超天災脳筋美少女(偽)   作:TSCのミメシス

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メリークリスマス!


イベントフロア3

「楽しい時間はあっという間ですね」

「だな……」

 

イベントが終わりを告げ露店やステージの後片付けに追われる係員を眺めながらアマリとスケバンはふたりで歩いていた。

 

メイドさんは抜け殻となったペロロぬいぐるみを厳重に保管すべく既にミレニアム本校舎へと帰還している。根無し草のアマリやスケバンには出来ない重要任務だ。

例のヒフミなる少女が通りかかり、ものすごい目で抜け殻を凝視していた*1が、同行していた小柄なピンク髪の仲間にやめなさいよと窘められ肩を落としつつも素直に帰っていった。

 

「……そういえばよ」

「どうしました?」

「ペロロちゃんのセーブデータ的なやつ? なんでわざわざアタシら3人で分けたんだ?」

「ふむ……いろいろありますが、一番大きい理由は”自分の事をペロロさんだと思い込んでしまう”という事態を防ぐためです。何せ洗脳の力を利用していますからね。書き込むなら3分割されて意味を失ったデータでないと人格に干渉してしまう恐れがあったのですよ。無意味なデータなら頭痛がするだけで済みます。と、全知さんが言っていました」

「え、思ったより怖……」

 

若干引きつつも、書き込みそのものに後悔は微塵もしていなさそうなスケバンを見て、やはりあのとき引き止めておいて正解だったと頷いていると、スケバンのスマホから着信音が発せられる。

 

「ん? おう、アタシだ……あ? ボラボラヘルメット団の奴らが襲撃? アマリにぶっ飛ばされてまだ懲りてねえのか……そういや、別にアマリはスケバン連合じゃなかったな。乱入さえなければ勝てたとか言ってる訳か。なるほどな」

「おっと……では今日は解散でしょうか」

「んー、そうだな。ま、そのうちバイトかなんかで会おうぜ。ペロロちゃん復活させられる目途が立ったらすぐに教えろよな!」

「もちろんです。では、また」

「おう! じゃーな!」

 

スケバンも仲間が抗争を始めたとのことで駆けていってしまった。事情が事情なのでついていくのも憚られる。

手を振って見送った後、一息ついてアマリだけで歩き始める。気づけばイベントの後片付けもほとんど終わっており辺りはすっかり静かになってしまっていた。

 

「楽しく騒いだ後の静けさというのも、悪くはありませんね……む、妙な植物がありますね。全知さんこれは……」

 

――

プロフィール

意外と寂しがり屋

――

 

「……否定はしません」

 

イベント会場跡から離れ、道端にしゃがみこんで適当な雑草を指先で弄ぶアマリの顔は今一つ晴れない。

何度か焦る場面もあったものの、今日という日は最高に楽しかったと断言できる。

しかし、せっかくできた友との早すぎる別れは、本当にこれでよかったのだろうか、という想いを抱かずにはいられなかった。

本人が分かったうえで外に出るのを望んでいたのだからアマリが悩むことでないのは百も承知だが、だからといって全く気にしないなど出来ようはずもない。

 

一気にひとりになってしまったことで、仲間たちと騒いでいた時には考えずにいたことが次々とにじり寄ってくる。これはどれほどのパンチ力があろうとも振り払えるものではない。この感覚は好きになれそうになかった。

だから全知さんの言う通り、きっと自分はひとりが嫌いな寂しがり屋なのだろう、とアマリは結論づけた。

 

 

 

「おや、あなたは確か……先生」

 

思わずため息を漏らすその背へと近づいてくる足音に振り返ってみれば、イベントの最中で少し話した巨漢が柔和な笑顔を浮かべて立っていた。

 

「先ほどまでスケバンさんやメイドさんもいたのですが、入れ違いになってしまいましたね……む、私と話してみたかった、ですか? ふふっ 構いませんよ」

 

適当なベンチに腰掛けて話を聞く体勢に入ると、先生からエナジードリンクの缶が手渡される。

 

――

対象データ

妖怪MAX 胸アツ・情熱のフルーツミックス味

プレミアム限定版で店頭には並んでおらず入手はそれなりに大変。

先生と明星ヒマリの思い出の品と言える。

振ったところで5倍おいしくなったりはしない

――

 

「ありがとうございます。ヒマリさんはこれを全力で振ってから開封し、案の定噴出した中身を頭から被ったとか。青春らしくて良いですね。もったいないのでやりませんが」

 

少しだけ驚いたような様子の先生に、アマリはいたずらが成功したように笑いかけ、宣言通り振らずに開封する。

 

「ではいただきます……それで、お話の内容はどうしましょう。私の正体? あるいは目的ですか? む、違う? では……」

 

探るように切り出したアマリへ首を横に振って見せる先生に首を傾げて返すと、無言だというのにどういう訳か相手が何を言いたいのか分かった。

これも何かの特異現象なのだろうか、などと思っても全知さんは何も言ってくれない。

 

「好きな音楽、ですか……? そうですね。先ほどのショーで使われていた曲など、とても気に入っていますよ……ふふっ、演歌だと思いましたか?」

 

正直、少し思っていた。という肯定の表情を返して頭の後ろを掻く先生と一緒に笑いあい、アマリは若干あった警戒の念を解いて雑談の構えに入った。

スケバンやメイドさんにあれだけ慕われているのだからそう悪い人間ではあるまい、という前提はあったにしても、話していると妙に落ち着く。

 

「そういえば、今日はヴェリタスの皆さんに手助けをしてもらいまして……」

「スケバンさんがあなたにお世話になったと言っていましたがどういった事件で……」

「先ほどのパンチ力計測マシンの製作者がさらに強度のある改良型を作ると息巻いていた? 耐久テストの際はぜひ、と……ふふっ、お任せを。また粉砕して見せましょう……え? ほどほどに? あ、はい……」

 

雑談はイベント会場のあった場所が完全に無人になるまで続き、気づけば良い子は寝る時間を迎えていた。

 

「もうこんな時間ですか。先生は明日のお仕事があるのでしょう? 長く引き止めてしまってすみません……全然構わない、ですか。ありがとうございます」

 

別れ際に連絡先を教えてくれた先生に手を振って適当な路地へ向かう。

またひとりになってしまったのは先ほどと同じだったが、今度は不思議と好きになれない感覚に襲われることはなかった。

 

「ああ、よい1日でしたね。さて、明日からはペロロさん復活のため、オーパーツ集めに勤しみましょう」

 

そうつぶやくと、アマリは路地裏へと歩き去っていった。

 

 

 

 

 

「おかえり先生。いきなり調査対象に話しかけたからびっくりした。今度からは事前に言ってね」

(困ったように微笑む)

「……部長と同じ顔で寂しそうにしてたから、つい? そっか。それで、話してみてどうだった?」

(にっこりと笑う)

「部長とは全然違うけど、悪い子じゃない、か……うん、先生が実際に話してそう言うなら、信じる。じゃあ、帰ろっか」

(頷く)

「部長、聞いてた? ……うん、悪意は無さそうだからとりあえず様子見でいい? ヴェリタスの監視は何故かバレるみたいだし、先生やあのメイド部の子経由で……了解」

*1
アレは先ほどのショーの……いえ、もしや幻のでかペロロ様!? なぜこんなところに……ブラックマーケットですら滅多に(以下超早口で何事か呟いていた)




これにて最初の事件はおしまいです。
次回からは本人の宣言通りペロロさん復活のため、特異現象と聞けば積極的に首を突っ込んでいくアマリの冒険が始まります。
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