GODARCA / Before Nigit 作:Seilin
HO08: ルーファス=カイル・グレイストーン 1
「すまない、手に穴が空いた」
「君が仕事を止めたからレイクランドの仕事の2%が滞っているんだ。そもそも空けるような行動を取るべきではないと何故理解していない」
「そうだな、気を付けよう」
「つまり今までは気を付けていなかった、という自供と取って構わないな?」
「いや、そういった、わけでは……」
「無いことは解っている。以前話していた防護パット、あれが作用して腕全体が飛ぶことを防いだのだろう。筋の傷付き方がそうなっている。だがそれで大事故が事故に変わったからと言ってそもそも今の立場の君が細かい仕事まで請け負う必要など無いだろう優先順位という物を……」
先日、
「ああわかった。降参だ。黙って治す、仕事は割り振る。止まったものも私以外で処理出来るよう対処する。それで良いか?」
「最初からそうしろ。そもそも割り振りが雑なんだ君は」
「下町の出なんだ、容赦しろ」
「なら君を育てた職人達に聞いてみたら良い。彼らの方がよっぽど人を使うだろ」
「それは……そうか。そうだな、相談してみる」
「私は何度同じ事を言えば良い?」
「あーはいはいすみませんね察しが悪い庶民なもんで」
はぁ、と吐かれたため息が、どちらによるものかもわからずに、診察室に沈黙が訪れる。私は黙って手を差し出し治療を受け、ルーファスは黙って治療を行う。この沈黙は嫌いではない。喋らずに仕事が終わるなら喋らない自分と、言葉が常に足りていないルーファス。これがアーサーだと、最初から最後まで話を続けることになる。それも嫌では無いが……まぁ、落ち着くということだ。
包帯が巻き終えられ、一度強く叩かれる。痛みはあるが、顔に出すほどではない。
「何週間?」
「3日後に再検査だ」
「3日後は修理が……あぁわかったわかっている!昼に来る」
「調整しておけ」
「了解したさ」
言葉は足りていないが、伝わっているだろうという曖昧な信頼。職人連中もそうであるからか、他のアルカナの面々よりも理解度は高いのではないかと勝手に思っている。
「次の時の希望はあるか?」
「まだ終わっていないだろう?」
「続きか、わかった。確かあったと思う」
このやりとりも、差し入れ代わりの本の要求があるかの話だ。未完の本を寄越すなというのも彼らしいと言えばそうか。内容はいわゆる冒険ものだったので、口に合うかがわからなかったのだが……この反応だと、きっと楽しんでくれたのだろう。
私は帰路に付き、明日からの指導を相談するべく鍛冶屋町に足を向けた。最初からそうしておけ、はこれ以上言われたくはないからな。