【カオ転三次】世界が終わるまでのバイク旅   作:山親父

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ありのまま起こった事を話すぜ?
私はパンツァーファウストの話を書いていたと思ったら、パワードスーツの話を書いていた!
何を言っているのか、わからないと思うが、自分でもわからない……
どうしてこうなった?


新型装甲戦闘服

 どうして??

 

「どうしてパンツァーファウストだけ万能属性なんだろう??」

 

 魚沼支部の静さんから連絡があった。

 基本的には【ザン】属性の筈のロケットランチャー系武器の中でパンツァーファウストだけが【万能】属性なんだそうだ……

 

 ボクは寝耳に水で現場ネコ化した。

 

 早速実験してみる。地域によって違いが出る可能性もゼロではないし……

 

 結果は……

 

「なんでパンツァーファウストだけが例外なんだ?」

 通常型は勿論、火薬等の中身をオカルト産に置き換えた改良版も【万能】属性だった。

 形状さえパンツァーファウストなら【万能】属性なのだろうか? グリップが付いたRPG-7やミサイルランチャーは【ザン】属性だ。

 どうして……?? 呆然としても仕方ないと思うんだ。

 

 ロケットランチャーは強力ではある。モノによっては個人で対空攻撃すら出来るし。

 量産は考えてたけど、候補は〝FIM-92 スティンガー〟や〝RPG-7〟を考えていた。

 在日米軍や自衛隊の装備をオカルト対応型に改造して支援した事もある。

 この形での運用実績はあるんだし、、問題は無いと思っていたのに……

 旧式のパンツァーファウストだけが例外? どういう事だ??

 

 悩むのは後だ、北神奈川支部で使うなら軍事の素人がメインで運用する事になる。

 それで困っていたんだけどさ。

 ロケットランチャーって撃った後に居場所がバレて攻撃され死亡するケースが多すぎる。

 スーサイドウェポン(suicide weapon、自殺兵器)とまで呼ばれる兵器。

 こんなモノを工夫も無く軍事の素人さんに撃たせる気は無いし、撃つなら対策をしなきゃいけない。

 

 幸い瑞樹ちゃんがスナイパーグレネードを開発してくれて、無理に使う必要は無くなったんだけど、一時はハークの切り札扱いだった位に強力だ。

 

 つまりロケットランチャーを使用するなら装甲を持つパワードスーツ専用にする気だったんだよね。

 

「でも、これで量産しない訳には行かなくなった」

 こういう情報は敵にも広まるだろう。タイムラグはあるだろうけど、敵も使ってくると考えなきゃいけない。

 そして敵は対人間用として使っても可笑しくない。

 軍事的常識では馬鹿のやる事だけど、一般人より強靭で生命力が強いのが覚醒者だ。

 高レベルの覚醒者なら装甲車両以上に頑丈なケースもある。

 対装甲兵器を人間に使って来ても不思議は無い。

 

 なにより非覚醒者に自殺兵器を使わせる事で、こちらの戦力を削れるならヤルだろう。メシアンの過激派なら絶対にヤル。

 

 敵が持つであろう兵器は此方も所有しなければならない。

 これは軍事的な常識だ。お互いに所有するなら、相互に抑止が働くかも知れないし、使われた時の対抗策にもなる。

 そして、既に魚沼支部では量産に動いている。

 

「製造量産は確定。運用を如何するかが問題だ」

 

 運用方法は幾つかある。一つは先手必勝で数を撃ちこむ方法。反撃が無ければ被害も無い。

 でも理想通りに戦局が動く事は稀なんだ。

 待ち伏せは史実でも多用された戦法。只、危険度も大きい。

 素人さんにはオススメ出来ない。

 何よりも、パンツァーファウストって、噴射ガスの問題で後方10mが危険地帯になる。

 集団戦を得意とする北神奈川支部には向かないんだ。

 

 そこでボクは考えた。

 噴射ガスを浴びても、問題が無ければ集団戦でも使えるって。

 

 やはり全身を護る、十分な装甲が必要だ。

 普通の防具も強化するけど、敵の攻撃に耐え、より強力な反撃をする装甲歩兵が欲しい。

 部下の安全は大事だし、舐められるのは危険だ。

 ボクの趣味が混ざっているのは認める。

 

 と、言う訳でハークの下位互換なパワードスーツを開発してもらおう。

 

 パンツァーファウストを使用するなら、真っ先に思い出すパワードスーツがある。

 

 〝P.K.A.(ペー.カー.アー.)

 

 マシーネンクリーガー*1と言うプラモデルシリーズの装甲戦闘服。

 こいつのデフォルト装備が大型化したノイパンツァーファウストだ。

 実験しないと正確な所は不明だが、パンツァーファウストには違いない。多分行けると思う。

 先ずはノイパンツァーファウストを開発してハークに持たせて実験だな。

 

 このプロジェクトはヤプールニキに任せよう。イデニキの様な暴走もしないし、依頼通りに仕上げてくれるだろう。

 

 

 P.K.A.(ペー.カー.アー.)の開発

 

「ふむ、ジャンプは必要ない。装甲はソコソコ欲しい、武器はパンツァーファウストと銃器が使えれば良い」

 つまりはハークの廉価版が必要な訳だな?

「既存の技術の集まりだから、北神奈川支部の技術者でも作れるだろうな」

 コアを除いての話だがね。

 

「流石にコアはな……」

 

 コアはガイア連合の技術部に注文するしかあるまい。*2

 限界レベルは低めで良い。シャーマンちゃんに揃えるならレベル15。

 これくらいなら、ベテラン職人に頼らずとも、量産できる。流石に新人には無理だろううが。

 

「キノネキが積極的に仕事を回していた中堅がいた筈だな。彼らが受けてくれれば助かる」

 

 コアは多くても良い。なんなら魔砲少女型デモニカを増やしても良いのだしね。

 ハイローミックス、値段が高い高級機と値段が安価な機体を組み合わせて、数を揃える戦略。

 メリットもあるが、デメリットもある。

 

 現実だと同系統の機体を二種類採用した時には値段以外の理由があった。

 そもそも対応する任務が違うとかね?*3

 

 フィクションだと色々例があるんだが……有名なのはガンダムとジムだろう。

 高性能だが値段が高いガンダムより、簡易量産機のジムを採用して数を作る。

 連邦はジムの物量でジオンを圧殺した訳だ。

 

 北神奈川支部でも同じ事が言える。

 ハークは高性能だが高価だ、故に数を揃えられない。

 P.K.A.(ペー.カー.アー.)なら通常型デモニカと同程度の値段で作れると思う。

 

 どんなに強力な機体でも同時に二か所は護れない。

 強さはソコソコでも数が必要な事もある。

 

「さて、ノイパンツァーファウストの結果はどうかな?」

 実験結果のレポートを見る。

「やはり万能属性か……」

 大きさは違ってもパンツァーファウストの枠組みに収まっていると言う事だろうな。

 

 やはりP.K.A.(ペー.カー.アー.)を量産するべきだろう。俺らの中にもファンはいるだろうし、上手く認識が働けば動作や製造効率が安定するかも知れん。

 

 必要なスペックを考える。性能とコストのバランスを考えなければ…… 

 対人戦を考えるとパンツァーファウストの一撃には耐える必要がある。

 値段を考えると装甲は魔鉄が最適、重量は相応に重い。

 そうすると動力無しでは動けまい。

 普通にハークでも使用した五行炉を使う方が良さそうか……量産効果で安くなれば良いのだがな。

 各種モーターもハークに揃えるか? ここでも量産効果が狙える。これならジャンプは無くとも重量が軽い分、走行性能が上がるだろう。

 

 コストダウンには、ジャンプユニットを省略、装甲は最低限。

 ジャンプを省略した事で、過剰な脚部のサスペンション機能も不要になる。

 防弾アクリルキャノピーを選択し、必要なセンサー類を減らす。

 コアが安いし、これで通常型デモニカと同程度の予算に収まるか?

 

 レベル上限が半分なのに、値段は同じ。何方を選ぶかは環境次第だな。

 シェルター防衛にはレベル15のデモニカでも十分な戦力になる。普通の環境ならばの話だが。

 強力な悪魔が少ないのは良い事だがね? *4

 ならば、成長限界が低くとも装甲が厚いP.K.A.(ペー.カー.アー.)を選ぶ選択肢もアリだと思う。

 

 とりあえず試作を始めるか。細かな所でコストダウンを図ろう。防御をケチってはダメだがね。

 生存性に直結する部分だ。P.K.A.(ペー.カー.アー.)は鈍足、ジャンプ不可と攻撃は装甲で耐えるしか無いのだから。

 コアがレベル15にまで上がれば、速度もマシにはなる。非覚醒者の習志野レンジャーと同等位か? 個体差が大きいから、大体の目安でしかないがね。

 重装甲を付けて、精鋭歩兵レベルで動ける、普通なら脅威なんだが、悪魔も覚醒者も普通では無いからなぁ……

 しかし、キノネキも過保護だな。

 普通のパンツァーファウストを与えて、運用を工夫させても良いと思うのだが?

 

 

 新素材が欲しい

 

「キャノピー用の防弾透明樹脂、現行品じゃ物足りないか?」

 では新しく作ろう。

 現在の所は〝あらゆる果物が実る大樹〟の樹脂を加工しているんだが、樹脂専用の樹が有った方が良かろう。

 世界樹の樹脂も使えそうではあるが、アレは素材の格が高すぎる。一般霊能者の装備に使うような品では無い。

 

 〝あらゆる果物が実る大樹〟は、霊力が果実に集中する。*5

 では、霊力を樹液に集中させれば如何なる?

 私の思惑が上手く行けば……

 

 何度かの失敗はあったが、完成した。探求ネキの助言が無ければ今も悩んでいたかも知れない。

 我、未だ未熟なり。

 戒めとして覚えて置こう。まあ比較対象が悪いだけかも知れんが……

 それでも、私は開発者として上を目指しているのだ。探求ネキにだって、何れは追いつき追い越したい。

 

 無理があるのは承知の上だ。

 千里の道も一歩より、危ぶむなかれ、危ぶめば道はなし。迷わず行けよ、行けばわかるさ。

 

 私の研究速度がマラソンなら探求ネキは加速装置だがね……

 気概だけは捨ててはならない。

 

 完成した樹を〝プラスチックの樹〟と名付けて置こう。

 分かり易さ重視だね。

 コイツの樹脂を加工する事で、あらゆるプラスチックが製造できる。

 〝ポリプロピレン〟〝ポリエチレン〟〝ABS樹脂〟〝ポリ塩化ビニル〟〝アクリル樹脂〟オカルト的な概念を含んだこれらプラスチックはP.K.A.(ペー.カー.アー.)のみならず様々な分野で使えるハズだ。

 〝ナイロン〟や〝ポリカーボネート〟も需要が多いだろうか?

 プラスチック素材なら理論上は全て作れる筈だ。実証はこれからの素材も多いがね。

 

 加工に霊力が必要になる、量産品は成型用機器側で処理しよう。

 今回のキャノピーなら、金型に呪印を刻めば良いな。

 

 プラスチックには需要が多い。

 九島組の素材用異界での栽培から始めよう。

 鉱石木*6と共に、建築資材として重要な筈だ。

 山梨の技術部にも論文とサンプルを送ろう。後はデータベースに登録しておけば、勝手に広まるだろう。

 苗木の購入申し込みがあるかも知れないが、これば事務の仕事だな。

 

 

 テストパイロットの戦闘試験

 

「うん、多少は動きが良くなったかな?」

 2機のコンビで異界に挑む。

「改良の結果なのか、成長による変化なのか……」

 区別が付かないぜ。そう僚機がぼやく。

「レベルアップの恩恵だろうよ」

 オペレーターの報告によると、レベルは3に上がった。

 細かな改良も影響はしているだろうが、体感出来るほどの変化があるとは考え難い。

「そうだな」

 

 我々は緑区ダンジョンに挑んでいる。

 不具合が起きた時の為に、バックアップ要員としてハーク使いと技術者のチームが後ろに待機しているし、今は戦闘に集中すれば良い。

 

「来たぞ」

 僚機からの警告。

「オンモラキか」

 敵は“ガキ〟が多く、次いで“オンモラキ〟、時折“コダマ〟って感じだ。

 敵のレベルは4~6って所だな。

 俺自身のレベルは5、これが成長限界だ。相方も同様らしい。

 ハークに乗りたくて鍛えていたが、惜しくも選外だったと聞く。

 慰めの言葉だと思っていたんだが、どうやらホントに惜しい所まで行ってたらしい。

 シミュレーターの成績は37番目。ハークの機数は36機、そう言う事だ。

 

 そんな訳で廉価版とはいえ新型パワードスーツのテストを任されている。

 P.K.A.(ペー.カー.アー.)Panzer (パンツァー) Kampf(カンプフ) Anzug(アンツーグ)の略らしいが、何故ドイツ語なんだろう?

「支部長の趣味だと思えば良いよ」

 とは開発者の矢生先生のセリフだ。

 そう言えば、キノ支部長はドイツ系のクォーターだったな。単に装甲戦闘服をドイツ語に訳しただけなのかも知れない。

 まあ、細かい事か。

 重要なのはP.K.A.(ペー.カー.アー.)が使えるかどうかだ。

 実感としては十分に使える。

 機動力は無い、装甲もハークに比べれば薄い。だが火力は同等だし価格も安い。

 ハーク1機の値段でP.K.A.(ペー.カー.アー.)なら3機作れる。

 コイツは大きな利点だ。

 集団戦なら数だって大事だし、最低限の質もP.K.A.(ペー.カー.アー.)ならクリア出来る。

 ハークを知っていると物足りないのも事実だが。

 

 右手に構えたブローニングが火を噴き、悪魔を滅ぼす。

 12.7㎜の退魔弾は格上の悪魔にも問題無く通用する。

 

「敵性反応無し」

「こちらも反応は無い」

 

 安全を確認し合う。P.K.A.(ペー.カー.アー.)のエネミーソナーは廉価版だ過信は出来ない。ダブルチェックは必要だろう。

 こういった運用データを集めるのも我々の役目だ。

 

「次に広場でパンツァーファウストを試そう」

「了解だ、なら俺が悪魔を誘い出す」

 僚機の方がスピードが高い。レベルが上がるに従って個体差が出て来るのはデモニカの宿命だ。

 自衛隊の人間が不満を漏らしていたと聞くが、コイツを機械だと考えているからだろうな。

 

 俺に言わせればデモニカは単なる機械じゃ無い、機械式の着る使い魔だと思う。

 個人的な感想でしかないんだがな。

 

 パンツァーファウストを構えて待ち伏せる。

 

「ヤバイのが掛かったぜ」

 僚機の焦り声。連れて来たのは〝ダイモーン〟か……アナライズに依ると、レベルは8。強敵だな。

 

 僚機を避けて撃つ。

 爆風を背に受けながら僚機が走って来る。

「やったか?」

「フラグを立てるんじゃない!」

 撃ち終わった、発射筒を投げ捨て、ブローニングに持ち替える。

「やっぱ生きてた!」

「ダメージは有るさ」

 二人でハチの巣にしてやる!

 

 ダダダダダ!

 

 マシンガン2丁での弾幕に瀕死の〝ダイモーン〟が滅びた。

 

「レベルが上がったか?」

「多分な」

 まだデモニカが低レベルだからな。格上を倒せば成長も早い。

 

「しかし、テスト前はどうなるか不安だったが、使えるじゃないか」

 同感だ。こいつは使える。

 レベルが低い内は、もどかしく感じる事が多かったがレベルが上がって、大幅に使い勝手が良くなった。

 まだレベルは上げられる、鍛えれば更に良くなるだろう。

 

 使用者の馴れもあるが、それ以上にデモニカが使用者に馴染むのだろう。

 レベルが上がれば、能力値も上がる。

「ハークに比べれば成長限界が低いとはいえ、十分に強力な装備だ」

 俺の言葉に同僚が頷くのが見える。

 P.K.A.(ペー.カー.アー.)はキャノピー式だからな、隣にいればパイロットの表情まで見える。

 これは利点か? それとも弱点か?

 連係の面では利点になり得るし、防御を考えれば弱点でもある。

 限界は有るが格上の悪魔の攻撃にも耐えられるらしいし、問題は無いと思うが……

 報告書には記載しておこう。

 それがテストパイロットの役目だ。

 

「そろそろ休憩しよう。P.K.A.(ペー.カー.アー.)のチェックもしたいのでね」

 矢生先生の提案。

 【エストマ】の結界*7で安全地帯を作り休憩する事になった。

 

 

 ご褒美が有ればヤル気も上がる

 

「率直な感想を聞きたい。P.K.A.(ペー.カー.アー.)は如何かね?」

 技術者が愛機を点検するのを見学していた俺達は、設計者である矢生先生に話しかけられた。

 矢生さんは技術者であり、研究者であり、医者でもある。

 現場の技術者にとっては師匠であり、学生に教える教師でもある。

 故に先生。彼は大いなる敬意を持って、そう呼ばれる。

 

「満足ですよ」

 相方の返事は簡素だが万感の思いが籠っている。

「必要十分、そんな感じですか?」

 対する俺の言葉は少々素っ気ない。どうしてもハークと比べてしまうからだ。

 

 ジャンプに依る機動力、これがP.K.A.(ペー.カー.アー.)には無い。

 装甲は若干弱いが、許容範囲。火力は同等。

 やはり大きな差異はジャンプの有無だろう。

 

「ジャンプジェットが無い事での緊急回避能力不足が気になります」

 正直な気持ちだ。贅沢を言っている自覚はあるんだが。

 

「ふむ……質問なのだが、ダンジョンでジャンプの機会はあるのかね?」

 

 ……確かに無いのか?

 

「少なくともダンジョンでは不要の機構だね」

 それはわかる……

「ジャンプジェットを採用すると、値段が跳ね上がる。数が必要なのだよ」

 それも、わかってはいるんだ……

「ハークは確かに強い。だがアレを必要分揃えるとなると、幾らかかるやら」

 矢生先生が苦笑している。

「キノ君が悲鳴をあげてしまうよ」

 

 そうだった……北神奈川支部はマダ自立出来ている訳ではない。

 支部長が赤字を補填してくれるから、何とか成っているだけだ。

 それなのに、装備が物足りない? 我儘にも程がある!

 

 思い出せ、キノ支部長が助けてくれた、それ以前の事を。

 装備も薬も足りず、レベル1の悪魔を滅ぼすにも、死者が出かねない。それが当たり前だった。

 何時の間にか、勘違いしていた。

 現在の環境は当たり前じゃない。

 助けられて当然などと、思い上がってはならない。

 それでは我々が嫌悪していた、かつての長老の同類になり下がってしまう。

 わかっていたハズなのに……

 

 P.K.A.(ペー.カー.アー.)は十分に強力だし使える。自分でそう評価しておきながら、ハークに比べて物足りない?

 我儘が過ぎる! ハークに乗れなかった事を引きずっていた。

「申し訳ありません」

 頭を下げる俺に先生が笑いかけてくれた。

「仕方が無い面もある、上位の装備を知っていれば尚更だね」

 先生だって、欲しい設備は沢山あるそうだ。

 つい山梨の設備と比べてしまうとか? だからと言ってキノ支部長に強請るのは嫌だと言う。

「私にだって、大人としての意地はあるさ」

 支援の分は働かないとね? 不器用なウインク。

 

「先ずはP.K.A.(ペー.カー.アー.)を限界まで育ててみたまえ」

 

 限界性能を引き出してもいないのに不足と文句を言っていたのか……自分が恥ずかしいな。

 

「もっとハークも欲しいが、残念な事に正規のデモニカコアは常に品薄だしね」

 注文しても、何時届くのか不明らしい。

 

 どれ程マッカを積もうと無い袖は振れない。

 仮に資金が十分だとしても、無理なモノは無理なのだ……

 

「幸いキノ君の伝手も有り、簡易デモニカのコアなら数が揃えられる」

 現実的な選択だろう。

「それにハークは終末への備えだった、終末を乗り越えた現在、ハークの性能は過剰では無いかな?」

 それはそうかも知れない。

 

 どうしてもハークが欲しいなら、自分で資金を貯め、購入する事も出来るだろう。今は無理でも何時かは……

 

「チョットした朗報がある」

 なんだろう?

「君達の機体だが若干限界レベルが高いからね?」

 どういう事だろうか?

「デモニカコアの製造はガイア連合の職人による手作業だ」

 それは知っている。だからデモニカは高価だし、簡単に量産できない。

「だから、どうしてもバラツキが出る。君達の機体のコアは上振れしたモノだよ」

 具体的にはレベル上限16。

 幸い下振れは無く、今後は限界レベル15で揃うだろう。職人が馴れる前、力を入れ過ぎていた初期の作品なのだとか。

「たった1レベルだけどね、僅かな差が生死を左右する事もある。危険なテストパイロットには余禄があっても良いだろう?」

 優しい笑みと共に告げられた言葉に戸惑う。

「まさかとは思いますが、この機体を頂けるのですか?」

 余禄と言う言葉が気になった。テストが終了したら初期化して手放すものだと……

「北神奈川支部に育てたデモニカを初期化する余裕なんて無い。そいつは君達のモノだ」

 

 そうか……そうかっ!

 

「やったなっ!」

 相方も嬉しそうだ。

 

 レベル上限は低いが、デモニカはデモニカだ。

 P.K.A.(ペー.カー.アー.)を与えられる。

 それはキノ支部長に信頼されていた、認められていた証しだった。

 

 

 実戦投入

 

「展開急げ!」

 コンバット・キャリアー*8から4機のP.K.A.(ペー.カー.アー.)が飛び出して来る。

 手分けして装備を運び出し、戦場となる荒野に防御地点を構築する。

 

「俺と2番機は盾だ!」

 最後に俺は大型のタワーシールドを手にした。

 P.K.A.(ペー.カー.アー.)一個小隊の半分、2機がシールドを構える。見た目は警察機動隊が持っていた、透明なアレだ。

 シールド下部を力任せに地面に食い込ませ、左手でしっかりと支える。

 右手には〝手持ち式に改造されたブローニングM2〟を持ち、何時でも射撃に移れる様に準備してある。

 

 残り2機のP.K.A.(ペー.カー.アー.)はノイパンツァーファウストを構えて射撃体勢を取り。その足元にはノイパンツァーファウストコンテナ*9が配置されている。

 

「敵接近! 距離500mを切りました!」

「もっと引き付けろ」

 

 俺はシールド越しに悪魔を睨みつけていた。

 〝凶鳥 イツマデ〟レベル24、シェルター周辺に出て来る悪魔としては強敵だ。こいつが〝屍鬼 ゾンビ〟レベル1~3を引き連れている。

 恐らく、この悪魔は避難民の成れの果てだろうな……

 平塚方面から北上してきた奴らの迎撃が俺達P.K.A.(ペー.カー.アー.)第一小隊の初陣になった。

 

「距離300m!」

「もう少し引き付けろっ」

「距離200m!」

「良し、ノイパンツァーファウスト撃て!」

 シュゴーッ! という発射ガスの激しい噴出音が響き、ロケット弾が飛翔する。

 一拍の後、激しい爆発音。ゾンビ共が万能属性の爆発で滅んで行く。

 

「イツマデ、イツマデ!」

 

 悪魔の【マハザン】をシールドで耐える。

 

「俺と2はブローニングM2で援護する、3、4はノイパンツァーファウストでヤツを撃て!」

 援護射撃で逃げ道を塞ぎ、ノイパンツァーファウストを当てやすくする。連続で10本も撃てば何発かは当たるだろう。

 ノイパンツァーファウストが当たれば、一瞬硬直する。そうなった敵はカモだ。

 そこで狙いを外す程、俺と2の練度は低くない。

 悪魔が滅びるのは時間の問題だった。

 

「やはり万能属性は使えるな……」

 イツマデを滅ぼし周囲の警戒を続けながら考える。

 弱点を突くために、一々属性弾を詰め替えるなんて現実的では無い。補給の負担が増えるし、イレギュラーにも弱い。

 その点、万能属性のパンツァーファウストは、どんな悪魔にも通じると言う安心感がある。

 

 P.K.A.(ペー.カー.アー.)にはジャンプが無いから、足場には気を付けないといけないが、コンバット・キャリアーと組み合わせる事で補える。

 コンバット・キャリアーの走破性は十分だしセンサーの能力も高い。ブローニングM2の銃座もあるし、最低限の自衛が出来るのも良い。

 

「ハークには乗れなかったが部下を任せられたのか」 

 悪くない。車両の運用も俺の裁量内だ、俺のP.K.A.(ペー.カー.アー.)のレベル上限は16*10、ハークより低い。

 だが戦力として考えるならハーク1機より、現在俺が率いる部隊の方が強い。

 俺は信頼されている。故郷の防衛で頼られているんだ。

 

「全機問題は無いか?」

「「「ありません」」」

「良し、順次キャリアーに搭乗。その後、帰還する」

 

 これからは若い部下達を育てていかなくてはならない。彼らが、次のP.K.A.(ペー.カー.アー.)部隊の小隊長候補だ。

 俺の仕事はP.K.A.(ペー.カー.アー.)を仕上げる事から、P.K.A.(ペー.カー.アー.)部隊を仕上げる事に替わった。

 なんとも遣り甲斐のある、仕事じゃないか?

 

 何時の間にか、俺の中で燻っていたハークへの拘りが消えていた。

 


 

俺(名無しの語り部)

ハーク乗りを目指していたが、惜しい所で選外だった人

諦めきれず鍛え続けていたが、上層部に認められテストパイロットに抜擢された

指揮官適性を持つ、期待の人材 アラサー

 

P.K.A.(ペー.カー.アー.)

Panzer (パンツァー) Kampf(カンプフ) Anzug(アンツーグ)の略

レベル上限の低い、デモニカ。元ネタはマシーネンクリーガーに登場するパワードスーツで調達価格を下げ、大量生産を目指した機体

ジャンプジェットを省略したので、高機動力とは無縁。

霊力の足場を作る事が出来るので、砂漠や泥濘に沈む事はないハズ。

稼働時間に影響するので、常時使用は推奨出来ない

パンツァーファウストの運用を考えてたら、何時の間にか生えていた……どうして??

 

普通のパンツァーファウスト

量産しているが北神奈川支部での使用機会は少ない

主に友好シェルターへの輸出用

 

プラスチックの樹

素材系オカルト樹木

樹液があらゆるプラスチックの材料になる

加工には霊力が必要

*1
初期にはS.F.3.Dと呼ばれていた。名前の変更は大人の事情

*2
デモニカコアの製造方法はガイア連合の重要機密だと思う

*3
例 F-22とF-35

*4
一般覚醒者にはレベル1でも強敵である

*5
と言う事にしておこう

*6
頓西南北氏作 ファッション無惨様のごちゃサマライフ より、石灰石や珪石、珪砂、各種粘土、その他諸々の非金属鉱物資源を生産可能な便利植物

*7
設置したのはヤプールニキ

*8
装甲トレーラーを改造しパワードスーツ4機と装備を運べる大型車輌

*9
4発のノイパンツァーファウストが持ち運べるコンテナ

*10
部下のモノは15




ハイローミックスで、ハイがハーク、じゃあローは如何する? 悩んでいたら、名無しのレイ氏が爆弾を落としてくれた
パンツァーファウストは万能属性……
ひらめいた!
ここにパンツァーファウストがあるじゃろう? これをこうして。こうじゃ!
こんな感じで出来てしまったのが、このお話です
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【カオ転三次】TS^2ようじょの終末対策(作者:タマヤ与太郎)(原作:女神転生)

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総合評価:2305/評価:7.35/連載:131話/更新日時:2026年05月05日(火) 01:01 小説情報

【カオ転三次】酒と葉巻と病と死神 ~みんな楽しく踊ればいい~(作者:マカーブル)(原作:女神転生)

▼このSSは、どくいも様作「カオス転生ごちゃまぜサマナー」の三次創作です。▼また、このSSの作中における開始時期や設定は、主にLilyala様作「最速で出会った俺らのガイア連合活動記録」を参考にさせていただいております。▼具体的な開始時期は、まだレベル上限が35くらいだった頃です。▼作中に登場するキャラクターや設定はフリー素材であり、ご自由にお使いいただけま…


総合評価:937/評価:7.47/連載:69話/更新日時:2026年05月19日(火) 12:00 小説情報

【カオ転三次】 終末に向けての準備するとある転生者の話(作者:黒焦げ)(原作:女神転生)

どくいも様作「カオス転生ごちゃまぜサマナー」の三次創作です。▼とあるTS転生者の終末に向けた準備のお話▼挿絵はすべてAIを使って自分で生成したものを使用しています▼「カオス転生ごちゃまぜサマナー」の三次創作内ではキャラは素材フリーでいいです▼R-15とアンチ・ヘイトは念のためです▼【本家様】▼https://syosetu.org/novel/238682/


総合評価:2241/評価:7.86/完結:118話/更新日時:2026年05月18日(月) 21:29 小説情報


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