ビッグオーを頂いたからには書かねばなるまい! 痛みに負けて時間がかかったけど
一時帰国……で良いのだろうか?
「久しぶりのサンフランシスコか……」
北神奈川支部からの物資と共に私は大地に降り立った。
サンフランシスコ、西海岸の大都市、ゴールドラッシュの起点。
「まるでオアシスだな」
一面の荒野の中、ポツンと一つの都市が存在する。
人類の砦として、陸は巨大な壁で護られ、海にも防衛線がある。
北部のブリッジは警戒対象だ。橋の先がどうなっているのか? 調査する余裕も無い。
「街の外は死の荒野だ」
緑は無く、悪魔が湧く。
私の背後では6隻のホエールキングが物資を積み下ろしている。
終末後、航空輸送の必要性から、支部用6隻、国外輸送に6隻の12隻体制で運用しているそうだ。
「必要だからと簡単に装備を増やすから、何時までも赤字なのではないか?」
独自採算が取れそうになると、装備が増える。当然、必要な経費も増加するから赤字になる。
「必要なのは確かだから、困るのだが」
思わず苦笑する。銀行が生きていたら融資を受けるだけで済む話なのに、終末で壊れてしまった。
金融システムも流通システムも消防や警察、救急といった社会インフラも全てが壊れてしまった。
一部の例外を除いて。
北神奈川支部にはこれ等が残っている。
大幅に形を変えているが、確かに残った。全てがガイア連合、正確にはキノ支部長の資金と影響力で再編された形になる。
そしてキノ支部長も、この地に来ている。来てしまったのだ……
親族にはお披露目したいよね?
「木太郎、ここにお母さんの従兄がいるんだよ」
抱っこひもで抱えた我が子に語り掛けた。
意識の一部は常に警戒している。半径5㎞はボクの知覚範囲だ、我が子を危険に晒す気は無い。
北神奈川支部から連れて来た護衛達は信用するけどね? ボク自身が気を付けるに越したことは無いんだ。
ホエールキングからゆっくりと降り立つ。
黒札としての政治的アピール込みの行動……身軽に身一つで動けた昔が懐かしい。必要ならやるけど。
「久しぶりだな、キノ」
「そうだね、直接会うのは何年ぶりだろう?」
お互い組織を運営する身分だし、チョット会うのにも調整だなんだと面倒くさい。
キャスパー兄さまは普通の超人だからね?
しかし、言ってて違和感が凄いな。思わず苦笑する。実感としては間違って無いんだけどね。
彼は強い、レベル36は超人だ。
でも彼以上に強い悪魔が湧くのがアメリカだ。頻度は少ないらしいけどね?
キャスパー兄さまは組織運営を得意とするタイプだし、指揮官が一人で行動するのも問題だ。
だから周りには護衛がゾロゾロ、見えない所にも護衛がいる。
全部ボクの感知範囲なんだけど……まあ、人手は必要だから良いかな?
襲撃されたと仮定して、ボクだけで制圧すると時間が掛かるし……
「その子がキノの?」
「うん、長男の木太郎だよ」
兄さまは一瞬だけ瞑目して言った。
「名前を継いだんだな……」
「そうだね、継いで貰った」
兄さまは優しい目で木太郎を見ていた。
「子供を寒空の下に置くのはマズイ、暖かい所へ移ろう」
「ありがとう」
護衛を引き連れて移動する。儀式めいた仰々しさ……
「ホント面倒」
ポツリと呟く。従兄に我が子を紹介するだけなのに、なんでセレモニーが必要なんだろう?
兄さまのサンフランコ統治にはプラスなんだろうけどね……
ボクは既に疲れていた。
クライアントの提案です
「北神奈川支部としては、プロトタイプモビルワーカーのライセンス生産を提案する」
泥濘では動けなかった機体だが、荒野ばかりのこの地では使える。
「拝見しよう」
サンフランシスコの担当者が資料を読み込む。
「以前の機体よりも一回り大きい様だね?」
「居住性も上がっています」
戦闘力も若干上がっているが*1、一番の違いは居住性だ。
機体サイズを上げて、大柄なアメリカ人でも収まる様に設計し直している。それでも窮屈に感じるかも知れないがね?
火力は据え置き、防御は少々上がっているだろうか?
トラクターとしての機能を捨てた代わりに、耐久力が上がった多目的重機と言うのが総評だ。
「やはりブラックボックスの現地生産は無理なのだね?」
一応の確認。
「ブラックボックスの製造には機密も存在し危険も伴います。対悪魔戦線の最前線とも言えるサンフランシスコでの製造は無理があるかと……」
事実だ、私には理解できていない事も多い。Need to know、私は知るべきでは無いのだろう。
「わかってはいるが、歯がゆいな」
かつては西側陣営の軍事産業を牽引していたアメリカの人間としては思う所もあろう。
だからと言って交渉では譲れないがね。
「こちらで本体を作り、我々が持ち込んだブラックボックスを組み込む。十分に生産数は上がるでしょう」
「確かにな」
「なにより……場所を取るモビルワーカー本体を運ばなくて済む分、運べる物資が増える。有料ですがね」
ビジネスだからな。彼らは金を始めとする貴金属を代価に、我らは食料や薬そして武器を売る。
「まあ当然だな」
彼は肩を竦めた。ガイア連合として無償の支援もしている場所も多い。水や食料だ、味の方はお察しだがね。
ここサンフランシスコは支援対象ではない。ビジネスパートナーだ。
独立独歩の一勢力。仮に北神奈川支部との取引が消えても生き残る事は出来るのではないか?
被害は大きいだろうし、生活も苦しくなるだろうが……
「この大型モビルワーカーに名前はあるのかな?」
悪戯めいた笑い。
「さて? ついていないハズですな」
「では私が決めても良い訳だ」
笑みが大きくなる。
「トライポットはどうだろう?」
「宇宙戦争ですか……」
思わず苦笑する。
「分かり易いだろう? 実は既に前線での愛称になっていてね」
愛嬌のあるウインク。
そういうわけで大型モビルワーカーの正式名称は〝トライポット〟に決定した。
悪魔と戦っているのだ、多少のジョークは必要なのだろう……多分。
トラブルメーカー? キノ支部長に言われたくはないね
交渉を終え、散歩がてら城壁を見学していた。
高さは10m程、厚みも5mはある。城壁の上を歩けるくらいだ。材料は石なんだろうか? ガイア連合の術者が作ったらしく、詳細は不明だ。
折角だから登ってみた。
なかなか見晴らしが良い。
「外を見ても面白くは無いね」
それはそうだ、ここは観光地ではない。
悪魔対策用の防壁で見張り台だ。だから街を見る。
そして気になるヤツを見つけた。
城壁の上から見えたコソコソと動く怪しい男と無理やり連れまわされている褐色の肌を持つ三つ編みの少女。
注視して当然だろう? 彼らは私に気付いていない様だ。
すると男がナイフを取り出した!? 私はすぐさま城壁から飛び降りた。
「全く持って、不本意だね!」
私は平和主義者なんだが?
暴力を嫌い、銃を持たず、争い事は話し合いで解決しようとしてきた。
「だから私に手を上げさせる方が悪い!」
私の目の前で少女を殺そうとしたんだ。殴られて当然だ。
「さて大丈夫かな? お嬢さん」
「平気」
腕にケガはしているが、軽傷なのだろう。
「それは結構」
後で手当してもらおう。
さて、これからどうしたものか……
「防衛隊を呼んだが、この馬鹿に心当たりは?」
武装解除の後で、ネクタイを使い足を縛る。
「私を誘拐して連れて来たヤツ」
「ふむ」
顎に手をやり考える。
「私は小さなシェルターに居た」
覚醒はしているが、戦闘向きではない。雑用や警戒要員として働いていたが、先日誘拐された。
わざわざサンフランシスコで殺す為に。
敵の狙いはなんだ?
ターゲットは、このお嬢さんに間違いない。
問題は単独犯なのか、それとも集団的な犯罪なのか。
単独犯なら、話は終わりなんだが……
「やはり、単純には終わらない様だ!」
少女を抱きかかえて、裏路地に飛び込む。
先程まで居た場所にサブマシンガンの着弾。
捕虜は殺された。
「複数犯だな……」
敵は銃器で武装した集団。数は多くない、見えている範囲では4人だ。
さて、サンフランシスコは移民の街。人種は様々、宗教も様々、それでもガイア連合とヘクマティアルグループによって統率はされているハズなんだが?
「余所者……かな?」
テロ要員を内部で用意するのは難しいと思える。
外から使い捨てに出来る人間を連れて来る方が容易だろう。
「何にせよ、メシアンが一枚噛んでるんだろうがね」
溜息を一つ。
連絡しないとマズイだろうな。
『君もトラブルメーカーみたいだね』
辛うじて取れた連絡への返答がコレだ。
「キノ支部長に言われたくはありませんな」
私は憮然として、こう答えた。
『ふふっ、確かにね。でも丁度良い、君が新たに得た力を示しておいでよ。ボクの代理人が舐められちゃダメだからね』
「承知いたしました、クライアント殿」
そう告げると通信を切り、敵集団に向き直る。
「それでは不運だったと思いたまえ」
次の瞬間、巨大な腕が雑魚共を殴り飛ばしていた。
事情を聞こうか
「詳しく話せるかな?」
保護した少女に話を聞いて見よう。
本人がどこまで把握しているのか、その情報は正しいのか?
検証は必要になるだろうが、情報は必要だ。
「うん、私は囮で生贄」
「生贄ね」
土着の〝神を名乗る悪魔〟に代償を奉げて庇護を願う。
よくある話ではある。気に入らないがね。
「私はアベナキ族*2の血を引いている……らしい」
疑問形か。
「私は孤児だから」
この御時世だ、孤児が自分のルーツを知らなくても仕方ないだろう。
私個人としては、血筋に力など無い。
本人の実力が全てだ。
そう言い切りたいのだが、無理だろうな。
〝神を名乗る悪魔〟は氏子しか認めない、自らを崇め従ってきた民の血筋に価値がある。
悪魔が係わると血筋も大きな力だ、嫌な話だがね。
「でも私の血、命に使い道があると言われた」
誰にだ?
「神父の恰好をしてた」
推定メシアン? 決めつけは危険だが、おそらくは間違っていないだろうな。
「この街で私を殺せば、アセネーキワクが怒るって」
アセネーキワク?
「岩の巨人? 山の化身? ネイティブアメリカンが信仰する神様? そういう存在らしい」
ふむ? とりあえず、そういう名の悪魔が居るものとして行動するか。
「では、彼らの企みは失敗したのかな?」
「半分は失敗」
半分……
「召喚自体は出来た」
ケガを負わされた時、助けを求める思いに応えた存在が居た様だ。城壁を見る少女。
否、城壁の外の存在を感じているのだろう。城壁の外に岩の巨人。ゴーレムみたいな存在が居るらしい。
「アセネーキワクは私が捕らえられた儘だと思っている。だから怒った」
最低限の理性は残っているらしいが、話し合える程では無い。
怒ってはいる、だが助け出し護る為に、MAGを節約しているのだろう。
もし殺されていたら激怒してたのだろうね。自分の存在維持など考えず、自爆覚悟で暴れていたのだろう。
そう考えればメシアンの企みよりは弱体化しているのだが、迷惑な事には変わりがない。
私の勝手な判断ではあるが多脚戦車数台で対抗出来るのではないだろうか? 損害も酷いだろうがね。
「クライアントは何時も無理を言う」
キノ支部長のオーダーはサンフランシスコ防衛隊に被害を出さず、私が制圧する事だ。
知性派の私が戦う必要があるとはね。
初仕事だ派手にやろうか!
少女を自警団に預けた私は城壁に昇りすぐさま飛び降りた。
私だって覚醒者だ無力では無い。
この身一つで戦い抜けと言われたら困る程度の強さでしかないがね。*3
「やれやれ、私向きの仕事では無いね」
怒れる巨人が迫る。
防衛の為に砲弾も撃ち込まれるがアセネーキワクの防御は破れない。
「おそらくは〝銃撃無効〟なのだろうね」
ネイティブアメリカン、当時はインディアンと呼ばれた彼らは銃に依って迫害され、殺された歴史がある。
「その守護者が銃に強い耐性を持つ。不思議では無いな」
あの大きさだ、直ぐにここまで来るだろう。攻撃魔法は使用して来ない、物理オンリーなのかも知れないね?
「さて君の初仕事だ、派手にやろうか!」
私は左腕の腕時計に向かって大きく叫んだ。
「ビッグオー、ショータイム!!」
私の背後の空間が歪む。
地面からせり出す様に現れる巨大ロボ。
同時にロボットは私を手に乗せ、コクピットへと誘った。
移動してコクピットに収まり、操縦桿を握る。
迫りくる岩巨人。
「ビッグオー、我々の力を見せてやろう!」
攻撃してくる手を掴む。先ずは右手、そして左手。
私のビッグオーが負けるものか!
ダブルナックルロック*4で力比べだ。
「単純な力では少々不利か?」
ビッグオーが弱い訳では無い。私がビッグオーの力を引き出し切れていないのだ。
「我ながら不甲斐ない!」
そう言いつつも技巧で凌ぐ。
力負けするなら受け流せば良いのだ。
わざと力を抜き、相手を崩す。そして小手投げで投げ飛ばす。
「ロボに乗るのに格闘技を覚える必要があるとはね」
当時は不満だったが、実際に役に立っている。
ロボ部なる提供者達が引き渡しの条件として提示したのだ。
ロボットの操縦技術のみならず格闘技も覚えろとね? ボクシングのみでは御不満らしい。
体捌きや投げ技を中心に鍛えられた。
「少々特訓を受けただけで終末を生き抜く力が貰えるのだ、是非も無いさ」
転んだアセネーキワクに左手のパンチで追撃。
転がって躱される。
「城壁が近い、長々と付き合う気は無いのだよ」
アセネーキワクが起き上がる瞬間を狙う。右腕肘部の〝ストライク・パイル〟が音を立てて後退する。
「滅びたまえ!」
全力の右ストレート。命中と共に〝ストライク・パイル〟がアセネーキワクに叩きつけられた。
「サドン・インパクト!!」
衝撃が敵を撃ち抜く。
パンチの威力に追加された〝ザンダイン〟相当の衝撃波はアセネーキワクを滅ぼすに十分だった。
その筈なのに……
「まだ動くのか!?」
胸部を半分抉られた状態でアセネーキワクは城壁へ向かって左手を伸ばしている。
そこに居たのは、あの少女。キノ支部長に連れられて来た様だ。
少女が一言呟く。
私には聞き取れなかったが想像は付く。
少女の無事を悟ったのだろう。アセネーキワクは静かに消えた。
戦い終わって
「デビュー戦は大成功だね」
何時の間にかビッグオーの右肩の上にキノ支部長が居た。
「誇れる結果ではありませんね」
交渉では無く、戦闘で終わってはね。交渉人としては失格だろう。
「もっとも交渉不能な相手も居ますがね」
ビッグオーのセンサーは、逃げ出そうとするメシア教過激派の姿を捕らえている。
「位置情報は教えてある、後は現地の仕事だよ」
サンフランシスコが誇る精鋭部隊が追撃を初めている。
「お疲れ様、ロジャーそしてビッグオー」
今後の交渉で私が侮られる事はあるまい。
交渉人、外交官には戦う力が必要な世界になってしまった。
「まさか交渉に巨大ロボが必要になるとは……」
無力な存在は話すら聞いて貰えない、その為の霊力、そしてビッグオーだ。
「今後も頼りにしているよ」
私はコックピットから身を乗り出しつつ、相棒に声をかけた。
ビッグオーの戦闘記録が何時の間にロボ部に流失していたと知って愕然としたのは後の話だ。*5
アセネーキワク
ネィティブアメリカンのアベナキ族に伝わる、岩の巨人
調べたけど、あまり情報は無いみたい
都合が良いので巨大なゴーレムみたいなものとして登場させた
レベルについては聞かないで欲しい、ビッグオーのレベルをどれくらいにすれば良いのか不明なんだもの
原状のビッグオーより少しだけ強いイメージ
アベナキ族の血を引く少女
アセネーキワクの巫女だが自覚は無い
サンフランシスコで修行してゴーレム(アセネーキワクの劣化分体)使いになる未来もあるのかも?
ドロシー枠にするのは無理そうだし止めようw
ビッグオー
みんな大好き巨大ロボ、オフィシャル設定では約30mらしい
レベル等は決めずにふわっと、カッコよく書けただろうか?
勢いで誤魔化したつもりだが成功したかは不明
細かい事には目をつぶって頂きたい m(_ _)m
後遺症の神経痛が続いています
痒みは治まったし痛み止めがあれば寝れるし、良しとしよう