【カオ転三次】世界が終わるまでのバイク旅   作:山親父

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終末に備えた動きの一部を描写してみる


元軍人達の交渉事

 儂は陸自出身だし厚木は海自の基地なんだが?

 

「まあ、まるっきりの素人が行くよりは良いのか?」

 

 儂の名は春戸 満(はると みつる)元1等陸曹。

 仲間内では教官ニキで通っている男だ。

 

 陸上自衛隊 座間駐屯地へのテコ入れとして前回はモビルワーカーを10台寄付させて貰った。

 今回は追加の10台と相模原で製造した多脚戦車を4両、パワードスーツ型デモニカ自衛隊向け装甲増加仕様〝ノーブ〟を8体寄付する事になった。

 こちらは問題無い、儂は陸自の出身だし有事には出動も有り得る予備自衛官だ。

 実にスムーズに話は進んだ。

 パワードスーツ習熟の為に選抜された8名が北神奈川支部へ出向してくる事も決まった。

 パワードスーツと言ってもデモニカはデモニカだ、実戦でレベルアップさせないと頼りにするのは不安に過ぎる。

 だから、支部のダンジョンで実戦を通してデモニカと共に成長してもらう。

 此処はこれで良い。

 問題は厚木の航空基地だ。

 あそこは海自さんの縄張りなんだがな……

 

 厚木基地にもテコ入れはしたいのはわかる。

 今回はモビルワーカーを10台、ノーブを4機を寄付してテストして貰いたいらしい。

 イデニキは多忙だし研究員だけでは不安なのもわかる。

 確かに、鍛えている自衛官に対して覚醒しているとは言え低レベルではな。

 彼の場合はレベル6で現地人としてはそれなりだが知力型だから体力は知れているしな。

 

 未覚醒の人間が相手なら、彼一人でも臆する事は無いだろうが、自衛官も覚醒者が増えている。

 護衛も無しにメシア教過激派のスパイが居る可能性が高い所へは行かせられない。

 自衛出来ない人間だけで危険な場所に行かせたくない。

 貴重な研究員を失う訳にはいかない。

 

 だから儂か……

 陸自相手なら顔が利くし、空挺相手なら伝手もある。

 だが海自相手だと……困ったもんだ。

 

 名誉顧問はガンオタで軍オタでもあるし、その辺は詳しいんだが顧問自身は動かしたくない……じゃあ他に人材が居るのか? 居ない訳ではないが絶対的に信頼できる人材は難しい。

 顧問自身なら気押される事は無いし、知識もある。

 交渉自体は苦手でも専門家を伴えば、普通に交渉可能だろう。

 儂以上に忙しいんだが。

 

 ヤル気と実力がある黒札ってのは貴重だし引っ張りだこだ。

 顧問程の実力者なら他にやって欲しい事は幾らでもある。

 本人は来たがってたんだがな……

『行きたい行きたい! F-2見たい! ブルーインパルス見たい、上手く行けば訓練も見れるんでしょ? ボクが行く~!!』

 残念ながら書類仕事や資金稼ぎの方が大事なんだよ。

 

 相模原市や厚木空軍基地の在日米軍にだって、メシア教の信者は居るだろうし洗脳されている人間だって居るだろう。

 黒札でもほぼ全員が同意するだろう考えだ。

 例外が居るのかって? 居るぞ、在日米軍なんてどうでも良いから知らないってタイプがな。

 

 話を戻そう。

 在日米軍に所属する人間と友人関係もつ人間は多い、民間人にも自衛官にもな。

 

 メシア教の協力者が居る可能性が高い場所を公式に北神奈川支部のトップが訪ねる? ヤツラが暴発する可能性がある。

 キノネキ個人を狙うなら返り討ちだろうが、周囲を巻きこんでテロでも起こされたら不味い。

 

 仕方が無いから、北神奈川支部でデモニカ部隊の訓練教官を依頼され担当していた儂に白羽の矢が立ってしまった。

 

「教官ニキなら、軍事の常識も知ってるし畑違いでも失礼はしないでしょ? 正式に北神奈川支部に所属してないのに便利使いして悪いんだけど、オブザーバーとしてフォローしてあげてよ」

 

 まあ、軍事のプロとして評価されて頼られるのは悪くない。

 自分じゃ不味いのを説明されて諦めた上での人選だしなぁ。

 お土産にブルーインパルスの飛行訓練、その映像記録でも貰えれば良いんだが……

 

 

 お気楽に憲法9条を掲げる人々

 

 厚木基地に着くとプラカードを持った人間が屯している。

 今世でも左翼と称する連中が五月蠅いのは変わらないらしい。

 やつら、終末を経験したら掌返すんだろうな。

 それとも悪魔相手でも9条が自分を護ってくれると宣うのかね? それで満足して死んでいくならソレも幸せなんだろうさ。

 

 自衛官だって人間だぞ、どんな人間だって日本国民であるなら護るべき民間人ではある。

 好意を持てない人間でも職務なら護るさ。

 だがな、終末後には日本という国が残っているかは疑問だ、自衛官だって給料も貰わずに義務だけ果たす人間は居ないだろうよ。

 自衛官だって食わなきゃならん。

 家族だって居るだろう。

 なら護るべきは自分と家族、そして親しい友人が優先だ。

 さて、敵対していたも同然の売国奴じみた行動をしていた人間を護る余力はあるのかな?

 

 意地の悪い見方をしているな。

 自覚はあるし、教え子にはこんな姿は見せない様に努力もしている。

 でも、儂だって聖人君子じゃない、こうやってデモをしている人間を見ると色々思う所もある。

 

 特に違憲だと騒ぐ弁護士共、ショタおじの見立てでは長くても数年、短ければ年を越えずに終末が来る。

 御自慢の弁護士バッチが飾りにもならなくなるんだが、それで生きていけるスキルが他にあるのかな?

 生きたければ、慣れない農作業や林業でも遣らざるを得ないんだがな。

 少なくとも北神奈川支部には生活保護なんてシステムは無い。

 キノネキは働く気が無いなら追い出す気マンマンだぞ?

 

 おそらくだが、キノネキは横浜と川崎は終末後にはお荷物になると踏んでいる。

 工業地帯であり、貿易の拠点でもある。

 材料が十分にあるなら利用価値は高いのだろうが、材料の当てがない。

 貿易だって、何処とするのか? 横浜港の価値は高いのだろうが、価値に見合う効率で稼動出来るのかは怪しい。

 そしてメシア教の人間が多すぎる。

 これ以上メシア教の人間を抱えたくない。

 メリットが少なくデメリットが大きい。

 だから不穏分子を追い出す場所になるんじゃないだろうか?

 

 横浜の中華街の様に、キノネキに従えない外国人が共同体を作り始めているらしい。

 中華街は独自に霊的な護りを固めているらしいし、メシア教のシェルターも堅固だ、横浜も川崎も全滅はしないだろう。

 そこに追い出す。

 どういう扱いを受けるかは日頃の行いがモノを言うだろうな。

 

 

 自衛隊向け装甲増加仕様パワードスーツ型デモニカ〝ノーブ〟

 

 こいつは〝ハーク〟の装甲強化型だ。

 一概に〝ハーク〟より強いとも言い切れない。

 装甲強度では上なのは間違いない。20㎜の直撃にも耐えるだろう。

 だが、その分重い。

 重量は〝ハーク〟のニ割り増しだ。

 重い分ジャンプでの搭乗者への負荷が高く多用出来ない。

 必然的に歩行移動が多くなるんだが移動速度が大きく落ちる。

 その上で、攻撃力は固定か……微妙だな。

 鍛えているとはいえ一般人が使用する前提ではの話だがな。

 

 フィジカルエリートたる自衛官なら話は別だ。

 だからこそ、コイツが支援用に選ばれたのだろう。

 使いこなせれば強力なのは間違いないんだが民間では難しい位にはハードルが高い。

 だからプロフェッショナルの自衛官にテスト運用をして貰う。

 こちらの言い分はこんな所か。

 運用が確立されている〝ハーク〟は出したくないのも本音だろうが。

 

 ハークには無い特徴が一つだけある。

 通称武器腕と呼ばれる、固定武装だ。

 基本的には【アギ】と【ブフ】を切り替えられる様に出来ている。デモニカからは半独立した装備だからレベルアップで変更される事は少ない筈だと言う。

 デモニカだから変異する可能性はゼロでは無いのが問題でもあるんだが……軍は集団で戦うからな。

 特出した個と言うものは却って害になる可能性もある。

 デモニカの性質上、完全な同一仕様は無理だが。

 

 まあ、頑丈で武器一体型の腕を持つ、重装甲モデルがノーブと言う事になる。

 体力自慢の自衛官ならハークの上位モデルとして運用出来るハズだ。

 弾薬の補給が不要なのもメリットだな。

 終末後は補給が万全とは言い切れないし、自衛官は何所で戦う事になるのかも不明だ。

 継戦能力を重視したモデルとも言える。

 さて、とりあえずは警備を担当している基地隊が使用するのだろうが、北神奈川支部と共闘出来ると良いな。

 常に最悪を考えておく必要がある。

 

 キノネキも深層民の一人だからな、あそこで戦える人間は貴重だ。

 終末時に北神奈川支部に居ない可能性が高い。

 だからこそ、万全を確信できるまでの手を打とうとしているのだろうな。

 

 だが、あまり心配はいらないと思っている。

 あの娘の一番の武器は銃の腕じゃない。

 人柄と面倒見の良さからくる人望だ。

 

 だから大丈夫さ、あの娘に足りない面を補おうとする人間が居る。必ずな!

 

 儂も及ばずながら手伝うしな。

 同行した技術者と目を合わせ、一つ頷いてから司令の待つ、応接室に入室する。

 所詮は下士官だったんだがな。

 今更、海自のお偉いさん相手に名刺が必要になるとは思わんかったよ。

 

 

 在日米軍が仮想敵となる、嫌な想像だが当たりそうだな

 

「するとガイア連合北神奈川支部は高確率で在日米軍が敵になると考えているのか?」

 

「はい、正直嫌な想像ですが、メシア教穏健派は脇が甘く過激派のスパイ、あるいはシンパが混じっているでしょう。そして彼らを起点に洗脳する手段もある。在日米軍がテロに賛同するとは思いませんが……」

 

「洗脳されては正しい判断が出来なくなるか……道理だ」

 

 外れて欲しい予想ではある。

 残念ながら自分でも外れるとは思えないが……事務的な手続きが終わり、軍事絡みの打ち合わせに入って儂の出番だ。

 交渉は好きじゃ無いんだが、そうも言ってられんのさ。

 

「故にコイツをテストして頂きたい」

 技術者が〝ノーブ〟の資料を手渡す。

 司令は素早く資料を確認していく。

「コイツは従来のデモニカを上回る継戦能力を誇ります。民間人の体力では長時間の使用は難しい程に重いのが欠点ですが、練度自慢の自衛隊なら使いこなしてくれると信じます」

 陸自と海自、予算を巡るライバルでもあるが、その実力は疑っていない。

 

「貴方達は此処、厚木基地をアメリカ海軍と共同で使用している。彼らが洗脳され日本を攻めるのならば、最初の敵は……」

 

「我々か……」

 

 黙って頷く。

 

 長い沈黙……

 

「厚木航空基地隊から4名出向させる。よろしく頼む」

「了解しました」

 

 地上戦は専門外だろうし、基地には碌に地上戦力は無い。

 虎の子の基地防衛部隊を一部でも預けてくれたなら、司令も事態を重く見た証拠か。

 彼らは北神奈川支部で訓練と習熟に励む事になる。

 これでノーブを使いこなせる人材が終末時には基地を護る事になるだろう。

 同時にモビルワーカ10台も第4整備補給隊に納入する。

 これもイザという時には武装して戦う事になる。

 

「正直に言えば戦力は幾らあっても足りません。特に海自さんは畑違いの陸戦を強いられる事になる。しかし……」

 

「だからと言って戦わない等と言う選択肢は無い、最悪私自身が銃を持って戦うさ」

 司令が朗らかに笑う。ああ、覚悟を決めた笑いだ……前世で何度も見た顔、出来れば生き延びて欲しいのだがな。

 その為にも我々が成すべき事はシッカリと行うとしよう。

 儂は敬礼すると、技術者を促して足早に退室した。

 

 

 アメリカ軍にも警告はしないとね

 

「よう、ジャック。今度は何の用だ? お連れさんの紹介かい?」

 すっかり顔見知りになっちまった基地司令が気さくに挨拶してくる。

 ウルトラマンスーツで暴れる方が似合ってると思うんだが、すっかり交渉役だ。

 しかもジェネスと併設されている相模原市中央区派出所の正式な軍事アドバイザーなんて肩書が付いちまった。

 給料が上がるのは嬉しいが責任も増えるんだよな~、外部のアドバイザーって事だし上司はキノお嬢さんだけ、同僚も美人さんだからガマンは出来るが……仕事を進めないとな。

 

「おう、こちらはガイア連合北神奈川支部厚木市派出所の所長さんと相模原市中央区派出所の所長さん、同じく南区派出所の所長さんだよ」

「厚木市派出所の村末だ、よろしくお願いする」

「中央区を任せられている冨治(ふじ)と申します」

「南区の新志(あらし)と言う」

 俺の紹介に合わせて司令と三人が握手する。

 村末さんは50代の男性、冨治(ふじ)さんが20代の女性、新志(あらし)さんが30代の男性だな。

 見た目の話で、実際の年齢はわからんがね。只でさえ東洋人は若く見える上に覚醒者だからな、実際には10才位上でも不思議じゃ無いが。

 

「ああ、よろしく頼む。何かあれば頼る事になりそうだしな」

 

 そいつはお互い様ってヤツだ。

 北神奈川支部の担当範囲で在日米軍と共同する可能性がある派出所の長達だ、今の内に顔合わせはしないとな。

 三人には簡単な打ち合わせの後で先に退出してもらった。

  

「君が残るって事はマダ何かあるのか?」

 

「警告ってヤツだな。どうもメシア教の過激派さんが東京で事を起こしそうだって話さ」

 

「やるのかな?」

 

「やるだろうさ……ヤツラに取って、未だに秩序を保っている日本は計算外で邪魔なんだ。問題は何時やらかすのか? ガイア連合の上層部はX-Dayが近いと踏んだようだぜ?」

 

「そうか……本国は滅茶苦茶だと聞いた。日本もそうなるのか?」

 

「それは如何だろうな? ガイア連合も無策じゃねぇだろうし、北神奈川支部のトップも色々動いているよ。今の内に三人を紹介したのも、その一環さ」

 食料や薬の備蓄を増やしているし、戦力も増やしてるんだろうな……細かな所までは教えて貰えんし、想像でしかないがね。

 

「そうか……我々は如何するべきかな? 友人として相談に乗ってくれよ」

 いやはや、元一兵卒の俺が基地司令の友人ね……苦笑するしかないわな。

「そうだな、人員の何割がメシア教の信者なんだ? 北神奈川支部のボスはメシア教以外の一神教信者には寛容だぜ? なんせ従兄妹がカソリックだ」

 

「そいつは朗報だな! 半分は大丈夫って事だ」

 つまり半分が潜在的な敵な訳か……だが、待てよ?

「此処に残ってるって事はメシア教信者でも穏健派だよな?」

 

「ああ、だが気休めにしかならん。違うかな?」

「洗脳だろ? だが時間が無い。スリーパー*1以外を洗脳するなら」

「天使の羽か……」

「ガイア連合にご機嫌なカレーがあるんだ。美味い上に頭もスッキリする最高なヤツさ!」

 

 ガイアカレーってヤツは〝天使の羽〟すら無効化してくれるからな。

 こいつで洗脳を解けば芋蔓式にスリーパーもわかるだろうさ。

 全員は無理でもある程度はな!

 

 時期を見計らって、海自さんも巻き込んでパーティ、親睦会と行こうぜ!

 

 キノお嬢さんに確認したらOKを貰えた。

 

「OKだ、コッチは許可が取れた。チョイと決戦前にカレーパーティと行こうぜ!」

「フフ、了解だ。楽しみにしてるよ。ドリンク類は任せて貰おう」

 

 海自さんには自慢のカレーがあるしな、ガイア連合特製のカレールーを使ったカレーパーティと行こうじゃないか。

 

 メシには五月蠅いのが日本人だ、アメリカの軍人だってカレーに嵌まった奴は多いんだぜ?

 

 俺の作戦と言って良いのかね? 悪だくみは実行されそれなりの成果をあげる事が出来た。

 なんせスリーパー共の仕込みを無駄にして、スリーパー共も検挙出来たからな。

 これで少しは被害を減らせただろうさ。

*1
任務地で長期間普通の生活をしながら指令を待つスパイ




教官ニキにセリフは推測です、実際にどうなるかはキノにも作者にも分かりませんw
実際に終末時に何が起こったのか? 書きたいシーンは思い浮かぶけど、話としては纏まってくれない……次は時間が掛かると思います(プラモも作りたいしw
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