喫煙先生と小鳥遊ホシノ &先生と黒服と錠前サオリ
「Hallelujah! SALEM!」
陽の落ちるボロ校舎を登って屋上で胸に隠した煙草に火を灯す。
吹き付ける砂地が紫煙をどこか遠くへ攫っていく。
「うへ~おじさん感心しないなぁ?」
いつの間にか居眠り姫の小鳥遊ホシノがとなりに居た。
「っあぁ、確かに良くないね。」私は小洒落たチューブ状の灰皿にそれを消す。
「・・・別に、良いけどね。」夕暮れを背に二人は砂の被った軒先に腰掛ける。
「でもみんな結構気が付いているみたいだよ?シロコちゃんもセリカちゃんも鼻が良いし。」
「やっぱり嫌がってた?」存外喫煙者でも気にするものだ。
第一、教師たるもの生徒に嫌われていては仕事に支障をきたす。
「別に?ただ偶に何時もの違う香りがするってさ。」
「そっか・・・。」
箱からもう一本を取り出し咥える。それとなくホシノの方に差し出す。
「ダメだよ?未成年喫煙をあろうことか先生が進めるなんてさ。」
そう言って彼女は私から箱を取り上げる。
物珍しそうにひっくり返し、とっくり返し見ている。
私は再び偽物のデュポンで火を着ける。
「気に入っていたんだけどね、この間廃版になっちゃってさ。」
「SALEM、セーラム?で合ってる?」
「セーラム、ヘブライ語で意味は~。」
沈む夕日が二人の茶番を隠す。
Hallelujah! SALEM!
「幸運の、」
二人の男は居酒屋に居た。今では珍しい全席喫煙可能なところだ。
「ククク、モテ男は大変ですねぇ。」
「しっかし、そのイヤミな話し方も治らないもんだね。友達なくすよ?」
黒服は煙草に火を着け話の間合いをうかがう。
「また変えた?」
「ええ、新しいものにはやはり興味を惹かれます。」
「カプセル入りメンソールなんてカスが吸う銘柄だろ?男ならやっぱり・・・」
「ククク、そういえば貴方はアレから乗り換えていないんでしたねぇ。一途なことです。」
メンソールとベリーの香りに二人の酒席は包まれる。
「そういえば、あの時どうだったんです?」
「?」
先生には覚えがないようだが黒服は覚えていたらしい。
「昔、お互いに始めた時の事です。」
~この赤い丸は第二大戦時にまるで的みたいじゃないかと嫌われた、だが俺はラッキーボーイだからキヴォトスでこれを持っていても一発も当たらねぇ!~
黒服、渾身の声真似である。
「・・・止めろよ、恥ずかしい。だが、当たってないぞ。」
「錠前サオリさんに撃たれましたよね?」
「・・・あれは正直ヤバかった。」
「随分昔に当たったら食事を奢るという約束でしたので、ねぇ?」
先生はポケットからあるものを取り出す。
「実はあの時金欠でさ、こっちにしていた訳よ。だからノーカンだ。」
ラッキーストライク・エキスパートカット、ラッキーストライクは600円に対して450円の廉価商品。
箱は青く、特徴的な赤い丸はそこにはない。それは見事に銃弾に撃ち抜かれぐちゃぐちゃになっていた。
「ズルい男ですねぇ、浮気はしないと言っていたはず。」
「こっ、衣替えだヨ。」
「ですが、奇遇ですね。」
「何が!」
「そうやけにならないでください。彼女のヘアカラーと同じではありませんか。それに・・・」
黒服はスマホを取り出し1枚の写真を見せる。
「彼女も同じのを吸っているようですよ、ククク。」
「・・・悪い事ばかり先に覚えていくもんだよな。」
「えぇ、全くです。」
「Hallelujah! SALEM!」が本命でしたが文章量が1000文字以下だったので急遽「幸運の、」を書き足しました