【カオ転三次】世界が終わるまでのバイク旅   作:山親父

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注意:今回キノがネガティブモードです。そう言った話が苦手な人は読み飛ばしを推奨します(12/12 次話投稿しました)

あらすじは、キノちゃんネガティブモードでうじうじ→探求ネキが助けてくれたよ。
これで終わりますので。

とは言え、立ち直る為のステップとして必要と判断して描写しました。


ある梅雨の日

 日本に帰ってきたボクは憂鬱だった。

 梅雨と生理が重なった所為もある。いや、違うか……だって勉強した成果もあって生理の影響は軽いし、ゼロじゃないけど。

 だから、この憂鬱は精神的なモノ……色々無視してきたツケだろう。

 躁鬱と言う病気がある。ハイテンションと鬱状態を交互に繰り返す病気だ。

 ボクは病気じゃない。でもおじいちゃんが亡くなって、自分一人で頑張らなきゃって、張り切り過ぎていたんだろうと思う。

 いや、躁鬱じゃないけど病人か……サバイバーズ・ギルト。ミナミィネキに、そう診断されていたっけ。

 無理して忘れようとはしゃいで、こうしてチョット動くのが辛くなると弱気なボクが顔をだす。

 梅雨は嫌いだ……「バイクで走れねぇ!」って愚痴を言うおじいちゃんを思い出すから。

 最低でも週に二日はバイクで走っていたおじいちゃん。昼に店を開いても、夜には「ちょっと走ってくらぁ」って出かけていたっけ……

 でも梅雨の時期は何時もおじいちゃんが側にいた、バイクが錆びるってブツブツ文句を言いながら。ボクが笑って窘めて、おじいちゃんが拗ねる。そんな毎年恒例の行事みたいな暮らし。

 昔はその御陰で梅雨が好きだったのに、今では梅雨が辛い。

 恒例だったのハズなのに今年はそれが無い。それが現実を無理やり思い出させる。

 

 おじいちゃんが亡くなった事を思い出させる。

 おじいちゃんはもう居ないんだって思い知らされる。

 

 ボクは今までは逃避できてた。おじいちゃんってば、家を空ける事もしょっちゅうだったし、「ちょっと出て来る」ってお泊りすることも珍しくなかったから。会えなくても、今はタイミングが合わないだけ、なんて自分を誤魔化す事もできた。

 何時もそう思ってた訳じゃないよ? でも本当に辛い時は、そう思う事で自分を誤魔化す事ができたんだ。

 でも、梅雨の時期はおじいちゃんがずっと側にいた。居てくれた……でも今は無理、だって死んじゃったから……

 

 ボクが初潮になったのも梅雨の時期だった。あれは3年前になるのかな? トイレでパニックになって泣いてるボクをどうにもできなくて、お隣の奥さんが呼ばれて、対処してくれたっけ。

 あの時のおじいちゃんの困った顔を思い出す。懐かしい……けど悲しくもある。

 そういえば、あの小母様も死んじゃったんだよね。親身に世話をしてくれる良い人だった。悪魔に食べられちゃったけど……

 あの時、ボクが今位に強かったら? 意味のないIF でも、どうしても考えちゃう。

 

 結局、ボクが悪魔に挑むのは罪悪感からかな?

 多分、そうだと思う。それに悪魔と戦っていれば、余計な事は考えなくて済む。

 そして、弾薬が切れる寸前まで戦って、クタクタになれば夢を見ないで済む。

 悪い夢は勿論、良い夢も見たくない。起きた時が辛いから、夢の中で幸せを味わった分、現実が重くなるから。

 

 梅雨はおじいちゃんを思い出させる。あの人、梅雨絡みの愉快なエピソードが多すぎるんだ。

 梅雨の湿度にブチ切れて、除湿器をメーカー違いで一度に5台も買って来たこともあったっけ? 最高の性能なんだぞって得意になっていたら、ガイア製か、その系列会社製とOEM製品で全部が実質ガイアの同じ製品だった。デザインが違うだけ。

 それを指摘された時のおじいちゃんのバツが悪そうな顔……思い出すと笑っちゃうギャグみたいな話。

 でも蒸し返されて不貞腐れるおじいちゃんが居ないと笑えないんだ。

 

 結局ボクは強くなろう、強くなったって自分を誤魔化していただけ。梅雨はこうやってボクの虚飾を剥がしてしまう。

 ボクは結局、あの時のまま、泣き虫のままだ……

 

 窓の側に椅子を置いて。ボクはずっと雨を見ている。

 此処に座ってどれくらいだっけ? まあ、いいや、別にする事も無いんだ……

 

 

 ダメだ悪いループに嵌まってる。

 

 こんな時は、昔ならミホ達が励ましてくれたんだった。

 でもミホとも、もう会えない。会っちゃイケナイ。

 

 多分ミホは半覚醒って状態だったんだと思う。そして、前回の事件で覚醒した……

 じゃないとボクに助けられたなんて、言わないと思う。確信は無い、ボクの想像。

 でも大体合ってるんだろうな、そんな気がする。

 

 だから会わない。あの時あの火事で、八王子でミホと一緒にいたボクは死んでるんだ。

 ボクがそう決めた。みんなを巻き込みたく無いから……なのに、こうしてウジウジと後悔ばかりだ。

 

 おじいちゃん、ボクはやっぱり駄目な孫だよ……

 

 いつの間にか夜になってる。ボクは暗視が利くから良いや。明かりを点けるのも面倒だ。

 

 寝てしまおうかな? でも、夢を見そうだ……止めとくか。

 

 徹夜を続けて、起きていらない位に疲れたら、夢を見ないで寝れるだろう。

 何日かかるか知らないけどさ……

 

「心という器は ひとたび ひとたび ひびが入れば二度とは 二度とは……」

 

 こんなセリフを思い出した。ボク、壊れてるのかな? 罅が入ったのかな? コレ、直るのかな? 直らないんだろうな。

 ”いっそ粉粉に砕けてしまえ!” そう思うボクが居て……ガイアに来てお世話になった人の顔が浮かんで、”恩返しをしないで壊れるのは裏切りだ”って叫ぶボクも居て……コレも心の病気かな?

 分裂症ってあった気がする。正式な名前は統合失調症になったんだっけ? 何時、名前が変わったのかな? 覚えてない、けど良いや。本質が変わる訳じゃないんだ。

 

 自覚がある。多分ボクは壊れてる。壊れかけてるが正解か? 治療が必要なんだろう。でもスケベ部の名称を利用してミナミィネキから逃げ続けている。ボクは卑怯者かな? 卑怯者かも。

 

 取り止めの無い思考。ネガティブなループ……誰か止めてくれないかな? でも、ボクに誰が居るんだろう。

 ボクに友達って言える程、親しい人っていたっけ? いる訳ないや、ボクが避けてるんだもの。

 

 親しくなればマタ失うかもって、なら初めから無くて良いって、強がっていたのはボクだ。

 なら、コレも自業自得……壊れてもしょうがないな。

 

 

 そんな事を思ったとたんにドアが開いた。

 

「なにしてるんですか、先輩?」

 

 ドアから漏れる明かりに人影が浮かぶ。

 

「明かりも付けないで……御飯にも来ないし心配していましたよ?」

 

 心配? 誰がボクなんかを?

 

「主に私ですけど、食堂の方々や実銃愛好部の皆がです」

 

 そうなんだ……ボクなんてホットイテイイノニ。

 

「ネガティブループですね? まったく、こうなる前に相談に来なさいって言われていたでしょうに」

 

 ミナミィネキか……なんで瑞穂ちゃんが知ってるの? ボクを先輩なんて呼ぶのは瑞穂ちゃんしかいない。

 もう、一人しか居ないんだな……

 

「隙あればネガティブ思考ですね? でも私が来たからにはお終いです!」

 

 なんで、そう言えるの? ボク、ダメダメ人間だよ?

 

「ふふっ、こうするからです。 えいっ!」

 

 その言葉と共にボクは柔らかな感触に包まれていた。

 

「えっ!?」

 

 ボク、瑞樹ちゃんにハグされてる?

 

「こういう時は人肌が効くんですよね」

 

 あっ、なんか良い匂い……この匂い落ち着くかも。

 

「大体、先輩は無理しすぎです。幾ら強くても超人と呼ばれるようになったとしても」

「心は人間です。人間の儘で良いんです」

 

 瑞樹ちゃんの言葉が染み渡る気がする……ボク人間で良いのかな? 人でなしじゃ無いのかな?

 

「ネガネガ過ぎです。せっかく良い腕のカウンセラーが居るんですから。ミナミィネキを素直に頼りましょう」

 

 なんで、そんなに詳しいの?

 

「あれ? 先輩知りませんでした? 私もスケベ部ですよ?」

 

「ゑ……」

 

 思わず変な声が出た。そういえば、ボク言葉に出してないのに、なんで解ってるんだろ?

 

「だいぶ弱ってますね。抵抗、心の防壁が解りやすいでしょうか? モレモレでしたよ、心の声が」

 

「そうなの!?」

 

 って事は、全部バレてる? 瑞樹ちゃんにハグされて安心したことも、匂いに癒されたのも!?

 

「はい、バレバレです♪ でも、それで良いんですよ。人間、そんなモノです」

 

「ありがと……こうしてると安心する」

 

 なんだか気が抜けた? ボク、相当に参っていたのかな……

 

「先輩は要治療の患者さんなんですよ? あのミナミィネキが完全に放置すると思いますか?」

 

 ひょっとして?

 

「はい、避けられてるのを感じて、私にそれとなく様子を見てほしいと」

 

 そうなんだ……意地張って迷惑かけたのかな? やっぱボクは……

 

「はい、隙あらばのネガネガ禁止! 今は落ち着くまでユッタリしていましょう」

 ギュッと抱きしめられる。人間ってこんな事で安心できるんだな……後輩に甘える先輩、カッコ悪いかな? でも良いや、どうせダメダメな先輩だもの……

 

 

 

 気が付いたらボクは眠っていたらしい、目が覚めたら朝でベットの中に居た。夢は見なかったと思う、寝汗も無いし、心が凍り付くような寂しさも感じない。隣で瑞樹ちゃんが寝ている。添い寝までしてくれたのか……

 お互い服を着たまま、一緒に毛布を被っている。服がグシャグシャだな? クリーニング代くらいは出したいけど、瑞樹ちゃん受け取ってくれるかな?

 

 こんなに、清々しい朝は久しぶりだ。体を起こし、一人毛布から出る。

 それが年下の女の子に甘えた結果と言うのは恥ずかしいけど、取り繕ってもしょうがない。

 見栄を張ろうが張るまいがボクはボクだ。弱いところも含めてボクと言う人間だ。

 ならボクはボクのまま、行ける所まで行ってみよう。生きれるだけ生きてみよう。ただそれだけの事を悟るのに随分ウジウジしたもんだ。

 ボクは立ち上がって、伸びをする。窓へ向かいカーテンを開けると雨は上がっていた。

 

「梅雨の晴れ間か」

 

 梅雨だからって雨ばかりの必要はない。この晴れ間のように、時々弱音を吐ければボクはマダ頑張れる。

 

 瑞樹ちゃんに助けられちゃったな。初めて会った時はボクより小さかったのに。

 

 昔を思い出していたら、瑞樹ちゃんが起きていた。

 

「先輩おはようございます」

 

「おはよう、そう言えば先輩は止めてって言わなかったっけ?」

 

「良いじゃないですか。他に人居ませんし。それに先輩も瑞樹って呼んでます。ちゃんと探求ネキって呼んでくれたら私もキノネキって呼びますよ」

 

 先ずは自分から実践しましょう。そう言われれば反論できない。とは言え直ぐには無理そう。

 ああ、そうか本名で呼べる知り合いって無意識に甘えてたんだ。少しずつでも直そう。

 

 直るまでは仕方ない。アレだけ世話になって、カワイイ後輩の我儘一つ聞けないんじゃ先輩の沽券がね。もう無い気もするけど、他人が居るところでは弁えてくれるだろうし。

 

 

 この娘は大丈夫、絶対マタ会える。瑞樹ちゃんはボクより強い。ボクより遥かに上を行く気がする。後輩に頼りっぱなしも情けないけど、この際だ甘えてしまえ!

 

「ありがとね、瑞樹ちゃん。助かった」

 そう言って今度はボクからハグ。

 

「どういたしまして」

 瑞樹ちゃんはそう答えて軽くハグし返してくれる。

 

「あれ?」

 

 瑞樹ちゃんが起き上がったから毛布が捲れて、ボクは立ってて、瑞樹ちゃんはベットに座ってる。だから視線は自然と下に……股間に不自然な盛り上がりが?

 

「あれ? 先輩知りませんでした? 私、両性具有ですよ?」

 

「んえ!?」

 両性具有? ふたなり? 男性でも女性でもあるってアレ? アンドロギュノス?

「えっ、え~っ!?」

 

 軽いパニック。なんでも探求ネキって呼び名は”性の探求者”から来ているそうで……

 

「知らなかった……」

 

「先輩、掲示板にあまり来ませんしね」

 

 どうやら周知の事実だったらしい。お互い服を着たまま寝ていたから、何かあった訳じゃない。一応生理中だし。でも、あれ?

 

「じゃあ、先輩。今後はミナミィネキのカウンセリング受けてくださいね? 約束ですよ?」

 そう念を押して瑞樹ちゃんが退室する。

 

 でもボクは内心それどころじゃなかった。

 えっ、ボク半分男の子に抱き着いてたの!? しかも、一緒に寝てた? いや、ボクより立派な胸部装甲だったぞ? でも両性具有って事は両方付いてて……えっ、えっ、ふえ~???

 

 

 おじいちゃん、どうしよう。ボク、自分の性自認も怪しいのに、男女を超えた概念に襲われている気がします。

 

 

 でも、アレだけカワイイなら……いや、まてまて、恋愛は最低でも自分の性自認をはっきりさせてからだ。

 

 どうすれば良いんだろう。素直にカウンセラーのミナミィ先生に相談からかなぁ。

 

 

 

 

 




仕方ないんや、ジャンプするには、一度屈まなきゃなんや……いや~反応が怖いです。

こういう話は書いてて辛いです。でも必要だと思うから書く。
キノが自分の状況を受け止め、回復する気を出したってだけの話でした。

まあ、心の病に詳しい訳ではないので、ほとんどが私の想像でしかありません。
しかも、覚醒者の場合。普通の投薬治療も無理そうなので。

それと、キノが長時間生理用品を替えて無いのは”ガイア脅威の技術力”って事でお願いします。正直、探求ネキに学んだキノの生理痛その他がどれほどなのか解らない。
それにシリアスを続けながらチョット整理用品替えてきますって……どう描写すれば良いですか? 少なくとも私にゃ無理でした。

本来はこの役、探求ネキじゃなくミナミィネキが無理やり行う予定でした。でも、今のキノが唯一と言って良いくらい、探求ネキに気を許している。そんな状況になりましたので……
ミナミィネキとの繋がりから言っても不自然さはないと思いますし、最後くらいはギャグを入れたかったし(本音)


でも、探求ネキって朝〇ちするんだろうか? この娘の場合は態との可能性も有る気も……

もし、緋咲虚徹様にとって不快な描写でしたら修正しますので……感想で言ってもらうのが良いのかな。
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