、目の前の存在は人知を超えた存在だ。

 天使よりも遥かに未知の存在だ……

 

 我々よりも強い天使に従えば人間は助かる、そう聞いていたのに……天使なんて雑魚だったのか!? 

 

「さよなら」

 額に衝撃、ああ死ぬのか……殺して来たんだ、殺されもするのか。

 イヤだ、死にたくない。死に…たく…な…い……

 俺の意識はソレを最後に消えた。

 

 

 MADLAXごっこ楽しい♪ 等と言えるような図太い神経は持っていない

 

 小声で”やんまーに”とか歌いながら敵を打ち倒す。

 あえてゆっくりと歩き、一歩進む度に兵士を倒す。

 言葉を飾っても仕方が無いか、多分殺してる。

 最初に、降伏するなら武器を捨てて云々の文言は宣言しているが、降伏体勢を取る人間は居ない。

 つまり、メシアンしか居ないのだろう。

 天使の羽を初めとする手段で洗脳をされている人間も居るのかも知れないが、一々助けている暇はないし、助けてやる義理も無い。

 敵の攻撃は次元をずらして躱す。

 コレをボクの切り札だと思ってくれれば儲けもの。

 戦いとは、いつも二手三手先を読んで行うものらしいよ?

 ところでシャア少佐、持ってる手札が少ない時は如何すれば良いんですかね?

 まあ、持ってる手札でどうにかするしか無いんだけどね。

 

 チョッピリOSRなポーズを混ぜたりしながら”やんまーに”。

 冗談を混ぜないとやってられない。

 弱いモノ苛めは楽しくないんだ、虐殺なんか趣味じゃないんだ。

 勝てないんだから早く逃げろよ、こっそり溜息を吐きながら蹂躙を続ける。

 めんどうくさい……

 敵戦力が尽きる頃に漸く敵に動きが見えた。

 

 敵の小隊長、この場のリーダー格だろう相手がナンカ言って来た。

 哲学を語る場所じゃないし、先に討論を否定したのは貴様らだろうに……

 

 一応、付き合ってあげてるボクは優しいよね。

 

 それにしても未来の為に出した犠牲ねぇ……一番最初に自分を犠牲にしていたなら評価してやる。

 貴様らは未来を言い訳に他者に犠牲を強制していただけだ。

 

 評価に値しない!

 

 結局、小隊長にしても部下が全滅して漸く自分で動いた程度だ、ヤツラの言う努力も多寡が知れている。

 

 周囲の銃器と弾薬を回収してしまおう。

 少しでも多くの火力が欲しい。

 リク、ここが終わったら外もお願い、チョット離れてるけど【宝探し】に反応があるんだ。

 

 おっ、これはラインメタルMG3か、貰っちゃお♪

 

 うん? 付喪神に成ってるじゃないか……そっか、本来の御主人を殺されて奪われたのか。

 じゃあ、力を貸してよ。

 一緒に奴らの親玉にキツイ一撃をかましてやろうぜ!

 

「未来を護りたいなら独善で動くなよ、だから余計な恨みを買うんだ」

 シェルターと霊能者の増加育成で一緒に終末を乗り切ろう。

 こう言って呼びかけたなら、恨みを棚上げして協力してくれた陣営も多かっただろうに。

 その後の袋叩きが嫌だったんだろうけど。

 メシアの一人勝ちの方が人類の存続よりも重要だったんだろうね。

 

 

 天使のクセに地下に潜るのか

 

 地下聖堂に向かう階段を一気に下る。

 

 また一個小隊50名程が待ち構えていた。

 奴らの包囲網の隙間を縫い、頭を飛び越えて背後に回り込む。

 

 退魔弾が勿体ないし、敵から奪ったH&K P8をとっかえひっかえ撃ち尽くしたら交換を繰り返して全滅させる。

 おかわりはイッパイ有るぜ。

 ボクも脳筋だし、言えた話じゃ無いんだけどさ。

 効いてない攻撃を繰り返す事に意味は無いぞ?

 せめて魔法を混ぜるとか、背後に天使を召喚するとか工夫したら?

 

 ああ、メシア式退魔弾を大量装備した精鋭なんだ?

 で、それを防がれたらどうするの?

 

 考えて無いんだ……人類の未来を護るって言いながらこの体たらく。

 突発的なトラブルなんて幾つ想定しても足りないだろうに、なーんも考えて無かったんだ?

 

「このザマで人類を救えるとは思えないんだけど、ラグエルはどう思う?」

 

 後ろの気配に声を掛けた。

 

「まあ、同感だな。こ奴らは臨機応変に動く事が出来ない、これで人類を救う事は叶うまい」

 

「ラグエル様!? 何故!!」

 

「何故? 何度も機会は与えた筈だ。活かせなかったのはお前だろう?」

 ラグエルは心底不思議そうに首を傾げた。

 

 彼? 両性だけど男性よりだから彼で良いか。

 彼、ラグエルにとっては都合の良い道具だったのだろう。

 だが出来の方は期待した程では無かったと……アッサリ見捨てられた訳だ。

「まあ、悪魔なんてそんなものか」

 

「ふざけるな! では部下達の献身は何だったのだ!」

「無駄だったな」

「チャント契約書で縛った? 裏切られない様に契約で二重三重に縛るのは基本だよ?」

 それでも、裏を掻こうとするのが悪魔だしね。

「悪魔? 天使ではないのか? 我々にもたらされた神の救いでは!?」

「そんな訳ないじゃん、マトモな天使なら仕事が出来るのは終末後だって理解してるさ」

 

「そうかもな、俺は良い機会だからストレスを開放する事にしたが」

 

「馬鹿な、ウソだ、ウソだぁーーー!」

 

「五月蠅い奴だ【アギダイン】」

 

 あらあら、あっさり殺すのね。

 使えない道具は要らないのかな? それとも飽きた玩具の処分かな?

「彼は使えない道具かい、要らない玩具かい、他に理由でもある?」

 

「キャンキャン五月蠅い、駄犬じゃないか? 番犬のつもりだったんだけどな」

 

 チョットわかる気がしちゃった……ワンコを虐待する人間とは相いれないけど。

 

「アレは、犬より酷いだろ? 自ら自由意思を捨てたんだから」

 

「然り」

 

 同意されてしまった……

 

「それにしても、地下聖堂そのままで君が住んでるとは思わなかったな。天使には似つかわしくないと思うけど?」

 

「うん? 俺は堕天使なのだろう? 似合いの住処ではないか」

 

 おや? 思ってたのとチョット違うな?

 

「悪くないセンスだろう? 父たる神の祭壇を押しのけ俺が座り、ローマ皇帝の墓所に生贄とラジエルの書から力を取り出す装置をセットしたんだ。堕天使に相応しいと思わないか?」

 

 結構広いし、皇帝達の墓所は階段を登らないと行けないから直接見えないんだけどな。

 まあ、彼の言っている通りの配置なんだろうね。

 此処、地下聖堂の間取りは十字架を模している。 

 

「意味深だね? 神にとって代わるとも取れるし、力の源が逆だから逆十字の意味もあるのかな?」

 

「そんな感じだな」

 

 やってる事は酷いのだろうけど、理性的で知的に見える。

 

「一応聞いておこうか、何故こんな事をした?」

 

「復讐だな」

 

 予想内の答えではある。

 

「簡単な事だよ、馬鹿な天使共と身勝手な人間共への復讐だ」

 

「メシア教に関する奴らの事なら同意するけど、奴らを切り取って人類全てが同じと思われるのは心外だな」

 

「例外の方が少数派な気がするがね」

 

 痛い所を突かれた。

 

「まあ良い、俺に縋った天使は馬鹿だったし、人間も馬鹿だ」

 

 そこは認めざるを得ないかも……

 

「貴様はラジエルの書は何だと思う?」

 

「アダム向けのガイド。楽園の外で生きる為のハウツー本」

 その程度だと思うんだよね。少なくても魔導書は無いな! そもそも神は魔術を否定してないか?

 

「はっはっはっ! アダムが生存する為の本だ、そうとも言えるな。そんな本を海に捨てるのが天使だ」

 

 ああ、ラグエルは失望したんだ。

 嫉妬で他人の生命線を捨ててしまう天使に、だから天使の監視役を引き受けたのかも知れない。

 でも、そんな天使を絶対視して従うのがメシア教徒だ……

 

 失望は絶望に変わった。

 

「だから滅ぼそうかと思ってな、天使ラジエルの書と言う名の出来損ないの魔導書と生贄に丁度良い人間が居たのでな」

「神もどれだけ俺が報告しても堕天させる気が無い様だし」

 

 ひょっとして、メシアに組したペ天使の行いを報告してたんじゃないか? 目に余る天使達、でも神は動かない……神も見限った?

 ラグエルは天使としては壊れてしまったのだろう。

 

 

 壊れてしまった天使と壊れる前に助けられたボク

 

「時間稼ぎは終わりだ」

 

「やっぱり、細工してたんだ?」

 

「ほう、気付いていたなら妨害すれば良いものを」

 

「妨害しても無駄そうだったし」

 

「ははは、確かにな。お前は強いが応用は弱そうだからな」

 

 当たってる、耳が痛い。

 

「さて、パワーラインを俺に繋いだ。回復するボスは手強いぞ?」

 

 メンドクサイヤツだあ……

 

 こうして長い戦いが始まる。

 

・

・

・

 

「良く躱す、動きもカンも良い」

 

「そりゃどうも!」

 範囲攻撃をバカスカ撃ちやがって!

 

「てっ!」

 金の杯で【ザミエルの魔弾】を撃つ。

 パッシブで働く銃強化のスキル群【銃貫通】【銃プレロマ】【銃ギガプレロマ】【銃ブースター】【銃ハイブースター】が乗る。

 メンドクサイから銃強化スキルセットで纏めてしまえ!

 全弾発射し7発の内、6発で属性ノックして判明した弱点に僅かに遅れた1発が威力7倍の属性攻撃として襲い掛かるボクの必殺技の一つ。

 権能を使わないと勝てない。

 ただし、一工夫してある。

 撃った属性は火炎、氷結、電撃、衝撃、水撃、疾風の六つ。

 破魔ネキに教わった【水撃のアクアスパイラル】と【疾風のエアブレイド】を属性攻撃に混ぜてある。

 タイミングを一瞬遅らせた最後の銃弾が弱点だった水撃の力を纏ってダメージ7倍の威力で襲い掛かる。

 

「ガッ!」

 悲鳴を上げるも直ぐに回復が始まる。

 

「もう一回!」

 同じく【ザミエルの魔弾】今度は氷結が弱点? 弱点がランダムで変わるタイプかぁ……

 

「グッ!」

 やっぱり回復。

 しかも、回復量が多い……長期戦か。

 

「喰らえ」

 やられてばかりは要られないわな。【アギバリオン】で攻撃される。

 

「ふっ」

 次元をズラシて回避。

 

「それは何度も見た」

 縮地からの【カタストロフ】が来る。

 躱せない!

 

「ぐうっ」

 大分削られた……けどっ!

 

 【影縫】*3に銃強化スキルセットを乗せる。

 ダブルタップなんてケチな事は言わない、全弾もってけ!

 金の杯とカノンで13発。

 但し一発だけ狙いは別だ、付与した術も変えてある。

 良し上手い事、皇帝の墓所に入った。

 

「ちぃっ!」

 ラグエルは一瞬麻痺したものの、コレも回復。

 

 でも、そろそろだ。

 マーカー弾を目印に転移したエミールから報告が来た。

 

『キノが思った通り被害者は仮死状態だ、運べる』

「被害者は一人だけ?」

『だね、ラハブも直ぐ逃げる様になったし生贄は中継地だけだったみたいだね』

「じゃあヤレ!」

『シリンダー毎回収成功。ラジエルの書もリクと二人で破壊したよ』

 

 ヨシ!

 

「ナニをしたぁ!」

 

「ふん、お前は知らないだろうが、盟主からの課題すら仲魔に丸投げするのがボクだぞ! こんな面倒なギミック、仲魔に任せるに決まっているだろう!」

 

「そんな事を威張るな!」

 

「勝てばよかろうなのだ~!」

 これで回復は無い。

 

「おのれ黒札! 我が復讐を何故阻む!!」

 

「お前がボクの敵だからだ、他に理由がいるか? それから黒札が何人いると思ってるんだ? ボクはキノ! 貴様の敵は、このボク。キノただ一人だ!」

 

「おのれキノ! 我が全霊をもって呪ってやろう! 貴様が各地で縁を繋いだのはわかっている。だが貴様がこの欧州の地を踏む事は不可能と知れ!」

 

 ボクはニヤリと笑った。

 

「何故笑う? 貴様には救いたい人間がいる筈だ、お前が助ける事は出来ないのだぞ!?」

 

「貴様の呪いがボク一人に絞られたからさ」

 

 大体ボクが欧州で知り合った人間はタフで自立した人間ばかりだぞ? ペ天使やメシア教徒とは違う、ボクの助けなんか無くても立派に生き抜くさ! それに……

 

「黒札は大勢いるんだ、この地に救いたい人間が居るのはボク一人じゃない。次々に来るぞ、ボク以外の黒札が誰かを助けに、ペ天使を滅ぼしにな!」

 

 そうさ、例えば今必死に修行している武器商人ニキ*4とかね。

 他にも続く人間は居るハズさ。

 ボクだって仲間に助けられたんだ。

 だから仲間を信じて後を託せば良い。

 ボクの出番はソレで終わる。

 

「貴様を滅ぼせばボクの仕事は終わりって事さ!」

 

 さあ、ケリを着けよう。

 

「滅べ!」

 ボクの背後に浮かぶ四丁の銃達。

 一つは三八式歩兵銃。創くんから貰った相棒の一つ、異界でどれ程の悪魔を滅ぼしてくれた事か。クリップ式で5発

 一つはオーボエ。これはボクが付けた愛称、XM109ペイロード。ボクに立ち塞がる障害を何時も吹き飛ばしてくれる。箱型マガジンに5発

 一つはSIG SG510、スイス衛兵の誇りを宿す突撃銃だ。アルムおんじが育て、ボクが仕上げた付喪神。湾曲箱型マガジンに30発。

 一つはラインメタルMG3。先ほど合流したばかりだけど、主人の仇討ちに燃える熱い魂の持ち主だ。ドラムマガジンに50発。

 

 そして、ボクの手にはカノンと金の杯。合計13発。

 簡易使い魔にしたホルスターが収納されたカノンの銃弾を一瞬で再装填してくれた。

 その全てがラグエルに照準を向ける。

 ボクと共にある、付喪神達がボクの敵に殺意を向ける。

 

「なんだそれは! 只の銃器が何故!」

 

「何を驚いている? 付喪神を知らないのか? 魂を得た武具は意志を持ち戦うんだぞ?」

 

 そしてボクの本霊バルバドスは四つのラッパを従えるんだ。

 そのラッパ、悪魔だと言われている事は知ってるか? 本霊が悪魔を従えるんだ、ボクが付喪神を従えたとて不思議はあるまい?

 

「先に殺せば済む事! 貴様は既にボロボロだろう!」

 【アギバリオン】での多重攻撃。

 躱せない様に隣接する次元にも同時に攻撃している。

 うん、この状態で接近する物理攻撃は無理だよね? 待ってたよ。

 

 ボクはもう一度笑う。

 【火炎吸収】に耐性を入れ替える。

「ガイア連合の盟主は火炎属性が得意でね? 慣れてるんだ、この位の火炎なら吸収しきれる」

 

 今度はボクが回復する番だ。

 動揺するラグエル……戦場で隙を見せるのは致命的だよ。

 

「フルバースト!」

 叫んでは見たがなんてことはない只の全弾発射だ。

 但し、銃強化スキルセットを乗せて【至高の魔弾】を【全弾発射】だ。

 銃を撃ち終わるまでは時間が止まる”銃限定の【龍の眼光】”が【全弾発射】、ボクの権能の一つだ。

 MP切れ寸前まで【至高の魔弾】を乗せてやる。

 流石に全弾に付与するのは無理っぽい。

 

 歩兵銃が対物ライフルが突撃銃が軽機関銃が、ボクが撃つハンドガンに合わせて全弾吐き出すまで止まらない。

 火力の大盤振る舞い、流石の大天使も耐えられるものでは無かった。 

 

 

 その後の事

 

「さて、流石はラグエルの高位分霊が死を代償に掛けた呪いだね。キツイキツイ」

 ボクは口の端から血を流しながら強がる。

 HP的には一時凌ぎだけどMP回復の為にソーマを飲む。

『キノ!』

「慌てちゃダメだよ。後処理までキッチリ終わらせないとね」

 とは言え、ボクが直々にってのは無理だな。

「エミール、ヤル事はわかってる?」

『証拠の収集と収集できない危険なモノは破壊。ついでに役に立ちそうな物は拾っておくかい?』

「うん、それで良い。じゃ、ボクは暫く固まってるから、終わって日本に戻ったら解除お願い」

 ギミックのみならず、後始末まで仲魔任せか……間抜けなボクらしいかも。

 苦笑しながら、カノンにゴム弾を一発込める。

 倒れない様に女の子座りをしてから。

「じゃ、後はヨロシク」

 ロックバレット*5で自分のコメカミを撃つ。

 

  bang!

 

 無抵抗で石化効果を受け入れる。

 これでボクは事後処理終了まで置物だな。

 

 エミール、後は上手くやってね?

*1:
アギに相当する

*2:
ジオダインに相当する

*3:
麻痺付与付き銃撃

*4:
塵塚怪翁作【カオ転三次】『俺たち』閑話集 1話の主人公

*5:
石化を付与した銃撃




ディストピアさんが設定したスキルをキノのオリジナルスキルに組み込ませて頂きました。感謝!

何故かラグエルさんがお労わしい感じに……筆に任せて書いていたら、中間管理職の悲哀を切々と語り出したので全面カット、心が痛くなる主張は止めてくれる?

エミール君の強化はやりすぎかも? まあ、良いか。
さて、キノのお話も次で一区切りの予定です
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