艦これやりながらチマチマ書いてました
クソ婆が亡くなったらしい
梅雨の最中、母からメールが来た。
一応、私の祖母に当たる人間がくたばったらしい。
普通の病死とかでは無さそうだけど……私には関係ないし、どうでも良いや。
「そんな訳で、香典だけは置いて来るね」
二人の親友に説明する。
絶縁状態ではあるモノの、流石に死者を悼む……気にはなれないな。
まあ、世間体はあるから、葬式に顔は出して線香くらいはだね。
「面倒事になりませんか?」
流石に無いと思いたいけど……
「近くにメシア教の拠点があるよね? キノさん達から放火で奪った土地に?」
佐緒里さんの指摘で思い出した。
「油断はダメだね!」
「わたし達も付いていきましょうか? 全力戦闘も視野に入れるならアリかと」
「あたし達はチームだからね~」
う~ん、二人とも物騒。でもメシア相手だと仕方が無いよね。
「そうだねー、でも茨城の戦力低下は大丈夫かな?」
なんだかんだ言っても、アンコウチームは茨城のエース格なんだよね。
キノの所で修行させて貰ったりでデモニカ含めてレベル限界まで成長したし。
個人的にはもう少し強くなりたいけど……
「報連相は大事だし神主様に話して見ようか?」
そう言う事になった。
キノと言う娘は受けた恩を過大に、与えた恩は過少に評価する
「まさかキノが来るとは思わなかったな」
一度、相模原市のキノ家によってバイクを置かせて貰ったのだが、キノが車を出してくれた。
にしても、趣味に走ったね。ミニクーパーのシティーハンター仕様なんてさ。
「ふふん、ボクが恩を返すチャンスを逃す訳が無いのさ」
そうは言うが、私達が霊能者としてやっていけてるのもキノの御陰だし、キノが困ってるのを助けるのは当然の義務だと思うのだが……キノがこういう娘なのは知ってるけどね。
担当範囲がイキナリ何倍にも広がって恩人が困っているって聞けば、手助けに行くのは当然な訳で……ちゃっかり鍛錬用の異界も使わせて貰ったし。
半分言い訳の照れ隠しなのが見え見えなんだけど。
「素直に私が心配って言ってくれた方が嬉しいんだけどな?」
「なんの事かな~」
そっぽを向きつつ頬が赤い、ホントにこの娘ったら。
「茨城にはボクのシキガミでもあるリコに行って貰ったから心配はいらないよ~」
「「有難うございます」」
やっぱり私が心配でついて来たチームの仲間達。
私達アンコウチームだけでも十分だと思うけど、キノまで一緒だ……これだと、八王子が焦土になる覚悟がないと私達を攻撃出来ないだろうな。
キノの噂を聞くと、この隣の小柄なカワイイ娘は国を亡ぼす大悪魔が複数で襲い掛かっても鼻歌混じりで返り討ちにしてしまう、世界でも指折りの実力者だ。
「ボク程度、大したことないよ? ボクより上はイッパイいるし……」
キノの言う、自分より上の実力者とは修羅勢と呼ばれるガイア連合の最終兵器じみた人達の事だ。
私は見た事が無いから噂を聞いただけだけど、超越者とも呼ばれる領域に居る方々らしい。
具体的に言うとレベル100オーバー……正直想像が出来ない領域である。
「でも、キノもソロソロその領域が近いんだよね?」
私の元祖親友はレベル90半ばを超えてマダ成長中なのだ、超越者になるのは時間の問題だと言われる超絶な凄腕霊能者。
もはや仙人と言えるレベルに居るらしい。
「一応ね~。でも周りが凄すぎるしねー」
「教官*1から聞いてるよ。キノの自己評価は半分に思えって」
昔から自己評価が低い娘なのだ、キノの自己評価は不当に低い。
そして、キノが褒める先輩方は多少の割り増しがされてても不思議はない。
キノの評価そのままの可能性もあるけど、私レベルで考えると誤差だ。
大体教官だってレベル50オーバーの強者だ、小さな国の一つや二つ滅ぼしてしまえる存在なのだ。
そんな事言ってる私だってデモニカを使えば都市の一つや二つ滅ぼせる。
これで、マダ足りないとしか思えないんだから、終末がどれほど恐ろしいのか良く判るって話だよね。
久しぶりの八王子、かつての面影は既に無い
「話には聞いていたんだけどね……」
キノが絶句している。
思い出深い筈の街。
でもキノの家があった地区には外見だけはそれらしい立派なメシア教の教会。
苦々しい目で見ているけど、其処に怒りは感じられない……どちらかと言うと呆れや諦観と言うべき感情を感じる。
そもそもキノはメシア教には何も期待していない。
「滅んでしまえば良いのに……」
訂正。消えて無くなれとは期待しているらしい。叶うとも思っていないだろうけど。
「ごめんミホ、感傷に付き合わせた」
軽く頭を下げるキノ。
「気にしないで良いよ……」
軽くハグ、キノが落ち込んだ時のルーティーン。この娘は寂しがり屋だ、こんな時には人肌の温もりを感じさせると落ち着く事が多い。
どれだけ強くなってもキノはキノ、変わらない所もあるって事だ。
あと、親友二人! 小声でとは言っても「「キマシタワー!」」は止めて欲しいな。
「じゃあ、嫌な事は済ませてしまおう!」
とっとと葬儀場に行って、香典を渡してしまおう。
別にアイツの冥福とかはどうでもいいけど、世間体もあるから疎遠になった孫が線香をあげたって事実は作っておいた方が良いだろう。
車で移動する事、数十分。葬儀場に到着、中に入るのは私だけ。
喪服を着ているのも私一人だ。
三人は戦闘に備えている。
一応、仏式の葬儀だしメシアの連中は来ないだろうけど、メシアに尻尾をふる裏切り者は来そうだ。
私の元実家も蝙蝠さんをして大きくなったらしいし、油断は禁物。
だからデモニカのカメオは装備しておく。
葬儀会場で魔砲少女として大立ち回りってイタイなんてもんじゃないから、何もない事を祈る。
西隅の家は剣術家でもあって、警察官にも指導していた。
葬儀にも、ゴツイ強面な方々がいらっしゃっている様だ。
「ボクたちは外で待ってた方が良いよね? 危険は無いと思うし、言い訳にもなるだろうしね」
ああ、友人を待たせてますのでって言い訳が使えるのか。
「勿論、ミホが危険だと思えば踏み込むからね♪」
軽く言っているが、私の周囲に異常を感じたら転移してくるだろうキノが頼もしい。
仙人というのは伊達ではなく、キノは六神通と呼ばれる神通力の半分を修めている。
つまり、その気になれば私の周囲の音や声を聞き取る天耳通が使える訳だ。
「早く行った方が良いかもね、マホさんだっけ? お姉さんに絡んでる馬鹿がいるよ」
なるほど、内部の危険はその程度だってことだね?
「わかった、じゃあ終わらせて来るよ」
何年振りかで元家族と会い、焼香する為に葬儀場に入る事にする。
葬儀会場にて
「この度は御愁傷様でした」
身内枠でのアイサツはしない。
貴女達とは他人だ。
いや、受付は友人の一人で姉妹弟子みたいな関係だったから、言いたい事もあるんだろうけど察して欲しい。
「ミホ? なんで他人行儀なのよ?」
ええい、このワニめ!*2 昔から微妙に空気を読めない奴だ!
「恵梨香は知らないみたいだけど、私はこの家とは絶縁してるから」
淡々と答える。
「なので焼香を済ませたら帰るから……」
背を翻し、会場へ行こう。
後ろで「えっ」とか「聞いてない」とか呆然と呟いているけど無視しちゃえ。
「何をやってるんですか?」
心底軽蔑した目で見つめてやる。
そこには姉を囲んだドラ息子共。多分、姉を射止めた人間が次代の当主に次ぐ立場になれるって事で張り切っているんだろうけど、故人の前でやる事じゃ無い。
正直に言えば故人は如何でも良いが葬儀の場なのだ、姉も迷惑しているし周りの空気も冷たい。
これで次期当主の旦那を狙ってる? 小学生からやり直せよ馬鹿が。
「黙ってろ!」「邪魔すんな!」口々に喚いている、こいつらは取り巻きかな?
雑魚が怒鳴った所で、毛筋ほども怖くない。
「貴女には無関係です」
嫌がる姉の肩を抱えて連れ去ろうとしたので殺気を込めて睨んでやると、取り巻き共々失禁した。
多少は巻き込まれてプレッシャーを感じたであろう姉は驚いた様だが顔色は変えていない。
婿狙いのクセに不甲斐ない、武の家を称する西隅には向いてないな。
「有難う助かったよミホ……」
言葉が途切れたのは絶縁状態なのを思い出したからか? それとも私が思った以上に強くなっていたからか?
少なくとも、私に馴れ馴れしく干渉する資格が無い事を思い出したなら、それで良いか。
「気を付けて下さいね。貴女をトロフィーにしている人間が居る様ですし」
姉を含めて周囲を一瞥。視線をそらした人間が多いな……ロクデナシの巣窟か。
今更、謝罪されても響くものは無い
「少々お時間を頂きたいのだけれど……」
一応、母親? 元母親? 法的にどうなっているのかは兎も角、気分的には元母親だね。
「友人が待っていますので」
「そう、では一言だけ言わせて頂けませんか?」
黙って待っていてやる。一応聞いてやるからサッサと言え。
只の言い訳ならサヨウナラだ。
「貴女を護る事が出来なかった、護ろうともしなかったが正しいのかしら? ゴメンナサイ、愛しているわ」
言いたい事は終わりかな? 多分、貴女にも事情はあったんだろうとは思う。でも、助けを求めた娘を見捨てて置いて今更としか思えない。
「ではこれで」
向き直り、軽く一礼。
終わり終わり、さあ帰ろう。
寂しそうに私を見ている姉。見限られて当然だと理解しているように見える元母。存在感が無い父はどうでも良いか……多分、私を護ろうとはしたんだろうけど結果が伴わないのではね。
せめて、個人的に独立資金でも出してくれていたらチョットは印象が違ったのかな? そんな甲斐性は無いんだけど。
そのまま会場を後にしようとして……
「チョット待ってよ!」
旧友に呼び止められた。
「なにかな、恵梨香?」
足を止めて対峙する。
「絶縁ってホントなの?」
信じられないのかな? でも、虐待されている娘を助けなかったんだ、見限られても仕方が無いと思うんだ。
「事実だよ」
「そんな……」
ショックを受けているみたいだね? まあ、良いか。私には関係ないし。
「どうして? いえ、他所の家庭の事情に口出しする権利は無いわね。忘れて頂戴」
チョット激高しやすい所はあるけど、弁える事が出来る点は高評価だね。
「そうだね……否、故人の悪口になるからココでは言わない方が良いかな? 例え事実でも」
うん、お葬式に来てくれている人達に悪いな。故人の名誉とかはどーでもいいけど。
「話してくれる気はあるの?」
「聞いても面白い話じゃないよ」
「それでも知っておきたいのよ……木乃に続いて貴女まで居なくなって、私の高校生活は寂しくなったわ」
事情があるなら知っておきたいと……それが貴女の敬愛する姉の失点になるかもだけど。
「多分マホ先輩にも思う所はあるんでしょう? それでも知りたいの」
「そっか、なら友人が車で待っているから何処かでお茶でもしながら話そうか? 恵梨香が席を外せるならだけど」
「良いわ、私も車だから着いていけば良いのかしら?」
「そうだね……どうする、キノ?」
「この辺は変わり過ぎているからね。逆にオススメの店に案内して欲しいな」
何時の間にか、私の後ろにいたキノを見て、恵梨香が口をパクパクさせている。
まあ、そうなるよね。
髪こそ切っていてもキノは高校時代と変わらないから……*3
喫茶店の中で
「なんでキノが生きてるのよ!?」
「死んでた方が良かった?」
恵梨香の疑問に小さく笑みを浮かべながらキノが答える。
「嬉しいわよ! でも、あのお葬式は何だったのよ!」
「そうだね、何処まで答えようか?」
「全部よ! 答えられる範囲は全部!」
うん、恵梨香は変わらないなー。強気で気遣いも出来て……だから裏事情なんて知らなくても良いと思うんだけど。
「ミホ、気持ちは分かるけど、知るなら早い方が良いかも知れない」
「どういう事?」
知らなくても済むならその方が良い……筈なんだけど?
「ボクにも壊れる時期までは分からないけど、東京の結界が限界だって話があるんだ」
「うそ!?」
「ホントだよ。メンテもせずに酷使される装置、さて正常に動作し続けられるでしょうか?」
根願寺が出来るのは結界の操作だけ、メンテナンスは出来てないらしい……それは何時か破綻しそうだな。
キノは頼んだコーヒーで口を湿らすと長い説明を始める。
悪魔とかメシア教の裏とか、それに対抗するガイア連合を始めとする霊能者の組織の事等々。
私と親友二人は黙って聞いてるだけ、余計な事は言わない方が良さそうだし。
「つまり、この世界はファンタジーだったと?」
「うん、ダークが付くけど」
恵梨香は頭を抱えて黙り込んでいる。
「すぐに信じる必要はないよ。ただ危険が迫ったら教えるから、その時は逃げた方が良いね」
キノの言葉は本当だし、八王子からの難民に備えてもいる。
悪質な人間はメシア教の管理地に追いやるつもりらしいけど……
「霊能者って存在したの?」
恵梨香の今更な疑問。でも私に取っては今更でも恵梨香にとっては初めて聞く事なのか。
「私がそうだよ? 小さい頃から幽霊が見えていた。だから狐憑きって虐待されてた訳だけど」
絶句する恵梨香。
「それで絶縁?」
ただ頷く。
「まさか、そんな事が? でも……」
信じきれないか……無理もないけどね。
「恵梨香、手を見せて」
キノが恵梨香に頼む。
拳を強く握り締めた所為で、手のひらが爪で傷ついていた。
「薬もあるけど……此処は
「わたしでありますかぁ!?」
「うん、ディアで治してあげて。こっちを見られない様に認識阻害の魔法具は稼働させておくから」
ああ、自分で魔法を体験すれば証拠にもなるか。
「了解であります!」
「キノも魔法が使えるの?」
「ボクは無理、適性が無いんだ。ミホは使えるよ、攻撃魔法だから見せるのは無理だけどね」
私の場合はハマ系とアギ系だからね。
ハマは見ても分かるかどうか不明でアギは室内で使う魔法じゃないから。
「そう……取り合えず魔法の存在は信じるわ」
「そっか、なら注意事項を一つだけ……結界が護ってるのは地上だけ、地下には力が及ばないからね」
キノの言葉に不思議そうな顔の恵梨香。
フォローしとこう。例えが無いとわかりにくいだろうし。
「例えば、わざわざ地下洞窟に潜ったなら悪魔と出くわす可能性があるって事だね」
そう言えば、結界の力が及ばない下水道とかで自衛隊がレベリングしてたんだっけ? 私達は恵まれてるなぁ。
少なくとも、デモニカの限界までは鍛えられる修行用の異界が利用出来たんだから。
お約束のごとく事件は起こる
「うんっ?」
店を出るなりキノが東の方角を睨む。
「うわぁ、ミホの元実家が大変な事になってるよ……」
「何が起きてるの?」
「異界化だね」
「えっ?」
キノの言葉に恵梨香が驚く。
そういう私も驚いている。東の空に異様な気配……何だ、あの呪いの塊は?
「ナニあれ……」
恵梨香が絶句している。
恵梨香には衝撃の多い一日だろうね。
マダ終わってないし、アレに気付いた時点で恵梨香も関係者の仲間入りだけど……
「そっか、見えちゃったんだ? なら恵梨香も霊能者だよ、弱いから早めに強くならないと悪魔の餌食だけど」
恵梨香が複雑そうな目でキノを見ている。
キノに脅されて怒った? 内心ビビった? 事実なので最低限の実力を身に付けないと買い物も儘ならなくなるんだけどね。
「しかし、どうしようね? 勝手に解決に動くのも問題かもだし……」
八王子はメシアの根拠地になっているものね。
「先輩に連絡するわ。アレを感知できるのかは知らないけど、勝手に動くよりは持ち主に希望を聞いた方が良いでしょう?」
かも知れない、本来ならメシア教か私の元実家が対応すべき問題なんだけど……
「ダメだね、メシア教はガイアに救援を要請してるっぽいし、ミホの実家はオロオロしているだけだよ」
アレだけの呪詛だから、見えなくても感じてはいるらしいけど。
そんな事をキノが呟いている。
「正直見捨てて帰りたいな」
うん、周辺に被害が出ているらしいけど、私達には関係ないし……
「どうしよう!? 先輩が電話に出ないの! シホさんに聞いたらミホに餞別を渡したいからって家に戻ったって!」
シカタナイなぁ、お助け作戦発動です
「ここで大事なのはミホの気持ちかな?」
「私の?」
「うん、ボクを含めた霊能者組でマホさんに多少でも思い入れがあるのはミホだけだよ」
霊能者って括りなら、そうなるのか。
恵梨香も覚醒したみたいだけど、戦力にはならないから人数外だという事ね。
「そう…だね……姉には恨みは無い……かな?」
特別な恩義も無いけどね。
「見捨てるのは気分が悪い……かも?」
「そこは断言して頂戴!?」
恵梨香の悲鳴のような声。仕方ないでしょ? 自分でも自信が無いんだから。
「ボクが出るかい?」
「キノの言葉は有難いけど、私達でやる方が良さそうな気がする」
キノだと戦力過剰だし、強すぎる力が余計な騒ぎを呼び込む事もあり得るらしいよ?
「「ではAチーム出動で」」
二人の親友が声を揃えた。
「確かに、私だけだと思わぬ不覚も有り得るか」
苦笑が出るけど、一人で異界へ突入出来る程の力は無いかもね。異界のレベル次第ではあるけど。
「じゃあ、ボクはエミールで行くから。車は貸してあげる」
キノが車のキーを投げて寄こした。
そんな訳で異界の前に居るのである。
何故か恵梨香が付いて来たが……
「危険なんだけど」
「わかってる、だからキノと此処で待つわよ」
ふむ、足手まといの自覚はあるけどお姉ちゃんの無事を確認しないと帰れないって所かな?
黙ってキノを見る。
頷きを返してくれたから恵梨香は任せても良さそうだ。
ところで、装備がデモニカだけなんだけど……恵梨香に見られるの? イヤだなぁ。
「じゃあ、ハイ」
キノが取り出したのは私達の装備入りのバック!?
「一応、備えはしなきゃね。預かった荷物はボクのトランクに入れといたんだ」
だからエミールを呼んだんだよって小声で言ってくれてる。キノのトランクは何時もエミール君に積んでいるものね。
「有難うキノ! 愛してるよ!!」
感激のあまり思わずハグしちゃった……*4
「「「キマシタワー♪」」」
そこっ! 三人で声を合わせない!
クソ婆の置き土産? あるいはご先祖様可哀そう……
結界を張り、周囲から人払いをしておく。
普通の人間は見えなくても異様な雰囲気を感じて離れるものだけど、中には鈍い人も居るしね。
周囲に人はいなくなったようだ。キノのお墨付き。
恵梨香の車は軽自動車だったけど、外で着替えるよりはマシなので更衣室代わりに使わせてもらう。
キノのミニも小さいし小柄な女性とは言え、交代で着替えないと狭すぎるしね。
周囲の警戒はキノ一人でお釣りが来るんだろうけど、油断は禁物。誰か一人は戦闘態勢を取れるようにしておかなきゃ。
先ずは
私は銃器を手に警戒中。一応素のレベルは一番高いしね。
因みに銃はキノが余ってるからってくれた、H&KのP8拳銃とG36アサルトライフルの準ガイア銃。
キノが加工した物で、弾薬も実銃愛好部製のガイア弾だし威力は十分。使い易くて助かっている。
喪服にアサルトライフルって見た目はどうかと思うけど。*5
「「着替え終わったよ」」
なら、周囲の警戒を変わって貰って私も着替るか。
何時もの動きやすいパンツルックに防弾ベスト、性能はチョット上がってるけど耐性が増えただけだし細かい事は良いか。電撃耐性とガイアフォンと連動したインカム付きのヘッドギアを装備するのは大事。
私達レベルだと連携を大切にしないと簡単にやられかねない。
「さて、準備完了だね」
どこかの兵隊さんにしか見えない恰好の私達に恵梨香が目を丸くしている。
「霊能者のイメージと違う気がする……」
わからないでもないけど、対悪魔戦をするのが私達だ。
「霊能者と言うよりデビルバスターと呼んだ方が良いかもね? 私達の相手は霊的な悪さしか出来ない悪霊じゃない、現実に襲ってくる悪魔だよ」
そう人喰いが多い悪魔が相手なんだ。
「悪魔って人を襲って食べるの? はっ! まさかこの所増えている熊の被害って」
「何割かは悪魔の仕業だろうね。だから言ったんだよ、強くならないと悪魔の餌食だよって」
キノの言葉は淡々としたもの、だからこそリアルに感じたのかな? 事実を告げているだけだしね。
「そう、少し考えないといけないわね……強くなる為ならキノを当てにしても良いのかしら?」
「良いよ、と言ってもあまり贔屓は出来ないけど」
うん? 私達が受けている援助は贔屓以外の何物でもない気がするけど? 恵梨香と私達で大きく差をつけるとも思えないし……
「キノの妄言は兎も角として、Aチームとしての意思統一をしとこう」
「ですな、我々としては自分達の生存、姉君の救出、異界の処理の順番で良いのでは?」
「そうだね~、最悪キノさんに任せる手もあるけど。任せっきりだとしっぺ返しが来るかもね」
この辺りの意見は同じっと。元我が家の蔵は異様な気配に包まれている。此処が異界だね。
「じゃあ、行こうか?」
アンコウチーム出動です!
と言う訳で異界に突入したんだけど……
「スライムが多い感じですが……嫌な予感が消えないでありますな」
「だね~、こういう時は似てるけど、段違いで強い悪魔が出る事が多いかも」
いやはや、私達も場慣れしたものだ。異界の中は建物型ダンジョン、多分一層だけじゃないかな? カンでしか無いけど。
「銃が効く相手とは限らないし、注意ね」
雑魚ばかりと油断すると足元をすくわれるんだよね。
「こんな風に奇襲されたりね!」
見破られた奇襲は奇襲足りえないんだけどね。
壁から出て来たレギオンに集中射撃。
「外道レギオン レベル20 破魔が弱点ですが、銃で滅びそうですな」
まあ、三人で強力な退魔銃を使って強力な退魔弾をフルオートで喰らわせたものね。
うん滅んだね、やっぱり連携って大事。格上でも奇襲さえ防げれば倒せるよね? 限度はあるけど。
そうやって進む事、一時間ほどかな? 異界での体感って当てにしちゃダメだけど、出来たばかりの異界だし、それほど複雑な構造もギミックも無さそうだ。
暫らく進むと、唸り声と悪態を吐く声が聞こえる。
戦闘しているのか……姉の声じゃない、誰の声だ?
「我が剣が通り難い……使い手の未熟も有るが、敵が固いのであろうな。さて依り代が何時まで持つか」
淡々とした言葉、姉の気配がある場所から聞こえる所為で違和感があるけど……
怪訝に思いつつも時間に余裕は無いと判断する。
ハンドサインで停止の合図。タイミングを合わせて3・2・1・GO!
扉を蹴破り突入、銃で牽制しておく。剣が通じるんだ、銃が無意味って事は無いだろう?
「外道ブラックウーズ レベル28 物理耐性 火炎、破魔弱点です。強敵ですが、ミホ殿なら!」
「了解!」
破魔系は昔から得意なんだ! 喰らえ【ハマオン】!
「ウォォォォォォオン!」
効いてるけど滅ぼすには足りない? なら、もう一発【ハマオン】!!
「グァァァァァァ……」
良し、滅んだ。
「ふむ、コノ娘の血族か? 貴様の方が良さそうだ、その体を寄こせ!」
姉が手にする刀がナンカほざいてるな? 姉を乗っ取っているんだろうけど……
「ミホに手出しはさせない!!」
姉が叫んだ。意識があったのか。
「邪魔をするか!」
「私はダメな姉だ、祖母の言葉を鵜吞みにして妹を信じてやれなかった。だが妹が正しかったのがわかった」
姉の顔は真っ青だ、おそらく刀にMAGを吸われてる。なのに……
「悪魔が居る。人間を狙っている。貴様、村正が人間を守護しようと言うのはわかった、だが生贄と引き換えの、妹と引き換えの安全など私はいらない!!」
「と言ってもお前に何が出来るのだ?」
「意地でもお前を繋ぎとめる!」
これは意志力の勝負だ。でも姉が不利すぎる。
姉は霊力を使い切られた状態なんだ……でも、意志の力で生命力を消費して対抗しているんだと思う。
「私は姉だ、死んでも妹を護る!」
そっか、私を愛してはくれてたんだね……お姉ちゃん。
「気概は良し、だが無意味だ」
「それはどうかなぁ」
キノ!?
「なるほどね、君が呪物の封印をしてたんだね? んで、動かされた所為で封印が解けちゃったんだ?」
ココに入れたのはクソ婆だけ……死んでも迷惑をかけるのか!? どっちが疫病神だ!!
「然り! 滅ぼす準備が整ったのかと思ったが、魔を見て漏らしながら逃げ出しおった。かつての主の血族とは思えなかったが、外から来た嫁であったらしいな? 資質も覚悟も無いとは……アレを選んだボンクラの頭を疑うぞ」
うん、残念でも無く当然。アレは自分に権威があると思い込んだだけの愚物だった。
「お主も気に入らん! 武家の娘が銃などに頼るとはな……西隅も落ちぶれたものよ」
なんだそれは? 使える全てを使って何が悪い?
「お前の方が間違っている。武士ならマズは弓馬、槍。刀はその下だ! 使える物は全て使って戦い、勝ってこそ武士! 武芸十八般には砲術も含まれている!」
結局、自分アゲがしたいだけだろう? たかが妖刀が偉そうにするんじゃない!
「ありゃ、ミホにボクが言いたい事を全部言われちゃった。でもミホ、ならどうするの?」
「勿論、あの鈍らを叩き折ってでもお姉ちゃんを取り戻す!」
と意気込んでは見たが、どうやって折れば良いんだろう? 姉を殺して良いなら簡単だけど流石にね……
「ふーん、ねえミホ。質問して良いかな?」
「手短にお願い」
「実戦を経験したミホが剣でマホさんに劣ると今でも思ってる?」
西隅は剣の家とかほざいておいて、道場剣術しか評価しなかった元祖母や母には思うところがある。
「私が霊能の素人に戦闘で負ける訳がないよね」
そうだ、戦場ではなんでもありだ。
相手の隙を狙って当然、決まりきった型や礼儀なんて無意味なんだ!
お綺麗な道場剣術が無価値とは言わないが、戦場で礼儀に拘ってどうするんだ? 相手は悪魔だぞ?
西隅は退魔の家だったハズなのに、道場剣術に拘泥して本質を見失ったとしか思えない。
「良い答えだ……なら、コレをあげる」
キノが取り出したのは鈍い輝きを放つ直剣? 凄い霊気を放っているけど……*6
「ナニコレ、凄い霊気だけど……」*7
「以前、四国で手に入れた草薙の剣。異界産のレプリカだけど」
「なっ!」
「あんなナマクラには負けないよ、とっとと叩き折っちゃえ♪」
全く、軽く言ってくれる。思わず苦笑する。
「じゃあ、サッサと終わらせるね」
私とこの神剣が、姉と妖刀に劣る訳が無いんだ。
しかも妖刀の使い手は協力どころか抵抗している、この状況で負ける理由は無い!!
『
ガキン! ベキッ……
あっさりと一合で勝負は決まった。
「お姉ちゃん大丈夫?」
「ミホに助けられたのか……私はダメな姉の儘だな」
「そんな事はないよ、少なくても助けようとはしてくれたのは知ってた。今回も命がけで助けようとしてくれた」
うん、少なくても口だけではなく行動で私を護ろうとしたのは姉だけなのだ。
少々ひねくれていた私も姉の行動は認めざるを得ない。
「暫くは休養、出来れば東京以外の病院に入院かな? 相模原で良いなら、良い病院を紹介するけど?」
キノの言葉に甘えた方がよさそうだね。
西隅家の後始末
「それで、西隅家としてはどうするんですか?」
キノさんが質問してくる。
「そうね、母の行動で西隅家は歪んでしまっていたわ」
母一人の所為には出来ないけれど、主要因なのは間違いない。
私、西隅シホは絶縁されてしまった娘の伝手を頼るしかできない情けない母親で霊能名家の残りカスだ。
「マホに事情は聴きました。素人にも残滓を感じ取れる呪詛ですし……」
あれだけの呪いを撒き散らす存在を解き放っておいて、相談もせず怯えて死ぬとは……武家の誇りが聞いて呆れる。
おそらく瘴気にあてられたのだと思うが報告なり相談なりしてくれれば、異界化する前に手を打てた筈だ。
自分のミスを隠して寿命を縮めるとは、呆れてモノが言えない。
西隅は道を違えた。決定的に間違えたのは九島組が撤退するまで何もしなかった事だろう。
蝙蝠が出来るのは、二つの勢力が争っている間だけ……片方に独り勝ちを許してしまえば、用済みになるのが当然だ。
八王子でメシアに逆らう勢力が無くなった以上、裏切り者には価値が無い。
こんな事もわからなかったのだ……私達、西隅の家は。
「私が出来る事は娘を逃がして、責任を取る事でしょう」
黙って私を見つめているキノさん。ガイア連合の幹部で恐るべき能力者。
伝え聞く噂だけでもバケモノとしか言えない。
実際に対して見れば、穏やかでボーイッシュな美少女にしか見えないのに……
「具体的な行動は?」
「そうですね、マホと有望な若手を相模原で引き受けてくれるなら、老害とメシアに通じていた裏切り者は私と心中させます」
時期は東京結界が破綻する頃になるのかしらね?
「……娘さんは引き受けましょう」
無理を言った自覚はある。それでも引き受けてくれましたか、助かります。
キノさんがマホ達の後ろ盾になってくれるなら後顧の憂いは無い。
暫らく後の相模原にて
お姉ちゃんが退院できるというので迎えに行く。
キノが社員寮を整備しているので、姉と恵梨香は取り合えずソコに住むらしい。
恵梨香も短大を卒業して働いていたそうだし、キノが引き抜き抜いた事にするのかな?
二人とも覚醒はしているけど成長限界は高くない。
姉がレベル2、恵梨香がレベル8だった。
霊能名家って何だろう……
「ところでミホ」
「何かな恵梨香?」
「キノからこんな物を渡されたんだけどミホは何か知ってる? マホ先輩にもって、似たような品を預かってるんだけど」
ソコにはパンター戦車のカメオとティーガー戦車のカメオがあった。*8
今年22才になる成人女性〝西隅マホ〟とその一年下の後輩〝辺見恵梨香〟は亡くなったと聞いていた高校時代の友人〝キノ〟に言葉をかけられた
「ボクと契約して魔砲少女になってよ」
若く見える童顔で違和感が無いのは救いか呪いか?
羞恥心に襲い掛かる幾つもの試練! 二人は先達の〝西隅ミホ〟に助けを求めた。
「諦めなよ、試合終了なんだよ」ミホの目は死んでいる。
死なば諸共、二人に味方は居ない、彼女達は己の尊厳を取り戻す事は出来るのか、悪魔が蔓延る相模原に二人の慟哭が木霊する。
次回、毒喰らわば皿まで お楽しみに(ウソ予告です)