前回同様ツーリング詐欺ですw
どうも纏まりが無い気もするけど、諦めて投稿
白鷺城が見えてきた
「普通の観光みたいだ……」
ボクは少々感動している。有名な観光名所〝姫路城〟を見学できる……裏までじっくりと見れる。
銃器マニアで軍オタ、日本刀ファンで城好き、色々業が深い人間だからなボクってば……
ツーリングが趣味でバイクで旅をし、旅先でのグルメを楽しむ、極普通の人間なんだけどね。
この行動を終末後でも続けている人間のセリフじゃ無い? 細かい事だ、気にすんな。
姫路城、別名白鷺城、美しい白壁と鷺山に築かれた事、黒い壁の岡山城が烏城(うじょう)や金烏城(きんうじょう)と呼ばれるから対比されて、そう呼ばれるそうだ。
ボクとしては、天守のみならず、縄張りにも興味がある。
つまり天守閣の美しさも見応えはあると思ってるんだけど、防御施設としての御城への興味の方が大きい。
これって、軍オタ趣味の延長だな? 大砲が有れば、無力化出来るんだけど、弓矢と火縄銃を相手に持久出来る、優秀で美しい防御施設が姫路城なんだと思う。
でも、終末前に見学しとくべきだったかも知れない。通りすがりに眺めた事はあったんだけどさ。
当時は無かった存在が二つ。
一つ目、姫路城の側にはデッカイ樹が有るんだよね……
その名を世界樹。
破魔ネキが生み出しちゃった、迷宮付きの聖なる樹である。
そして二つ目、空に浮く大きな島……浮遊島ソラネル。
この場に初めから存在していた姫路城が、ファンタジーな存在感を放つ二つのランドマークの所為で、違和感がある存在に……
いやまあ、ファンタジーそのものな神秘の横に、日本の天守が有るんだもん。調和は取れないし、違和感も仕方ないんだろうけどさ……
ぶっちゃけ日本の風景とは思えないよね。
今回は西へ行こう
「んと、先ずはペロロ様シェルターに寄って、支援の〝L118 105mm榴弾砲〟3門を置いてくるっと」
幼女ネキ製の簡易シキガミ〝量産型ニケ、ミリシス プロダクト12〟も18体、榴弾砲運用スキル付きで贈る事にする。
〝L118 105mm榴弾砲〟は一門6名で運用するから、丁度3門のチームが編成出来る訳だ。
終末で使った砲だけど、ボクの支部で今後出番が有るかと言えば怪しい。
ぶっちゃけ、この榴弾砲を使うくらいなら、要塞砲を増強すると思うからね。
終末後なんだから、他の眼を気にして自重する必要は減る筈。
だから大口径砲を……密かな野望だけど、何時設置できるかは不明だ。
最低でも20cm砲を装備したいな、将来の希望だね。
んで、死蔵するくらいなら、同胞に譲る事にする。
ペロロネキで良いんだっけ? 彼女のシェルターも山梨県の盾になる位置だし、本人の自覚があるのかは不明だけど、彼女のシェルターが万全なら山梨県の安全性が上がる。
頑張っている黒札には、多少の助力はしたいしね。
取り合えず、長野県の松本市まではホエールキングで移動する。
製薬会社製の普通の薬や魔女のお薬、北神奈川支部で保護した名物お菓子なんかも多めに持って行くか。何処に需要があるか分かんないし、マメに営業しておこう。
・
・
「なんか大げさに感謝されちゃったな……」
ペロロネキに過剰な感謝を示されて、むず痒いと言うか、逆に恐縮してしまう。
使わない兵器のリサイクル、お古を渡しただけなのにね? 運用できるように簡易シキガミを付けたからかなぁ?
実戦に投入出来ない兵器って邪魔なだけだし、先輩支部長としては後輩にカッコ付けたいだけなんだから、気にしないで良いのにね?
感謝できる良い娘って確認できたのは収穫だ。
山梨県を挟んでいるけど、似た立場の黒札だもん、今後のお付き合いもあるかもだし、コレで縁が出来た。
いざと言う時に、知遇が無い、人柄も解らないじゃ援助も難しいからね。
ピンチの時には遠慮なく頼って欲しい。
荷物が無いなら、ツーリングだ
「琵琶湖って近畿の水瓶だよね? 何処かが保護したんだろうか?」
滋賀県には用が無いから素通りしたけど、京都支部とか水資源は如何してるのかな? 他所の懐事情を探る気は無いけど、どうなんだろうね? 滋賀県に支部ってあったっけ?*1
京都に着く。ここも目的地じゃ無いし、通り過ぎるか? 美味しいお寿司屋さんがあるけど、その為に泊るのもね。
なにより、此処はゴチャゴチャしてて面倒くさいからな。
神社仏閣も多すぎるし……
そんな訳でスルーする。
終末後の京都も色々と興味深いけどね。
貴方の知らない京都旅って言うか、まだ誰も知らない京都旅が出来そうだw
自称神様も多い土地柄だしな。
幼女ネキの話だとノッブこと信長公は愉快な御方らしいから、チョット会ってみたいけど、今回は止めとこ。
京都は(政治的な意味で)魑魅魍魎の巣窟で宮様の家族までいる。
「怖い、怖い」
君子危うきに近寄らず。ボクは政治に関わりたくないのである。折角、北神奈川支部の書類から逃げて来たのに、日本国レベルの政治に関わるのは本末転倒だ。
だから、コッソリ目立たぬ様に通り過ぎる。
無事に京都を通過した時には心底安堵した。
次に着いたのは大阪だ。
大阪は逞しく生きてるみたいだ。文化としてのお笑いを護りたい黒札の御膝元なんだな?
コントをしながらパトロールをしているデビルバスターのコンビを見たし。
あれって芸人さん? それとも素人が、高度なコントを熟すのが野生の大阪人なんだろうか?
気には成るけど、確かめる為だけに寄り道するのもね……
うん、タコ焼き食べたら移動しよう。
のんびり荒野をツーリングだ。
暫らく走ると兵庫県の結界が見えて来る。
此処まで来れば目的地は近い。
ボクが今回訪ねるのは〝合法ロリ同盟の盟主〟破魔ネキの兵庫県姫路支部だ。
「そろそろ、息抜きしたいだろうしね」
以前やけ酒なら何時でも付き合うと約束したことがある。
同病相哀れむ。お互いに小柄でロリ扱いされる〝合法ロリ同盟〟の仲間であるボク等は仲が良い。
破魔ネキの方が一才だけ年上なので盟主は破魔ネキって事にできたなったので、ボクとしては安堵と共に申し訳なさもあったりする。
「東北で霊酒も仕入れた事だし、差し入れして飲むのも悪くないよね♪」
青森、宮城、福島に新潟の霊酒な地酒。そんで探求ネキ製の霊酒各種を大量に持ち込んでいる。
「暫くは楽しめる、と思うんだけど、どうだろう?」
その気になれば一日で飲み干せるのがボク等、高位の霊能者だからなぁ。
「さあ、もう一頑張りだ!」
神足通なら一瞬だけど、ボクがエミールで走る事に意義がある。
周囲の住民の助けになるかもだし、道路に結界を張る事にも意味はあるさ。
今走ってるのは荒野だけどねw
京都の住民には申し訳ないが、ステルスした所為で、結界付き道路に出来なかった……
見つかりたくなかったので、仕方ないと思って欲しい。
うっかり見つかって面倒事になるのは嫌なんだもん!
トコトコと小さなバイクが走って行く。
「ヒヤッhBANG!」
モヒカンを出オチで吹っ飛ばしながら。
破魔ネキは出来る事が多すぎる
「うーん、この範囲の結界を一人で張るとか……」
多才で羨ましいのと同時に頭オカシイって思うんだ。
結界に必要な〝鉄杭〟を個人で大量購入したのは、まあ分かる。
多少マッカは掛かっても、ボク達、修羅勢なら直ぐ稼げる金額だしね。
でも〝聖域鉄杭〟に加工して結界を張るのを一人でヤル、出来るってのは何かがオカシイ!
前任の支部長がヤラカシテタからマイナススタートだったのは知ってるけどね。
普通に一人で出来る能力があるってさぁ……
ボクとは違って、結界構築に掛かる時間が極端に短いんだろうね。
分身も出来るそうだし、問題は無かったんだろうけど……
羨ましくなるね。
いや、仕事量を考えると羨ましくないな?
支部長なんてやってると、限界まで仕事が来るんだけどね!
ボクみたいなヘッポコでも同じだ、出来る仕事の量は雲泥の差だけどなっ!
悲しくなるから止めよう。
ボクは兎も角、破魔ネキは息抜きをするべきだと思う。
息抜きに開発ってのも悪くは無いと思うけどさ、それで仕事が増えてないかな?
偶には休もうよ……
そうは言っても破魔ネキみたいに責任感が強すぎるタイプは休むのが苦手だからな。
遊びに誘えば付き合って休むと思うんだ。
出来る事、やりたい事が多過ぎて忙しい破魔ネキと、事務能力が足りなくてイッパイイッパイなボクを比べるのは間違ってるんだろうけど。
ボクも同じく苦労を買って出たタイプなもんで、偶には友人を休ませたいって思うんだよね。
ついでにボクも休めるし。
More人手
「何処も人材不足かぁ……」
破魔ネキのシキガミちゃん〝リュールさん〟の愚痴を聞いた感想がコレだ。
イカン、思った以上に身につまされる。
破魔ネキみたいに有能だと、部下にやらせるより、自分でやる方が早いってなりがちだけどさ……
物理的な限界もあるし、部下が何時までも独り立ち出来ないってのも問題だ。
とは言え、終末後の世界は危険がイッパイ。
万が一の時間切れも怖い。
人員の育成もしなくちゃいけないけど、ちんたら時間を掛けても居られないのか。
うーん、破魔ネキハード(苦笑)。
それでも北神奈川支部より黒札が多いけどさ……世界樹の迷宮探索に修羅勢も来てるみたいだし(白目)。
ボクんとこにも来て欲しいけど、セールスポイントが少ないんだよね。
何処の支部でも同じだと思うけど、モット人手が欲しい! More人手!
地方で頑張る黒札は少ない。才能は十分なのにやる気が無い黒札も多いしね。
彼らの気持ちも分かるけどさ。
誰だって余計な苦労はしたくない。
地方を助ける理由が無ければ、わざわざ山梨県から出ようとは思わないんだろう。
山梨県で引き籠るだけならショタおじが護ってくれるんだろうし……
ボクの場合は、喜太郎小父さん達を救いたかっただけだ。
成り行きで助けなきゃいけない人間が随分と増えたけど……
まあ彼らを山梨県の盾にしようって打算もあった。
ボクは聖人君子じゃないからね。
そして支部を運営するなら資金と人手が要る。
資金は修羅勢なら問題無いとしても、人材ばかりは簡単には集まらない。
高レベルの覚醒者なんてマズ居ないし……
鍛えている黒札も一時的な協力なら兎も角、地方で頑張ろうって黒札は少ない。
故郷を護るって人以外は、居ないんじゃないかな?
ボクも第二の故郷〝ガイア連合山梨支部〟を護りたくて相模原市を根拠地にしたんだし、意味合いはチョット違うけど、故郷を護りたいってのは同じだね。
優れた人材って何処でも貴重で、スカウト出来るなら支部間で取り合いに成りかねない。
北神奈川支部だと虎蔵君が筆頭かな?
彼の様な強者がフリーで居るなんて超レアケースだ。
破魔ネキの兵庫県姫路支部でも同じ。
新規の人材が少ないから今いる人材の負担が増える訳だ。
んで超有能な破魔ネキの負担が一番大きいと……
なんだこのデススパイラルは?
人材が少ないから忙しい→忙しいから新人の教育に時間がとれない→教育が出来ないから人材が増えない→人材が増えないから忙しくなるって負のループ。
これを断ち切るにはどっかでテコ入れが必要なんだけど、此処ではどうしてるんだろう?
ボクの所? 北神奈川支部では、教育に力を入れてるよ? 現人員の負担が増えるけど、ジリ貧で潰れるのは嫌だもの。子供には教育が必要だと思うし……
逃げてツーリングしてるのは誰だって? ボクだよ? うん、ごめんなさい。
ツーリングしたって いいじゃないか バイク乗りだもの きの
疲れたら休んでも良いんだ。
否、休まないとダメだ!
一時的になら無理は効くよ? 高レベルの覚醒者だもん。
でもさ、それって負担を前借してるってだけで、心身の疲労は貯まるんだ。
だから定期的に休まなきゃ。
ストレスって覚醒者でも舐めちゃダメだと思うんだけど……
ボクがヘッポコなだけかも知れない。
うーん、でもなぁ?
瑞樹ちゃんクラスでも、食事や睡眠って大事にしてるしね。
無理は出来ても、無理を続けると人間味が削れるんだ。
人手は急には増やせないけど、ボクにだって手助けは出来る! 多分出来ると思う……、出来るんじゃないかな? もしかするとダメかも知れない。
荒事なら手伝えるから、少し休んでストレスを吐き出して貰おう。
荒事なんて起きない方が良いんだけどね。
酒! 飲まずにはいられない!
うん、お酒を大量に持ってきて良かった……
目の前には瓶ごとラッパ飲みを始めた破魔ネキが居る。
「私だって、好きで小さい訳じゃ無いんですよ!! 成長だってしてるんです! 背だって少しは伸びたんですけど!?」
あれ? 思ってたんと違う? (仕事の)愚痴なら聞くよ? ってお酒を薦めたら、ロリ扱いされる事への文句がマシンガントークだ。
破魔ネキにとっては仕事より子供扱いの方がストレスだった??
分かる気もするけど……
ボク等これでも成人女性なんだもんね。
つい先程も〝子供がお酒を飲んじゃダメですよ!?〟って女性がね……
多分、他の支部から来たゲスト、リュールさんが初めて見たって言ってたし。
それでスイッチが入っちゃったのかな?
やけ酒にはトコトン付き合うけどね。
「スイマセン、キノネキさん」
小声でリュールさんが謝るけど、戦犯はボクだから気にしないで。
訪ねても問題無い日を聞いて、大量のお酒を持ち込んだ上で飲みに誘ったのはボクだからね……
「聞いてますかキノネキ!」
「うんうん、聞いてる聞いてる。好きなだけ飲むと良いよ。荒事ならボクが引き受けるからさ」
適当に相槌を打ちながらボクも飲む。
但し、熱燗を御猪口でチビチビと飲む事にする。
んで、愚痴の聞き役に徹する。
ボクまで酔ったら収拾が着かない気がするしね。万が一に備えておく必要もあるんだよ。
盟主も最初はリュールさんにお酌されながら、上品に飲んでたのに、何時の間にかラッパ飲みに……
やっぱりストレスが溜まってたのかな?
食事や睡眠(恋人と一緒に)、は欠かしてないらしいけど、気分転換までは出来てないみたいだ。
気分転換で簡易シキガミやアイテムを開発してる? それって仕事を増やしてるだけじゃないかな?
ボクも注文してるから戦犯の一人だけど……
色々出来る人は、出来る事に比例して仕事が増えるみたいだ。
ボクには無縁の悩みだぜ、荒事以外は出来ないからなっ!
BAD ENDから逆襲した女性
「ん~♪」
酔っぱらって甘える破魔ネキと抱き着かれて困っているリュールさん。
お邪魔虫なボクは御暇しよう。
勿体ないから、御猪口と徳利は確保してっと……
「んじゃ、お邪魔虫は消えるから、どうぞごゆっくり~♪」
助けを求めるリュールさんの視線は無視する。邪魔すんなと視線を向ける破魔ネキの方が怖い。
素早く消える。後ろから衣擦れの音が聞こえた気が? 出歯亀になる気はないから振り向かずに退室だ。
んで、廊下で月見酒と洒落込んでいたんだ。
「貴女も飲む?」
振り向かずに後ろに声を掛けた。
「いただきます」
隣に来た美少女さんに新しく御猪口を出して渡す。
徳利を傾け、お酒を注いで……
「初めましてだよね? 貴女が熾天使ネキで良いのかな?」
破魔ネキの色違い、2Pカラーって言ったら怒られるかな?
「一応、そうなるのかな? 始めましてって感じはしませんが……」
どちらともなく杯を掲げて、飲み干す。
手酌でやろうとしたらお酌をされた。ボクも御返し。
暫らく黙って飲んでいた。
「あっちでは黒札の皆は元気?」
「ええ……」
「そっか……」
彼女の苦難は軽くだけど聞いた事がある。元々メシア教に気を許しはしないけど、そんなボクでも眉をしかめる暴挙の犠牲者。
他人事では無い。ボクだっておじいちゃんが命がけで逃がしてくれなきゃ、どうなって居たやら……
彼女はボクが捕まっていたらってIFの答えな気がする。
ボクだとBAD END状態から逆襲できるとは思えないけどね。
普通に壊れて終わりだったんじゃないかな? 当時のボクって只の小娘だし。
この世界の黒札にだって犠牲者は居る。バハネキとかさ?
バハネキは助け出せたけど、助からなかった俺らも居るんだろうね。
ちょっとしんみりしながら、ゆっくりと飲む。
偶には死者に思いを馳せながら飲むのも良いさ……
今日はお爺ちゃんの月命日だしね。
沈黙が心地よかった。
そんな時間も長くは続かないのが終末後なんだけどさ。
「大変です、支部長!」
そう叫びながら破魔ネキの私室に向かう急ぎ歩きな事務員さんが来た事で静寂は終わった。
「破魔ネキなら寝てるよ?」
「貴女は?」
「ゲストのキノネキ、で分かるかな?」
「ああ、貴女が……って、それどころではありません! 急ぎ起こさないと!!」
「オススメ出来ないなー、恋人さんと一緒なんだけど?」
「ええっ! どうしましょう……」
まあ、恋人達の営みを邪魔するのは勇気が要るよね。
御猪口の中身を飲み干して、声を掛ける。
「トラブルだよね?」
疑問形で聞くけど、どうせ馬鹿が攻めて来たとかでしょ?
「貴女には言えません……」
ふむ、モラルが確かな事務員さんは好感が持てるよ。
だから、懐から書類を出す。
「何です? 許可証?」
「万が一の備えだよ。破魔ネキを休ませたくて訪ねて来たんだ。荒事ならボクが引き受ける事が出来る」
さて、どんなトラブルだろうね? 書類のミスとかだとボクの出番は無いんだけど……
「???」
事務員さんがフリーズしてる。まあ破魔ネキがココ迄、羽目を外すのは珍しいだろうしね。
「あっはい。救難要請が……巨大な猪に襲われていると」
「なるほど……」
探求ネキから貰った〝万癒印〟を手の甲に押し付ける。治療魔法を肩代わりしてくれるアイテムで、今回は状態異常の回復、ほろ酔いで良い気分だったのにね?
まあ、良いや。貯まった鬱憤を晴らしてしまえ!
「くそっ! マダ諦めないのか!!」
俺達のパーティは巨大な猪に追われている。恐らくは悪魔だろう。
猪って生き物は、古代から恐れられた獣だ。
その名残は神話にも残る。
ヴィシュヌの化身の一つ〝ヴァラーハ〟、ディルムッド・オディナを殺した魔猪〝サングリア・デ・ベン・ブルベン〟、北欧神話のフレイとフレイヤの双子神も〝セーフリームニル〟と〝ヒルディスヴィーニ〟と言う名の猪を連れているし、ギリシャ神話にも〝エリュマントスの猪〟や〝カリュドーンの猪〟が存在する。
雑食の猪だが人間の命を奪った事例は下手な肉食獣よりも多いかも知れない。
彼らの牙は鋭い。
体重が100kgを超えることもあり、時速40kmで走ることが出来る。攻撃された場合、太ももの内側など太い血管を傷つけられ、失血死に至る恐れも高いのだ。
古来より猪の肉は貴重な蛋白源である。けれども猪狩りは命がけの仕事だった。
彼らを狩ろうとして返り討ちにあった、猟師も多い。
それが神話に、魔物として書かれる猪が多い理由であろう。
「くそっ! なんで、こんな高レベルの悪魔が出たんだ!? 結界で抑制される筈だろう!!」
猪のレベルは測定不能。
本気で走っているのに引き離せない。俺達のパーティだってレベル30前後はあるのに……
「アレは〝
後ろを振り返りながら呟く。
後ろには勢いを弱める事無く追って来る猪。
このままだと追いつかれるかも知れない。
〝
正体は千手観音だったとか?
暴れまわり、猟師に弓矢で撃たれた後、淡路島まで逃げた。
追いかけた猟師が見つけたのが、胸に自分の矢が刺さった千手観音だったと伝わる。
猟師は神仏を射てしまったと反省して出家。名を寂忍と改めて、先山千光寺を開山したのだとか。
奈良県吉野郡にも〝
日本でも猪は恐れられた獣であるという証拠だろう。
だが、アレは本当に〝
勿論、只の獣では無いんだろうが……
こんな荒野では一撃離脱で攻撃される。兎も角、今は逃げよう。戦うにしても、有利な地形を選ぶべきだ。
「くくくっ、早く来るが良い〝童姿の魔王〟よ……かの猪を討ち果たした時が貴様の最期だ!」
必死に逃げる人間を監視する影がある。
「急ぎ来るが良い、早くせねば部下が死ぬぞ?」
ヤツラが死んだら、変わりを襲うだけ……何時かは〝童姿の魔王〟が来るだろう。
この地の最大戦力は〝童姿の魔王〟なのだから。
影は自分の策略が実ると疑いもしなかった。
童姿の魔王? 違います魔弾の射手です
「そのまま逃げろ、アレはボクが仕留める」
エミールに乗ったまま、カノンを抜く。
救援を求めたパーティにすれ違いざまに声を掛けて、そのまま進む。
土煙を上げて迫りくる、巨大な猪に照準を付けて……撃つ!
bang!
「ピギィ!」
額を撃ち抜かれて断末魔を上げ、大猪が倒れる。
何やら纏わり着く不快な気配。
そんなものを受け入れてやる義理もなく、抵抗したら霧散した。
「ふうん……トラップのつもりだったんだ?」
大猪の正体は〝
アルテミスの使いとして、女神の怒りを表す獣だった〝カリュドーンの猪〟に術式を潜ませる。
コイツのMAGを吸収したらアルテミスの霊基を媒体に、意識を奪おうって罠だったらしい。
多分、スッゴク念入りに構築したんだと思う。
自然に紛れて気付かぬ内に侵入出来たかも知れない。
破魔ネキが相手だったなら……
〝アルテミス〟とも〝カリュドーンの猪〟とも縁の無いボクには違和感バリバリだし、取っ掛かりも無いんだもの、抵抗するだけで霧散する間抜けなトラップだった。
そして隠れていた存在を見つけた。
「間抜けは見つかったみたいだね」
動揺したことで揺らいだ気配に
一瞬の後、諦めた穢教鳥が姿を現した。
「何たることだ! あれ程、時間を掛けたと言うのに!!」
穢教鳥、天使ドビエルは大げさに嘆いた。熊の神を意味する名前を持つ、このペ天使はメシア教に多大な被害をもたらした破魔ネキを除くべく罠を張り巡らせたのである。
どれだけ、練りに練った罠でも、前提条件を満たせないと意味は無い……
キノが来ただけで罠は無効化され、ドビエルは道化に成り下がった。
「オノレ〝
「友人を訪ねて来ただけさ」
運が無かったね……否、破魔ネキの事だ、予知夢でも見たのかな?
ボクはアポを取ったからね、指定された日に起こった事件だもん。
破魔ネキに誘導されたのかも? どっちにしろボクは友人を助けられればそれで良い。
だから、滅べ!!
ボクの銃弾と穢教鳥の雷光が交差した。
ピロートーク
「ねえ紫ちゃん、キノネキって大丈夫なの?」
リュールの質問にキスしてから答える。
「大丈夫ですよ。あの程度の敵に遅れを取るキノネキではありません。修羅勢の一員ですからね」
戦闘に限ればキノネキに勝る存在は少ない。
ショタおじは別格ですけれど、修羅勢でもキノネキに確定で勝てると言える人は居ないでしょう。
勿論、相性で勝率は上下しますが、それでも絶対に勝てるなんて存在は居ませんね。
相性が良くて、8割勝てるって位なら居るでしょうけど……
「キノネキは超越者の一人です。銃さえ有れば、どんな相手にでも勝機を見出す人間ですよ」
戦闘以外はペッポコって自嘲するキノネキですし、自己評価は低いんですよね。
思わず苦笑する。
でも銃に限ればガイア連合でも指折りの強者。
それがキノネキ。
親しみやすく、可愛らしい、リアクション芸人って印象が大きくて強者ってイメージを擁けないのかな?
三馬鹿ラスのシリーズでも弄られ役で度々登場してますし……
今回は助かった。
穢教鳥が罠を張っているのは予知出来ましたし、其処にキノネキが来ると聞けば、こうなるのは自明の理。
「友情に厚いキノネキに感謝しないといけないね」
もう一度、リュールを抱きしめてキスをする。
夜は未だこれからだ。
月見酒
「今日は月が綺麗だ……」
エミールの横に座り込んで、お酒を飲む。
姫路城を見ながら御猪口を傾ける。
月明かりに照らされた姫路城の白さが際立って見える。世界樹と浮遊島は無視しよう。
ボクは日本な雰囲気に浸りたいのだ。
ゆっくり、のんびりと……
冷酒も悪くない。
メールで報告はしたし、正式に書類を出すのは朝で良いよね?
「最終的には破魔ネキが処理する書類なんだ、無粋は要らないさ」
今は恋人と過ごしている筈。
だから急ぐ必要は無いし、急かす必要も無い。
月と太陽は破魔ネキのシンボルでもある。
友人の替わりに月と飲むのも乙ってもんだ。
流石に太陽はダメかもだけど……昼間っから飲むダメ人間になってしまうww
「別にダメ人間でも良いけどね」
友人を訪ねた休暇中だもの、多少自堕落に過ごすのも悪くない。
ゆっくりとした大人の時間を楽しもう。
尚、暫くの後〝未成年飲酒〟と勘違いされて一騒動、起きた模様。
ボクはこれでも成人のお姉さんだ!!
穢教鳥ドビエル、レベルは81(70+2D10で決定)、それなりに脅威ではあるけど罠が破綻して動揺する格下なので、戦闘は省略しても良いかなって
一度書いたけど冗長過ぎたのでカットしましたw
〝魔弾の射手〟のふり仮名はドイツ語です。直訳すると自由な射手になるのかな?
ラテン語だと銃を意味する言葉が無いんですよねー
捻りの無い二つ名だけど、分かり易さ優先