超天災脳筋美少女(偽) 作:TSCのミメシス
「本当に
筐体を片手で持ち上げ、もう片方の手で下に潜り込んでしまった100円玉を回収して持ち主に返却。
シューティングゲームにてゲームオーバーになり、怒りのまま画面に実弾を撃ち込もうとした不届きな生徒を宥めようとするも収まる気配がないので絞め落とす*1。
そうして困っているお客を手助けし悪質な汚客を休憩室送りにしながら、アマリは”いちたりない”現象がまた起きないかと店内を見て回っていた。
その背後を謎の4人組がつけてくるが、他の客の邪魔になったりしないよう配慮はしている様子なので好きにさせている。
「ふふふ、完璧な尾行だね」
「と、時々生暖かい目でこっち見てるよ? 怒らせる前に帰ろう?」
「なに言ってんのさ! こんな面白そうなネタ、見逃す手はないよ! 次のゲームでは主人公と全く同じ顔の……」
「出涸らしすら残らず煎じ切られてそうだけどそのネタ」
「最近やったゲームの中でも3回見ました!」
「モデルとか、使い回せるからね……」
アマリが立ち止まったのを見て手近な筐体の影に隠れた4人組が耳を澄ますと、メダル落としゲームの詰まりを解消すべく貸し出されている鍵で筐体を開く音と共に独り言が聞こえてくる。
「同じ顔のふたりが作り出すドラマ……ふふ、ヒマリさんとの初対面のシチュエーションは考えておかないとですね」
「ホラこっちの会話に反応してるよ。絶対バレてるって」
「ううむ……なら!」
意を決したように、あるいは開き直ったようにスッと立ち上がるモモイに他3人と、ついでにアマリの視線が吸い寄せられる。
「えっ、お姉ちゃん正気? 関わり合いにならないようにって……どうせバレてはいたけど」
「大丈夫だって! ちゃんと話せば仲良くできそうな感じがするし! 勘だけど」
「根拠……」
「ほら行くよ! こんにちは〜!」
「はい、こんにちは」
ミドリの心配をよそににこやかに雑談を始めるモモイとアマリ。
アマリの側も“いちたりない”を実際に体験した者の話は聞いておきたかったため望むところだった。
雑談が長時間に渡れば店長あたりに睨まれるだろうが、普通に話す程度なら接客業務の範疇だ。
「ところで、ゲーム開発部の皆さんもこのゲームセンターで何かが“いちたりない”という現象に何度か遭遇しているかと思います。それについて調査しておりまして、何か気づいたことなどありませんか?」
「そうそう! さっきもあとちょっとのところで時間切れになっちゃって」
「あれは私達のうっかりな気がするけど」
「その辺りも含めての調査ですね。特異現象には行動や思考に干渉してくるものもありますので」
「う、うっかりを誘発してくる……ってこと?」
「怖っ! そんなのが潜んでたら対戦ゲーなんて絶対勝てないじゃん!」
「それが本当なら、確かに何とかしないとこのゲーセンがつぶれかねない……」
「緊急討伐クエスト開始です!」
「まずは話し合いで解決できるかどうかの確認が必要ですけどね」
チラリと腰のペロロキーホルダーを見て、話せばわかる相手を初手で殴り飛ばしてしまったことを思い出し苦笑するアマリを不思議そうに眺める勇者一行改めゲーム開発部の4人だったが、言っていること自体には納得して頷く。
ナチュラルに調査に参加する姿勢を見せるゲーム開発部に、そういえば新作のネタに困っているような会話をしていたなと思い出しつつ見回りを再開する。
「うー、あとひとつなのに、入ってないのコレ?」
「何かお困りですか?」
「あ、店員さん」
クレーンゲームの中をしきりに覗き込む一般生徒のところへ行ってみれば、あとひとつで景品のぬいぐるみをコンプリートできるが、筐体内に積み上げられたぬいぐるみの山の中には見当たらない、とのことだった。
「少々お待ちを……ふむ、こちらでしょうか」
「あー、それです! よかった、埋もれてただけだった!」
「では上の方に乗せておきますね、どうぞごゆっくり」
「お、獲りやすそうな位置! ありがとうございまーす! よし獲るぞー!」
意気揚々と筐体に100円玉を投入する一般生徒に一礼してその場を離れる。
「このように“いちたりない”に遭遇次第、可能なら解消して反応をみているところです」
「なるほどね〜、誰かが意図的にやってるなら邪魔してれば飛び出してくるかもだね」
「ええ、今のところその兆候はありませんが」
「そもそも“いちたりない”ってあるあるだから、単なる偶然も混じってそう」
「そうですねぇ……」
話し合いつつ周囲を見渡すも、今のところは特に問題はなさそうだ。
「せめて“いちたりない”の発生する瞬間に立ち会えれば何かの影響を受けているのかどうかもわかるのですが……」
「アマリは分析のスキルを持っているのですか?」
「ええ、大抵のものは見ればヒントくらいは分かりますよ」
「格闘家と賢者の複合ジョブですね! 上級者です!」
「見ただけで? ホントに?」
「やっぱりヒマリ先輩の姉妹とかなのかな?」
「どうなんだろう……」
アリス以外は半信半疑の様子ではあったが見れば何かがわかるのであれば、とゲーム開発部がアマリの目の前でゲームをやって“いちたりない”現象が起こるかどうかを検証することとなった。
「まずはシューティングゲーム! 弾があと1発足りないって事態が起こりやすいジャンルだよね!」
(先ほども熱中しすぎている方がいましたが、カジュアルに実銃を発砲する世界でも人気は出るんですね、シューティングゲーム。お咎めなしで撃ち放題と考えれば需要はあるということでしょうか)
「ではプレイ開始です!」
アマリが本来の目的とは関係ないことを思案している間に100円玉が筐体に投入され、画面内に溢れかえったゾンビへとアリスが銃型コントローラーを向け正確に撃ち抜いていく。
「ん? なんか狙いにくいなぁ?」
隣ではモモイが景気良く連射しており、狙いこそ正確ではないがショットガンという選択と、勢いからくる単純な手数にてアリスとそう変わらない撃破数を叩き出している。
「とはいえしっかり撃破できていますね……む?」
――
対象データ
才羽モモイ
ミレニアムサイエンススクール1年生。
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・
■■■■■■の影響を受けており銃撃の狙いが1歩分横にずれる状態
――
「おっと、本当にかかりましたね。姿は……見えませんか」
「よーし、なんとかクリアー!」
「おめでとうございます。お見事です」
「で、なにか分かった? 弾が足りないとかは特になかったけど……」
銃型コントローラーをホルダーに戻して筐体から離れたモモイを観察してみるが、プレイ中に見えていた記述はもう消えており、ゲームの方にも何らかの影響が出ている様子はない。
「こうまで痕跡を残さないと読みようがありませんね。これまた厄介な……実在は確認できたので1歩前進と思っておきましょうか」
「? ってことは、
「ええ、先ほど狙いにくいと溢していましたね。照準を1歩分ずらされていたようです。ショットガンでなければスコアは0だったかもしれません」
「なにそれ! なんでそんなことするのさ!」
「姿を現さない以上、不明としか」
「むぅ、やっぱりあのコインの時も……うぐぐ、許せない!」
正体はいまだ不明ながら実在は確信できた。次はどうにかしてその姿を捉えることが小目標となるだろうか。
アマリは憤慨するモモイを宥めつつ、方法について考えを巡らせ始めた。