【カオ転三次】世界が終わるまでのバイク旅   作:山親父

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ヨシ、捻挫は大体治った
プロットは壊れたまま……どうせノリと勢いでしか書けないんだし細かい事は良いか!(細かくは無い


ある魔砲少女(成人)の旅路

 偶には気分転換したいよね

 

「うーん、バイクで旅が出来るのも何時までなのやら?」

 

 基本近隣しか走らないんだよねー。

 でも、一度長距離走行もしておきたいので、気紛れバイク旅と洒落込んで見たのです。

 

「東名高速って速い車多いなぁ、覚醒者だし振動や疲れは平気だけど、バイクは普通だからね~」

 カワサキのバリオスちゃんは良いバイクだけど250㏄のバイクって100㎞巡行は基本的に避けるべきだと思います。

 いや、ホントにエンジンが悲鳴をあげてる気がするな~。

 

「細目に休憩して進もうか? ナンパはウザいけど」

 後、排気量マウントしてくる馬鹿とか女だからって舐めて来る馬鹿もいる。

 女性ライダーってだけで生意気だって言いだす、お馬鹿さんには反省してもらおう。

 お漏らしして恥をかいても自業自得だよね~。

 

「ノンビリ走れば良いよね? 走行車線を法定速度で走ってるんだもん、文句を言われる筋合いは無いし」

 後ろからパッシング。

 追い越し車線が開いてるのに嫌がらせかな?

 

 残念ながら、この時代には煽り運転に対する罰則はない。

 ドラレコもタクシーには装備されてるか? その程度で普及率はマダマダ低いしガイアコーポもテコ入れはしていない。

 便利ではあるが、数年で意味がなくなる。

 終末後にはドラレコどころか車やバイク自体が意味をなさなくなるだろう。

 

 山梨を始めとする工業力自慢の支部では、終末後以降の移動手段として付喪神化した車両や悪魔でもある〝朧車〟を使役した車両の確保、製造が始まっている。

 

「まったく、バリオスちゃんとの数少ない思い出作りの機会なんだから邪魔しないでよね」

 ぷくーっと頬が膨れる。

 無視無視、相手にする必要無し!

 

 ムキになったのかな~? ギリギリまで車間を詰めて来る。

 バックミラーで距離を確認……ああ、ブツケル気だな? なら遠慮はイラナイネ。

 

 バイクにぶつかる寸前、左前輪のタイヤがバースト。*1

 いや~不思議な事があるもんだね~、整備不良かな?*2

 

「ふむ、スピンもせずに停車出来たんだ。なら救護義務もないね~」

 一応バイクを止めて、ドライバーの無事も確認できたし、気にせず発車っと。

「ホント、モラルが無い人って迷惑だよね~」

 

 

 海老名SA*3

 

「オススメされたし最初のSAだから寄ってみたけど……」

 

 2003年現在の海老名SAは大規模開発中だ。

 キノが生きた令和の時代ではEX〇ASA海老名として名を馳せる大規模商業施設にまで発展したのだが、この世界では違う形で発展しようとしている。

 

「おっと、アソコかな? キノさんから聞いた〝海老名メロンパン〟のお店は」

 

 メロンの香りが強く外側はしっとりとしたクッキー生地、内側は薄い緑色のふわふわ生地の名物パンだ。

 2018年には48時間以内で最も多く売れた焼きたて菓子パンの数としてギネス世界記録を打ち立てる、美味しいパンなのだが終末では如何なることやら?

 食いしん坊なキノが見逃す筈も無く、ジュネスEX〇ASA海老名店として周囲を開発しているから、完成が間に合えば助かる筈である。

 周辺の名店も積極的に誘致しているようだ。

 東京から高速道路で名古屋に移動するルートで最初のSA且つ大型商業施設となる。

 

「確かに車で移動する人間も多いんだから、此処に店舗を構えると売り上げと知名度UPを狙えるって口説き文句は効いたのかも? 実際はキノさんが終末後も食べたいから保護したかったらしいけど」

 

『ボクが食べたいから頑張るのさ、それで助かる人が居るならWin-Winってね』

 そう言って笑うキノさんを思い出す。

 

「ママー、はやくいかないと! うりきれちゃうよ!」

「急かさないで、お腹に赤ちゃんがいるのよ?」

 三歳くらいの小さな女の子と妊婦のお母さんか……気を付けて欲しいね。

 二人とも綺麗なブロンドだ、顔は普通に日本人顔だけど……ハーフかクオーターなのかも?

 

「きゃっ!?」

 ありゃ、お母さんを気にして歩いていたから誰かにぶつかったみたい。

「おっと、危ないっすよ? ケガは無いっすか?」

 ちょっとヤンチャな感じの作業着のお兄さん。見た目は兎も角、優しい人みたい。

 お母さんも追いついて、ぶつかった人に謝っているし問題無さそう。

 じゃあ、メロンパンを買っちゃおー、三人で食べたいしお土産で二つ余分に買いたいねー。

 

「有難うございましたー」

 良かった、お土産の分も含めて確保出来た。

 

 お店を出たら、先程の母娘とすれ違う。

「ええ~! もうないの~!!」

 そして後ろで響く声。

 ありゃりゃ、残念だったねー。

 

 ナンパを避けながら、御飯。

 キノさんが美味しいお店を選んで勧誘したらしくて、御店選びにすっごい悩んだ。

 機会を作ってアンコウチーム皆でまた来ないと。

 

 食後に缶コーヒーを買って一休みしてたら、さっきの女の子が頬を膨らませて未だ怒ってる。

 気持ちはわかるけど……

 思わず苦笑する。

 

 少し離れた所に成人男性が居て見守っている。

 顔は兎も角オーラが似てるからお父さんだろう、流石に幼い女の子を一人にはしないか。

 

「ん? どうしたんすか?」

 其処に通りがかったのは、これまた先程のお兄さん。建築作業員で食事休憩ついでにお使いかな?

 

「ほうほう、それは残念だったっすね……でも我儘言って、お母さんを困らせちゃダメっすよ?」 

 

「おにーさんはなにしてるの?」

 

「俺っすか? お使いっす」

 手持ちの大きなビニール袋の中にはペットボトルが沢山。

 お茶やコーヒー、コーラなんかの炭酸飲料。その数10本以上。

 

「うわー! イッパイだー! おもくないの?」

 

「平気っす、俺は力持ちなんすよ?」

 

 見るからに鍛えている成人男性だもんね~。

 

「これから暑くなるっすからね、水分補給はしっかりしないと」

 

「おしごとなの?」

 

「そうっすね、あそこの大きな建物を作っているのが俺と仲間達なんすよ」

 

 ほほう、あのお兄さんは九島組の人かな?

 それにしても、子供受けする人みたい。子供も直ぐ馴染んでいる。 

 

「お母さん心配してるっすよ? そろそろ戻らないと」

「うん……」

 本人も判っては居るんだろうね、しぶしぶとだけど頷いた。

「一人で大丈夫っすか?」

「へーきだもん! おにーちゃんバイバイ」

 手を振って離れていく。

 和む一時だな~。

 

「で、其処のお姉さんは俺になんか用っすか?」

 おっと、見てたのに気付かれてたか。

「助けが必要になるかなって見てただけだよ」

「なんだ、そうっすか」

「子供の相手が上手だね」

「俺がガキなだけっすよ」

 照れて笑う姿はチョット可愛いかも……

 

「俺は高所(たかしょ)鳶夫(とびお)って言います。建築作業員っすね」

「私は建部(たけべ)佐緒里(さおり)、巫女さんだね」

 

「巫女さんっすか!?」

 そんなに驚く事かな? 巫女さんがライディングジャケットにジーンズ姿でバイクに乗ってるのか。

 驚いても仕方ないかも……

 

 

 異能者が二人、来るぞ佐緒里(さおり)ん!

 

「そんなに驚かなくても」

 思わず苦笑い。

「いや、ビックリっすよ。本職ってヤツっすか?」

 深読み出来るセリフだけど、考えすぎかも知れない。

 九島組の社員とは限らないし、協力会社の人間って可能性もある。

 チョットだけ霊気を漏らしてみよう。

 

「おっと、ナルホド。本職の方っすか。改めて、九島組社員〝ガイア連合銀札〟の高所(たかしょ)っす」

 

「やっぱり九島組の人だったんだ? あたしは茨城寺社同盟の〝ガイア連合金札〟だよ」

 梅昆布ネキが主導した繋がりでしかないんだけど、対外的には組織名が無いと不便って事で決まった名前だそうだ。盟主は居ない、梅昆布ネキが逃げてるらしい。同格の同盟だから合議制で動くのだとか……

 

「んじゃ、休憩も終わりですんで俺はこれで」

 頭をペコリと下げてから歩き出そうとして……

 

 パチン

 

 何処かで霊力が弾けた気がした。

 

「今の……」

佐緒里(さおり)さんも感じたっすか? 俺の気の性じゃ無さそうだ」

 

 周囲を探る。何時もはチームだから、こんな時は(ゆかり)ちゃんに任せきりだった弊害が出ている。最低限は鍛えないとダメだね。

 

「何か見つけた?」

「いえ、何も……違和感は感じるっすが」

 

 そんな時、女の子が走り寄って来た。

 

「たすけて、おにーちゃん! ママがさらわれたの! だれもしんじてくれないの!! パパもおきないの!!」

 

 この娘のお母さん? あの妊婦さんか!

 

 若い母親、お腹には恐らく臨月に近い子供。

 警告として聞かされたメシア教の暴虐を思い出す。

 

「まさかとは思うけど……」

 

「アガシオンを放ちました。俺らよりも索敵能力は高いっす、これで何かわかれば……」

 

「おにーちゃん?」

 

 鳶夫(とびお)君には索敵に集中して欲しい、ここはあたしが落ち着かせないと。

 

「大丈夫、お兄さんは貴女を信じてくれたよ。今、お母さんの行方を捜しているから、信じて待ってて」

 泣きながら震える女の子を抱きしめてあげる。

 少しでも安心させてあげたい。

 

「見つけたっ! ダークサマナーだな!? 俺らの縄張りで舐めた事を!!」

 

 そして電話、上司に連絡かな? っと、そうだ、あたしも北神奈川支部に連絡した方が良さそうだ。

 

「兄貴、俺らの現場の目と鼻の先で女性が攫われたっす! 被害者は若いお母さん。お腹が大きな妊婦さんっす」

 

「ああ、藤香(ふじか)さん? 海老名のSAで妊婦さんが誘拐された。犯人はダークサマナーらしいって居合わせた九島組の男の子が言ってる」

 

 それぞれに連絡と報告は済ませた。後は……

 

「「舐めた馬鹿に思い知らせる!」」

 

「アガシオンを貸すっす、バイクで先行と追跡。お願いして良いっすか?」

「了解、引き受けた!」

 アガシオンの視界が共有される。あの白いバンだな?

 

「貴女、お名前は?」  

 

「せな! 〝なるみせな〟だよ、おねーちゃん!」

 

「了解、せなちゃん。お母さんを助けて来るからね!」

「空き缶は俺が捨てとくんで」

 

 セルを回してエンジンを掛ける。

 ヘルメットを被り、グローブを付けたら、すぐさま発車。

 

 ブオンと唸りをあげるエンジン、さあ行くぞバリオス。悪人退治だ!

 

 

 走れバリオス

 

 バリオスは激怒した。

 必ず、かの邪智暴虐(じゃちぼうぎゃく)のダークサマナーを除かなければならぬと決意した。

 バリオスには人間の欲望がわからぬ。

 バリオスは付喪神に成りたてのバイクである。

 可愛らしい主人を背に乗せ、道路を走り回って存在して来た。

 けれども主人の必死の願いには誰よりも敏感であった。

 

「もう少しで追いつく。無理をさせるけど頑張ってバリオスちゃん!」

 

 コレだけで勇気百倍である。

 主人は普段バリオスを気遣い、無理をさせる事が無い。

 なのに今回はバリオスの性能限界まで振り絞って追いつこうとしている。

 ならば、逃がしては成らぬ邪悪であり、主人は愛車たるバリオスなら追いつけると信じているのだろう。

 バリオスは奮起した。

 

「おわぁ? なんか急に速くぅ??」

 

 主人が望んだのだ、エンジンが焼き付こうとも追いつき、かの邪悪を退治するのだ!

 

 路行く車を、追い越し、バリオスは黒い風のように走った。

 

 

 よくいる小物な悪党

 

「ちきしょう! 何でバレたっ!」

 

 北神奈川支部を出禁になって逆恨みした小悪党は歯軋りした。

 そもそも、キノが温情で出禁で済ませたのに、恩を仇で返す愚か者だった。

 元々、素行が悪くて銀札に成れなかった男だ。

 

 大体、ギアスを破れたからといって禁止された装備の横流しをしていたのだ、命が無事だっただけ感謝するべきなのだが、他責思考の愚か者は反省と言う言葉を知らない。

 

 そして、自力で退魔の仕事を受けて失敗。

 ブラックリストに載っていた事もあって、退魔で生きる事が出来なくなった。

 

 キノとしては現状を受け入れ、諦めて市井の一般人として暮らすなら、これ以上追い詰める気は無かったのだ。

 結果論とは言え、甘すぎだったが。

 

 この男程度が入手出来る装備でも他所では高く売れる。

 とは言え、小遣い稼ぎ程度の悪行で命を奪うのもやり過ぎと考えた。

 

 罪は罪、だが命を持って償わせる程の損害でもない。

 そもそも、退魔は命がけの仕事。多少アイテムを融通するくらいは皆やっている事だ。

 完全に禁止できる事ではない。

 この男は阿漕にやり過ぎたから追放されたが、程々なら目くじらを立てる事も無かった。

 

 反省して大人しく暮らし、終末を迎えたなら再び退魔士として生きる道もあっただろう。

 

 否、人手不足なのは何所も同じだ。

 支部を移り、下積みからやり直す手もあった。

 その未来は消えたのだが。

 

 メシア教過激派の走狗として、一般人の誘拐に手を染めたのだ。

 ガイア連合が完全な敵に回る。

 

 男は軽はずみが過ぎた、後悔は先に立たない。

 

 

 九島組は北神奈川支部の先駆け部隊

 

 さて、此処で視点を海老名SAに戻そう。

 

 佐緒里(さおり)を見送った鳶夫(とびお)は被害者の娘〝せな〟の案内で父親の元へ急ぎ向かった。

「ほうほう、状態異常【睡眠】っすね? 俺でも解る程度だし強度は低いハズっす」

 ウエストバックから魔女の里製の【パトラストーン】を取り出し使用する。

「ううっ」

「パパ!」

 目覚めた父親の容態を確認しながら質問していく。

「大丈夫っすか? 何が遭ったか説明できるっすか?」

「急に眠気が……そうだ! 妻は!?」

 

「誘拐されたっすが、知り合いが追跡中っす。仲間の応援もありますし、直ぐ助けるっすよ」

 

「誘拐って、君は警察なのか? 違うな……作業服だし職人の気配がする」

 鳶夫(とびお)は頷き、肯定する。

「建築作業員っすね、ただし俺らは此の辺の霊的守護を担当してるんすよ」

 そして誇りを持って、こう答えた。

 

「急にオカルトが出て来て混乱するかもですが、今は俺らを信じて欲しいっす」

 父親は黙って頷いた。

 

「待たせたなトビー」

 偽装して普通に見せた〝アーマード・ハイエース〟が3台やって来た。

「その綽名、止めて欲しいんすけど……っと、それどころじゃない」

 文句を言えば長くなる。無駄にできる時間などない。

「敵は名古屋方面に逃走中、厚木IC*4を過ぎるとこっす」

「了解、乗れ!」

「せなちゃんもパパさんも乗って下さい。ママさんを助けるまでは、護衛されてて欲しいっす」

「わかりました」

「うん」

「助かるっす、疑問には車中で答えるっすよ。ただ限度があるのは承知して欲しいっす」

 

 こうして家族を護りながら九島組の精鋭が追跡を始めた。

 家族の絆を断ち切ろうとする輩には容赦がない漢。

 三代目、鬼太郎に率いられて。

 

 

 愛と情熱の魔砲少女(合法ロリ)

 

「追いついたぁ!」

 

 だが、これからどうする? 誘拐されたのは妊婦さん、無理に止めようとして事故でも起こされたら、お腹の赤ちゃんが……

 タイヤをバーストさせれば止まるだろうが、人質が妊婦さんなのだ。無理は出来ない。

 

「なら、ゆっくり止めるだけだよ!」

 

 胸元のカメオに意識を集中する。

 佐緒里(さおり)の霊力に反応してデモニカが装着される。

 光が包まれた体に装甲が施されていく。

 

 ジャバラを思わせる装甲が施されたワンピース。

 右肩に3.7cm対空機関砲をイメージした大砲を背負っている。

 

「魔砲少女オストヴィントちゃん! 愛と情熱の魔砲少女! あ~なたのハートを~、撃墜よっ!!」

 

 この恥ずかしい決め台詞は何とかして欲しいんだけどな~。

 セリフも含めて儀式魔法として構成されてる……つまり仕様だ。変更不可能、ちくしょーめぇ!

 

「バリオスちゃんゴメン!」

 誘拐に使われたハイエースの前方に回り込みバイクから飛び降りる。

 

「と ま れ ~~~!!」

 

 両手で抑え込み車を減速させる。足元から火花、脚部にもダメージがある。

 

「けど、止めたぁ!」

 

 このハイエースは後輪駆動、前方を浮かせても意味がない。

 だから力尽くで止めた。

 フロントが手の形にへこみ、恐怖に引きつったドライバーの顔が見える。

 佐緒里(さおり)はニヤリと笑って見せた。

 

 周囲に結界が張られる。

 そして飛び降りて来る赤い二本角のデモニカ。

 

「ウルトラマンタロウさんかぁ」

「おうよ、ご苦労さんだな。オストヴィントちゃん」

 茶目っ気を出した挨拶。何方もキノが支援するデモニカ使い。

 直接の面識は無いが、お互いに噂は聞いていた。

「そのまま、押さえといてくれ。先ずは運転手を引きずり出す」

 配下にドアを引き剝がさせ、ドライバーを引きずり出して取り押えさせる。

 この場に居るのはレベル8~10を誇る精鋭達。

 限界まで鍛え上げた彼らなら素手で車を壊す事も容易だ。

 

 次は人質を抱えているダークサマナーだ。

 タロウが左側のスライドドアも引き剝がして、犯人と向き合う。

 犯人は震える手でナイフを取り出し妊婦に向けようとして……刃が存在しない事に気付いた。

 

「なっなんだと!?」

 

 驚愕に震える犯人。

 

「おめぇよぉ、【アギ】だって極めれば目標以外に熱を漏らさず攻撃する事が出来るんだぜ?」

 佐緒里(さおり)は瞠目する。恐るべき練度。アレが出来るのがウルトラマンか……

 

 

悪あがきはお約束

 

「ちきしょう! 一人じゃ死なねぇぞ! こいつも道連れだぁ!!」

 COMPを翳して、悪魔を呼ぶ。〝ザントマン〟レベルは10、一般的な異能者が相手なら恐るべき脅威。

 しかし、此処に居るのはレベル30に至ったデモニカ使いが二人とウルトラマン直掩を任務とする精鋭部隊だ、脅威とはならない。

 故にダークサマナーと悪魔の狙いは人質たる妊婦だったのだが……

 

「人質が居ねえ!?」

 

「判断が遅せぇ」

 嘲笑するタロウの腕の中には人質がいる。

 一瞬の隙に奪還されていたのだ。

 COMPを操作する為とは言え、人質から眼を離すからこうなる。

 

 犯人は追跡されている時点で悪魔を待機させておくべきだった。それが可能なMAGが有ればの話だが……

 

「後は任せたぜ〝魔砲少女〟」

 

「ストレス発散のチャンス、有難うございます」

 佐緒里(さおり)にだって矜持がある。

 北神奈川支部が誇る、ウルトラマンの技量を見せつけられるだけで終わるのは面白くない。

 

「じゃあ、逝こうか……」

 

「ま、待てよ……そうだ! メシア教のヤツラの情報を渡す。だから……」

 

『オストヴィントちゃんで良いのかな? こちらティーガーちゃん、ダークサマナーのCOMPからの情報でメシア教過激派の検挙に成功した』

『こちらはパンターちゃんよ。後顧の憂いは無いから、遠慮無くやって良いわよ』

 ふふっ、所属は違っても魔砲少女同士で連携できるのは悪くない。

 相手は親友の姉と友人だ。それなりに親交もある。*5

『こちらオストヴィントちゃん。状況は了解』

 

「敵に情けを掛ける理由は無いみたいだねぇ」

「なんでだっ! テロリストの情報が不要だってのか!」

 

「もう制圧された敵の情報に価値は無いでしょ?」

「へっ??」

 呆けるダークサマナー。こいつは3流以下だな……判断が遅い、頭も悪い。

 キノさんがCOMPを取り上げない理由は考えなかったのだろうか? ヤツのCOMPの情報は北神奈川支部に筒抜けだったのに……

 流石に白昼堂々と一般人を攫うほど頭が悪いとは思わず、後手に回ったのだが。

 

「頭が悪すぎるアンタにもわかるように言おうか? 詰みだよ【至高の魔弾】」

 オストヴィントちゃん最強の攻撃魔砲。

 キノが愛用する万能属性、さらに【貫通】を自動付与する。

 この魔法はキノが親友と友人の切り札になる様にと〝スキルカード〟を提供して組み込んだ特別製。

 キノがお仲間にしてあげると冗談めかして口にした必殺技だ。

 〝ザントマン〟は跡形もなく消し飛んだ。

 

 【ザン】や【ジオ】でサマナーを無力化しても良かったのだが、一撃で悪魔を潰す事を選択した。

 心を圧し折り、抵抗する気力を奪う事が目的だった。

 ウルトラマンへの対抗心が無かったとは言えないが。

 

 

 キノの〝お仲間〟

 

「おら、乗れっ!」

 捕縛されたダークサマナーが連行される。

 これは九島組に任せれば良い。

 

 回収されたダークサマナーのCOMPは北神奈川支部の技術者が解析するだろう。

 北神奈川支部で支給されたCOMPは【十戒プログラム】を入れるかどうかは任意、しかし【十戒プログラム】を入れなかった術者は全COMPに仕掛けられたバックドアで念入りに監視される仕組みである。

 

 キノは甘いが性善説よりも性悪説を信じる人間だ。

 そして人間の悪意を他人よりも多く見て来た存在でもある。

 軽度とは言え罪を犯した人間を野放しにする筈が無い。

 

 自分に出来ない仕事は出来る他人に任せる。そして任命した以上は責任はキノが取る。

 適性が無いと自嘲するキノが支部を運営する上で最低限必要だと考えているスタンスだ。

 言うは易し、行うは難し。

 完璧に出来ている等とは口が裂けても言えないが、そう在ろうと努力を続けているキノは、それなりに理想の上司を演じる事が出来ている。

 

 今回、出禁にした術者からCOMPを取り上げなかったのも、取り上げたら不正な手段でCOMPを入手して気付かない所で悪さをするに違いない。

 ならば無理に取り上げるよりも、そのまま使わせて無自覚のスパイに利用しようとした為だ。

 

 どこか甘いキノは犯人が反省して、一からやり直す事を期待しても居た。無駄だったが……

 

 〝トップは多少甘く優しい位で良い、その補佐をする為に俺が居る〟これは二代目鬼太郎〝九島喜太郎〟の言葉だが、出来ない事の多いキノを周囲の人間が最大限に補佐する。

 これを元避難民達もが実践する。

 北神奈川支部はこうして結束しているのだ。

 

 

「ゴメンネ、バリオスちゃん。きっと壊れたよね……」

 誰に言うでもない独り言。

 しかし返答はブオンと言うエンジン音。

「ほえ!?」

 ガードレールに寄りかかっていたバリオスがトコトコとアイドリングをしながら直立する。

「バリオスちゃん、生きてるの?」

 無機物であるバイクに生きてるかと問うのも可笑しいのだが気分としては間違いじゃない。

 

「付喪神に成ってるね」

 後ろから声が掛けられる。

「キノさん!?」

 

「うん、間に合うかどうか不安だったけど……Aチームでは一番乗りだよ」

 付喪神になった……あたしのバリオスが? ホントに!?

「じゃあ終末が来ても?」

「大丈夫だよ。そうだね、お世話に為ったし強化しておこうか」

 そう言ってキノはスキルを付与する。

「【物理耐性】と【火炎耐性】を付けておいたよ」

 こんな事があって良いのか? 最期の思い出作りのつもりだったのに……

 

「これで佐緒里(さおり)ちゃんもボクのお仲間だね」

 キノが微笑み、さらに言葉を紡ぐ。

「きっとAチーム皆が間に合うよ、終末後も一緒にツーリングしよう♪」

 可愛らしくも優しい微笑み。

 ああ、ダメだ……あたしも堕とされちゃった。

 

 

 後処理が終わり。お別れの時の事。

「おねーちゃん、スゴイ! カッコいい!! わたしもまほーしょうじょになる!!」

 せなちゃんがお礼と共に言い放ってくれた。

 佐緒里(さおり)に押し寄せる羞恥心。

 20才を超えて、魔砲少女……純粋に賞賛してくれる少女が悪い訳ではないんだけど。

 

「色んな意味でお仲間だよ」

 後ろで呟くキノの目は死んでいた。

 多分佐緒里(さおり)の目も同じく……

*1
【ザン】を放っています

*2
すっ呆け

*3
サービスエリアの略

*4
インターチェンジの略

*5
マホと恵梨香の先輩後輩コンビ




おかしいなぁ……北神奈川支部の終末を書いてた筈なんだけど?
色々、お話が増えていくんだ

高所(たかしょ)鳶夫(とびお) 九島組、高校新卒社員。
成長限界レベル12、現在レベル10の期待の若手。
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