【カオ転三次】世界が終わるまでのバイク旅   作:山親父

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この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません

これでヨシ!

多分2002年秋のお話。キノが修行と待機を繰り返していた時期の気分転換だと思われます


外伝
ある小説家のお話


 ある小説家

 

「アニメ化ですか!?」

 

「はい、ガイアニさんが是非にと」

 

 信じられない……

 

 そんな会話をしたのが半年程前になる。

 

 私はしがないライトノベル作家だ、私の作品をアニメ化したいという話を聞いた時には暫らく固まっていたものだ。

 

「凄いシーンの撮影ですか?」

 

「先方は是非先生にもご意見を頂きたいとの事でしてね? 見学がてらにスタジオへ招待したいって話なんですが……どうします?」

 

「そう…ですね……二度と無い機会かも知れませんし、一度見学させてもらいましょうか」

 

 コレも経験だ、小説のネタになるかも知れないしな。

 

「では、弊社でお送りしましょうか? ご希望ならガイアニさんがチケットを手配すると言ってますが」

 

 どうしよう、バイクでツーリングも悪くないし、ノンビリ電車の旅も……

 

「担当さんはどうするんです?」

 

「私も行きますよ。車を出しますんで、良ければご一緒にってお誘いです」

 

 担当さんの笑みが見える気がする。

 

「じゃあ、一緒に行きましょう。なんなら打ち合わせも出来ますしね」

 小さく笑う。

「打ち合わせと称した趣味の話ならお付き合いしますよ」

 向こうも笑う。

 確かに、チョット高揚しているか? 落ち着いて次巻の打ち合わせなんて出来そうもない。

 

「では、社用車のクラウンを確保して置きますね。では当日は迎えに行きますんで」

 

 今日の用はコレだけらしい……

 

「チョット楽しみだな」

 私はスケジュール表に予定を書き込んだ。

 

 

 ガイアニさんのスタジオ

 

「いらっしゃいませ、ガイア・アニメーション山梨スタジオへ、ようこそ」

 

 受付で名乗ると満面の笑みで挨拶される。

 

 暫らく待つと直ぐに担当者が来た。

 

「私は陸八魔アルと申します」

 担当さんと名刺交換。

 アルさんは部長らしい。

 

「ぜひ見学をとの事でしたが?」

 

「普通のアニメスタジオなんですが、凄い人材が協力してくれてまして」

 

「スゴイ人材?」

 

「はい、モーションキャプチャーと言って御分かりになりますでしょうか?」

 確か、現実の人物や物体の動きをデジタル的に記録する技術……で良かったかな?

 

「ええ、パソコン上に現実の人物の動きを取り込めます」

 

「それで?」

 

 二人の人間が入って来た。

 一人は高身長の男性、もう一人は低身長の……どっちだ?

 

「初めまして先生。とりあえずボクの事はコスプレイヤーのキノとでも覚えて頂ければ」

「じゃあ、俺はコスプレイヤーの静って事かい? まあ良いけど、俺はそんなに似てないぞ?」

 

「はい、其処まで。この二人外部協力者なんですが、アニメってコンテを書こうにもイメージ仕切れない動きってあるじゃないですか? この二人に再現してもらおうと言うのが今回の趣旨です」

 

 へえ、スタントマンかな?。

 

「準備が終わりましたら、お呼びしますので、別室で資料を見ながらお茶でも飲んで待ちましょうか?」

 

「有難うございます」

 担当さんが答えてしまった。まあ、見せられない部分もあるんだろうし、大人しく待とうか。

 改めてキャラデザインやコンセプトアートを確認しながら準備が整うのを待つ。

 ちょっと挿絵に比べてキャラが大人びている気もするが違和感を感じる程ではない、CGに合わせて絵柄を少し変えてあるのだとか。

 ヤッパリこれはこれで良いな。

 

 

 デジタルアニメ……そう呼ばれる技術がある。

 この世界ではガイアグループが開発した事になっている技術だ。

 絵コンテ以降から仕上までを一貫してデジタル環境で制作する事が出来る、デジタル作画彩色技術は多人数分業となる作画・彩色で紙が不要になるため、従来制作が担っていた物理的な各種作業が不要となる。

 

 さらに確認も容易だ。

 3DCG作品を作る事も可能だが、前世世界と同様に手描きの特徴を生かしつつ、手描きでは実現不可能な部分に3DCGを導入する独自のスタイルが流行るだろう。

 いや、ガイアが流行らせるが正解か?

 開発に当たっては前世の開発者をスカウトしたり転生者の利点を利用しまくりだ。

 

 今回は光学式のモーションキャプチャを使用する。

 複数のカメラと反射マーカーをトラッカーとして用い、撮影および計測空間周囲にカメラを設置してある。

 

「このために大きなスタジオが必要になりまして、周辺の土地が空いていたのと、グループ化で資金が豊富だったので実現しました」

 

 アル部長さんが笑顔だ。

 アニメ制作で大変な部分が省力化出来る上に、今までは難しかった表現も可能になると期待しているらしい。

 

「1980年代から試行錯誤してきた技術ですが、今回は完成形と呼べるだけの形に仕上がるでしょう」

 

 パソコンの高性能化の恩恵で以前よりもお安く出来るらしい。

 

「銃器やバイクなどはCGモデルを利用出来ますので、作画崩れ無しでアクション出来るんですよ!」

 

 

 全身タイツなスタントさん

 

 準備が終わったとアル部長の部下の方が呼びに来て編集室へ通される。

 大きな画面に映る二人。

 

「アルさん、準備できたよ~」

「こちらも同じくだ」

 

 全身タイツで各部にマーカーを取り付けた二人がスタジオ中心で対峙している。

 目にはゴーグル?

 

 キノ役の少女はキノのホルスターにエアガンかな? カノンと森の人を装備しており、静役の人は模造刀を腰に差している。

 

「今回はコロシアムの戦闘シーンの続きをお願いします」

 

「「了解」」

 

 それからの戦闘シーンは圧巻だった。

 

 人間とはあんなにも動ける生き物だったのか!?

 

 感嘆するしかない。

 

 静役の人は、エアガンのBB弾とは言え実際に弾丸を刀で防いでいる。

 BB弾から眼を保護するためのゴーグルだったのか。

 演技は彼らの役目ではない。

 だが、自分が書いたシーンの再現だ。

 頭の中で勝手にアテレコしていた様だ。

 キノと静が雄弁に語り対峙しているかの様な錯覚に陥る。

 

 そして、クライマックス。

 キノがカノンを静に突きつけ、静に銃弾を回避させ流れ弾に見せかけて王を殺すシーンまでを連続して記録していた。

 

「凄いですね……」

 それしか言えない。

 担当さんも絶句していて言葉にならない様だ。

 

「うふふ、キノちゃん、静さん、撮影終了よ」

 

「はーい」

「やっとか……シンドイもんだな」

 

「汗を流してから着替えて来てね」

 

 二人が退室する。

 

 記録したデータを見せてもらう。

 今はポリゴンが動いているに過ぎない、だが、これを熟練のアニメーターさんが加工する事で、私のキャラクターが命を得るのだ。

 ありありと想像できる。

 キノと静が、コロシアムで躍動する姿が。

 

 

 撮影の後

 

「いかがでしたか? 先生のインスピレーションの足しになればと思ったのですが」

 

「有難うございました、大変貴重な経験をさせてもらいました」

 本気でそう思っている。

「キノちゃんが聞いたら喜びます」

 喜色を現すアル部長さん。

 

「キノ役の娘ですか?」

 

「個人のプライバシーですからオフレコで、キノって本名なんですよ。漢字表記ですけどね」*1

 悪戯っぽい笑い。

「えっ? アレだけ似てて名前も同じなんですか?」

「はい、だからか先生の作品を読んだ時には感情移入が凄かったみたいですね」

 偶然とはいえ同じ名前の主人公……そりゃあ感情移入もするだろう。

 

「ボクもバイクに乗りますしね♪」

 着替えた彼女が戻って来た。

「それはキノのコスプレなのかな?」

 

「YESでありNOでもあるのかな? 初めは男装のつもりだったんだ」

 

 それは彼女の生い立ち。

 両親を早くに亡くし、育ててくれた祖父もまた亡くなった。

 バイク好きの彼女は自分探しの旅をしていたのだという。

 

「バイクは祖父の形見です。自慢の良い子ですよ!」

 そう言って笑う彼女に影は無い。

 

「自衛の一環のつもりで男装してたら仲間が面白がって、先生の作品の主人公ソックリの衣装をくれたんですよ」

 

 ネタ晴らしをされて初めて、私の作品を読んだのだという。

 

「流石にバイクは違いますけどね。バイクに乗って旅を続ける銃使いの少女……感情移入は一入でした」

 

「銃も好きなの?」

 そう言えば、指にタコがある。

 トリガーの位置、普通の日本人だと有り得ないんだが。

 

「ドイツ系アメリカ人のクォーターなんです。親戚に会うのに毎年アメリカやフィリピンに行ってました。射撃はその時に覚えましたね」

 

 そう言えば、撃つとき以外はトリガーに指を掛けていなかった。

 銃を扱う者の基本が出来ていた。

 射撃体勢も綺麗だったな。

 

 日本のドラマでよく見る、カッコいいだけの無意味なポージングが無かった事に今更ながらに気付く。

 

「先生はSIGがお好きと聞きました、ボクはコルトが好きですよ」

 SIGを持つなら.45口径のP220が良いと言う。

 

「アメリカ人の.45口径信仰かな?」

「です」

 

 笑い会いながら話が弾む。

 お菓子を摘まみジュースを飲む。

 

 車で来たのだし、酒を飲んだ訳じゃない。

 だが私は酔っていた。

 自分の作品のアニメーションが素晴らしい出来になると確信できる幸せに酔っていたんだ。

 

 

 自宅に戻って

 

「今日は凄かった……」

 

 キノちゃんは普段は相模原市で仕事をしているらしい。

 相模原市のジュネスの立ち上げスタッフの一人なのだとか。

 

 静役の人もスタントマンではなく剣術家で、普段はサラリーマンをしているそうだ。

 今回は友人であるアル部長の頼みで協力しただけだという。

 

 正直、あの二人のアクションはもっと見たい。

 無理を言う資格はないんだが、勿体ない気もする。

 

「キノちゃんが成人しているとはね……」

 正直、中学生と言われても信じるだろう。

「あの娘はキノの旅の主人公そのままじゃない……でも、常に冷静な旅人としてのキノ以外にも可能性があっても良いのかも」

 

 ダメだ、興奮している所為か執筆に集中できない。

 チョット飲みに出ようか? うん、そうしよう。

 そうすれば、気分良く寝れるだろう。

 

 オカルトとの邂逅?

 

 行きつけの飲み屋で一杯ひっかける。

「うまい」

「今日の酒は美味そうですね。良い事でもありましたか?」

 そうだな、実に良いモノを見せて貰ったんだが……他言無用だからな。

「細かい事は秘密さ、でも良いものを見た」

 目を瞑ればアリアリと思い出せる。

 実に優美にしかし激しく戦う二人の姿が、ああアレが映像で見れるのは来年か……幸せな事じゃ無いか。

 自分の作品が改悪されるのでは無いかと恐れる作者も居るんだ、ガイアニさんの台頭で減っているがゼロじゃない。

 そんな中で自分は、自身が原作のアニメ作品の出来の良さを確信できる。

 不安がらずにワクワク出来る!

 

「そろそろ帰るよ、お勘定お願い」

「あいよ~」

 

 風は少々冷たいが、体は火照っている。

 気分が良いうちに帰るか。

 

 家路に着いたはずだった。

 

 

「何所だココ?」

 何時の間にか知らない所に居る?  

 

精気に満ちた小父さんだから招待しちゃった♪

 【マリンカリン】

 

「何だ? 趣味じゃないケバい女なのに目が……」

 

 【吸魔】

 

 女が近づいて来る。首筋に唇を当てて……何かを吸われて?

 

「そこまでだよ」

 

 誰だ? 体に力が入らない……

 

「リリムか……裏路地とはいえ繁華街にレベル20台の悪魔が出るのか」

 

 リリム? 夢魔って奴だっけ? 思考力が落ちてる……酒の所為か?

 

「チョット我慢しててね先生? 離れなよゴミ」

 

 私には優しい声で、悪魔には冷たく……風を感じたと思ったら、直ぐ横から打撃音。

 

「じゃあ、滅ぼうか?」

 

 なんでも無いかの様に悪魔に銃を向ける。

 恐怖に歪む、女悪魔の顔……

 

 bang!

 

 アメリカに居た時には聞きなれていた射撃音。

 

「じゃあ、後はお願いね? 騒ぎにならない様に」

 誰かに指示する声?

 

「先生、これは夢だよ。悪い夢さ……」

 

 私に近付き支えてくれる誰か? キノ…なの……か?

 ソコからの記憶はない。

 

 

 自宅で目覚めて

 

「うん? 寝てたのか……」

 

 服を脱ぎ散らかして、ベットに居た。

 

「酒が入ったとはいえ、そこまで深酒したかな?」 

 いや、疲れていた所為もあるのかな? 単純に年を取って酒に弱くなった可能性もあるのか……

 

「それにしても、不思議な夢だったな……」

 魔物と戦うキノか……ビジュアルとしては面白いかも知れないな。

 

「キノで退魔もの、セルフパロディか……アリかも知れない。今度担当さんに話してみようか?」

 思えばこの時に”学園キノ”の構想が産まれたのかも知れない。

 

*1
本人許可済み




規約の問題もありますし、あくまでも別人です
読者さんに言われてキノとこの作中での作者さんを搦めて見たけど大丈夫かな?
名前は出してないし大丈夫だよね?
作中でキノが語ってるのはカバーストーリーですね
それからデジタルアニメ制作には詳しくないので、こんな感じかなって想像です
間違いがあったならゴメンナサイ
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