予想しとけ? そうかな……そうかも……
やっぱり裏切り者は居るよな
「だけど想定よりマシなのか?」
ある意味では、想定より酷いかもしれない。
米軍相撃つ。
メシア教過激派に組する反乱軍と正規の指揮系統に従った米軍兵士が戦っている。
基地内に同居する日本の陸自は攻め寄せて来た敵を迎撃中だ。
配慮してくれたのさ……横槍は入れさせないから、内部の事は自分達が納得できる様に処理しろってね。
実際、陸自さんに仲間を殺されたなら、お互いにシコリが残りかねないからな。
洗脳された被害者は勿論、過激派の狂信者でもだ。
どっちなのか簡単には区別が付かねぇんだから……
キャンプ座間。在日米陸軍司令部のある基地。俺の古巣。
そこで見せつけられた凄惨な光景。
昨日までの友人が自分に銃を向ける。
これが完全に自分の意思で裏切ったなら、まだマシだった。
恨むだけで済む。
けれど、目に光が無い。
ぶん殴って黙らせる。
俺の悪だくみが効いて、これでも洗脳被害者は減ってるんだぜ?
空には嫌らしく笑う悪魔が居る。天使を騙る悪魔だ。
穢教鳥と言われる訳だぜ。
俺はアレを天使だとは認めねぇぞ!
「我々に従うのです、人の子よ。私が神の国に導きましょう
「OK!」
返事と共に
爆炎に包まれる穢教鳥、手前らに苦しめられた人間の呪詛がタップリ詰まった特別製だ、堪能して滅びろ!
キノお嬢から貰ったショットガンを手に取る。
ウィンチェスターM1912、キノお嬢が付喪神にした12ゲージのショットガン。
人間が育てた使い魔みたいなモンらしい。
【銃貫通】と【銃ギガプレロマ】それと【マハラギ】が撃った弾に宿る。
俺のジャックスーツには遠距離攻撃の手段がないからねぇ……
古い銃をコレクションするのが、キノお嬢の趣味なんだが、古い年経た銃ってのは魔力が宿る事が多い。
しかも、お嬢には付喪神化を加速させる霊能もあるらしいんだよな。
メンテや試射をするうちに付喪神に成っちまったなんて事も多い。
んで死蔵するより使って貰おうってんで、他人に譲る。
コレクションが増えねぇ訳だ。
笑っちまうね。
だが、そういうお嬢だから、皆に好かれる。
正直、俺も嫌いじゃ無い。
勘違いは困るぜ? 女性としてじゃねえんだ。
そうだな、頑張る姪っ子を応援する様な気持ちになるって言えば良いか。
あの小さな肩に背負った荷物を軽くしてやろう。
そう思える良い子なんだ。
一応成人女性なんだが、見た目がどうしてもなぁ。
そんなお嬢の危惧が半分当った。
最悪は在日米軍全てが敵に回るケース。
これは回避できた。
だが、これはこれで胃にくる光景だぜ。
一緒に酒を飲んだ仲間が、背中を預けられた戦友が目の前で殺し合うんだ。
空では穢教鳥が楽し気に笑ってやがる。
貴様らは許さねぇ、だから死ね!
12ゲージを喰らわせてやる。滅ぶまで御代わりもやろう、だから消えろ!
「チクショウが!」
こいつが終末までの、東京が滅びるまでのカウントダウンが始まって直ぐの話さ。
仲間だったんだ、助けたい。
けど俺には方法が無い。
F**kin' Shit! これでも被害は軽減出来てるんだから嫌になる。
地獄は始まったばかりだってよ。
明確な敵である穢教鳥と洗脳された兵士を含めて五分五分の戦力比。
「何処まで被害が増えるやら……」
あまり目立つと、洗脳された戦友達に襲われるんだ。
ゲリラ戦を展開して穢教鳥を一匹ずつ撃ち滅ぼす。
自分の基地でゲリラ戦って変な気分だったぜ。
こんな事が三日続いた。
漸くマトモな人員の仕分けが済んだらしい。
基地司令が出て来て、簡易陣地を作り、籠城戦の構えをとる。
幸い物資はあるんだ。
敵は物資も人員も少ない。【パトラストーン】や【メパトラストーン】の補給があった御陰で、助けられる仲間も増えて来た。
このままじゃ敵さんもジリ貧なのはわかっている筈。内部の穢教鳥は残り僅か、外部からの敵は陸自さんが防ぎきってる。
さて、どうでるんだ? あくまで基地制圧に拘るのか? それとも……
「司令、報告です! 攻め込んでいた穢教鳥が、北上を開始しました! 此処を諦めたのだと思われます!」
凌ぎ切ったか……だが、最初の予定通りには行かないねぇ。
出来れば、陸自さんと共同で穢教鳥を殲滅しておきたかったんだが。
「ジャック、有難う。後は大丈夫だ、行きたまえ」
おい、良いのか?
「我々にだって意地がある。神の使いを詐称する悪魔などに負けた儘でいられるものか!」
気持ちはわかるし、対策も出来たんだ。助かるけどなぁ……
司令の頭のヘルムがキューって鳴きやがる。
〝ドルフィンヘルム改〟精神的な攻撃を防ぐ性能は優秀な防具だ。性能は、な。
見た目は、なあ? そもそも、イルカが鳴き声を上げるのは元々なのか? ふざけて付けたオプションか?
緑区の技術者に言わせると、山梨の技術者はやつらの上位互換らしい。アイツらのノリを知ってるとジョークアイテムなんじゃないかって疑っちまうんだが?
「早く行け! それから、今の光景は忘れてくれよ?」
ウインク。頭のイルカもキュイキュイ鳴く。
まったく、茶目っ気タプッリな爺さんだ。
使えるなら使って生き残るのが正解か。酒の席での笑い話に出来るだろう。
「じゃあ、行かせて貰うぜ。不覚は取らんでくれよ?」
司令の幸運を祈っておく。
さあ、穢教鳥共。ウルトラマンジャックが行くぜ。
精々怯えさせてやる。
仲間を甚振ってくれた分、タップリ利子をつけて返してやるよ。
たった一人の援軍
「さて、カッコつけたは良いが厳しいかな?」
地上は混乱しているから、飛行できる俺が先行した。
単純に戦うなら負ける気は無い。
でも、敵はあからさまに時間稼ぎを狙らっている。
此処、厚木海軍飛行場は在日米海軍と海上自衛隊が共同で使用している場所だ。
元々、装備も人員も米海軍の方が上。
更に穢教鳥と言う増援もある。
「海自を見捨てる気は無いんだし、先行したのは後悔してないけれど……」
海自のノーブは頼りになる。タフだし、陸戦には不慣れな隊員たちのフォローもしながら攻撃を続けている。
「でも、数が違う。そして滑走路を確保されちまった」
ノーブ達のレベルは30、短期間で限界まで鍛え上げてる。でも4機しか居ない。モビルワーカーの支援もあって互角に戦っているけど……
「攻勢に出れる訳じゃ無い」
敵はどう出るんだ? 海軍機で地上爆撃をする? 馬鹿な考えって思うけど、メシアンに常識を求める方が馬鹿だ。
それに、輸送用のヘリでも地上攻撃が出来ない訳じゃ無いよな?
具体的な装備は軍機だし、想定外の戦力がある可能性だって捨てきれない。
だから、滑走路を取り返す、最悪でも使えなくしたい。
それが海上自衛官たちの考えだ。
作戦意図はわかる。
けれど、その為の戦力が選ばれた戦闘機乗り、空の勇士と整備兵ってのは頂けない。
対悪魔戦闘の素人が命を賭けて、穢教鳥と、それに同調する米海軍を同時に相手取る?
無謀だ、成功確率も低いだろう。
国防に命を賭けるのが自衛官の仕事と言われれば否定は出来ない、する気もない。
でも、無意味に死ぬのは違うだろう?
厳しい事を言うが、無駄に死を重ねるのは犬死だ。
悪魔に対抗する、退魔のプロが此処に居るんだ。
自衛官達にとって、俺は子供なんだろう。
護るべき民間人でもあるんだろう。
でも、俺は悪魔退治の専門家なんだよ!
「さあ、穢教鳥共! 貴様らを地獄へ送ってやる!」
どうせ、一時間もすれば仲間が追い付く。
それまで、飛行場を使わせなきゃ良いんだ。
派手に暴れれば、被害も出るだろう。
少なくとも、飛び立つ戦闘機の数は減らせる。
へりは難しいけどな。
満身創痍
援軍は未だ来ない。
「へへっ、やっぱ無理しすぎたか?」
装甲はひび割れ、動きも鈍くなってきた。
「だけど!」
負けた訳じゃ無い! 俺は負けない!!
「ウルトラマン、無理をするな! 後は俺らに任せて引け! 頼む、逃げてくれ!!」
自衛官の人達が庇おうとしてくれる。
でも彼らより俺の方が強靭だ。装甲が傷ついても尚、このスーツが俺を護ってくれている。
空では穢教鳥が俺を嘲る。
諦めてしまえと、無様に逃げ出せと……
そうは行かない!
ヘリには行かれたけど、戦闘機はF18は飛ばさせない。
あれを行かせたら……みんなが、相模原の仲間がやられる!
「だから、死んでも引けない!」
頭の隅で、自身の死を意識する。
でも無視する。
俺は負けない。負ける訳にはいかないんだ!
イザとなれば特攻だってヤッテやる。
そんな決意を固めた時、声が掛けられた。
「おい、進次郎。マダ行けるはもう危ない、お前の言葉だぜ? 実践しろよ」
笑いを含んだ声。
この声は……
「待たせたな!」
「真打登場ってね」
「苦戦している様だな、手を貸そう」
大学の友人達。
勉強でも遊びでも、そして退魔でも一緒に行動して来た男友達四人衆。
「遅いぞ」
援軍が来た。でも、こいつ等だけか?
実力は十分だが乱戦には向かないヤツラだぞ?
「心配いらねぇよ。こいつがあるからな」
リーダー格の〝英一〟がゴツイベルトをポンポンと軽く叩く。
「んじゃ、行くぞ?」
〝英一〟の声に合わせてポーズを取る。
「「「「変・身ッ!」」」」
光った?
「「「「仮面ライダーG3、参上!」」」」
其処に居たのは仮面の戦士。仮面ライダーのコードネームで呼ばれるデモニカのシリーズ。
彼らのは〝霊山同盟支部〟が開発改良した。量産に最適化された品だが。
「おいおい、デモニカなんて何時手に入れたんだよ?」
つい先月までは金が足りねぇって頭抱えてたのに?
「うん? それこそ先月だよ。足りない金は井出さんに借金、軽くカスタムもしてくれてな? 借金を引き受ける変わりにフォローを頼まれたんだよ」*1
頼まれなくても友人を見捨てる気は無いけどな。なんて呟いている。
「良い人だよな」
〝英一〟の言葉が沁みた。子供だった俺を後見して、色々助けてくれる。自主性を重んじて、過干渉はしない。
有難い、半ば親父みたいに思ってる。直接は言えないけどな、マッドが過ぎるんだよ。
「そんで、デモニカを育てるのに強行軍よ」
あれは辛かったな……
〝三郎太〟が愚痴を零す。
「その甲斐はあったぜ? レベルは28、カンスト出来なかったのは残念だが、戦力として足手纏いにはならんぞ?」
自信に漲る〝晃四郎〟が頼もしい。
「さて、ウルトラマンと仮面ライダーの共同戦線だ、ヘマはスンナよ?」
〝大悟〟の言葉に思わずニヤリと笑う。
反撃はこれからだ!
「おい、青少年達、青春は時と場合を考えて楽しんでくれや」
苦笑混じりのノーブ乗りの声。重装甲を活かして、時間を稼いでくれてたのか。
こいつは失敗だな。
「じゃあ、無駄話の分を取り戻すぞ!」
「「「「おう!」」」」
もう死ぬ気も負ける気もしなかった。
その名はエース
「へぇー、良い度胸じゃないか」
敵に感心してしまう。あまりの無謀さに呆れた、が正確だけど。
此処は相模原市南区派出所の防衛範囲。
キャンプ座間から穢教鳥が北上したと聞いて、防衛線を引いたんだけど……
この僕、ウルトラマンエースの持ち場に一匹で突撃してくるなんてね。
「ふん、地上に縛られた木偶人形を恐れる理由などあるものか」
自信満々な〝アークエンジェル〟。
なんで僕が飛べないと決めつけてるんだか? まあ、その過信のツケは払わせるけど。
僕は舐められるのが嫌いなんだよ!
「死ね」
【ガル】を使った高速飛行。同時に両手で【ガルーラ】を使用して合成、撃ち放つ!*2
【準貫通】を乗せた攻撃は、例え耐性持ちでも無力化出来ないだろう。
例外はいるから油断は出来ないけど、格下の馬鹿に無力化出来るとは思わない。
「馬鹿な……」
首を落とされてから、身構えるって馬鹿はお前だよ。
とは言えだ、敵の数が多い。
〝エンジェル〟が大半だけど〝アークエンジェル〟もチラホラ混じっている。
一般の防衛隊だと辛いかも知れない、援護したい所だけれど……
「私は油断した愚か者とは違うぞ」
〝プリンシパリティ〟が来た。
一対一での戦いに拘るのは馬鹿だと思うけど? 敵は確実に倒せよ、強力な敵は囲んで棒で殴る。基本だろ?
つまり、僕をマダ舐めてるんじゃ無いか!
「御託を言ってないで、かかって来い! 怖いのかい?」
「誰が貴様如きを恐れるか!」
この程度の挑発に引っかかるお前は馬鹿だよ!
すかさず【ツインガル】を撃ち放つ、敵は笑って避けた。
「その程度、避けられないとでも……グワァ!」
「サポートサンキュー!」
地上から感謝の声。
地上後方からウルトラマンジャックが【ムドオンストーン】を投げ付けたんだ。
僕の追撃の【ツインガルーラ】で〝プリンシパリティ〟はアッサリ滅びた。
穢教鳥には【ムド】が効く。常識だね。
そして強敵は囲んで棒で殴るのが基本、僕らが実践しない訳が無いだろう?
「しかし、数だけは多いぜ」
ジャックのセリフに頷く。
「僕が空、貴方が地上で良いかな?」
「わかりやすいな、OKだ」
さあ、ウルトラマンのタッグが相手だ、掛かって来いよ穢教鳥共!
「「「オノレ、神の敵が!!」」」
残る〝プリンシパリティ〟は三匹か、さっさと終わらせて周りをフォローしないと。
「神の敵? 違うね、貴様ら天使の名を騙る悪魔の敵だ」
「「「我々に逆らう、すなわち神の意思への反逆なのだ」」」
何処まで奢り高ぶるんだ? 貴様らの我儘が神の意思? 自分を神と同一視しているんじゃないのか?
僕は一神教の信者じゃないけど、こいつ等が堕天しないのは可笑しいよね?
まあ良い、神が裁かないのなら人が、僕が裁くだけだ!
「貴様らを滅ぼす者の名を覚えて、藁のように死ね! 僕の名はエース! ウルトラマンエースだ!!」
僕とジャックの挟み撃ち、奴らが滅びるのは必然なのさ。
一般的デビルバスターの奮闘*3
「次、こいやぁ!」
よーく狙って……喰らえっ!
勢いよく飛び出した〝蠱毒皿〟が穢教鳥〝エンジェル〟に命中! ざまぁ見ろ、一撃死だ。
俺は相模原市南区派出所に所属する防衛隊の人間だ。レベルは低めの所詮モブだな*4。
隊長の苗字が〝小山田〟だった所為で〝小山田投石隊〟なんて呼ばれているが、現在では悪くないと思っている。
元ネタの〝小山田信茂〟は甲斐武田氏を裏切った投石部隊の隊長だったと言われる男だ。
裏切りについては本人にも言い分はあるだろう。
織田家と違って、武田家は場合は完全な主従じゃない。同盟関係だったって説もあるし、彼が投石部隊を率いたってのも、俗説に過ぎない。
つまり、気にするだけ無駄。
ただ隊長の苗字を冠した部隊名、他と同じだ。
けれど利点もある。〝小山田信茂〟の悪名はこの辺りでは比較的有名だからな。
名前の御陰で注意を引ける。味方が俺らに注目する。活躍出来れば周囲を勇気づける事が出来る!
近距離では弱い、それは事実だ。
だが遠距離なら話は別だ。
確かにムド弾は強力だし、銃器の使い手も増えた。
けどな? 敵だって、それは承知の上で攻めて来てるんだ。
銃を持つ部隊を避けるくらいはする。
そこで俺らの出番だ。銃を持たず、左腰にアセイミーナイフを、右腕に皮紐を巻き、右腰に小袋を提げた軽装部隊。こいつは利き腕が右の人間の場合で左が利き腕なら装備位置は反対になるな。
さて、何に見える? 比較的後方に位置する軽装部隊だぜ?
多分、魔法で支援する部隊だと思ったんじゃ無いかね?
事実でもある。実際、【ディア】や【パトラ】を覚えている人員は多いからな。俺も【ディア】は使える。
でも、攻撃手段を持つ攻撃用の部隊だ。皮紐は
この〝マハムドストーン〟は魔女の里製でよ、ガイア連合製のストーンよりも大きい。効果範囲を広げた分、大きく成っちまった訳だ。でも投げてブツケルなら大きい方が威力が出る。魔法の効果は同等だしな。*5
なにしろ穢教鳥への恨みならいくらでもある。製作そのものは一人前の魔女の仕事だが、恨みを込めるのは見習いでも出来る。ストーンの補給が容易なのさ、比較的にだがね。
蠱毒皿も支部長の伝手で大量に入手出来た。*6
そんな訳で、
俗に言う魔法型、近接戦闘に適性が無く、覚えたスキルは回復系や補助系。レベルはソコソコ、5~7の範囲だ。
そんな人間だって、それなりに多い。各派出所で部隊を作れる程度にはな。
黒札様が来る前なら使い潰されていただろう。
霊能者を温存できる環境じゃ無かったしな。
今では使い潰される心配は無くなった。だが頼りにされないのも悔しいもんだ。
そんな俺らに支部長様がした提案が
望むなら銃を使っても良い。でも、奴らだって銃を避けるくらいはする。
『ライフルは隠し持てないからね。でも
勿論、賭けになる。穢教鳥が銃を恐れる知能が無い可能性もあるしな。
馬鹿にし過ぎ? アイツら、上司の言う事なら無条件に従う馬鹿ばっかだぞ? 本気で言ってるのか?
まあ、知能があっても人間を餌扱いして舐め腐る穢教鳥なら、銃撃の中に突っ込んで来ても不思議はないだろ?
それがムド弾だって知ってビビり散らかすまでセットで想像できるんじゃないか?
そういうこった。
練習する事に問題は無い。
場所だって演習用の異界の隅を借りれば済む。
提案を受けてから一年、暇があれば練習して百発百中の自信を持てた。
そして今日。
俺らは賭けに勝った!
アイツらは支援部隊から潰そうとしたんだろう。そして思わぬ反撃を受け、それが致命的だと知りビビって動きを止めた。
其の位置は俺らを囮に、左右に展開した銃部隊の殺し間。
十字砲火の絶好の的になる位置だと知ったのは、滅びる寸前だったんだろうさ。
高位の穢教鳥達はウルトラマンエースとジャックに挟撃を受けて壊滅、あとは一匹ずつ狙撃するだけだった。
味方は意気軒高だ。
確かに俺達、防衛部隊はレベル10以下の雑魚の集団だ。
けど、個人で勝てない敵が相手でも集団でなら話は別だ。
今回、俺達が証明して見せたと胸を張れる。
勿論、少数対少数を強いられるダンジョン型の異界では数に任せた格上狩りは無理だ。
知略に優れた悪魔が相手なら集団でも勝てないかも知れない。
だが、恨み骨髄なメシアンが頼る穢教鳥が相手なら滅ぼせる。〝アークエンジェル〟に率いられた〝エンジェル〟の群れを倒せる事を証明したんだ。
更に格上が相手だと無理かも知れない、数が増えてもダメかも知れない。
実際〝プリンシパリティ〟はエースやジャックに任せるしか無かった。
それなら敵に合わせて、こちらも更に工夫を重ねるだけの話だ。
今回は出せなかったが〝多脚戦車〟だって大っぴらに使える様になるらしいしな。
方法は幾らでもある。
滅ぼせる相手だ、無敵でも不死身でも無いんだ。
イザとなったら、デモニカが集団で殴るだけでも良い。
その時に自分達が戦力になる、その証明が出来たんだ。
自分自身が戦力になれると確信出来た。それが何より嬉しかった。
相模原市緑区作戦本部
「支部長代理! 大和市派出所から報告! 町田市方面から穢教鳥が侵攻するも現地戦力での防衛に成功、撤退させたそうです」
「支援は必要か?」
オペレーターの報告に質問を返す。正実シスターズなら、報告だけじゃなく対応策まで提案してくれるんだがな。
彼女らには相模原、町田間の検問を任せている、無いもの強請りは止めよう。
「後詰は欲しいそうです」
「海老名派出所にお願いしよう」
「了解しました」
厚木基地は内乱中、米軍のキャンプ座間は混乱を治めたばかりで、相模原の戦力は減らしたくない、消去法で海老名になる。
落ち着いたら、各所のデモニカを増強した方が良いのかも知れないな。
ハークは敷居が高い。もう少し手軽に扱えるデモニカを導入する必要があるか?
ハイ・ロー・ミックス、ハイがハークで、ローに簡易型のデモニカを導入する……
後で考えよう。今は勝って生き残るのが先決だ。
モニターの地図を睨みながら、喜太郎は戦力調整を考える。
敵の本命は東京だ。五島部隊のクーデターを始めとするデコイに食いついた。
横須賀や横浜の米軍は東京へ向かった。対応は五島部隊やガイア連合の精鋭が行うらしい。
まあ、俺はこの支部を護れば良い。
北神奈川支部に攻め寄せている戦力は余力による牽制か? 現場の暴走も有り得るか……
どっちにしろ、火の粉は払わなけりゃならん。
「中央区派出所から報告! 16号線を南下して来た避難民をラクシャーサが襲撃! 春の娘達が撃滅!」
「厚木基地から北上して来た穢教鳥の対応に問題は無いのか?」
「ウルトラマンエース率いる南区派出所防衛隊とウルトラマンジャックによる挟み撃ちが成功、殲滅しつつあります」
「良し、油断はするなと伝えてくれ、言わずもがなとは思うがな」
まったく、COMPは便利なんだが、テロに使うにも便利だからな。
無害な顔した一般人が洗脳され、穢教鳥を呼び出してMAG切れで死ぬまで暴れさせる。そんな事も想定されるんだ。
穢教鳥を殲滅して安心した所を、保護した筈の避難民が穢教鳥を召喚する。可能性の一つとして警戒せにゃならん。
「この戦いが終わって終末が来ても、テロに備えつつ悪魔と戦う時代になるかもな」
嫌な予測だ。
外れて欲しいが、無理だろうな……
「まあ、俺に出来る事は限られてるんだ。やれる事をやるさ」
今はメシアン共の対処だ。
ついでに火事場泥棒を企む悪魔共も居るしな。
何時でも出れる様に覚悟はしておくか? 俺個人も戦力として十分に強力な方だからな。
その場合は誰に指揮権を引き継ぐかが問題になるが……
今から考えても仕方ない。
とにかく、一つ一つ問題に対処していこう。
なに、大丈夫さ。最期の護り、最終砦は俺じゃない。
リコちゃんだ。
親子喧嘩は賑やかに
「ここは……?」
私、シホが目覚めたのは知らない部屋だった。
ベットが二つ。小さなテーブルとイスが二脚にクローゼット。
寝室かしら?
「眼が覚めた? ここがお母さん達夫婦の1LDK、最低限の家具しか無いから追々買い揃えれば良いよ」
椅子に座ったミホが声を掛けて来た。
「そう、お父さんは?」
「同年代の覚醒者が避難民に何人かいてね、装備をレンタルして異界に潜ったよ。少しでも生活費を稼ぐんだって」
ミホが詳しく説明してくれる。
なるほど、夫は早速、働き始めたのか……それが悪魔退治と言うのは違和感があるが。
流石に終末前に無理をする気は無く、今の内に少し試して置こうと言う事みたいね。
「今後はそれが普通になるのでしょうね」
今まで通りの平和な生活は望んでも叶わない。
生き残りたいのなら悪魔と戦い、生活圏を勝ち取らなければ。
私はとても恵まれているのだ。
娘達の伝手もあり、シェルターに受け入れられたのだから。
覚醒し悪魔と戦う術を得られたのだから。
私の限界レベルは2、夫の常雄の限界レベルが9。私は低い方だが、夫は普通に戦力として期待できる。
どうやら年齢と才能が近しい男達でパーティを組んで、地下迷宮に挑んでいる様だ。
「地下迷宮……慣れるのに時間が掛かりそうだわ」
思わず苦笑してしまう。
「お母さんは、これからどうするの?」
どうしましょう? 夫にだけ負担を掛けたくはないが、自分に出来る仕事はあるのだろうか?
家事は得意とは言えないし、私にパートの仕事が務まるかしら?
「どうしましょうね?」
「暫くは、ここに馴染む事から始めるしか無いかも? 覚醒者なら仕事はあると思うし」
そう言って、スマホを手渡される。
「これは北神奈川支部から支給されたスマホ。色々調べられるし、募集もあると思うよ」
農業用の異界でなら出来る仕事もありそうだ。軽く調べるだけでも、それなりに仕事が出て来る。
低レベルとは言え覚醒者だからなのだが……
「あら? これは面白いかも……」
「良い仕事あった?」
「ええ、私と同年代の女性からの依頼みたい」
同行してくれるテスター募集。装備支給、現在レベル1で成長限界が低いので一緒に頑張ってくれる人はいらっしゃいませんか? なるほど……
「ここに載ってるなら、裏取は出来てるって事だけど……」
ミホは何かが気になるみたいだけど。装備がもらえて同年代の女性とのコンビですか、友人になれるかも知れないし、一度会ってみましょう。
ミホは私が目覚めたのを確認してから大洗へ帰って行った。
娘に面倒を掛けちゃったか……大洗も終末で大変でしょうに。
ミホの上司にお礼とお詫びをしたいけど、菓子折り一つ贈るのも難しくなるのよね?
どうしたものかしら? 誰かに相談できると良いのだけれど……
無事に終末を乗り越えた後の話です。
私は黒札のフォトネキと言う方の母親だという〝水無瀬 明子〟さんと友人になり、一緒に〝魔砲少女 シャーマンちゃん〟をする事になります。
明子さんは〝シャーマン ファイヤフライちゃん〟で私が〝シャーマン イージーエイトちゃん〟となる。*7
友人の母親がシャーマンちゃんの装着者に応募している事を知らなかったキノさんが公正に抽選してしまい、権利者を発表してから発覚。大慌てになったと言う曰くがあるのだそうです。
バディも必要だろうからと、強化型二機を大至急で注文したのだとか。
デモニカは届いたものの、黒札の母親の命を預かる覚悟を持つ、40代女性が多い筈も無く……ダメ元の募集に何も知らない私が応募して来たと言う事ですか。
まあ、良いでしょう。
マホを見れば、素のレベル限界が低くてもデモニカなら相応に強くなれるのは明らかなのです。
少々恥ずかしいけれど、娘が命を賭けているのに母親が安穏と出来るハズがありません。
明子さんのお気持ちは良くわかります。
幸いデモニカの他に〝怨嗟刀〟も頂けました。
剣と砲の変則二刀流。娘に出来て私に出来ないとは思いません。
テストで旦那に見せたら、思いのほか盛り上がりましたし……
西隅の軛から解き放たれた常雄さんは、とても生き生きとして若々しくもなって……モテる様になったので嫉妬しちゃったw
私もマダマダいけるのです。*8
時折フォトネキや私の娘達が死んだ目で目撃されるそうですが*9……若い母親達を自慢してくれても良いのよ?
そう言ったら喧嘩になりました。
母娘仲良く喧嘩できる。
それは幸せな事なのだと、そう思える自分に気付きました。
西隅に捕われていたのは私も同じだったのかも知れません。
明子さんは「あらあら」と言うのが口癖で何時もにこやかな女性です