魔術と科学とサイヤ人が交差する物語   作:猫ネコ

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もう少し進めたかったのですが、お待たせし過ぎている状態なのでこれで投稿します。





意外な所が似た二人

 

 

 

 

 

上条はとある建物の前にいた。

歯に衣着せぬ言い方をすると、家賃一万円以下でも住む事に抵抗のあるボロいアパート。通路に洗濯機があるくらいに狭い内室で、風呂場すら設置していない。

そして上条はたった今、その一室から出て来た所だった。

 

 

「トウマーー!」

 

「ん……? っ、おおう!?」

 

 

聞き覚えのある声に反応して上条は"上"を見た瞬間、小さな影が目の前に降り立った。

急な事で大げさに仰け反ってしまったが、先程まで存在していた表情の陰りはなくなっていた。

 

 

「悟空!無事だったんだな」

 

「ああ。おめぇもな、トウマ。まさか本当に倒しちまうなんてやるじゃねえか!」

 

「まぁな、つか、まさかとか本当にってなんだよ。疑ってたのか?」

 

 

ジトーと粘着質のある視線を浴びせると、悟空は慌てて首を振った。

 

 

「いやいや、そうじゃねえさ! 不死身のばけもん相手に良くやったなぁって思ってよ」

 

「あぁ、そりゃあインデックス、が………………」

 

「トウマ…?」

 

「………悪い、悟空。先にインデックスだ」

 

 

上条は振り返り、ボロアパートを指で差した。

 

 

「掻い摘んで言うけど、インデックスはこれから魔術を使って傷を治す。 それを別の人がやらなくちゃいけないみたいだから俺の先生に頼んだんだ」

 

「先生? なんでわざわざ。おめぇがやりゃあ良かったじゃねえか」

 

「………出来ねぇんだと。幻想殺しを持つ俺は、空間内にいる事すら駄目らしい」

 

「ふーん、そっか。んじゃこのまま待っとくか」

 

「いや。悟空はあっちに行って先生のフォローをしてくれ。多分パニクッてるだろうから」

 

「フォローって……。行くのは構わねぇけど、知らねぇ奴がいきなり入って来たらそれこそ戸惑うだろ」

 

「そこは……ほら、………なんかこう、適当に、さわやかで、元気に……」

 

「………丸投げして来やがったな」

 

「はは。まぁ頼むよ。あ、先生の名前は小萌な。 俺は終わるまでその辺ぶらついてるから……」

 

「ん。分かった」

 

 

悟空の足が地面から離れる。空を飛ぶ彼には階段を使う必要はない。

インデックスの"気"は把握済みのため、迷いなく部屋の前まで飛んだ。

 

 

「……………あっ、そういう事か!」

 

 

扉をノックする直前、悟空は何か閃いたように声を上げて、手すりに肘をかけた。

 

 

「どうしたんだ…?」

 

 

悟空の声を聞き、アパート下まで戻って来ていた上条。

見上げると、何故だか妙にニヤついた笑みをする悟空がいる。

 

 

「トウマ」

 

「ん?」

 

「さてはおめぇ、仲間外れにされたから落ち込んでんだろ!」

 

「……………はあ? ………………いきなり何を言い出すのかと思いきや、んだよそれ」

 

 

上条は呆れたようにため息を吐いた。

額に手を添えて、やれやれといった様子で首を振ると、

 

 

「俺が落ち込むとか意味不明なんだけど、つか落ち込む必要性が皆無だし。仲間外れとか全然思ってもなかったから何の事か分かるまで時間かかったわ。 ま、それ程までに気にしてなかったって事だな。 そもそもこういうのって適材適所だろ?幻想殺しが使えない場面くらいあるーーー」

 

「わりぃトウマ。おめぇの話長ぇからオラ行くな」

 

「おう行け行けぃ! そして終わったら一発殴らせて!!」

 

 

ギチギチと握り拳を作る上条には目もくれず、悟空は部屋の扉を叩く。

ゴン!ゴン!と異様に鈍い音が出た。手に伝わる衝撃もただのノックにしては反動が大きい。

 

 

(かてぇドアだ。凹んでねぇだろうな…?)

 

 

硬いもの同士がぶつかれば少しでも弱い方にダメージが向く。新聞の購読契約対策で頑丈にした扉と、生涯戦い続けた者の拳。どちらが硬いのかは比べるまでもない。

だから念の為確認しようと顔を近づけたのだが、タイミング良く(?)扉が開いた。

 

 

「上条ちゃんですー?」

 

 

ガチャ、ゴン!

 

 

「ぶっ!」

 

「ほえ…?」

 

 

途中で扉が止まり、内からひょっこりと顔を出した幼女は瞠目する。

 

 

「こ、子供!? あわわっ、だいじょーぶですかー!?」

 

 

こんな時間、このような場所になぜ子供が。

疑問が脳内で駆けずり回っているが、小萌は目先の事を優先する。慌てて家から飛び出して、鼻を押さえている悟空と視線を交わした。

 

 

「いちち………」

 

「ご、ごめんなさいですー……。別の人と間違えてしまって…」

 

「い、や……、気にすんな。オラが顔を近づけてただけだから」

 

 

悟空は密かに扉を見た。

自分の顔に当たったせいで今度こそ凹んだんじゃないかと危惧していたが、それは杞憂だったようだ。

 

 

「ん、もう大丈夫だ。そんで急ですまねぇけど、中に入らせてもらって良いか?」

 

「え?」

 

「オラはトウマに頼まれて中にいるインデックスの様子を見に来たんだ。多分、コモエっつう"母ちゃん"が知ってると思うんだけど…」

 

「あ、のぉ……」

 

 

彼女は気まずそうにか細い声を出した。

悟空の言った事には理解したが、問題点があったのだ。

 

 

「どうした?」

 

「小萌は私で、未婚の先生なのですよー……」

 

「へ?……、あんたがコモエせんせい!?」

 

 

大きな声を出したためか、彼女の体はピクッと小さく震えた。そして肯定の意味を込めて首を縦に動かしている。

 

 

「…………………せんせいってのは子供でもなれるんか…?」

 

「失礼な! 先生はれっきとした大人で教員免許もちゃんと取りましたですー!」

 

 

小さな体を大きく見せるように両手を上げて抗議する小萌は、というより……と言葉を続けた。

 

 

「あなたは上条ちゃんの何なのですか? 確か上条ちゃんに弟はいなかったはずですし………、先生としてはこんな時間に子供が外にいるのを見逃すわけにはいかないのですよー」

 

「あぁ、それなら心配はいらねぇぞ」

 

「?」

 

「オラの体は小さくされているだけで、本当はもうじいちゃんって呼ばれるくらいの歳になってっから」

 

「えっ! ご年配の方なのですかー!?」

 

「うん。ちゅーわけで入っても良いか?」

 

「あ、は、はい。どうぞ」

 

 

小萌はすんなりと悟空を部屋に通した。

二人ともが相手の風貌に驚きつつも、自分がそうであるために容易く受け入れれるのだ。

短い廊下を歩きながら小萌はこれまでの話をざっとまとめた。

何やら『変な事をして』傷を治すらしい。

現在時刻を細かく伝え、ちゃぶ台の上には、部屋のミニチュア盤を模型したところだとか何とか。

とりあえず傷を治すために魔術を使ってんだろうなぁ…と悟空は適当に納得すると、

 

 

「おっ!インデックス。まだ生きてるみてぇで良かったぞ」

 

 

部屋に入ると小萌から聞いたとおり、虚な目をしたインデックスが机に向かって座っていた。

とても傷を負っているようには見えない。背すじだって伸びている。

ギギギ……とロボットみたいに首が動くと、悟空の姿を生気のない瞳が捉えた。

 

 

「……およそ三分後。私は生命力を失い、絶命します」

 

「い"い"っっっ!!! ギリギリじゃねえか! 何とかなりそうなんか?」

 

「はい。儀式上に誤差が生じたため、ただちに修正が必要になりますが」

 

 

そう言ってインデックスは近くに転がっていたフィギュアを取ると机に乗せた。

この部屋の模型となるように同じ場所へ置いているのだと小萌から伝えられると、それを乱さないように悟空はその場に座った。

 

 

「ーーー星の位置、月の角度により時間の誤差を修正。では儀式に入ります」

 

「なにか手伝うぞ」

 

「いえ。孫悟空の持つ力が弊害になるとは思えませんが、そちらの女性にお願いしますので結構です」

 

「そんじゃあオラはただ座ってるだけか?」

 

「はい。……………絶命まで後二分。このままだと生命活動が維持できず意識をなくし、儀式に支障を来たします」

 

「あーーーっ!分かったから!もう話しかけねえから! コモエ、頼んだぞ!!」

 

「は、はいっ!」

 

「では天使をおろして神殿を作ります。私の後に続き、唱えてください」

 

「はい!」

 

「尚、手順を踏み違えた場合、あなたの神経回線と脳内回路を焼き切る恐れがあるのでご注意を」

 

 

ぶっ、と小萌は吹き出して、顔を青白くさせたまま悟空を見た。

 

 

「…………まちがえなきゃ問題ねえ」

 

 

返って来たのは何の気休めにもならない言葉だった。

失敗すれば二人とも死ぬ。口から心臓が飛び出てもおかしくないほどに鼓動が騒がしい。

途端に声が聞こえた。

ギョッ!と小萌はインデックスを見る。

もう儀式は始まっていた。

インデックスが呟いたのは言葉ではなく『音』。

不思議な感覚だったが、その意味を考えている暇などない。

神経が焼き切れる前に、小萌はインデックスと同じ『音』をただ真似た。

 

 

「なんだ…、こりゃあ………」

 

 

悟空が呟いた事により小萌は、同じ心境の者がいるという理由で落ち着いてはいるものの、今すぐにでも発狂したいくらいに混乱していた。

 

ちゃぶ台の上に置いてあるフィギュアから『音』がするのだ。

 

それはインデックスの真似をする小萌と同じ『音』。まるでフィギュアと小萌が同化しているかのように、フィギュアから『音』が出ている。

『音』が続くと、ガタガタと謎の揺れが強さを増した。

そして急に悟空は辺りを見渡した。グルグルと視線を回し、首を動かして何を探している。

そんな悟空に疑問を抱いた時、小萌も気付いた。

 

この部屋に妙な気配がある。

 

何千もの眼球に四方八方から観察されているような薄気味悪い感覚。

これが天使だと思ったが姿形はない。

人の目では見られないのか……、そう思った時、インデックスは叫んだ。

 

 

「思い浮かべなさい!金色の天使、体格は子供、二枚の羽を持つ美しい天使の姿!」

 

 

ざっくりとすると、魔術はイメージだ。

脳に描いたそれを固定化させ、自由に操り、魔術を行いやすくする。

とは言っても『天使』とは何だ。

絵本やらテレビやらで見た児童向けの天使のようなものしかイメージできない。

それも複数のイメージ画がごちゃごちゃに合わさって、もはや目の位置や頭の向きが定まらない。口だって付けても良いのか分からない。

抽象的過ぎてイメージが定まらないのだ。

 

 

(天使、テンシ、てんし、てんシ、てん子、エンジェル、イメージイメージイメージ、可愛い天使………)

  

  

天使という言葉にゲシュタルト崩壊を起こした時、小萌は薄めを開けてしまい、ある形を視界に捉えた。

 

 

(…………………体格は、こども…………イメージ……二枚の羽をつければ………それはもう、天使………?)

 

 

脳内にある、あやふやな記憶をまとめて天使を固定化させるのは無理だった。

それなら、

それならば……、

 

視覚を頼りにしてイメージを固定化させてやれば良いんじゃないだろうか。

 

 

(ん…?)

 

 

突然だった。

ちゃぶ台の上にヒラヒラとした衣が現れた。

悟空は少しずつ目線を上げていく。ぽかんと開いた口が閉じる事はない。

なぜなら、

 

 

(これって…………、オラだよな?)

 

 

小さな体、背には純白の翼、羽衣のような衣を纏い、ボサボサと特徴的に飛び跳ねた髪の天使。

絶句する悟空をまばたきせずに凝視する小萌の脳によって作られた、まごうことなき天使だ。

 

 

「インデックス……」

 

 

ふと悟空は呟いた。

この偶像極まりない天使が現れてどうなるのか、『音』が止んだ事でインデックスを見ると察した。

瞳に温もりを宿して小さな笑みを作る彼女は、自分が知るインデックスだと。

そしてインデックスはもう一度歌った。条件反射のように小萌も続けて歌うと異様な空気が霧散する。湿り気のあるこもった部屋に戻ったのだ。

 

 

「っ、シスターちゃん!」

 

 

ぐらりとインデックスの体が倒れる。受け身もとれず、畳にぶつかるところで、悟空は彼女の体を支えた。

肩を抱きしめ、背中の切り裂かれた服の隙間から恐る恐る手を入れる。

 

 

「大丈夫、気を失ってるだけだ。 ………傷もちゃんと塞がってる」

 

「……せ、成功した、という事で良いんですよ、ね?」

 

「ああ……」

 

 

ぶはあぁぁぁ!!……と溜めに溜め込んだ空気を吐き出す音が二つ同時に出た。

 

 

「お疲れさんだな、コモエ。インデックスを助けてくれてあんがとな!」

 

「いえ! 先生として当然な事をしただけですから……」

 

 

言いながら、小萌は畳に転がっている空き缶や本などを端っこに寄せて布団を敷いた。そこにインデックスを寝かせようと悟空が抱きかかえて連れて行くと、血が付いてしまうからと小萌は慌てて止める。

ガサゴソとタンスを漁り、取り出したのは上下繋がった服。薄いピンク色で、フードの部分に垂れ下がった長い耳が悟空の目についた。

 

 

「なんだそりゃあ、ウサギか? ははっ、ハラハラしたお返しの罰ゲームにゃあピッタリだ」

 

「………………先生の寝巻きですが何か?」

 

「え、……あ、そうなんか。………ウサギの恰好すれば良く眠れそうだな!」

 

「どんなフォローですか!」

 

 

もぉー、とため息混じりに吐き出す。

 

 

「さぁさぁ、そのシスターちゃんの体を拭きますから一旦外に出ていてください。上条ちゃんと戻り次第ちゃーんとお話し聞かせてもらいますからね!」

 

「そうだなぁ。実はオラ達もあんまり良く分かってねぇんだけど、話せるところは、」

 

 

話す。

そう言いかけた時にある音が遮った。

ぐぎゅるるるるる……という悟空のお腹が空腹を訴えて来たのだ。

 

 

「ありゃ。……ま、ちょうど良いや。出とく必要があんならトウマ連れて飯でも食って来よっかな」

 

「ご飯です…? だとすると完全下校時刻を過ぎているので街に向かうバスはもう出ていないですよ? 先生が運転出来れば良いのですが、このとおり手が離せないですし……」

 

「ん。飛んで行くし問題ねぇ。おめぇ達にも土産買ってくっから少しの間インデックスを頼んだぞ」

 

「……へ?……………と、ぶ…?」

 

 

疑問を残す小萌を置いて、悟空はさっさと家から出て行ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 









お待たせして申し訳ありません。
だらける日々が続き、小説を書く事が出来ませんでした。
完結はするつもりなので、お付き合いのほどをよろしくお願いします。

p.s
だらけてる最中、気分を入れ替えようと初めてオリジナル小説を書きました。
そして未熟ながら、カクヨムというサイトの電撃小説大賞というのに応募してみました。
時間がなく、短編(1万から3万字)にして。自分なりに良いものを書いていたつもりでしたが、一番最後の大事な話では時間が足らずに勢いで書きまくってしまいました……。

ここで別作品を宣伝するのはいかがなものかと思いますが、ぜひ読んでみてください。

サイトはカクヨム。
題名は、アインスカーラ。

です。
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