これでヨシ!
12/24 マカーブル氏よりFAを頂きました
あとがきに載せときますね
現実がファンタジーを超えて来た……
「リアル先輩がリアリティ君を虐めてる」
ネットスラングになった言葉だが、ホント小説家受難の時代だと思う。
それでも以前はマダましだった。
「スポーツ選手のフィクション超えなんてのは序の口だったんだな……」*1
現在じゃ現実世界が壊れてやがる!
世界が終ろうとしている“終末〟が迫っているから、人間は身を正して生きねばならない。
救われるのは選ばれた人間だけ……
こんなのカルトの妄言としか思えないだろう?
だが実際に〝自称天使〟が身勝手な基準で人間を選別して失格者は殺していた。
ウソだと思いたいが事実だ。
世界は厳しい。
そんな中でも人間が負けっぱなしじゃなかったのは救いだ。
ガイア連合、民間の霊能者互助組織。
人間の文明を愛するが故に、護れる範囲は護ろうと奮闘した人間達。*2
超人と呼ばれる高位の霊能者が多数存在する彼らの奮闘で、人間に悪魔に対抗できる手段と拠点が残された。
彼らは聖人では無い。
凡人より多くの事が出来るだけで、メンタルは普通の人間と変わらない。
彼らは崇高な使命感で動いた訳では無い。
助けられるのに見捨てるのは気分が悪いから、あくまで自己満足で救う事を選んだ。
私も救われた一人だ。
編集さんを始めとした近しい人達も救われてる。
私は自戒する。彼らは聖人じゃないし、理想のヒーローでも無いのだと。
心無い言葉に傷つき、心折れる事もある、普通の人間なんだと。
機会が有れば、それと無く啓蒙した方が良いのかも知れない。
利益が無いのに、感謝すらせず救われて当然等と思っていれば、ある日突然見捨てられても不思議はないのだ。
キノちゃん。
彼女が私達の救い主だ。
ガイア連合に所属する高位の霊能者。
強力な悪魔を滅ぼしてきた実績もある。
私の小説の登場人物にそっくりな彼女が私の作品のファンでもあって、私を気にかけてくれていた。
そして、あの恐怖の一週間以降、私達を保護してくれている。
何言ってんだコイツ?
そう言われても仕方が無い。
自意識過剰、自分のキャラに救われたとか夢見てんじゃねぇ!
こんな言葉が聞こえてきそうだ。
でも、そっくりさんとは言え事実なんだよな~。
恩人からの頼み事
北神奈川支部、神奈川県の北半分に相当する、シェルター群の事だ。
私は、元々この地に住んでいた。
今は編集さん達と同じシェルターに受け入れられている。
結界で護られているとは言え。一般のマンションじゃ防御力は多寡が知れていた。
その為に安全な場所への引っ越しを薦められて、素直に従った形だ。
細かな地名は必要ないだろう?
個人的な記録とは言え、何処に誰が居るのかなんて、情報は出したくない。
私個人は兎も角、編集さん達には家族も居る。
メシア教過激派に狙われやすい子供も居るんだから。
子供は感受性が強いからだろうか?
覚醒した子供も多い。成人に比べればの話だけれどね。
そして無垢で抵抗力の無い子供は自称天使共の恰好の餌食だ。
力は無くても、大人なら子供を護らなくては……
とは言っても、私にやれる事なんて殆ど無い。
食料だって配給頼み。
一応、半覚醒はしているらしいし、出来る仕事を探そうかと、そう思ってたんだが……
「私に小説を書けと?」
「うん」
キノちゃんが頷く。
「こんな世界でも、否、こんな世界だからこそ、小説が必要なんだよ」
ふむ?
「娯楽が必要なんだ。特に子供にね」
なるほど、解る気もする。
「皆、生きる事に必死だ。それは仕方が無い」
でも、と彼女は続けた。
「このままじゃ現実に押し潰される……気がする」
人間はパンのみにて生きるにあらず
「人間が人間らしく生きるのには夢が必要だと思うんだ」
キノちゃんの独白。
「特に子供の頃ってさ、見知らぬ世界や技術に憧れてドキドキする時間が必要だと思う」
同意出来る考えかな?
「ボクも子供の頃はジュール・ヴェルヌの作品でワクワクしてたし、今でも冒険小説は好きなんだよ?」
勿論、先生の作品もね。
そう彼女は続けた。
「光栄だね」
皮肉じゃない。心底そう思っている。
彼女は下手な冒険小説よりも苛酷な戦いを経験している。
そんな彼女の癒しとして私の文章が役にたつなら、嬉しい事だ。
「現実は苛酷だからさ……」
確かに、平和で安全な生活は遠くなった。
此処は比較的平和だけれど、命がけのサバイバルを強いられている場所は多い。数少ない例外が此処、北神奈川支部だとも言える。
「子供には夢を見て欲しいんだ。オカルトに限らずに……」
オカルトが悪いとは言わないけど、それ一辺倒もね?
彼女が笑う。力の無い笑いだ。
「覚醒して戦う人間を目指すのが悪いとは言わないよ? でもさ」
子供には自分の可能性を信じて欲しい。キノちゃんはそう言う。
「戦士には成れなくても、錬金術師に成れるかも知れない、経営者に成れるかも知れない。子供が戦う未来しか見れないってのは気に入らない!」
キノちゃんの言葉は力強い。
「人間の生活って戦士だけじゃダメだし、戦えない人間が落ちこぼれ扱いは不味いと思うんだ」
技術者や学者なんて職業に憧れる子供が居て欲しい。
第二の本田宗一郎や松下幸之助が出てきたら最高だ!
彼女は熱く語る。
「黒札のボクが言うのもなんだけどさ、人間って個の強さには限界があるでしょ?」
キノちゃん達、黒札は人間としては外れ値だからね。
「人間の強みって集団戦だと思う。集団的知性だって人間の強みだよ」
集団知か、なら様々な考えの人間が居る方が良いよな。
「先生だけじゃないよ? 小説家は勿論、漫画家さんや絵本作家さんにも声はかける」
創作活動はガイア連合でも推奨されているらしい。
「子供は勿論、黒札だって娯楽に飢えてるんだ」
キノちゃんの笑みが深くなる。そして真面目な顔になって一言。
「なによりボクが先生の新作を読みたい!」
なるほど、なら書かない理由は無いよな!
構想を練らなければ
「なるほどなるほど、我々編集者にも出番が有りそうですね!」
担当の編集さんが嬉しそうに笑う。
「なにしろ、他の生き方を知りませんのでね。編集から製本まで面倒見ますよ!」
長年の相棒だけに話が早い。
「製本まで問題ないんですか?」
「ガイア連合で創作を推奨してるってのは誇張じゃ無いですよ」
印刷・製本は勿論、小説や画像の投稿サイトまで整備しているのだとか……
「人間、衣食住が満たされれば娯楽を欲しがるものです」
酒やタバコならマシ、ドラッグや性暴力に流れる事も海外では珍しくないらしい。
創作を趣味とするなら健全だし、周囲も楽しめる。
小説にしろイラストにしろ18禁が強いのには苦笑するしかないが。
エロを求めるのは本能だからな、実際に性犯罪を起こすくらいなら、想像で発散する。
日本人は江戸時代から変わってないのか。
「さて題材を如何しましょうか?」
「先生が得意なガンアクションは、暫く時間を置いた方が良いかもしれないですね」
そうだな、終末後では銃が身近に成り過ぎた。
今となっては銃は日常の道具だ、非日常を思わせるアイテムでは無い。
只のガンアクションなら兎も角、銃が死に関わる描写は避けた方が良いだろう。
どんな反応が起こるか予想出来ない。少し時間を置きたい。状況がもっと落ち着けば書ける日も来るだろうが、今はダメだ。
それなら、いっそ古典的な冒険活劇も良いんじゃ無いだろうか? 悪魔の居ない架空の世界を舞台にして……
複葉機の様なノスタルジィを感じる技術レベルでの冒険譚は楽しそうだ。
「アイディアは有りますが資料が欲しいですね」
複葉機の資料って集まるかな?
「どんな資料です? 伝手を当たって見ますよ?」
「お願いします」
「でも、時間を空け過ぎたくないですね……」
「何故です?」
「読者は先生の無事を知りません。先生が健在で元気に執筆しているって知らしめるなら……」
「ああ、実際に新刊を出して見せれば分かり易いと……」
とは言え、準備不足で無理に書くのもな……
「アレ、イケませんかね?」
アレ? なんの事だ?
「終末前に先生が出してきた企画ですよ。キノ主人公の退魔物ギャグ」
学園キノか! だがアレは!
「セルフパロですが、現実と重なる面があるのは事実です」
「没にすべきじゃないのかな? 恩人を笑い飛ばすみたいで……」
「そこです! キノさんの身内に確認しましたが問題無いそうです」
問題無い? 何故だ?
「変に恐れられるよりも親しまれる方が良いとの事でした」
キノちゃんは完璧超人じゃない。強いが欠点も多いし、人情溢れる優しい娘だもんな。
「知ってる人は恐れたりしません。けど知らない人の方が多いですからね」
だから、キノ支部長はパロディ作品でそっくりさんが茶化されるくらい、笑って許す人格者だと知らしめるのか。
「なら、書くか」
でもまあ、しつこいくらいに警告文は記載しよう。
キノの旅が好きなら読むな。
現実の人物とは関係ありませんってね。
ちょっと未来
こうして〝学園キノ〟は刊行された。
刊行後、某黒札が〝謎の美少女ガンファイターライダー・キノ〟呼ばわりされて揶揄われるが、コラテラル・ダメージである。
色んな意味で親愛度は上がったから良い事かも知れないね?
「支部長の威厳が無くなったんだけど!」
元々、存在しないモノは無くなりようが無いではないか? 何を言ってるのだね?
「微妙にはあったもん! うわーん!」
「無い物は無い、諦めて働きたまえよ……仕事が溜まっていると苦情が来ている様だが?」
泣こうが喚こうが現実は無常なのだよ……キノネキが揶揄われるくらいで、交渉がスムーズに進むなら、組織としてはメリットだろうね。
イデニキの突き放した言葉*3がキノの心を抉る。
大丈夫、イデニキはキノ弄りのベテランだ。加減は心得ている。
今回もプルプルしながらも、持ち直している。
「チクショーメー!!」
キノの叫びが事務所に木霊する。今日も北神奈川支部は平常運転、平和でなによりなのである。