【カオ転三次】世界が終わるまでのバイク旅   作:山親父

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池波正太郎時代劇スペシャル? 
チョット悪ノリしましたw


暗殺商売

 いやまさしく、昨今暗殺は商売なり

 

 悪魔無き世は、ほんの以前のことながら、平和は遠く成りにけり。

 剣士の最期の拠り所、退魔の頼りはやはり剣。

 悪魔に備える傍らで、腕におぼえの剣客どもは、悪魔に組する悪人どもを闇から闇へと葬り去る。

 いやまさしく、昨今暗殺は商売なり。

 

 

「やれやれ、まあ良いんだけどね……」

 

 恩人の為だ、我が身が血に汚れる程度は気にしない。

 ただね、娘の親友だと思っていた、あの可愛らしくも恐ろしい娘が、娘の旦那でもあるって言うのは流石に予想外が過ぎやしないかい?

 娘、ミホから迫ったらしいし、八つ当たりも出来やしない……

 八つ当たりが出来る程に父親も出来てないし、どの面下げてって話でもあるんだけどね……

 思わず苦笑いが出る。

 

「愚痴も程々にして、お仕事しないとね」

 

 ほんの数か月前なら、酒飲みが集った飲み屋街も寂しくなった。

 トボトボと歩く、僕の前に、べろんべろんに酔っぱらった男が一人。

 このご時世で、酒を飲める。

 そんな人間は、腕の良いデビルバスターか、それとも……

 

「おっと……気ぃ付けな! ぶつかる所だったじゃねえか! しょぼくれた顔なんざ見たくもねぇ!」

 

「お前さん随分と酔ってるねぇ? ここらじゃ高位の覚醒者が酔える酒なんざ出してねぇだろうに……」

 

「何が覚醒者だ! こんな世でも頭を使う人間の方が稼げるんだよ! マトモな酒で酔えない高レベル覚醒者になんざ成りたくもねぇな!」

 

「へえ……お前さん、お(つむ)の出来が自慢と見える。何をやれば、そんなに稼げるのやら……」

 

「ふん、誰が教えるもんかい! 美味しい話は独り占めだよ! 他人に儲かる話を教えるなんてのはウソか詐欺師さ!」

 

「なるほどねぇ……詐欺師の言葉だ、確かなんだろうぜ」

 拡張型ベルトポーチから抜き身の小太刀を取り出すと、間髪入れずにズブリと行く。

「手前……」

「こんな世だ、閻魔様に裁かれて来な。大勢を泣かせた癖に不用心が過ぎるぜ……」

 グリッと刃を捻る。

「やり過ぎたんだよ、お前さん……流石に悪魔が作った麻薬なんてモノを持ち込まれちゃ迷惑だってさ」

 左手で相手を押さえて、一気に刃を引き抜く。こいつは【吸血】スキルが付与された小太刀だ、血は流れない。

「ぐえっ……」

「せいぜい苦しんで死ね」

 【デビルポイズン】もオマケしてやったんだ、助かりっこない。そもそも助けようなんて友人もコイツには居ないだろうがね。

「後は任せたぜ……」

 名家配下のダークサマナーが後処理をしてくれる。

 流れ者が一人消えただけ……それで終わりだ。

 キノさんが道路を保持した事で、主要道路を通るなら未覚醒者でも旅が出来る。

 悪人が流れ着く事もあるって事だ。

 こいつは銅札を持っていた低レベルの覚醒者。元トラックドライバーがメシア教過激派に手を貸して麻薬を持ち込んでいたって事さ。

 しかも、只の麻薬じゃない。

 覚醒を助けるって謳い文句だったが、使い続けるとゾンビになっちまうって代物だよ。

 パッピーな気分で覚醒できる? そんな旨い話があるもんかい。

 これなら大麻やコカインの方がマシってもんだ。

 

 まったく、ノンビリと昼行燈が出来た昔が懐かしいね。

 とは言え、戦わなければ生きていけない。

 悪魔退治も悪人退治も大した違いはありゃしない。

 

「イヤな世の中になってしまったね……」

 悪魔がのさばり、悪人共が暗躍する。それでも今回の様な分かり易い悪人はマダ良い。

 メシア教過激派の様に善人面する大悪人に比べればね……

 

「大悪魔、調伏するには、程遠し、僕に出来るは、ゴミ掃除だけってね」

 

 一掛け二掛け三掛けて、仕掛けて殺して日が暮れて、橋の欄干腰下ろし、遥か向こうを眺むれば、この世はつらい事ばかり、片手に線香、花を持ち、おっさん、おっさん何処行くの、私は必殺仕事人、中村主水西隅常雄と申します。

 

 この世は、ホント儘ならぬ。

 

 それでも、そのうち産まれるだろう孫には少しでも綺麗な世界を残したい。

 ミホは兎も角、マホは普通に男性と恋愛して結婚する。後輩と一緒にだが。

 こんなご時世だ多少の無理は仕方ない、甲斐性の内でお互いが納得しているなら、親と言えども口出しは野暮だからね。

 

 だから僕はこの仕事を続けよう。

 キノさんに頼まれたのは、元警察官の統率だけれど、それはシホがやるだろう。

 僕は僕に出来る事をやる。

 

「それで今日は、何処のどいつを()ってくれと仰るんで? ってね」

 やれやれ、この年で仕事人の真似か……まあ、他人に嫌な仕事を押し付けるなら、自分から率先する人間も必要だろうさ。

 お給金も悪くない、地獄に落ちるのは覚悟の上だ。

 

 もっとも自称天使の居る、天国よりは地獄の方がマシだけどね。

  

 

 悪の敵

 

 何時の世にも悪は絶えない。

 終末後、北神奈川支部は暗部という暗殺組織を支部長であるキノには内緒で設けていた。

 凶悪な悪質名家や覚醒者を容赦無く根伐りにするためである。

 支部を取り仕切る、暗部の纏め役。北神奈川支部の支部長代理こそが九島喜太郎。

 人呼んで二代目鬼太郎である。

 

「で、どうしたんだ? 社長?」

「社長は止めてくれよ、親父」

 ははは、親子なんだ、少々からかっても罰は当たらんさ。

 

「実は面倒な事になってる」

「なんだ?」

 

(ヤク)だ、タチの悪い麻薬が流れかけてる」

 ほう、俺らの縄張りで舐めた事を……

「流してるヤツは小物なんだが、どうも失脚した元名家の馬鹿が裏で手を回しているらしい」

 裏に居るのはメシア教の過激派か……

「そうか……消すか」

 小声だがキッパリと言い切る。

 世の中、大分変わっちまった、そんな中でもお嬢が人間が人間らしく暮らせる街を護っているのに、足を引っ張る人間は邪魔だ。

 

「俺らが()ろうか?」

「イヤ、お前らだって堅気なんだ、汚れ仕事のプロに任せるさ」

 

 地元名家ってのは綺麗ごとだけでは務まらんからな、暗部ってのは何所も抱えている。

 俺の手で纏めさせて貰った。

 そしてお嬢が、俺の負担を心配して付けてくれた相談役、西隅夫妻。

 奥さんの方は、元警官達の剣術指南をしていた関係で顔が効くんで、纏め役をお願いした。

 旦那の方が曲者だよ、奥さんの方は正攻法を好む真っ当な人間だ。

 それなのに、西隅家は八王子市で名家として生き残っていた。

 不思議だったが、婿養子の昼行燈、そう言われていた旦那の方が裏側に精通していたって事だ。

 

 普通の剣技はソコソコ、剣術家としては俺にも劣る。俺も道場剣術ではシホさんに勝てないがね。*1

 だから門弟にも舐められていた。トンデモナイ間違いだ。

 あの旦那は実戦なら、俺でも油断できない強者だ!

 レベルには差がある。俺が15で旦那は9、大きな差の筈なんだが、勝てると言い切れない。

 (やっこ)さん、隙を衝くのがとにかく上手い。一瞬たりとも油断は出来ない。

 

 勿論、実戦で油断するなんて言語道断。

 油断なんてしちゃいない、そのつもりだった。

 自分でも気付かなかった隙、呼吸のつなぎ目、そんな所を素早く狙ってくる。

 ありゃ、暗殺剣だな。

 殺しの剣に限れば、一番強いかも知れない。もう少し高レベルなら、対悪魔戦でも頼れるんだが……

 ハークは勿論、普通のデモニカでは彼の利点を潰しかねない、勿体ない気もするんだがな。

 

 そんな彼が暗部の統率役を買って出てくれた。

 正直助かる……将来の身内を血で汚すのも気が引けるんだが。

 西隅夫妻の長女と、門弟で後輩の恵梨香さんが息子の婚約者だからな。

 

 だが使える人材を眠らせるなんて贅沢をする余裕は無い。残念ながらな……

 スマンが泥にまみれてもらう。俺も付き合うつもりだったが、本人に止められちまった。

 お嬢の代理が汚れ切っては不味いと言ってな。

 立場なんて何時でも捨てるが、それでお嬢が困るのは本末転倒。仕方が無いんだろうな……仕方ないなんて言葉は嫌いなんだが。

 

 暫らくの我慢だ。そう自分に言い聞かせる。

 俺程度の人材なら、そのうち見つかるだろうさ……*2

 

 そもそも九島組は目明かし*3上がりの建築屋だ。

 先祖は十手を預かり、街を護りつつ、商売をしていたらしい。

 幕末では御家人株を買って、侍の端くれだった時期もあるそうだがね。 

 

 悪人共の敵ではあるが、正義の味方では無い。

 堅気を泣かせる暴力団でも無いがな。

 まあ、良いさ。悪の敵は悪、その位で丁度良い。

 俺らは必要悪。そう自覚していれば自重も出来るだろう。

 それにもう九島組は倅に任せた、俺はお嬢を助けられれば良い。

 それが任侠の(さが)に任せて、周囲を助けるのに結果的にはお嬢を巻き込んだ俺の最低限の義務だろうしな。

 秘匿通信で連絡を取る。

「西隅さん、スマンが仕事だ」

 小物の方は彼に任せる。元名家は〝おっかさん〟に頼むとするか……

 頭を下げるしか出来ない我が身が歯がゆいぜ。

 

 

 父と子と

 

「やれやれ、終末なんてモンが来て世の中大きく変わったってーのに、俺らの仕事は大繁盛か……」

 俺、三代目鬼太郎こと九島輝太郎は愚痴を零す。

 これだけの大異変の後で、表の仕事が大忙しってだけなら嬉しい悲鳴なんだがね。

 裏の仕事も大繁盛ってーのは頂けない。

 悪さをするクズが増えたって事でもあるしな。

 自分の欲得で悪魔をシェルター内に引き入れようなんて馬鹿は早めに潰さにゃならん。

 

「北神奈川支部でも暗部を運用し始めたが、俺らも協力せにゃならんだろう」

 

 二人も嫁さんを貰うんだ。

 新米旦那としては見栄の一つも張りたいが、何処まで遣るかってのが問題だ。

 悪党に舐められちゃダメだが、恨まれ過ぎてもマズイ。

 嫁さん達や、将来産まれるだろう子供に刃を向けられちゃたまらんからな。

 しかも、暗部のトップに義父が就任したんだ、義父も下手は打たんと思うが、慎重になるに越した事は無えやな。

 

「塩梅が難しいねぇ……」

 親父が現役で支部長代理なんて務めているから、色々相談出来るのは有難い。

 流石に便宜を図ってもらおうなんて考えちゃいないが、ゲスってのは勘繰るものだしな。

 相談ですら、程々に抑えなきゃならん。

 面倒だぜ……

 

「そもそもだ、親父に便宜を図ってもらうくらいなら、お嬢に直接頼むってんだよ」

 俺もお嬢の祖父とは仲が良かった。バイク屋と客って関係だったがね。

 そんな縁もあって、それなりに仲は良い方なんだ。

 

 それにしてもお嬢も複雑な家庭を築いてるな……有名な黒札の嫁で、保護下の女性達の旦那でもある。

 その内の一人は嫁さんのマホの妹で恵梨香の親友のミホちゃんだ、つまり俺とお嬢は相婿って訳だ。

 言ってて頭が痛くなるな。

 

「確かに黒札のお嬢には多くの血を残して貰った方がありがたいんだがね」

 黒札の子供は、霊能者として大成するらしいしな。

 でも本人はちゃーんと女性だってのに、嫁さんが20人を超える、しかもお嬢は求められて断れなかったそうだしな。

 難儀な話だ。

 ハーレムに憧れる男もいるんだろうが、二人でも持て余すのに二桁なんて冗談じゃない。

 それだけの人数を平等に愛し、満足させるって、チョット考えれば無理だって分かるだろうよ。

 ハーレムなんてのはフィクションとして楽しむだけで良いのさ。現実にしたら地獄だと思うんだがな?

 

 取り合えず、麻薬の事は報告出来た。

 俺らとしては地域密着型企業の端くれとして、方々にアンテナを伸ばして置く事だな。

 住民の困りごとを聞いて解決する。それが信頼となって仕事に結びつく。先祖代々やってきた事だ。

 

「終末が来たってやる事は変わらんさ」

 

 キノお嬢が、人として暮らせる街を護った。

 俺らは街を護り、発展させなきゃならん。

 子供には、少なくとも子供の内は悪魔に怯えずにすむ暮らしを作ってやりたい。

 

「俺程度には大それた望みかねぇ?」

 

 力不足だとしてもヤラナイなんて選択肢は選ばないがね。

 諦めるのは、力尽きて死ぬ時で良い。足掻けるだけ足掻く、みっともなくて良い。

 

「そもそも、拾った命だ」

 否、拾われたかな? お嬢が居なけりゃ九島組は八王子で悪魔に滅ぼされていただろう。

 

 なら、俺らの命は精々有意義に使ってやる。

 精一杯真っ当に生きる堅気の生活を護る。

 俺ら任侠の矜持だ。

 荒くれ者の集まりだが、堅気に迷惑を掛けず、真っ当とは言えないまでも誇りを持てる生き方をしなきゃならん。

 お嬢が、珍走の馬鹿どもを締め上げたから、奴らの更生にも力が貸せるだろう。

 喧嘩っ早い人間が、悪魔との殺し合いに順応できるとは限らんしな、頭が悪くても働ける職場も必要だろうさ……

 家で働くなら、その内に悪魔との戦いにも馴染むかも知れないがな。

 

「人間、周りに影響されて馴染むもんだしよ」

 

 元々、他人に舐められるのが嫌いな人間だ、悪魔にだって舐められたくは無くなると思うんだよな。

 

 

 暗部

 

 あの世の地獄と、この世の地獄、どちらも地獄にかわりなし。

 どっかで誰かが泣いてるかい? そうかいそうかい、そういうあんたにゃ他人事か……

 

 言わぬが花とは申されど、ひとこと言わせていただきます。

 あんたが見るか、おいらが見るか、誰かが地獄を見なけりゃ終われねえ。

 善男善女にゃ無縁の話で御座います。

 

「元名家の悪あがきかい」

 情けないねぇ、一時は政治家とつるんで傲岸不遜に振舞ってたってーのにさ。

 ガイア連合に実権を奪われた? あんたがキチンと仕事を全うしてりゃ良かったのさ。

 黒札さんだって面倒事を引き受けたくは無かったろうに……

 

 仕事はしないが金はくれ? そんな甘えた話が通用するもんかい。

 

 大体、アンタの所に居た若手は真っ当に稼いでおいでじゃ無いか。

 若手が言う事を聞かない? 人望が無い自分を怨みな。

 

 肝心かなめの若手を蔑ろにしたアンタが悪いよ。

 自業自得さ諦めな。

 

 諦めきれずに悪事に加担。人間の街、暮らしを悪魔に売り渡す……そこまで金が欲しいのかい? そんなに権力が大事かい? そんなの亡者と変わりゃーしない。

 

 とっとと地獄に引っ越しな!

 

 ワイヤーを投げ付け首を絞める。

 アンタの首は柱に吊るされるのがお似合いだ!

 

 さっさと殺して静かに去る。

 あたしゃ、名もなき暗部で結構だ。

 少なくともアンタ等に使われてた頃よりも充実してるよ。

 暗部のトップは黒札の知り合いなのに、血と泥を自ら被る良い漢だしね。

 

 支部長代理だって、自ら動けない事を悔やみ、あたし達に頭を下げる漢気のある任侠だ。

 支部長たる黒札さんも可愛らしいお嬢さんなのに、見ず知らずの人間を救う為に、資金も物資も見返り無しで提供してくれるんだ。

 あの娘を汚したくない大人の気持ちは理解できる。

 少なくとも金払いが悪い癖に、酷く偉ぶるだけのアンタよりもマシさ。

 普通に人間扱いしてくれるんだ。

 殺し屋風情と侮るなら、それなりの器量を持ちなよ。

 

 来世があるなら反省して活かせば良いさ。

 暫し地獄でお勤めだ……

 どうせ、あたしも地獄行き。

 先に行って待ってりゃ良い。恨み言ならその時聞くさね。

 

 さて、次のお勤めまでは気の良い、街のおばちゃんに戻るかね……

 悪党だって、子供の未来を護れるのなら、血に汚れる甲斐はあるってもんだ。

 駄菓子屋の〝おりく〟おばちゃんで居るのも悪くない。

 小銭がガイアポイントに変わったが、本質はなんにも変わりゃーしない。

 チョコが良いだの、うまい棒だの、小遣いの範囲で一喜一憂。

 子供を見てると癒される。

 まあ、暫らくはノンビリしたいもんさね。

 

 支部に仇名す鬼畜を殺し、許せぬ人でなしを消す。

 いずれも人知れず、仕掛けて仕損じなし、人呼んで仕掛人暗部。

 ただしこの稼業、ハローワークでは募集していない。*4

*1
同レベルに制限できる(ヤリ部屋アリーナ)道場での話

*2
無理じゃないかな? キノが心から信頼できて裏事情に通じている、人望のある大人って、凄く貴重だと思う

*3
岡っ引きとも言う

*4
当たり前である




何時の間にか常雄お父さんがダークヒーローになっている?
何故だろう、イメージする顔まで変わった……面白ければ良いか!
問題は本当に面白いのか作者には判断出来ない所です
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