GODARCA / Before Nigit   作:Seilin

8 / 11
揃った時にそもそも開口するか怪しいが別に仲が悪いわけではない二人


08

HO08: ルーファス=カイル・グレイストーン 1

 

「すまない、手に穴が空いた」

 

「君が仕事を止めたからレイクランドの仕事の2%が滞っているんだ。そもそも空けるような行動を取るべきではないと何故理解していない」

 

「そうだな、気を付けよう」

 

「つまり今までは気を付けていなかった、という自供と取って構わないな?」

 

「いや、そういった、わけでは……」

 

「無いことは解っている。以前話していた防護パット、あれが作用して腕全体が飛ぶことを防いだのだろう。筋の傷付き方がそうなっている。だがそれで大事故が事故に変わったからと言ってそもそも今の立場の君が細かい仕事まで請け負う必要など無いだろう優先順位という物を……」

 

 先日、発条(バネ)式の絡繰りを試しに弄ろうとした所抑えていた手に強力な力が加わり左手に軽く穴が空いた。それ自体は良くある事なので私は気にしていないのだが、素人の応急手当よりは治りが早いだろうと病院に来たらこの調子だ。

 

「ああわかった。降参だ。黙って治す、仕事は割り振る。止まったものも私以外で処理出来るよう対処する。それで良いか?」

 

「最初からそうしろ。そもそも割り振りが雑なんだ君は」

 

「下町の出なんだ、容赦しろ」

 

「なら君を育てた職人達に聞いてみたら良い。彼らの方がよっぽど人を使うだろ」

 

「それは……そうか。そうだな、相談してみる」

 

「私は何度同じ事を言えば良い?」

 

「あーはいはいすみませんね察しが悪い庶民なもんで」

 

 はぁ、と吐かれたため息が、どちらによるものかもわからずに、診察室に沈黙が訪れる。私は黙って手を差し出し治療を受け、ルーファスは黙って治療を行う。この沈黙は嫌いではない。喋らずに仕事が終わるなら喋らない自分と、言葉が常に足りていないルーファス。これがアーサーだと、最初から最後まで話を続けることになる。それも嫌では無いが……まぁ、落ち着くということだ。

 

 包帯が巻き終えられ、一度強く叩かれる。痛みはあるが、顔に出すほどではない。

 

「何週間?」

 

「3日後に再検査だ」

 

「3日後は修理が……あぁわかったわかっている!昼に来る」

 

「調整しておけ」

 

「了解したさ」

 

 言葉は足りていないが、伝わっているだろうという曖昧な信頼。職人連中もそうであるからか、他のアルカナの面々よりも理解度は高いのではないかと勝手に思っている。

 

「次の時の希望はあるか?」

 

「まだ終わっていないだろう?」

 

「続きか、わかった。確かあったと思う」

 

 このやりとりも、差し入れ代わりの本の要求があるかの話だ。未完の本を寄越すなというのも彼らしいと言えばそうか。内容はいわゆる冒険ものだったので、口に合うかがわからなかったのだが……この反応だと、きっと楽しんでくれたのだろう。

 

 私は帰路に付き、明日からの指導を相談するべく鍛冶屋町に足を向けた。最初からそうしておけ、はこれ以上言われたくはないからな。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。