超天災脳筋美少女(偽) 作:TSCのミメシス
「どうしましょう……このヒマリ?とかいう子を乗っ取ってしまいました……ああ、口調までそれらしく」
暗い路地裏で、ひとりの万年雪の結晶のような美少女がこの世の終わりのごとき表情で呟く。
「しかしとんでもない美人ですね……それもエルフとは。やはりどこかの魔法使いのように1000年くらい生きていた子なのでしょうか」
水たまりに映った花の
「こうなったのはやはり……死に際に”来世は白髪の美少女エルフになりたい”などと謎の光へ願ったせい? 既にいる子を乗っ取りたいなんて願っていませんよ?」
――
プロフィール
明星ヒマリ(偽)/■■ ■■■(幽霊)
ミレニアムサイエンススクール3年生、明星ヒマリの姿を模した特異現象。
本物のような知能は無いが、彼女が持つ”全知”の学位という記号から派生した”欲しい情報や知識を知っていたことにして思い出す”能力を持つ
――
嘆きに反応したのか、彼女の頭の中に情報が流れてくる。
ヒマリという名を知ったのも先ほど同じように流れてきたからだ。
「いきなり喧嘩を売られた気がしますが……いえ、それだけ本物が素晴らしい才女なのでしょう。ともあれ、乗っ取ったわけではないのですね。ひと安心といったところでしょうか」
しかもおまけでとんでもなく便利そうな能力まで備えている。その有用性はたった今体験したとおりだ。
とはいえ本当に何でもかんでも一瞬で”思い出せる”ものではなく、説明の中で知らない単語が出てきて、それについてまた”思い出す”という面倒な連鎖を繋げなければならない場合もあるようだ。
現にミレニアムだの特異現象だの、意味不明な単語が脳内に羅列されるのは軽い頭痛を誘発する。
――
能力の制限
急激な干渉による発狂を避けるため、一度に思い出す情報は制限される
――
「なるほど。必要な不便さ、というところでしょうか。現に軽くですが負荷を感じますし……」
頭痛の原因は未知の単語によるものだけではなかったらしいと納得するように何度かうなずいたあと、現状を把握するべく全知の能力に対していくつかの質問を重ねていく。
十分ほど続けたところでいよいよ頭痛が耐え難いほどの強さになってきたためいったん打ち切って、彼女は周囲の散策を始めた。
「ふむふむ。ここがどこぞのアクションゲームのような銃社会だというのは本当の事のようですね。道行く人々が皆例外なく銃を携帯している様は……なかなかに威圧的な」
賢しげに人差し指でこめかみのあたりをトントンと叩きながら*1街道を観察する。
出歩くのは服を着た二足歩行の犬や猫、スーツ姿のロボット、そして光の輪を頭上に浮かべた女子高生。
見える位置に銃を下げて談笑している様は決して武器をちらつかせた脅迫の類でないことは両者の表情に一切の緊張感がないことからも伺える。
「あの様子からして、銃撃されても死に至ることはほぼない体質ということもおそらく本当……キヴォトスの人にとって実銃はエアガンみたいなものでしょうか? いえ、普通の人にとってエアガンは普通に怖いと思いますが……」
適当に歩いていると銃以外にも、スマホのような電子機器の存在を多く確認できた。
エルフや獣人が暮らしていると言っても、生活レベルが中世並みでは耐えられたかどうか分からなかったのでこれは嬉しい誤算だった。
そんな事を考えていると、連続した破裂音と、通行人が少しだけ驚いたように音の出どころへ振り向いたのを受けて同じように見やる。
どうやらバイクに乗ってもいないのにヘルメットを被ったままの不審者が、スマホなんて無さそうな古き時代を感じさせる超ロングスカートのセーラー服を身にまとった、所謂スケバンにむけて銃を発砲したのが音の原因だったようだ。
「おや、ちょっとした喧嘩が銃撃戦に発展する、というのも本当……今のところ全知さんの事は信用できそうですね」
――
プロフィール
意外と疑り深い
――
「そういうところですよ……さて、では……銃撃が今の私にどれだけ脅威なのか、実験してみましょう!」
おもむろにそう言ったニセ美少女エルフは懐から
――
プロフィール
は?
――
「なっ!? なんだお前!」
「喧嘩両成敗! つまり乱入は合法なのです! ……あっ この銃、弾が入っていませんね」
「いや、何しに来たんだよ」
「美少女パンチ!*2」
「オゴッ!?」
「拳銃キック!*3」
「な、んだこの理不尽な強さは……」
「やべえぞ、こいつ! 撃て! 撃てぇ!」
「ふふふ……やはり! 美少女なのでノーダメージです!」
「なんで撃たれたところから金属音がしてるんだよ!」
「来るな! 化け物ォ!」
――
プロフィール
おバカ!
――
ミレニアムガクエン……もとい、ミレニアムサイエンススクール。
「
しかし1つの都市と呼べるほどの敷地を有する規模故か、意外にも門戸は狭くなく。一般的かつ簡単な英単語が読めない者が在籍できているなどと囁かれている……あくまで噂程度ではあるが*4。
ミレニアムの1年生、小塗マキはそんな噂を囁かれる心配のほとんどない優秀な*5生徒ではあるが、いわゆる問題児のレッテルを貼られており、かつては趣味のグラフィティに向いた良さそうな壁を見つけたらスプレー缶を引っ提げて無許可で突撃したり、身体測定の記録データをハッキングしようとして結果的にとある人物の体重が100kgであるという謂れなき噂が横行したりと、手のつけられない暴れっぷりをミレニアム中に披露していた。警察の世話になったこともある。
要するに
故に、市街地の防犯カメラ映像を勝手に閲覧する、などという行為も必要とあらばやってしまうのがマキである。後で自らの所属する部活の副部長、あるいは生徒会の会計、はたまた慕っている大人あたりに怒られるだろうか、と頭の隅の方で考えつつも手と目は止めることなく映像を追っていく。
「……見つけた! やっぱり噂は本当だったんだ!」
「?」
「どうかしましたか、マキ?」
「コタマ先輩! ハレ先輩! 見てよこれ!」
「……これは。フェイク映像ではないのですよね?」
「リアルタイムだし、ほぼ間違いない! ……部長ならそれくらいできかねないけど、やる意味がないだろうし……」
「確かに……ではこれは」
「うん、ものすごい光景だね」
「「「ヒマリ部長が街道を
画面の中では見覚えのある人物が見覚えのない動きを披露していた。
街道を練り歩くなどという何の変哲もない行為が、映像の人物、元・ハッカー集団ヴェリタス部長にして現・特異現象捜査部部長の、自称超天才病弱美少女ハッカー明星ヒマリの姿で実行されれば途端に目を疑う珍事と化す。
何しろ彼女はわざわざ自称するように病弱であり、車椅子から降りているところを見かける事などそうはない。
まあそもそも基本的に身を隠しているので姿を見かける事も珍しいのだが……
「軽快にスキップまでし始めましたよ」
「ご機嫌だね……」
「なんかヘルメット団やスケバンの人にすごく礼儀正しく挨拶されてる……」
「噂なら私も聞いたことがありますが、銃撃戦に乱入して素手で全員叩きのめしたというのは本当なのかもしれませんね」
「脳がバグりそう……手も震えてきた。エナジードリンクを飲んで落ち着かないと」
「映像のせいじゃなくていつもの禁断症状だよねそれ?」
これが、後に本物の明星ヒマリから”特異現象の天敵”と称される事になる”超天災脳筋美少女(偽)”の存在を、ミレニアムの面々が最初に観測した瞬間である。
ゲーム開発部だいぼうけん! みたいな公式マンガ別陣営でも出ないかなぁとかミレニアムの二次創作書きながら思う今日このごろです。
続くかはノリで決まります。