【カオ転三次】世界が終わるまでのバイク旅   作:山親父

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疲れた……主人公不在の話がこんなに長引くなんて思っても見なかった(見積もりが甘い
次は気楽な話を書きたい。なんにも決まってないんで何時になるか不明ですがw


終末は来たれり-東京が壊滅する日-

 デンドン、デンドン、デンドン、デンドン

 

「北神奈川支部の皆さん! 皆さんの奮闘の御陰で万全の状態で迎撃出来ます。ありがとう」

 私、リコは場外アナウンスやネットで通達する。そして映像も配信で見れるようにしておく。

 キノ様と取り決めていた事だ。

 特定の個人を頼るのではなく、北神奈川支部全体での団結を、配備されたシキオウジロボを信頼する様にしたい。

 直ぐには無理だろう。キノ様、そして今回お披露目された飛行島のインパクトには及ばない。

 だから少しでも自信を持ってもらう事から始めよう。

 自分の故郷を護ろうとする気概は育っている。

 後は実績だ。

 

 おそらくキノ様が居る間は、キノ様への信頼が揺らぐ事はないだろう。

 けれど、キノ様だって何時までも頼られるのは不本意だと思う。

 現在の代行、喜太郎氏が居る間は責任を持つ、途中で投げ出す様な人ではない。

 だが、その次は? 息子の輝太郎氏が引き継ぎ、その間の後ろ盾は引き受けるかも知れない。

 では、さらにその次は?

 あるいは、キノ様の血筋が統治する事になるのかも知れないし、誰かに委任する事になるのかも知れない。

 先の事はわからない。

 

 だから何時かはキノ様から離れ、独り立ちも選択出来るように準備を進めて置く。

 

 その為の一歩。

 

 自分達が時間を稼げば強力な守護神が戦えるのだと、自分達だけでもやれるのだと知らしめるのだ。

 

 ヴィーン! ヴィーン!

 警報音が鳴り響く。

「セブンガー発進します。周囲の人員はご注意ください」

 

 シキオウジロボ〝セブンガー〟ウルトラマンレオで初登場し令和の世でも〝ウルトラマンZ〟に登場した、ユニークな見た目のロボットがモデルである。

 見た目に反してかなり強く、初代は稼働時間の限界が無ければ敵を倒していただろう。

 令和板では初代ほどには強くないが、しぶとく戦い続け、一度は博物館送りになっても、復帰し仲間のピンチを助けるという大活躍を見せてくれた。

 キノがセブンガーを選んだのは、好きと言うだけが理由では無く『見た目で穢教鳥を煽れそう』との事だが。

 

 デンドン、デンドン、デンドン、デンドン……*1

 

 ティンパニーの小気味良いリズムが響く。

「何ですか、これ?」

 リコの疑問に〝付喪神式自動人形〟のチョコが答えた。

「戦闘記録を撮るんですけど、発進シーンには、このBGMを使ってくれってイデニキさんが……」  

 

 飛行島の昇降エレベーターで地上部に現れたセブンガーは短い足を精一杯に踏ん張り、腕を組んだつもりなガイナ立ちであった。

 

 マ~カ~セ~テ~

 喋っているかの様な駆動音を響かせ、背中のブースターが点火される。

 

「セブンガー発進!」

 

 リコの号令に合わせて、自立型シキオウジロボ。セブンガーは飛び立った。

 

 

 驕れるセラフ

 

たかが人間の造りしガラクタが我に敵うとでも?

 飛行島を見て馬鹿にする。

 笑止、鋼で身を護ろうと意味などない。

 彼奴らに天罰を下してやろうぞ!

 そう意気込み、速度を上げて飛行島へと接近する。正確にはしようとした。

怯えろ! 竦め! 我が神威に触れ、怒らせた事を後悔しながら死んで行け!

 あざ笑いながら、飛び進む。

 

 召喚者の残留思念に依ると、自分は牽制の為に召喚された様だ。

 メシア教の主力は東京を占拠するべく攻め寄せているらしい。

 もしガイア連合が東京に援軍を出すならば此処だろうと判断した。

 だから余力で攻め落とす。

 攻め落とせなくても東京侵攻の邪魔をさせなければ我らメシア教の勝ち。

 既に天使は全滅している。まあ、弱き人間共に滅ぼされる程度の実力しかない同胞だったのだな。

 使い捨てにされても仕方が無い。その程度の戦力だったのだろう。

 

「だが、このセラフは違うぞ!」

 我だけでもこのガラクタを落として見せよう。

 

先ずは挨拶だな

 【マハラギダイン】を打ち込むも反射される。

なに! 反射しただと! 【マカラカーン】か!?

 飛行島を操作するチョコの仕事だった。現在の飛行島は移動する必要が無い。

 だから攻撃の兆候を感じ取れば〝チョコ〟が防ぐ。

 

 セラフは思った。反射でのダメージは軽微、ならば接近して攻撃してやろうと。

 だが近づけない?

 

オカシイ? 何故近づけないのだ?

 セラフは敵の術中に嵌まっている事に気付いていなかった。

 先程セラフは全滅した同胞を馬鹿にした。自分も同類だと気付けずに……

 

 

 戦え! セブンガー 

 

ぐわぁ

 

 イキナリの衝撃に思わず悲鳴を上げる。

 【物理耐性】を持つセラフには、効果的とは言えない攻撃。

 しかし、攻撃を受けた事自体が驚きであり、不快であった。

 

何だ? この急に現れた不細工なロボットは!?」 

 呆然と呟き、怒りが湧きだす。

 

ドラム缶擬きの分際で我を傷つけるとは!

 

 不快だった! 途轍もなく不快だった!

 敵ドラム缶は、偉大なるセラフに体当たりして飛び去ったのだ。

 

おのれ!

 体制を立て直し、振り向くと、腕だけが飛んで来ている!?

 硬芯鉄拳弾、つまりはロケットパンチ。

 

ぐばぁ!

 この我を殴っただと! 不敬な異教徒めが!

 

 怒りの儘に【マハラギダイン】をドラム缶に撃ち込むも効果が無い。

 ならば【ザンダイン】、衝撃属性で攻撃しても馬鹿の様に固い。

 

くっ、こんなガラクタを相手にしていられるか!

 こんなモノは無視して本拠を叩けば良いのだ。幸いアレの機動力は我に劣る。

 回り込んでしまえば、どうと言う事はない。

 

 飛行中に違和感を感じた?

前方にドラム缶擬きだと!

 敵は飛ばした右腕の代わりにドリル*2を装備して我に突き立てようとしている!?

 

空間を弄りおったなぁ!!

 なんと言う事か、名のある大天使を除けば神に最も近しい我が誑かされるとは……自分勝手にもセラフは憤る。

 

神をも恐れぬ不埒者めが!!

 怒りに震え、天に叫ぶ。

 その時、セラフを敵の砲弾が打ち据えた。

 

 

 キノ様は仙人なんですよ?

 

「ふふっ、敵は術中に嵌りましたぁ~!」

 飛行島をコントロールする、チョコさんの報告。

 

「なんですか、あれは?」

 フォトネキの疑問に答えるとしましょう。

「北神奈川支部に配備された特製シキオウジロボ、〝セブンガー〟です。キノ様曰くウルトラマンファンなら感涙モノとの事ですが……」

 デザインは、カッコいいとは言えませんね。

 愛嬌はありますけど。

 セブンガーは縦横無尽に飛び回り、穢教鳥を翻弄している。

 おや、飛行島を警戒しないのですか? 既にこちらの術中だと言うのに?

 

「攻め寄せようとしている割に距離が近付きませんね?」

 

「キノ様の施した陣術ですよ。仙人は空間を操作する、そんな信仰は根強いのです。封神演義の十絶陣なんかが有名でしょうか?」

 

 キノ様は仙人なんですよ? 普通の仙人とは大分違いますけど、空間操作系の術は得意なんです。自分や拠点を基準として使う方法に限りますけどね。

「キノ様のも、空間操作の術です。時空間を操作されたセラフは、この飛行島に接近しているつもりでグルグルとループさせられているのです」

 攻める事も逃げる事も出来ない、アリジゴク。

 キリングフィールドへようこそ、歓迎しましょう盛大に!

 

 セブンガーが十分な時間を稼いでくれました。

 では、最終確認です。

 

「14cm単装砲四門、88㎜高射砲八門、25㎜連装機銃十二基、準備は良いか?」

 肯定の意思が帰って来る。

 これら全てが付喪神、例えば14cm単装砲は八丈島沖で沈没していた軽巡洋艦〝龍田〟の物だし、88㎜高射砲はドイツの博物館から拝借した物や密輸した物、25㎜連装機銃は四基は龍田から、残りは艦艇復活に燃えるロボ部を拝み倒してサルベージした物を分けて貰っていたりするのだ。*3

 

 別の話だが、軽巡洋艦〝龍田〟自体も付喪神化され、東京湾からサルベージされた駆逐艦〝山風〟と共に水雷戦隊と結成、横浜を護って貰う予定である。

 

「飛行島地上部の〝L118 105mm榴弾砲部隊〟の準備は如何ですか?」

 

「所定の位置に展開完了しました!」

 町田で検問作業をしていた、正実シスターズが帰還し、三門のL118を運用していた。

 ちなみに牽引するのはモビルワーカーだ。

 

「では、始めましょう」

 

 気楽に声を掛ける。ヤツは袋のネズミ、ボコボコにしてやります!

 

「全砲門、射撃自由! 奴を撃ち据えろっ!」

 

 DOM! DOM! DOM! DOM!

 

 お腹に響く射撃音。砲門前の空間は全て奴に繋がっている。

 外す事はありえない。

 全ての14cm砲の砲弾がヤツを四方から撃ち据える。

 アハト・アハトの愛称で呼ばれる88㎜砲が上下、前後、左右とあらゆる方向から撃ち抜こうとする。

 25㎜対空機銃はヤツの行動を牽制し、容易に回避させまいと弾幕を張る。

 これら全てが付喪神。

 キノ様に従い忠誠を誓う、使い魔。

 さらには正実シスターズが運用する105mm榴弾砲が連携しながら砲撃を絶やさない。

 それぞれが必殺の攻撃、大抵の敵なら仕留められる筈。

 残念ながら敵は例外なのだが。

 

 それに窮鼠猫を嚙むとも言うから油断はしない。

 封殺できるとは限らない。

 

 だから……

 

「時間を見計らって私が出ます」

 此処で削れるだけ削る。それで倒せれば良いが、多分無理。

 だから私が出る。セブンガーに花を持たせる為にこっそりと……

 

「あの、私は?」

 フォトネキが自分を指さす。

 

「貴女の出番は戦闘終了後です」

 フォトネキ程のヒーラーを無駄に戦闘で消耗させたくない。

 彼女とガリズルが全力を出せるなら、死人が大幅に減る。

 無論、出て貰えなければ勝てないと言うなら話は別だけど……

 

「多分、私で終わりだと思います」

 タダの直感。

 でも、アレがアッサリ滅ぶとは思えない。どうせ悪あがきをするに決まっている。

 逆に言えば、それを潰せばこちらの勝ちだ。

「いえ、違いますね。私が終わらせて来ます!」

 

 

 良く見るとカッコいいかも?

 

 地上からはセラフを翻弄するセブンガーが良く見えていた。

 初めは少々ガッカリした人間の方が多かったのでは無いだろうか?

 

 だがセブンガーは北神奈川支部所属のシキオウジロボ。本来なら切り札とされても可笑しくない存在なのだ。

 しかもセブンガーはシキオウジロボの中でも特別製。

 本来のシキオウジロボに比べて少しだけ強い。

 そのレベル66。

 

 これは北神奈川支部の立地構成に起因する。

 

 本来、支部と言うのは都市一つをカバー出来れば名乗れるのだ。

 だと言うのに、北神奈川支部は神奈川県北部の市町村に跨り存在する。合計13の派出所から構成される、大規模支部なのである。

 規模だけで言うなら各市町村に一体ずつ配置しても可笑しくは無い。

 しかし、キノは北神奈川支部全体で一体にする代わり、出来るだけ強くして貰ったのだ。

 支部内なら最東端の川崎にも飛行島により二十分前後で到着できる自信があったからだ。

 各地に置いても、起動に時間がかかる。

 なら、より強力な機体を迅速に届けても良いのではないか? そう考えた。

 

 勿論、同時に別々の場所を攻められる可能性もある。

 それでも、強力な一体の方がメリットが大きいと判断した。

 

 一つ、戦力として通常型のシキオウジロボは微妙である事*4

 二つ、地脈の力は生産に回したい事。複数のシキオウジロボを運用する分の地脈の力で、幾つの生産用の異界が運営出来る事か? 食料や資材は幾らあっても足りないのだ。

 三つ、シキオウジロボは支部一つに付き一体、と言う決まりを守れる事。文句を言う人間は何処にでもいるものだ。彼らが言いがかりをつける隙を減らせる。

 四つ、あんまりあると有難味が薄れる。冗談みたいに聞こえるかも知れないが、あちこちに設置して運用が雑になっては困る。将来は兎も角、キノと飛行島が健在の間は一体で行くと決めた。

 本来拠点から動かせないのがシキオウジロボだが、セブンガーは拠点ごと動くので問題無い。

 

 大体、こんな理由だ。 

 

 さて、話を戻そう。

 正直に言おう、セブンガーは正直カッコイイと言えるデザインでは無い。

 子供が憧れるとは思えない。

 だがセブンガーは強かった。

 何より頑丈この上ない。超硬質合金S型とイデニキが名付けたオカルト金属*5による装甲をふんだんに纏い、【物理・火炎無効】【破魔・呪殺反射】【全門耐性】を付与された機体は簡単には壊せない。【ディアラハン】で回復もするし。

 

 そんな金属の塊が高速で飛行し殴って来るのだ。

 敵対したら悪夢に見そうだが、セブンガーは味方だ。

 セラフの攻撃から自分達をその身を呈して護ってくれる存在なのだ。

 

 セラフに対して、ドリルを突き立てんと突進する雄姿。

「良く見るとカッコいいかも?」

 子供がこんな錯覚を起こしても可笑しくは無いのです。また、幼いお子さまは語彙が少なく、凄いと思った存在の事も、強さへの憧れもカッコいいと表現しがちです。

 ご両親におかれましては、お子さまの美的感覚を過剰に心配する事の無い様、お願い申し上げる次第であります。

北神奈川支部-広報-

 

 

 私が出ます。目立たない様にコッソリと……

 

「では、出撃しますね。後はチョコさんの判断でお願いします」

 

 さて、セブンガーは強いのだと、皆が認識した頃でしょう。

 ならば、セブンガーさえ出撃出来れば勝てるのだと、セブンガーと連携すれば、どんな敵でも倒せるのだと確信させなければ。

 錯覚で良いのです。

 今は幻想だとしても、皆が信じ、そう努力するなら、何時かは事実になるのですから。

 

「セラフ、貴様は生贄だ」

 穢教鳥は今までさんざん人間を食物にしてきたのだ、貴様等の番が来ただけ、まさか嫌とは言うまいね?

 嫌がった所で、結末は変わらないが。

 

 貴様は無様に滅ぶが良い。

 

 飛行島上空に潜みましょうか。

「ライサンダーZ、よろくね」

 キノ様から預かった狙撃銃。探求ネキ謹製のオリジナル。込められた弾丸はキノ様自ら魔法を付与した特別製。

 キノ様自身かキノ様と強いつながりを持つ人間にしか使えないセキュリティ用の術式付き。

 キノ様と私だけって言えないのはチョット残念かな? 多分、私以外にも義妹様方や正実シスターズも使えるだろう。

 まあ、マスターであるキノ様に信頼されている証しではある。一応、キノ様の女の中では一番強いしw

 

「さて、こちらでタイミングは合わせます。頑張って下さいよ? セブンガー」

 

 

 敵が強いなら、その力を発揮させなければ良い

 

オノレ! オノレ、オノレ、オノレ、オノレー!!

 たかが砲弾が我を傷つけるだと! ドラム缶が我を、セラフを殴りつけるだと!? 認めん!!

 

 飽和攻撃。

 

 砲弾一発の威力は多寡が知れている。だが其れが同時に十五発を数えるとなれば話は変わる。

 しかも大半は旧式砲の癖に付喪神と化している為に、速射砲並の連射速度を誇るのだ。

 弾薬の補給も空間拡張で強引に解決しているし、砲身の命数も過熱もキノが付与したスキルが解決している。

 銃無効が確率で働き、半分は無効化も出来る。残り半分も【物理耐性】でダメージは軽減される。

 だからと言って、無様に撃たれ続ける事が我慢出来るハズは無い!

 

【テトラカーン】、自らの攻撃で滅べ!

 高笑いしそうになる。セラフには自らの砲弾で全滅する敵の砲台の姿が見えていたのだろう。

 

 答えは更なる砲弾。

 あらゆる方向から砲弾が飛んでくる。

 

 体制を立て直そうにも、25㎜機銃弾が邪魔をする。

 セラフの状態は立ち尽くしたままサンドバックにされているボクサーそっくりだ。飛んでいるのだが。

 

何故だ!

 簡単な事だ、飛行島は砲撃の瞬間だけ空間を歪めて攻撃しているのだ。

 砲台の位置と、砲弾の出現位置は同一線上に存在しない。跳ね返されたからとて、何もない空間を通り過ぎるだけ、砲台には影響しない。

 そして、一つの砲台が一分の間に最大で45発も撃ち込んで来るのだ。

 幾つかの砲弾を跳ね返したとて、誤差でしかない。

 

 どれほど喚こうが、どれほど足掻こうが、この状況からは抜け出せない。

 少なくともこのままでは。

 

まさか、これほど早くに切り札を切らされようとは……

 悔しくは思うが、ダメージ自体は許容範囲。回復魔法も使えるのだ、問題は無い。

 

信者(いけにえ)共よ、貴様等に献身の機会を与えよう

 

 この場にいる、メシア教信者の命を吸い上げる。狂信者には進んで命を奉げる者もいるが、一般的な信者はそうではない。

 生き残りたいから、終末後でも生きていたいから従っている者が殆どだ。

 だがセラフには関係ない。

 仮に巻き込まれただけの穏健派の教徒だとしても、下僕(かちく)に変わりはなく、区別する必要を感じない。

 

このセラフの役に立てる事を光栄に思え!

 あくまでも傲慢にセラフは宣う。

 自身を打ち据える砲弾の痛みに耐えながら。

 信者(いけにえ)を犠牲に回復する。

 身を奉げると誓う狂信者のみならず、効果範囲に居るメシア教徒ならば同意を得ずに献身(いけにえ)を強要出来る。

 これが、この場のセラフが持つ唯一の権能だ。

 正規の手段で召喚されていたのなら、話は変わったのかも知れない。

 だが、この場に居るのは、子供の命を代償に召喚された分霊だ。血に塗れ、血を求める様に歪んだ存在だ。

 積極的に敵の血を、そして無意識では下僕(かちく)の血を求める存在だった。

 

 そして【獣の眼光】を使用した。

 

 時が止まる。砲弾を避けて移動、弓を取り出す。

 

滅びよ【封魔天弓】

 強力な遠距離物理攻撃。運が悪ければ魔法が封じられる。

 あの要塞に籠る連中の魔法が封じられるかは不明だが、その時は、何度でも一方的に攻撃するだけだ。

我の勝利は決まっているのだ!

 セラフは自信満々だった。

 

 

 死亡フラグ乙

 

「何故、穢教鳥は自分が使える技が敵には使えないと思えるのでしょう?」

 例え、時間を止められても同系統のスキルがあれば、動けるし攻撃出来る。

 

 キノの権能【全弾発射】を劣化したとはいえ受け継いだリコの様に。

 そして、セラフと同じく【獣の眼光】を付与されたチョコの様に。

 さらに言えば【マカラカーン】を使用できる存在が【テトラカーン】を使用しないと思えるのは何故だろう?

 

 射撃体勢で機会を窺っていたリコは不思議に思う。

 自分が使える技は敵も使ってくる。それを前提に組み立てるのが戦術では無いのか?

 個人では勝てなくても、集団なら勝てる。

 

 貴様らは今回の戦場で思い知らされた筈だ。

 

 北神奈川支部のメンバーの大半はレベル10以下。レベル10以上は精鋭だ。

 レベル15に達するなら天才扱い。

 デモニカ等の強力な装備を持つ人員の割合も多いとは言えない。

 

 だが、それでも貴様等の攻撃に耐え抜いたんだぞ? 貴様等を食い破ったんだぞ? それが戦術、連携の結果だと気付かなかったのか?

 

 まあ良い。愚かな子供のごとく、我儘放題してきたツケだ。

 無様に滅べ!

 

 飛行島はチョコさんが護り抜く。そう信じる事が出来た。

 

 だからリコは持ち続けている。

 セラフに決定的な滅びを突きつける、その時を……

 

 そして、リコは静かにトリガーを引き絞り、冷たい殺意を乗せて銃弾が撃ち放たれた。 

 

 

 決着

 

何っ!?

 分裂し敵全体を攻撃する筈のセラフの矢が跳ね返される! 何故だ!?*6

 

 自らの攻撃でダメージを負ったセラフは狼狽した。してしまった。戦場では一瞬の隙が命取り。隙と呼ぶのすら烏滸がましい醜態。

 

 報いは直ぐに来た。

 

 飛んで来るロケットドリルパンチ。辛くも回避したセラフの目の前に迫る刃、左手に握られた〝20式銃剣2型〟1920年製の付喪神化した銃剣をコアにセブンガー用に大型化と魔改造を施した短剣だ。このデザインで銃剣を名乗るのは無理がある、元ネタでは銃剣と言い張ってるのだが。*7

 

我に物理は大して効かぬわ!

 せせら笑うセラフの笑みが凍り付く。

 目の前の刃が突然強力な冷気を帯びたからだ。

 【氷結弱点】狙われて当然の弱点。だが今まで狙って来なかったでは無いか? 使えないのでは無かったのか? 何故、我の首が飛んでいるのだ?

 

認めぬ! 我は認めぬぞ! 我がこのようなドラム缶に劣る筈は無い! 我が負けるハ…ズ……が……

 セラフは最後まで見苦しく足掻き滅んで行った。

 

 そのまま、飛行島に着陸し、寸胴な胸を張るセブンガー。

 夕日を照り返し、皆の歓声を浴びるセブンガーは心なしか誇らしげに見えた。

 

 

 戦いの後

 

「セブンガー。よく頑張りました」

 リコが微笑みセブンガーを労う。

 セブンガーの刃に【ブフバリオン付与】弾で強力な冷気を付与した、影の勝利の立役者だ。

 

 だが、これで終わりでは無い。

 これから後処理を大急ぎで終わらせなければ……と、言ってもリコ自身がやる事は無いのだけれど。

 

 怪我人の治療がある。フォトネキを始めとするヒーラーや医者の仕事だ。

 最終的な被害は如何なるのか? 現時点でも死者はいるが復活出来るかも知れないし、ヒーラー達の活躍に期待だ。

 避難民をシェルターに収容しなければならない。これは支部の皆がやるだろう。

 投降しているメシア教穏健派も隔離して尋問しなければ……これは九島組の仕事になるだろうか?

 メシア教穏健派から離反する人間も増えそうだ。

 ノンネームドでは最高位の自称天使が、人間を救わず。それどころか、生贄として消費しようとしたのだ。

 生き残ったのは運が良かっただけだ。

 セラフの側に居たメシア教徒は過激派も穏健派も関係なく死んだ。

 セラフに殺された。

 天使が人間を救う? そんなのはウソだ! そう思ったメシア教徒は沢山いる。

 騙されて付いて来た穏健派だった筈の教徒には特に大勢。

 過激派に同調した時点で穏健派を名乗る資格は無い気もするが……

 

 まあ、良いか。

 細かな事は喜太郎氏に任せれば良い。

 その為に、彼は全権委任されているのだから。

 

 必死に後始末を終わらせ、避難民を収容し、終末への準備は整った。

 万全とは言えないかも知れない、だが出来るだけの事はやった。

 燃え尽きる様に眠ってしまった人員がいた。

 お茶とお菓子を楽しむ人達がいた。

 酒盛りで騒ぐ人間もいるし、家族との団らんを楽しむ者やゲームやネットを楽しむ者もいる。

 恋人との逢瀬を楽しむ者を見ると羨ましくなるので、見ないようにする。

 最期になるかも知れない時間を、それぞれが自由に過ごしている。

 

 終末へのタイムリミットを内心恐れつつも、表情には現さずに過ごす支部員達。

 強いなとリコは思う。

 単純な戦闘力では無い、心が強い。

 

 リコは東京を見守る事にする。マスターに替わって見届けたいと思ったからだ。

 やがて、落ちて来るICBM。これまで使われて来たICBMとは別格の恐るべきナニカ。

 それを迎撃する誰か……

 リコに見えたのはソレだけだった。

 

 そして東京が光に包まれた。

 何があったのかは不明だ。

 だが、高位の霊能者ならわかる事もある。

 トンデモナイ悪意が込められた霊的な攻撃を防ぎ切り、逆利用して見せたのだろうと思う。

 

 あれがキノ様が盟主と認め従っている存在の力。

 

 認めざるを得ない。

 

 あれはキノ様達、修羅勢すら凌駕する存在だ。

 最悪の想定は聞かされていた。

 地球が天国の言う名の〝最悪の地獄〟に墜ちる可能性を……

 

 ガイア連合の盟主はソレを防いで見せた。

 手段は理解できない。

 だが、キノ様によると地球は魔界へ軟着陸出来たらしい。

 メシア教の天国と言う、地獄よりも悪い場所に落ちずに済んだ。

 それだけの大仕事をしたのだ、ガイア連合盟主の帰還が遅れても仕方ない。

 

 わかってはいるがキノ様に会えないのは寂しい。

 キノ様が無事なのは【精神感応】でわかっている。

 だから、リコは待っている。

 昨日も、今日も、時間が空けば、飛行島の端に座ってキノ様を待つ。

 飛行島から、西を眺める。山梨へ続く道を見守っている。

「今日も帰って来ないのかな……」

 夕日が沈んで行く。

 諦めて、家へ帰ろうとして、もう一度だけと振り返った時に微かに見えた姿。

 夕暮れの中の浮かぶシルエット。

 

 やがて響くトコトコと言う、小さな音。

 近づいて来る、優しいエンジンの音。

 

 ハッキリと見えて来る、飛行帽にコートを着て、小さなバイクに跨った、小さな人影。

 その人は、リコに気付くとニコリと笑った。

 そして転移。

 

「ただいま、リコ」

「おかえりなさい、マスター!」

 

 目の前に現れた、大好きな主人に飛びつく。

 後ろから、抜け駆けするとは何事だと、仲間達が駆け寄って来る。

 ほんの少しで良い。仲間が来るまでは、この大好きなマスターを独り占めしよう。

 リコは眼を細めて甘えていた。

*1
ガンバスターマーチ

*2
超硬芯回転鉄拳

*3
代金は払ってますよ? キノが払った代金の使い道で駆逐艦派と巡洋艦派、戦艦派が殴り合ったとか?

*4
キノの感覚です

*5
均質圧延鋼+タングステン+聖銀(ミスリル)の合金

*6
チョコが【テトラカーン】で防ぎました

*7
レッドナイフと言ってはイケ……監督が認めていたな




シキオウジロボはセブンガーにしました
さんざんウルトラマンを推してきたんだ、特空機1号の出番だ!

ネタに走りつつもダサカッコいい感じを目指してみましたが成功したのかどうか? 反応が怖いw
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