超天災脳筋美少女(偽) 作:TSCのミメシス
ヌッ「じゃあなんで爆音とともに木っ端微塵になったんですか!」
なんてやり取りが裏で起きたとかなんとか
「さぁ、みんなでペロロちゃんを呼んでみよう! せーの!」
「「「「「ペロロちゃーん!」」」」」
「ペロロさーん」
「ペロロさんっ!」
「ペロロ様ァ!!!」
「うおっ、びっくりした……」
「す、すみません……」
「いや、悪くねえ。気合入ってんな! 楽しもうぜ!」
「はい! あっ、出ていらっしゃいましたよ!」
夜。ショーの時間を迎え、偶然隣になった別学区のグループ(のうちのひとり)のテンションに驚きつつも、これもライブイベントの醍醐味と受け入れてスケバンも己のテンションを上げていく。
「ペロ〜!」
歓声を全身で受け止めながら現れたのは無事代役に収まったペロロぬいぐるみ。
本来の役者の着ぐるみは残念ながらショーに出すには汚れや損傷がひどく、中の人もかなり消耗していたため事情を話して隠れてもらっている。
「ふふ、急な代役ですが、しっかり務まっているようですね」
壇上でスポットライトを浴びるペロロぬいぐるみに向けられる眼差しは非常に好意的なものばかり。ファンの目から見ていわゆる解釈違いな行動はとっていない、どころか完璧にこなしているらしく、先ほどペロロ様と叫んでいた少女など滂沱の涙を流しながらペンライトを振っている。
「なんという完成度……! これがミレニアムの技術力なんですね!」
「確かに、着ぐるみとは思えない。まるで本当にそういう生物として生きているみたいだ。すごいな、よその自治区まで来た甲斐があった」
「す、すごいの? あれ……こういうのよくわからないんだけど」
「そうですねぇ、着ぐるみとなるとどうしても人体の構造との乖離で、中の人の動きに連動せず“浮いて”しまう部位があるものですが……そういうのが一切ありませんね」
「??? えっと、つまり?」
「全身が余すところなく自由自在に……アズサちゃんの言う通り、本当にあの着ぐるみそのものが生きていて、自分で動いているみたい、と言うことです。先ほどエンジニア部の方を見かけましたし、案外着ぐるみではなくロボットか何かかも知れませんね」
「へぇ……」
「まあ、細かい理屈はいいじゃありませんか。見てください、ヒフミちゃんの幸せそうな顔」
「ペ゛ロ゛ロ゛さ゛ま゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
「……このままだと、水分無くなりそう」
「うふふ、ショーが終わったらお茶にしましょうか♡」
他のメンバーとの温度差はあるものの、仲の良いグループで集まり、わいわいとイベントを楽しんでいる様子だ。
(青春。良いものですね……ところで、ヒフミ……どこかで聞いたような。ああ、私の元がヒマリさんであるように、ペロロさんの元になった方がそう言う名前でしたね)
このショーへの熱狂ぶりを見ればなるほど、選ばれるわけだ、と勝手に納得しながら、アマリも今日できたばかりの友人の晴れ舞台を楽しんだ。
「お疲れ様でしたっ! ペロロさん」
「ペロぉ〜」
「満足げだなぁ、楽しかったか?」
「ペロ!」
無事にショーを乗り切り、イベントも終盤に差し掛かる中、誰もいない一角に隠れ、抜け出してきたペロロぬいぐるみを労う。
しばらく嬉しそうに跳ねていたペロロぬいぐるみだったが、徐々にその勢いは落ちていき、寂しそうに俯いてしまった。
「どうした?」
「ペロ……」
「ど、どこか痛いのですか?」
「おいアマリ、お前最初に殴った時まさかあのマシンみたいな勢いで」
「ひどい言われようですね……ちゃんと手加減はしていましたよ……ペロロさん。
「ペロ」
俯いたままのペロロに首を傾げていたスケバンとメイドさんだったが、訪れた異変に気づいて目を見開く。
「お、おい。ペロロちゃん……?」
「なんだか、光ってませんか?」
「……そのようですね」
――
対象データ
阿慈谷ヒフミ(偽)/でかペロロ
モモフレンズのペロロの等身大のぬいぐるみ。
流通量が少なく希少価値の高い逸品。
複数のオーパーツの影響を受けて特異現象と化した隠し財産の台帳により“価値あるもの”としてビルに閉じ込められ続けたことでその一部としてこちらも特異現象と化した。
トリニティ総合学園2年生、阿慈谷ヒフミの記号を模している。
・
・
・
現在は隠し財産の台帳の影響下から抜け出したことでその力を失いつつある。
――
「……ペロ」
「いっとき、お別れですね」
「ペロ」
「おいアマリ。なんか知ってんのか? お別れってなんだよ」
「……ペロロさんはあのノート同様、オーパーツまみれのビルに囚われていたからこそ存在できていたようなのです。もうじき、単なるぬいぐるみに逆戻りしてしまうことでしょう。こうなるとわかった上で、それでもこうして出かけたかった」
「マジ、かよ……」
「そんな」
狼狽えるスケバンとメイドさんの手に、ペロロぬいぐるみが白いキーホルダーを手渡す。
手のひらに収まるサイズの、ボールチェーンがついたペロロのぬいぐるみだった。
「ペロ! ペロ〜!」
「それにするのですね」
「こ、これは?」
「先ほど輪投げ等の露天で手に入れたものですね。今はただのキーホルダーですが……この後、とても大事なものに変わります。決して無くさないようにしましょう」
状況が飲み込めていないふたりを強引に引き寄せ、全員で円陣を組む。
その直後、一行を暖かな光が包み込んだ。
「この感じ……」
「ええ、アイデンティティに干渉できるほど強力な洗脳の力を利用して、私たちの中にペロロさんの……例えるなら、セーブデータのようなものを刻み込みます」
「あ? あー……つまりそうすりゃ、今は無理でも、いつかまた動けるようになるって、ことか?」
「はい」
力強く頷くアマリに、スケバンも気合いを入れて円陣を組む腕に力を込める。
「で、でも洗脳の力はあのビルの中でしか……あれ? でも今は効果が出て……」
「私たちをあのビル、先ほど渡されたキーホルダーをあのノートに見立てて状況を再現するのですよ」
「できんのかそんなこと?」
「全知さんを信じましょう♡」
「わ、わかりました! できなかったら恨みますからね、全知さんっ!」
メイドさんも同じように、強引に引っ張られてではなく自らの意思で円陣に参加する。
「ったく……右に同じだ! 頼むぞ!」
「ペロおおおおおおおおおお!」
光がいっそう強さを増すとともにアマリ達の中にたった1日分しかない、しかしおそらく一生忘れないであろうペロロぬいぐるみとの思い出が、強固な箱のようなものを形成していく。
出来上がった箱に流れ込んで来るのは、アマリ達も知らないペロロぬいぐるみのあのビルで過ごした日々の記憶と、その存在の根幹を担う情報。
それぞれの箱が満たされたところで、光が徐々に弱まっていく。
「
「……ああ、翻訳なしでもわかるようになってる。アタシも、すげえ楽しかったぜ」
「わたし達の中に、ペロロさんがいる証拠ですね……だから、さよならは言いません」
「ええ。また会いましょう、ペロロさん。いつか来る、楽しい2日目に」
「
光が収まる。その場に残されたのは、物言わぬぬいぐるみと、それを大切そうに抱える3人組。
中には泣いている者もいたが、それでも悲壮な表情ではなく、いつか来る楽しい日を心待ちにしている、そんな表情を浮かべていた。