アラスカ基地での出来事から3日が経った頃。戦艦レベルでは先ほど届いたビデオレター、もとい援軍要請が流されていた。ヨーロッパ及びアフリカ方面軍統括司令のアーサーから届いたものだ。
『アメリカ方面にいる各局へ。現在我々はグリーンランド方面からの奪還作戦を進行している。1週間後にはバンクーバーに到達予定だ。ひいては、その奪還作戦に協力を要請したい。無理は禁物だが、可能な限り参加してくれることをねがう。以上、アーサー司令からだ』ザーザー
「なぜ司令がこれを…」
一瞬の沈黙を破ったオペレーターがサヴァード艦長に問う。アーサー司令と言ったら孤軍奮闘でおなじみと言われるほどの一匹狼だ。彼が援軍をよこせと言ってくるなど、まずありえない話だ。
「正直俺もわからん。だが、一つ言えるとするなら、おそらくアルバーダ提督が催促したのだろう。向こうとしては、約束ってのもあるし、このタイミングで司令に仲間との協力の大切さを身に沁みてほしいんだろうな」
艦長の予測に全員納得の顔をとる。二人を除いて。アーサー司令は開戦前からかなりの実力者としてその名を馳せていたが、あまりにも独断専行が激しすぎるとのことで何回か訓戒を受けていた。彼からしたらそんなに気にしてないかもしれないが、軍隊に身をおいている以上、集団行動は欠かせない。極稀に共同で作戦を展開することもあったが、依然として単独行動は続いた。
「とにかく、我々も向かわないわけにはいかない。あそこは難攻不落の要所。ここをおとせばワシントン基地にも近くなる」
そういって、みんなの顔を見渡す。ここにいるクルーだって、それぞれ事情を抱えている。故郷に家族を残した者。愛する人のために闘う者。ズォバから脱走した者。そして、成り行きでガンダムを託された者。皆それぞれ大きな物をかかえてここに集まった。立場、役割、出身。何もかも違えど、戦いを終わらすために集ったのだ。それ故の顔をみて彼はふたたび口を動かす。
「本艦はこれよりアーサー司令の軍と合流し、バンクーバー基地の攻略に入る!皆、一瞬の気を緩めるな!相手は難攻不落の要所を叩き落とした!それだけ手慣れたやつが多いことを忘れるな!」
「はっ!」
艦長の宣言にいちどうは最敬礼をとる。脱走兵のグラトル・セルビースタも、元民間人のカルシア・ノードも…。
「アウル少佐。統一国家からの通信をキャッチしました」
「…見せてくれ」
「はっ」
同じ頃、フロリダ基地では潜伏中のアウル・マハトが息を潜めるように休憩していた。ガンダムレッドスターを奪取して以降、体が少しずつ鉛だし始めた。最初は年の波がもうきたか、とあまり気にもとめなかったが、少しずつ、顕著に現れだしてきたことに焦りをも感じていた。そんなことになりながら戦っていたがついに支えきれずワシントン基地は陥落。そのままフロリダ基地に逃げ込んだ。ここがズォバ地上軍最後の砦。何としてでも死守しなければならない状況まで追い込まれた。
「少佐。まさかとは思いますが…、救援に向かわれるのですか?」
「いくら俺でも、いまは向かうことはできない。それに、」
そう言いかけて咳き込む。まだ軽いものですんでいるが、いつ悪化してもおかしくはない状況だ。
「それに、散らばった地上軍も今はこっちに向かっている。彼らには申し訳ないが、あそこですこしは時間を…」
そういってまた咳き込む。いつまで続くのかこの戦争は。日に日にこの考えが彼の中で大きくなっていく。このままじゃやられるな、と思いながら部下に命ずる。
「彼に伝えておけ。ガンダムを侮ってはならぬ、と」
「わかりました。すぐに伝えます」
そう言い残して借家に帰るアウル。彼の中に残る疑念:この戦争の意味を胸中に抱えたまま…。
「アーサー司令。ご苦労さまです」
ニューヨーク基地に集結した統一国家地上軍司令ことアーサー大将は苦虫を噛み潰した顔で自室に帰る‐穴籠りしてしまった。彼からしたらちっとも面白くない提案でもあった。
「全く、あの爺さん提督ときたらこれかよ。共同作戦の大切さはとっくの昔にわかってるっつーの!それともなんだ?俺の戦力がそんなに気に入らないのか?」
そうキレ散らかしてソファに深く腰掛ける。事実、彼が持つ戦力の大半はMS、しかも完成形とされたIMS-A01:マックスで構成されている。グラトルが駆るマックス(初期型)と異なり、スペックが向上し、ビームガンからサブ・ビームライフルにアップデートされた。その影響か、総合スペックはズォバのゾロンジを余裕で追い抜き、ひいてはガンダムネヴォに迫るほど。これを彼一人で進めたから面白くなかっただろう。小惑星基地が生産力に乏しい以上、地上でかなりの影響力をもつアーサー司令に一任したのも事実だが。
「はあ。さて、これである程度は募るかな。アメリカ大陸に残った奴らの動きは多少は気になるが…、どうも動きがきな臭い。アフリカに渡されちゃあまずいな…。仕方ないここは部隊を分けるしかねえのか…」
大将という官職に就き、部隊を指揮することが増えた今このときほど、提督をぶん殴ってやりたい、と邪な考えがうかんでいた…。
1週間後、アーサー司令率いる欧州・アフリカ大連隊は戦艦レベル、及び統一国家北アメリカ方面軍残存艦隊と合流。総勢24000もの大軍勢がバンクーバー基地に押し寄せた。まだ雪が溶けていないおかげで戦車隊は足を引っ張ったが、ガンダムとマックスの援護で次々と敵が落ちていく。すでにデトロイトも落ちた以上、このまま持久戦に持ち込むのは危険と判断され、同日に陥落。それと同時に喜望峰から予備隊がアルゼンチンに上陸。一気に挟み撃ちにかかろうとしていた。その中でカルシアは一つの疑念を持っていた。
(いくらバンクーバーが難攻不落と言っても明らかに守備隊が少なすぎる。まさか、ここを囮に別の作戦を決行しようとしてないのか…?)
この疑念が本当になるのは、20日も立たないうちに起こることを、このときはまだ、誰も知らない…。
『そうか…。しかし、まさか一日も立たずにバンクーバーを取り返すのは予想外だったな。そう思わないかね?アウルくん』
「はい。向こうは平然とビーム兵器を使ってくるのに対して、我々はMS2機で運用してやっとの段階です。このままではいつフロリダに迫ってくるか…」
同日、アウルはバンクーバー基地陥落の情報とともに本国総司令部に報告していた。
『その心配は無用だ。すでに潜入部隊が奴らの地上拠点を掴んでいる。そこにむかって降下作戦を決行すれば…』
画面が暗くて顔は見えないが、おそらく彼の顔は不敵な笑顔を浮かべているだろう。事実、成功すれば宇宙軍は孤立無援となり簡単に逆襲できる。それだけの起爆剤にもなり得る作戦でもあるのだ。一つの問題点を除いて。
「確かに、それはいい作戦かもしれません。ですが、追加の兵士の訓練は終わっていないはずです。それに、統一国家の量産機もビーム兵器搭載です。今ある戦力だけでは、失敗に終わりそうですが」
『誰もすぐやるとは言っていない。それに、今補充兵の訓練は地上軍向けだ。人に関してはクリアしている。MSに関しても、今開発中の新型機が完成している。そのテストヘッドの配備も済んだ。そっちらの調整も兼ねて、3週間後に決行だ。それまでに、ガンダムの調整も終わらせろよ』
「はっ」
通信が途絶えたモニターを見つめながら、体から沸き起こる興奮を抑えながらニヤリと笑う。
「3週間後、か。待ってろよ。もう一人のガンダム…!」
どうやら、あることを決意したようだ。
どうも、新学校にわくわくしてるもの、RX140だ。
一ヶ月以上サボったのは許してくれ。
今後は月一投稿を目標に頑張ります。
今後もよろしく頼むぜ!
ではまた!!