GODARCA / Before Nigit   作:Seilin

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アンチ/ヘイト タグ さん!?


07

「現在の『塔』と『戦車』の部隊による合同訓練、なぁそれ今の私が参加する意味あるか?」

 

「そういう時は『あるか?』ではなく『あるのか?』と言おうかねぇ。あぁ。確かに塔も戦車もそろそろ引退する老いぼれですが、それでも見ておくことには意味があるのですよ」

 

 機関の護衛を名乗る男に連れられ、合同訓練へと参加することになった。塔の部隊には何度か顔を出しているが、今までにない緊張感が漂っているようにも思える。

 

「軍としての規律をどこよりも重んじる戦車と、街としての規律を重んじる今の塔。シェリダン殿が就任してからどのように部隊を変えるかは別にして、これも戦いであるということを覚えておくとよいでしょう」

 

「『それが未来に繋がるから』か?随分と楽観的なものだな。物見遊山なら帰りたまえ。我々も暇ではない」

 

 声をかけてきたのは制服をキッチリと着た妙齢の女性。四角四面な物言いからも、真面目なのだろうということは伺える。

 

「楽観的?いえいえ、私はただの護衛ですので。対象を安心させるのも実力の内、なんでしょう?」

 

「っち、古い話を……まぁ良い、そこの貴様」

 

「ああ、私のことか……ですか?」

 

 護衛の男と知古であるらしい女性は、私に振り向くと鋭い目線をこちらに向けてきた。

 

「貴様が次代の塔だな。話は今代の塔から聞いている。振り落とされぬよう、精々足と手を動かすことだ。それと」

 

 そういうと彼女は体を反転させ、言葉を続けた。

 

「ウチの次代はこの地獄(神話)を終わらせられる。貴様はどうだ?屋根の修理では民を救うことなぞできんぞ」

 

 言い捨てて去っていく後ろ姿に、まだ何も成していない自分が言えることなど、何もなかった。

 

****************************

 

HO07: リトル·ウィリー=ルイス 1

 

 今回行われる合同訓練は、塔の部隊が守る人形を一定時間内に戦車の部隊が奪取するという内容で実施される。可燃性の人形が破壊されたら両者敗北となるため、互いに火計は使用できない。私が今いるのは仮設された門の前、つまり防衛線の最前列だ。「ここなら最前列で死なずに戦車の勢いを感じ取れる」らしい。鬼か?まぁそんな場所で支給されたビリー棍棒*1を持ち、先輩方と均一なヘルメットを被り待機しているわけだ。

 

「災難でしたね、シェリダンさん。ここに配属されるなんて」

 

「いや、長がここと決めたのなら何か理由があるのだろうさ。見るべき誰かがいる、と考えた方が気も楽だ」

 

 話しかけてくれたのは、商家出身の兵士。身分と生まれ、勉学の結果で優位を取る事を良しとする今の『塔』部隊では比較的話しかけやすい方の存在だ。

 

「見るべき、ですか……今代の戦車は実力主義ですからね、先頭に立とうとする兵も多いんじゃないですか」

 

「先頭か。塔とは真逆の性質だが、アルカナとしては適切かもしれないな」

 

「ははは、俺としては先頭で指揮を執る塔ってのも見てみた

 

 パン、という乾いた音と共に雑談をしていた兵士の体が吹き飛ばされる。音源を見ると、そこには何かを殴り飛ばしたような体勢で拳を振り抜いた少女が、少し離れた所に立っていただけであった。少女はこちらを見定めると、腰に付けた球体を左手で軽く放り、右手を振り抜くような構えを見せて

 

 バギリ

 

「一撃の中距離で出して良い攻撃ではないだろうが……っ!」

 

 折れた棍棒と連絡筒を放り、予備の警棒を取り出す。死ななければ病院がなんとかしてくれるとはいえ、模擬戦で使用されるべき火力ではない。というかそもそも

 

「戦闘開始の合図は無いのかっ!」

 

「そのようなものは戦場において存在しません」

 

「答えてくれてありがとうよ!」

 

 距離を詰められ、白兵戦となる門前。どこにいたのか、戦車の文様の付けられた兵士が別の門に突撃を始めたのが遠くに見える。年下とは思えないほど鮮烈で洗練されている少女の攻撃に、直接受けたらまずいと判断し受け流す方向へと対応を変える。

 

 右右中下足中左頭耳頭足胴右右左胴足胴

 

「私なぞ気にせず他の隊と突入してはどうだ!」

 

 胴足左左足胴足右左右左頭肩胴左左右左

 

「隊長の命ですので」

 

「軍隊らしい良い隊長と部下だな!」

 

 警棒で突き放すも瞬時に距離を詰められる。時間は数秒しか経っていない。

 

 右足右左胴足右ひだ……あ

 

 読みが外れた一瞬、軽鎧越しに感じる爆弾のような一撃を胴に受け、吹き飛ばされた私はそのまま門に叩きつけられた。

 

「少し、時間がかかりすぎてしまいました。どなたかはわかりませんが、良いスパークリングになりました。それでは」

 

 少女の声が聞こえた気がしたが、ヘルメットで顔を隠したまま意識を失う私には、その全てが届くことは無かった。

 

 後から聞いた話によると、塔部隊は耐えきったらしい。いつもの奇襲に対して通信部隊による迅速な対応が出来たから、らしいが。まぁ私にはきっと関係の無いことなのだろう。

*1
ビクトリア朝時代からロンドンで使用される警棒。約1フィート程。




「とにかく厳しい人ですね。ルイスを小さい頃から鍛えていました」
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