【カオ転三次】世界が終わるまでのバイク旅   作:山親父

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前回の内容が鬱々すぎたので早めの投稿。
ある意味で前話の補足なので、お話は進んでいません。

おかしい、私の執筆速度じゃないぞ?

多分、次は遅れます(プロット再構築中)。

タイトルが紛らわしいかも? タイトルから(草稿)を削除。


アル社長のキノネキレポート

 私はアル。アル社長なんてあだ名で呼ばれている。アノ娘、キノネキについて聞いて周る仕事もそろそろ終わり。私が話を聞きたかった最後の黒札へのアポが取れたのだ。この後、この喫茶店に彼は来ることになっている。

 この喫茶店はガイアニ御用達で黒札とその家族が経営者だ。安全だし、ここなら話が漏れる事も無い。

 彼が来る間、私は何故こんな仕事をする事に成ったのかを思い出していた。

 

 ガイアニの作品資料、参考になるならと幾人かの黒札が見せてくれた模擬戦を録画した資料。その中に彼女。キノネキの物があった。本来の動きよりもかなりスローモーだと言うが、素人目には眼にも留まらぬガンアクションにしか見えなかった。常人でも解る位に抑えた動きという事だろう。

 

 そんなキノネキがプロデューサーの目に留まった。銃に特化した霊質を持ち、その上でガンカタと呼ばれる接近戦もこなす。時に泥臭く殴り合い、時に華のあるガンアクションを見せる。そんな彼女の戦い方は、プロデューサーに映像を見せられたガイアニのスポンサー達の興味を引いた。

 

 そして、ガイアニの新作のモデルにどうかと言う声が上がったのだ。

 いっその事”キノの旅”出してはどうか。と言う意見もあった。しかし、原作が世に出たのは2000年の3月が最初。原作者が存在し、発表される可能性のある作品を潰す様な真似は慎むべきだとの意見が優勢で、私もそれに賛成する。

 確かに良いキャラクターで、出せば受けるのかもしれない。しかし、オリジナル作品にするとしても、バイクに乗る美少女ガンファイターが出る作品を出すのはネタ潰しではないのか? 今、原作を構想し書いている最中と言う可能性すらある原作者が二番煎じ呼ばわりされないか? 下手をすると書くのを止めてしまうのではないか?

 

 そう考えた私は反論の為の資料作りの一環としてキノネキを知る人々の話を聞いて周る事にした。私自身も親しくさせてもらっている方だと思うが、あの娘は一定の距離で壁を作って、他人を近寄らせない、こちらから近づくとスルリと逃げてしまう。そんな猫みたいな所がある。

 様々な視点からキノネキを知り多角的に見る必要があると考えた。

 

 一人の男が喫茶店に入って来ると、店内を見回し、私を見ると近寄ってきた。

「アル社長ですね。俺のことはウサギと呼んでください」

 匿名希望とは聞いていた。私は頷くと、レコーダーを取り出し、取材準備を始めた。

「ではおねがいします」

 

 最後のインタビューが始まる。

 

 

「ああ、アイツか? 良く知っている。一時期、異界では近くで戦っていた」

「知っているか? 修羅勢ってのは三つに分けられる」

「ショタおじの余裕を少しでも確保したいヤツ。強くなる事にしか興味が無いヤツ。そして、目的の為に力を求めるヤツ。この三つだ……アイツはキノネキは確かに修羅勢だった」

 

 ちょっと?

 

「あはは、スマンスマン。私的にとは言えインタビューなんて言われると遣りたくなってね。前世ではエスコン好きだったんだよ」

 

 私の表情で察したのだろう。笑いながらも彼が謝った。

 

「良いですけど、内容は真面目にお願いしますね」

 

「キノネキについて知りたいんだよな。特に異界での事について? 多くは知らない、それで良いか?」

 

「ええ、構いません」

 

「判った、もう一度言うが多くは知らない。俺が異界でキノネキを見ていたのは初期だけだからな」

「アイツは、キノネキは確かに修羅勢だった」

 

「初めてキノネキを見たのは浅層で戦っていた頃だ。物理反射持ちのガキに素手で立ち向かって行っては跳ね返せされていたのを覚えている」

「普通は攻撃魔法なり、アイテムなりを使ってサッサっと倒して進むもんだ」

「でもキノネキは違った……何とか貫通攻撃を覚えようと、弱い相手で練習してたんだ。今なら判る。でも当時じゃ馬鹿にする奴も多かった。俺もその一人だ」

 

 取材のアポを取った時、彼は名を名乗らなかった。名乗るほどの者じゃないと言って……どうか匿名でお願いします! って必死だったわね。

 

「暫くは苦戦していたようだ。でもついに貫通撃を習得した。それからは早かったな、専用のシキガミ、ああバイク型のアレだ。なんで、キノネキはバイクをシキガミにしたんだろうな? 色々想像は出来るがホントの事は誰も知らない」

 

 多分おじいさんへの思いと、キノならバイクって考えただけじゃないのかしらね? あの娘、クールに見えて内心お馬鹿……そう見せているだけの可能性が高いのが問題なのだけれど。

 

「シキガミに乗って、キノネキは上層に現れた。知らないだろうな……キノネキが来ると周りの敵が一気に消えるんだ」

「キノネキにとって、決して強い武器とは言えないガイア銃で、的確に敵の急所を撃ち抜いて行く」

「俺たちにとってはチョットした悪夢さ……内心見下していたヤツが俺たちが苦戦していた相手を瞬殺して行くんだ……」

「だから、俺はスレを立てた。キノネキは馬鹿にしていい存在じゃない、舐めてるとヤラレルぞってね」

 

 彼があの【ウサギよ】亀がバイクでやって来る!【怯えろ】スレの1だった。確かに名乗るのは怖いかも知れない。

 

「バイクによるスピード。弱い銃でも急所を撃ち抜く事で即死させる技量。あっと言う間に視界から消えて行ったよ。アイテムを拾いながら必死で追いかけるアガシオンには同情したね」

 

 微笑、彼はアノ娘が怖くないのかしら? 質問してみる。

 

「怖くないと言えばウソになる。キノネキは俺らをアッと言う間に追い越して、もう修羅勢だからな……しかも、今じゃ実銃を使って威力がマシマシって話じゃないか。さらに強くなってるんだろ? 俺には想像できないが」

「だが、挑みたいって思いもある。俺だって強くなりたくて異界に潜っているんだ、逃げてはいられないってね。他の皆もそうだと思うぜ」

 

 なるほど、上層に潜る人間には悪い印象は無いみたいね。勿論、アンチは居るだろうが、この様子なら多くはなさそうだ。

 チョット安堵していた。

 

 小腹が空いたらしいので、彼には食事を御馳走させてもらおう。彼がお礼を言い食事を始めた時に、私は今までのインタビューの大量の手記を取り出していた。これを分かりやすくレポートとして纏め直さなきゃいけない

 

 

 初めに会えたのは大柄の男性だった。

 

「あん? ああキノネキか。確かに中層で最初に戦ったのは俺だな」

 

 そう語るのは中層をメインの狩場にする修羅勢の一人。殴りプリニキと名乗った。

 

「修羅勢なんてのは自称するもんじゃねえし、俺は修羅勢って程じゃねえと思うんだが……」

 

「新人には30レベルを超えたから自分も修羅勢だと主張する人間も居る様ですが?」

 

「そうだな、だが彼らは修羅勢が本来持って要るべき経験が足りない」

「俺でも足りないと思ってるのに、俺より経験の少ない奴らがレベルだけでデカい顔をする。お前らが安全に超えて来た道は先達が命がけで切り開いて来た道なのにな」

 

 彼はちょっと苦々しげだ。

 

「ホントの修羅勢ってのは、どっか違うんだ……戦う事が当たり前で、呼吸みたいに当然のごとく戦う……」

「そんな連中が修羅勢だと思うよ。俺みたいにマッカ目当てで潜ってる奴に使う様な言葉じゃない。俺はそう思ってる」

 

 彼には明確な一線が有るのだろう。私には実感できないけれど。

 

「で、キノネキの話だったな? キノネキなら修羅勢を名乗っても良いんじゃないか?」

 

 どういう事だろう?

 

「キノネキが通って来た道はキノネキが自力で切り開いた道だからさ」

「キノネキは先達の真似をしたんじゃない。キノネキの素質は銃に特化した上でガイア銃とは相性が悪い」

 

 私にも話が見えて来た。

 

「キノネキは自分独自の戦い方を探すしかなかった。そして見つけ出した」

 

 なるほど、キノネキの戦い方は、キノネキ独自の物だ。他人の真似ではない、いや他人には真似できない。

 

「野比ニキが言ってたぜ ”技量で劣るつもりはない。でも僕にはアレは出来ない。否、ヤリタクナイ”ってな、もし俺が銃を使えたとしても真似はしないし出来ないだろう」

 

 野比ニキ、キノネキと同じく銃をメインとする黒札の名前だったかしら?

 

「普通、銃使いってのは距離を取って戦うもんだ、それをキノネキは逆に踏み込んで来る」

「ガンカタ、だったか? 銃と格闘を両立する方法。キノネキの銃は威力がない。だから威力が落ちない距離で戦う」

 

「”言うは易し行うは難し”ってな、並みの度胸と技量でできる事じゃねえ」

 

「だから俺はキノネキを認める」

 

「それで中層での戦いだったな? 中層では面白い慣例がある。知ってるか?」

 

 F.O.E、初めはドッペルゲンガー対策だったらしい。今では味方殴りの言い訳と化していると聞いた。私は頷く。

 

「知ってるなら話は早い。それでキノネキに一番に挑んだのが俺だった」

 

「当時のキノネキは全力を出せた訳じゃない。何故ベテランのアナタが挑んだのでしょうか?」

 

「そうだな。でも、だからこそかな? ハンデを持っているハズなのに、あっと言う間に中層に乗り込んで来た」

「しかも戦い方は誰も戦った事が無い、未知の戦闘法”ガンカタ”だぜ? 中層のスレではちょっしたアイドルだったよ」

「俺、キノネキと戦ってみたい!、俺も、ワイトもそう思います! ってな」

 

 そう彼は笑う。

 キノネキには迷惑だったんじゃ……私も苦笑していたわ。

 

「そして争奪戦を征して最初に戦ったのが貴方だったと」

 

「そうだな、中層に入って来たと同時に奇襲した」

 

 狙った訳では無く偶然。彼が準備中、次に来たのがキノネキだったらしい。

 

「性癖を叫んで、殴りかかった俺に冷静にカウンターを仕掛けてきたな」

「もちろん、本職には劣るが格闘も中々だと思ったよ」

「結局、俺はキノネキの新技にやられて戦いは終わり。ご褒美に反魂香を幾つか渡してお別れさ。次がツカエていたしな」

 

 それは本当に迷惑かもね。私の苦笑が深くなった。

 

「流石に手の内を知って連敗する程、俺も弱くは無い。次は勝たせてもらったし、あんまりイジメるのもって自重してたんだがな」

 

 負けず嫌いなキノネキは実銃を手にリベンジをしてきたらしい。

 

「”先輩に貰った反魂香は先輩に使って返してあげますよ”って挑んできて。見事にヤラレタよ」

 

 彼は大笑いだ。

 

「だが、危ういとも思ったな」

 

「それはどういう事でしょうか?」

 

「手合わせしてて、感じたんだがキノネキは戦いが好きな訳じゃない」

 

 確かに、負けず嫌いではあるけど、いわゆるバトルジャンキーと言われる人種とは違うだろうと私も思う。

 

「拳を合わせて解る事もある。キノネキには切迫感? 言葉が適切かわからんが、焦ったような追い詰められたような……そんな、雰囲気を感じる事がある」

 

 気のせいだと良いんだがな。そういう彼の顔は後輩を案じる良き先輩だった。やってる事は酷い気がするのだけれど。

 

「俺としてはこんなトコだ」

 

 お礼を言って別れる。

 

 

 次に会ったのは探求ネキ。キノネキとは先輩、後輩の間柄だったという。小学校の極短い間だけだったらしいが、キノネキとは一番仲が良いのではないだろうか?

 

「ふむ、先輩。いえキノネキについてですか?」

「そうですね、最初に会ったのは小学生の時です」

 

 そう言って探求ネキは懐かしそうに笑った。

 

「あの時の私は余裕が無くて、アナライズを覚えて、此処がメガテンの世界だって知ったばかりの頃だったんですよ」

「だから、生き残る方法は無いかって必死で模索していた時期でした」

 

 それは、分かる。転生者なら知った時期は違っても皆、同じく焦りを感じた時期があったのではないだろうか?

 探求ネキの場合、その時期が少々早かった……そういう事なのかしらね。

 

「だから、市営の図書館に籠る事が多くて……」

「そんな中、会ったのがキノネキでした」

 

 その頃の探求ネキは友人付き合いを最低限にして、生き残る方法を模索していたのだという。

 

「最初は何てこと無い出会いだったんですよ? 偶然同じ本を取ろうとして手が触れたって男女なら少女漫画の導入みたいですね」

「ただ、その本って機械工学の難しめの本でして、背丈がそれほど変わらなかったのもあって驚いたのを覚えています」

 

 キノネキには難しい本を読むイメージが無い。必要ならウンウン唸りながらでも術式の本に噛り付く位には努力家ではあるのだけれど。

 

「興味のある事なら、それなりに読みますし理解もしますよ? キノネキって、自分をお馬鹿って自嘲しますけど、あれは比較対象が悪すぎでしょう」

 

 今度は苦笑。確かにあの娘が比較するのは、ガイア連合でもトップ層の術者ばかりかも知れないわね。

 

「その時の本はエンジンについての本でした。昔からバイク好きなんですよね」

「それで気になって聞いて見たら同じ学校だったんです」

「キノネキ、背が低めですから、学年が上と知って驚いたんですよね」

 

 その時のキノネキは拗ねて大変だったらしい。容易に想像は出来る。

 

「失敗したかな? って思いました。お節介な人っているじゃないですか」

「同じ学校の先輩なら、色々言って来るのかなって警戒してたら、あっさりスルーされたんですよね」

「変わった人だなって思いましたけど、そんな距離感が心地よくって……気付いたら仲良くなってました」

 

 変わり者同士波長が合ったのか、お互い知らなくても転生者同士という繋がりが働いたのか。

 

「学校で会っても会釈するくらい、図書館で会えば挨拶して、お互い好きに本を読み、時に感想を言い合う」

「そんな感じでしたね」

 

「ふーん、キノネキにそんな知的な時期があったのね」

 

「あはは、今とはイメージが違い過ぎるかもです」

 

 探求ネキの笑い声は耳に心地よい。

 

「何時だったか、聞いた事があるんですよ。お節介な人も多いのに何で先輩は口出ししないんです? って」

「そうしたら先輩首をかしげて」

「吉子ちゃんの交友関係って私が干渉するような事? そもそも吉子ちゃん位、頭良いと周りの人と話合わなくても仕方ないよね? それに自分がどうするかは自分で決める事。他人がどうこう言って良い事じゃないでしょ? って」

「その時は精神年齢が高い人だなって思っただけでしたけど。転生者なんだから当然だったと言う」

 

 またコロコロと笑う。

 とは言え、転生者でも精神年齢が怪しい人も居るから、当然とまで言って良いのだろうか? 吉子と言うのは探求ネキが当時名乗っていた名前らしい。ここはプライベートだろうし、正式にレポートにする時には黒塗りね。

 

「私は結局10歳で逃げ出しました。それからは会っていませんから。再会した時はお互い分からなくて首をひねり合ったものです」

「なにしろお互いに変わりすぎていて」

 

 探求ネキは成長していてキノネキは折角の綺麗な長髪をバッサリと切っていたものね。

 

「後は大体ご存じでしょうから、もう良いですよね?」

 

 確かに二人とも私の友人だから、話を聞く事も多い。インタビュー終了です、ありがとうございました。

 

 

 次に話を聞けたのはちひろネキ。事務仕事が忙しい中、時間を作ってくれた。

 

「さて、私も忙しいですから、約束の通り30分だけですよ」

 

 そう釘を刺してくる。忙しい所を申し訳ない。

 

「私が最初にあったのは、あの娘、キノネキが保護されてスグの事です」

「弁護士を連れた此方の世界の方で、キノネキの保護者の御友人でした。キノネキに話があるとの事で付き添ったんですよ」

 

 勿論、最初に写真を見せて知り合いかどうかは確認したそうだ。

 

「キノネキの保護者で祖父の木太郎氏のお弟子さんと言う事で、キノネキ本人にも舎弟だと紹介していたようです」

「最初は訃報とお悔やみでした。キノネキは涙をこらえてジッと我慢していましたよ」

「それから、お葬式の確認。キノネキ自身の今後の身の振り方。それらを確認すると、御友人が後の事を引き受けられて……自分の力が足りない事を悔やんでらっしゃる様に見えました」

「師匠の教育が良かったのでしょう。こちらには何も要求しませんでしたね」

 

「結局、キノネキは喪主が出来ないことになりまして」

「ホントに良いのか? 何度も確認する御友人に、問題無いと自分がマタ狙われて周りに被害が出るのは嫌だと」

「そして、お別れは済ませているって、覚えていたい顔は最期のあの顔だって、気丈に言い切っていました」

 

 ホント、あんなに良い娘なのに……なんで世界はこうも過酷なのか。

 

「後は戸籍をどうするか決めて……流石に我慢も限界だったんでしょうね。後はお任せします、うまく纏めてくださいって言った時には涙で顔がグシャグシャでしたね」

 

 その時、同情したちひろネキは泣き止むまで頭を撫でて慰めていたらしい。

 

「次に会ったのは祖父の遺産整理が終わったとの連絡を受けて弁護士同席の上での面会の時。相手は同じで此方にも弁護士が付いていました」

 

 遺産はそれなりの額になったそうだが、金額については聞かなかった。

 

「あの娘、形見分けって言って祖父の愛銃と、活動資金にって、遺産の二割近く、億を超えるお金をポンと渡していました。金銭欲があまり無い娘みたいですね」

 

 もっとも、日本円の価値が下がる事を見越していた可能性も高いとちひろネキは言う。

 

「残りの遺産も個人として考えるなら莫大な金額でした。ソレをほぼ全額運用して欲しいって、私に紹介を頼んできたんです。そして配当はガイアポイントで良いって……転生者ですから外見に惑わされちゃいけないって解ってるはずなんですけどね」

 

 将来、日本円の価値が無くなるとしても、それは今ではない。マッカも含め、お金の管理に苦労する”ガイアの金庫番”とまで言われる彼女の衝撃は如何ばかりかしらね。

 

「そして、折角来てくれたんだからと魔石を一袋渡してました。魔石でもあの数ならそれなりの金額になるんですけど。分かっているのか、いないのか……横目で助け舟を求めて来たのでキノネキの願い通り、受け取って貰えるよう説得を手伝いました」

「後は普通の関係です。時折事務手続きで会って、プライベートで会えれば御飯やお茶を一緒してって感じですね」

 

 そろそろ時間だ、お礼を言って別れよう。

 

 

 次は技術部で話を聞こうとアポを取ったのだが、出て来たのが意外に大物だった。

 

「技術部を代表して俺が答える。なんでも聞いてくれ」

 

 そう言ってくれたのは技術部トップのエドニキ。忙しいのに良いのだろうか?

 

「忙しすぎて、休む暇も無くってな。休憩の理由付けさ」

 

 快活に笑う。では遠慮なく少々時間を戴こう。

 

「それでキノネキについてだったか? そうだな、ガイア銃が役に立たないと嘆いている所を見たのが最初か」

「原因も考えず、不良品だと決めつけて文句を言うクレーマー染みた奴も居るんだが、キノネキは違った」

「冷静にスレで銃使いの意見を聞いて、セツニキに質問しに行ったからな。結局、キノネキ自身の体質の問題と判ったんだが……悪いがあの時の嘆き様は笑ったな」

 

 この頃から、キノネキは明るくすごしている……様に見える。

 あまり付き合いが無いからとインタビューは断られたがミナミィネキがカウンセリングをした事があるそうだ。

 プライバシーに関わる事なので当然、詳しくは話してもらえない。しかし、トラウマを抱えているのは私でも解る。

 無理をして明るく振舞っている可能性もある。大丈夫かしら? だから私がこうして調べているのだけれど。

 

「次に会った時もガイア銃関係だな。全部の銃と相性が悪いのか確かめたいってな」

「試射させてみたが、どれもヘッポコでな、一番マシなのが”しょぼい子供向けモデルガン”みたいな見た目の銃だった。それでも威力は3割未満? って感じだったがな」

 

 しかし、キノネキはその”しょぼい銃”で中層まで進んで見せたのだ。本気のあの娘の実力はどれほどだろう?

 

「そして、シキガミの注文だ。しかし、あんなシキガミを頼まれたのは初めてだったな」

 

 それはそうだろう。キノネキのシキガミはバイク型だ。普通はパートナー型か武具型を選ぶのに……

 ショタおじも心配してシキガミに会話スキルを与えていたそうだ。カウンセリング代わりになればって事らしい。まあ、ある程度は杞憂だった。キノネキは悲劇に耐え、強くあろうとしている。

 だが、それが何時まで持つのか? 途中で折れないか? 私の心配はソコにある。

 

 バイク型のシキガミも”キノならバイクでしょ?” って笑って見せてはいる。しかし、

「キノのバイクならアレの方だろ? ブラウシューペリア、レプリカで良いから作りゃあ良いのに」

 そう言って笑った人を横目で見る、キノネキの冷たい眼……アレを思い出すとバイクならどれでも良いって事じゃない。

 

 あのバイクはおじいさんからの最期のプレゼントでキノネキの命を救ったバイク。詳細は知らないが、そう聞いている。

 思い入れは特別であろうし、大切なのだろう。私としては依存していないか? と言う心配もある。とは言え心の傷は時間が癒してくれるのを待つしかない。それまでは、キノネキに余計な負担をかけないことが大切だろう。

 

「次がアガシオンでその次は装備だな。トランクだの簡易シキガミだのを注文してくれてる。マッカで即金払いが基本だし、良いお客さんだよ」

 

「偶に変な相談事を持ち込む事があるのが玉に瑕か」

 

 そういうエドニキは苦笑していた、私も苦笑しているのだろう。実銃が撃ちたいと大騒ぎした、最近の一件はギャグじみた落ちまであって出来すぎだったわ。

 

 

 そして霊視ニキと一緒にキノネキを助けた黒札にも話を聞けた。

 

「キノネキについて? ああ、あの夜の娘か」

 

「オレは大した事してないからね。ポロポロ泣きながらバイクを押して来て、霊視ニキに安心したのか力尽きそうだったから、バイクを支えてあげただけ」

 

「一応、もう大丈夫。もう安心だ。みたいな声掛けはしたけど、聞こえてたか怪しいしね」

 

 彼は霊視ニキに付き合い、暴れる彼を見ていただけだと言う。そしてキノネキも同じく霊視ニキを呆然と見ていた様だ。

 

「流石の大暴れでね。霊視ニキがヤツラを倒したら完全に力尽きて倒れたから、バイクのスタンドを立ててから、倒れた彼女を介抱した。それだけだよ」

 

 彼にとってはそうなのだろう。だがキノネキにとっての終わりと始まりの夜に居合わせたのだ。

 

「私はあの娘、キノネキの事が心配なの。言えない事が多いのは解るわ、だから一言で良い。あの夜の印象を教えてください」

 これは仕事とは別だ、素直に言えばあの娘が心配なのだ。無理をしすぎて、そのうちポッキリ折れそうな気がしてならない。もっと、素直にカウンセリングを受けて欲しいのだ。だから手がかりが欲しい!

 私が素直にそう話すと、彼は私の目をジッと見つめてから、一言だけ言ってくれた。

 

「何時も思うことだけどさ……メシアってホント糞だなって、あの夜も強くそう感じたよ。八王子大火災? ふざけんなってね」

 

 なるほど、ミナミィネキが無理をしない訳だ。ちひろネキの話を合わせて考えれば、何が有ったかは想像が付く。そんな経験をした娘に無理強いしたら症状が悪化しかねない。

 想像でしかないが、あの娘には大きな心の傷がある。トラウマと軽く言えるレベルにない傷が……

 

 私は彼に深く頭を下げて、礼を言って別れた。別れ際の

「あんな奴ら、全員ぶん殴って、それで終わり。それで済めばどんなに楽だろうね」

 そんな言葉が心に残った。

 

  

 その他の人間にも話を聞いたが……本人を良く知らない人間程、キノネキをクールキャラとして認識している。

 

 仲良くなると解るが、あの娘は意外とお馬鹿だし面白い娘だ、少なくとも、そう見える。

 それが見せかけである、と私は確信している。話に聞くだけでも凄惨な経験。キズが癒えるには早すぎる。

 

 私の結論として、原作者へ対する配慮としても、キノネキ本人のトラウマへの配慮としても、キノネキをモデルとするキャラクターを使用するのは時期尚早。

 やはり、反対の立場を取らざるを得ない。理由を聞けばスポンサーの富豪ニキ達も納得してくれるだろう。

 彼らだって仲間を傷つけたい訳じゃないのだから。

 

 私の回想が終わる頃、匿名のウサギさんも食事を終えていた。キノネキに伝わる訳では無いのだが、この際、言って起きたい言葉が有るという。折角なのでレコーダーも起動しておく。

 

「よう、亀、相変わらず活きが良いみたいだな? そのうち追い越しにいってやるから覚悟しとけ。本来ウサギの方が早いんだからな!」

 

「と強がってみたが、アレは本当に亀なのかね? ガメラって言われても驚かない自信があるんだが」

 

 そう言って、彼は笑った。私も笑えた……ホント、お馬鹿で無鉄砲なんだから。

 でも、少しだけ安心できた。あの娘は孤独じゃない。それに気付く事が出来れば……救いはある。

 

 お願い、折れる前に気付いて! ロクでもない神ではなく、ショタおじにでも祈っておこう……ロクでもないのはコッチもおなじか! ホント、この世界は!!

 

 

 

 




知ってましたか、皆さん。キノちゃんったら、よく知らない人にはクールキャラだったらしいですよ?
読者視点ではキノが割と愉快な娘(を演じている面もある)のは、分かっても。キャラには分からない。って事でアル社長に深堀してもらいました。
アル社長マジ慧眼!

時期としては5月の末。はいキノちゃん、祈りも虚しく翌月にポッキリ折れます。探求ネキに救われもしますが。
12/14 追記
やっべ、これじゃ時間が合わねえ、時期は6月ですね。つまり同時進行でポッキリ折れてるのか。
帰って来たキノが実銃でお礼参りをしてスグってタイミングですね。祈るも相手は既に……って無常観が増した気がする。

それと、この時点ではキノの事件の詳細は発表されていないって事でお願いします。
本人視点でしか書いてないから、矛盾は無い……ハズ 

殴りプリニキ
キノと一番最初にF.O.E、した人。殴りプリーストの略で中層で活動する黒札。格闘と治癒魔法がメインのお兄さん。微妙なお年頃なのでオジサンと呼ぶと傷つく(29歳)。
あくまでゲーム用語なのでどっかの宗教とは関係ありません。
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