バハネキの実家は横浜かぁ
「うーん、バハネキの実家は横浜なのか……」
先日、救助された黒札〝
彼女は声優をしていただけに、ある程度の情報はネットで出て来る。
「横浜産まれの横浜育ち、御両親は存命で実家もある」
予定と違うけど、仕方ない。
せっかく家族が無事なのに、危険に晒すのはダメだし。無理やり引っ越しさせるのも嫌だろうしね。
幸い、横浜は隣接する都市だ、手を広げる気になれば護れない事もない。
「小父さん、負担が増えるけど良いかな?」
喜太郎小父さんが断るとは思えないしズルい言い方だとは思う。思うが、家族が亡くなる悲しみを同胞に味わって欲しくは無い。
「お嬢が思うままに遣れば良い。俺の出来る範囲で支えよう」
「ごめんね、そして有難う」
じゃあ、この男に会いに行こうか。
ボクの手の中には一枚の写真。
そこには隻眼の偉丈夫が写っていた。
元伊勢原名家の男
才能ある霊能者でカラス天狗のデビルシフターだ。それを長老に嫉まれ、捨て石にされる。
その時、右目を失い死にかけるも、生き延びた。
当然、実家に帰ることなく、フリーのデビルバスターとして活動。
現在は横浜市在住である。
「まさか黒札さんがアポを取って来るとはな。で、何の用だい? 実家がらみって訳じゃあるまい?」
小声で聞いてくる
ここって普通の喫茶店だしね。
「声は大きくても大丈夫だよ。ちゃんと結界は張ってるしね」
ボクみたいなヘッポコでも、この程度の術なら使えるんだよ? 補助具からは卒業出来てないけどな!
「んじゃ、改めて。何の用だい?」
「スカウトだね」
長々と話すより単刀直入の方が良さそうだ。
「俺にアンタの下に付けと?」
「うん」
言葉を飾ってもしょうがないし。
「断ったら?」
「別に何も?」
「なら「受けてくれたら力が手に入るよ」……」
この男、自由人ではあるけど力への渇望の方がより大きい。
この横浜に宿敵も居るしね。
「別に飼い犬に成れとは言わない。君には向かない生き方だろうし」
頷いて続きを促して来る。
「ボクが君に求めるのは用心棒役だね」
それだけなんだよね。
「なんせ、この横浜は様々な勢力が入り混じった蟲毒の様な街だからね。ボクが付きっ切りとはいかない以上、横浜派出所を護れるだけの戦力が要る」
「手に入る力とは?」
「魔眼。どんな力に目覚めるかは君の適正次第。やって見なくちゃわからない。でも、レベルの上限は上がるし、装備も面倒見るよ?」
「ふむ? 悪くない、が……何故、俺だ?」
「
横浜中華街シェルターに所属する悪党。仙人の端くれで、かなり強い。
レベルは30を超える。
「君を強化すれば十二分に対抗できる。理由はそれだけ」
やはり、あの悪党には負けたくないんだな。
メシアン相手なら、ハークで十分なんだけど
「……良いだろう、俺は強くなって睨みを効かしゃあ良いんだな?」
黙って頷く。
無言で握手。
これで契約は成立。お互いの安心の為にもギアススクロールは用意してある。
不正はしない、無意味だし。
彼も不正はしないし出来ないだろう。
ボクの本気の一端を見破ったからね。
修行不足を嘆くべきか、彼の眼力を褒めるべきか……素直に彼を誉めて置こうか。
ヤプールニキの手術を受けた彼のレベル上限は大幅に上昇、44に届いた。*1
鍛えないと意味無いけどね。
一応、レベル40までの狩場は提供できる。
後は彼自身で何とかするだろう。
魔眼の能力は当たりの部類。
収納の魔眼。
力ある物品を、気付かれる事無く持ち運びできる。
これは〝天狗の大団扇〟*2を与えるしかない!
そっくりさんには相応の装備を与えたくなるよね?*3
彼は〝宵闇眩燈草紙〟と言う漫画の登場人物に似ていた。
敵役の
さて、箱を用意して人員も準備しないとね。
箱は富豪俺らが作った物を譲り受ける。
霊的な護りが無い、見せ札だったヤツだ。
シェルター付きのビル。場所が横浜港を押さえられる位置にあるから便利だろう。
このビルに霊的な護りを追加する。チョット不安だからガイア連合製の自販機も多めに設置しとこうか。
キャスパー兄さまとの取引にも港は使うしね。メシア教穏健派も使うけど……なら尚更、こっちで押さえて、変なモノを入国させないようにしないとダメだな。
横浜霊能者会議
「いきなり集まれとは……」
ガイア連合の幹部、キノさん。
神奈川北西部を拠点とする黒札で、修羅勢と言われる強者。
その強さは疑うべくも無いもので、一個大隊でも、レベル100に至る大天使を以ってしても倒せない。
その彼女からの招待。これを断れる人間は居ないでしょう。
私、カソリックのエクソシストでもある〝ロゼット・クリストファー〟*4としても、彼女に勝てるとは思えない。
それなりに自信はある。ガイアレベルで33の
恐れられるだけの才は示してきたが、あれは格が違う。
違い過ぎる。
勝負にすらなるまい。
そもそも敵対しようとするのが間違いだ。
幸い、彼女はカソリックには協力的だ。従兄妹がカソリックを信仰しているそうだ。
可能なら彼女も信者に……そう思ってしまうが無理でしょうね。
その気があるなら、既に入信しているでしょう。
メシア教以外の宗教には寛容なのです。それで良しとしなければ。
そんな彼女が横浜へ進出するにあたって、現地の有力組織に挨拶したいと言い出した。
ついては御手数だが、ガイア連合北神奈川支部横浜派出所まで、御足労願いたいとの事。
誰が出るかは任せる。
つまり、ガイアに対する態度。本気度の様なものを見たいって事なのかしら?
カソリックを代表して横浜の最高戦力たる私が出席する。
「正解だったようですね」
中華街を代表して
プロテスタントを代表するのがアタル・ソルジア、分厚い筋肉を纏い、濃い緑のマスクを被った牧師の男性。レベルは情報部によると29。*5
調査当時よりも成長していると考えた方が良いでしょうね。
そして、メシア教穏健派のシスター、鷹山マリア*6。彼女の戦闘力は脅威にならない。レベルは12。でも策謀には注意が必要か……
これだけの面子が集まるのだ。並の人間が出席していたら、侮られかねない。
そして事務員に通された部屋。其処には上座に座る小柄な少女。
「アレが、北神奈川支部の長」
戦慄と共に呟く。
見た目は可愛らしい少女に過ぎない。成人しているとは思えないくらいに幼く見える女性。
見た目で侮る人間がいるなら、馬鹿か自殺志願者だ!
何だ、あれは!
本当に人間が発する霊圧なのか?
私は世界各国を渡り歩き戦って来た。
名のある天使を自称する悪魔や異国の魔神とも相まみえた事がある。
その誰よりも強い!
その場に存在するだけで、威圧される!
「挨拶がわりにチョットだけ霊圧を漏らしてみたけど……これがわからない人間は居ないようで安心したよ」
あれが挨拶……おそらく本当だ。
彼女は我々全員が束になってかかっても倒せない。
今も自然体だ。
これほどに恐ろしい存在が居るのか!? ガイアの修羅とはこれほどの存在なのか!?
こんなのが、大勢いるのか! ガイア連合の底力とはどれ程だ!?
「リコ、皆さんにお茶を」
金の短い髪を揺らして、更に幼い少女が頷き隣室に消える。
気が付かなかった!
キノさんに気を取られていたとはいえ、あれ程の隠形を誇る存在、側近がいる。
もしも敵対する気だったなら、キノさんに触れる以前にあの少女に殺されていたに違いない。
あの愛らしさ、キノさんに劣るとは言え、我々よりも遥かに強い存在。
あれは噂に聞くシキガミだろうか?
「リコはボクの半身だよ」
動揺していた。変に探るつもりは無かったのだが。
「皆さん、紅茶とコーヒー、どちらになさいますか?」
私はコーヒーを選んだ。
他の人間を気にする暇はない。
目の前の主従から眼を離せない。
恐ろしくて離せない。
そして言葉もまた話せそうにない。
「喉を潤して貰った所で、用件を済まそう。皆、忙しいでしょ?」
今度は霊圧を毛筋ほども漏らさない。従者もまた同じ。
初めから、この状態だったなら、見た目だけで侮る人間も居たかも知れない。
そう考えると、あれも処世術。交渉の一環か……
「今後、ボクの派出所も横浜に置く、ついでに川崎にも。名実共に神奈川県北部を押さえて置こうと思ってね」
この主従が横浜を仕切ると言うのだろうか? カソリックとしてはそれでも良いが。
「とは言え、ボクは山梨の盾。普段から横浜に居る気は無い。だから代理人を置く」
キノさんがリコさんに目配せ。
リコさんが移動しドアを開ける。
「邪魔するぜ」
そう声を掛けて入って来た人物。
「貴様は
確かに、
「
「スマンね、まだ制御に慣れなくてな」
間違いなく
いや、ガイア連合に迎え入れられたのだ。強くなって当然かも知れない。
「さて、横浜派出所の所長を任せられる事になった
改めて紹介する必要も無いだろうが、肩書が増えたんでね。そう嘯きながら人を喰った様な笑みを浮かべる。
「まあ、よろしくな。仲良くやろうや」
手強い。私よりも一回り上か? とは言え、ガイア連合一強と言う程ではない。
脅威ではある。だが我々を蔑ろにするつもりもないのだろう。
そう思わせる人選だ。元々横浜の流儀を弁えた人間をトップに据える。
協調を基本としつつ、過度な干渉はしない。
今まで通り。そこにガイア連合が加わるだけ。
つまりは、そう言う事だ。
メシア教とて大人しくしていれば、何もされまい。
ガイア連合の盟主と穏健派とでは話が付いているそうだし。
過激派と見做されれば滅ぼされるのだろうが。
当然だ。キノさんの生い立ちは公然の秘密。*8
メシア教の被害者。
盟主の頼みだから殺さないだけ。メシア教はそれだけの恨みを買っている。
穏健派は目を付けられる様な真似はしないだろう。過激派と見做されれば滅ぼされるのだから。
そして我々、その他の霊能組織も敵対する必要はない。敵対した所で勝てないのだから。
逆に言えば
今日、この時を以って横浜の群雄割拠時代は終わった。
横浜、川崎両派出所稼動
「さてと、横浜市並びに川崎市の名家の皆さん。お待たせしたね、やっと準備が整った」
大嘘だ、バハネキの事が無ければ手を広げるつもりは無かった。
「箱は用意した、結界の強度も足りると思う。絶対は無いけどね」
富豪俺らの見せ札を買い取り改造したシェルター。
「後の中身は君たちに任せる」
ケツ持ちはするから故郷は自力で護って欲しい。
「舐められない様に、横浜の所長として
虎蔵さんに挨拶を促す。
「一応、所長をやらせて貰うが、基本俺は暴力装置だと思ってくれ。お前さんらが手に負えない時の保険だよ。よろしく頼まあ」
ざっくばらんな挨拶。
うん、らしくて良い。
「川崎市の所長は皆が選んで欲しい。多分だけど川崎の方は政治力の方が重要だと思うから」
後は多脚戦車とモビルワーカーを多めに配備しようか。
政治的にもハッタリって必要だと思うしね。
横浜の場合って横浜ノース・ドックもあるし、横須賀の在日米軍にも備えなきゃだから、目に見える戦力って必要なんだよ。
それにしても、ビックリしたな。
横浜で組織間の調整と挨拶をしたいから、各組織に代表を出してもらったんだけど……
プロテスタント代表として、キン肉マンソルジャーが来るって何なのさ!?
なんで、真面目な話し合いにマスクマンが来るんだよ! 突っ込みたいのを我慢するのが大変だったじゃないか!
変にツッコミ入れたら空気が壊れるし*9、一応、あのマスクも霊装らしいんだけど……
この世界、偶に黒札に負けず劣らずな変人がいるよね?
タマヤ与太郎氏に拙作の登場人物を使って頂いた、大変ありがたい
しかし、キノの管理地域に横浜は入っていなかった
どうする? わざわざ指摘するのか? 迷っていたらジョースター卿が天啓を下さった
『逆に考えるんだ、横浜も管理しちゃえば良いのさ』と……
そんな訳でこうなりましたw
勢いがあると早く書けるぜ! 本筋が進まない現実逃避? はい、そーです