超天災脳筋美少女(偽)   作:TSCのミメシス

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いちたりない3

営業終了時間を迎え、明日また来ると言い残してゲーム開発部が奥歯を噛みしめるモモイを引きずり帰還した後。

アマリは客のいなくなった店内を見て回りながら今回の特異現象の痕跡を探っていた。

モモイを通して存在していることは確認できた。後はたどり着くのみ。しかしその手掛かりがどうにも見つからない。

 

「おそらく人の”行動”に干渉している……故にその行動が終わってしまえば痕跡は干渉の対象ごと消えて残らない……といったところでしょうか」

 

口に出してみた仮説が正しければ、やはり今日見てきた数々のいちたりないの中には単なる偶然も多数混じっているということで、余計に発見が困難なものとなる。

頭痛を堪え、小さく唸りつつ手当たり次第に全知さんで読みながら周囲を見渡していると、ひとりの店員に目が留まる。

 

――

対象データ

■■■■■■の影響を受けており階段の段数を1段少なく認識している

――

 

「む、あれは放置すると危険ですね」

 

資材の詰まった箱を持って2階から降りてくる他の店員の元へさりげなく近づく。

 

「うわっ!」

 

階段を降りきったと勘違いした店員が空中へと1歩踏み出してバランスを崩す。

アマリはすぐさま支えようと駆け寄るが、その足が一瞬だけ動きを鈍らせた。

 

――

プロフィール

あと1歩届かない

――

 

「む」

 

伸ばした手が空を切り、店員の手から離れた箱の中身がぶちまけられた。

 

「やってくれますね……大丈夫ですか? すみません、間に合いませんでした」

「バイトちゃんが謝ることじゃないって~、私のドジだし」

 

店員は怪我をした様子もなくあっけらかんと笑っている。次いで、ほっと息をつくアマリに申し訳なさそうな顔で手を合わせた。

 

「……で、ごめんけど、ぶちまけちゃったやつ拾うの手伝ってくれない?」

「もちろんです」

「ありがとう~!」

 

見れば箱には貸出機に補充するためのメダルなども収められていたようでかなり広範囲に散らばってしまっている。ひとりで拾いなおしていては相当に時間がかかるだろう。

 

「あ~、でも勝負は負けかな、これは」

「勝負、ですか?」

「ああうん。同僚とどっちが早く仕事終わらせるか賭けててね。負けた方が明日のお昼奢るの」

「それは災難でしたね」

「あはは、焦っちゃったなぁ」

 

苦笑いする店員と並んで箱にメダルを詰めつつ、残りを探すフリをして周囲を見渡す。

 

(姿は……やはり見せませんね。とはいえ筐体が並んでいて隠れられる場所はいくらでもありますが)

 

やがて中身をすべて箱に詰めなおした店員がもう一度礼を言って歩き去るのに手を振り、一通り店内を見て回り異常がこれ以上起きないことを確認して、アマリは今日の業務を終えた。

 

 

 

 

「……こんばんは、メイドさんですか? はい。実は今日の業務中にメイド部の方々をお見掛けしまして」

 

ゲームセンターを出た後、ミレニアムの寮かどこかで過ごしているであろうメイドさんに電話をかける。

 

「あ、部長なんですね……それで、なにか仰っていませんでしたか? 違和感とか……ふむ、いつもと比べて()()()()()、と。なるほどそれで楽しくなってあれだけ熱中を……負けが込んでも結局熱中はする? あ、はい」

 

その後いくらか雑談を交わし電話を切る。

 

「妙に勝てた……対戦相手がモモイさんのような妨害を受けていた? 先ほどの店員さんも勝負は自分の負けと……他にも対戦ゲームで……目的は勝敗への干渉? そうだとしてどちらにつくのか、条件でもあるのか……」

 

路地裏をゆっくり進みながら明日検証しようと考えをまとめていくアマリの背後に複数人の影が忍び寄ってきていた。

本人たちは気づかれていないつもりなのだろうが、時折隠しきれていない足音がアマリの耳にしっかり届いているし、窓の反射によって視界に入ってしまっており、人数まで完全に把握されていた。

 

「6人。ああ、休憩室でお休みになっておられたお客様でしたか」

「バレてたか。まあいい」

「さっきはよくもやってくれたな!」

 

振り返った先にいたのはゲームセンターで暴れ出しアマリに制圧された汚客の面々。

休憩室内で知り合い、結託し、キヴォトスらしく暴力には暴力で返しに来たのだろう。全員が銃の安全装置を外している。

それを見たアマリはニッコリと笑い、不良たちを不気味な緊張感で包んだ。

 

「あなた方にもインタビューと行きましょう。まとめてかかってらっしゃいな♡」

「ほざけぇ!」

「6人に勝てるわけないだろ!!」

「かかれーっ!」

「ウッキー! 今年は申年!」

「……巳年じゃなかった?」

「言ってる場合か! 撃てぇ!」

 

 

 

数分後。

 

「ふむ。皆さんも妙な違和感と共に負けが込んだ結果暴れてしまった、と」

「「「「「「ハイ! ゴメンナサイ!」」」」」」

 

いくら撃っても怯みすらせずに悠々と近づいてきて、それぞれ腹パンや絞め落としなど、わざわざゲームセンターの時と同じ方法で制圧してくるアマリの姿が完全にトラウマとして刻まれ、美少女リアリティショックを起こした襲撃者の面々は実に協力的な証言者へとクラスチェンジした。

 

「やはりいつもより勝てるか全く勝てないかの2択。犯人がどちらに肩入れするかの基準は明確になっている? ……シューティングゲームのあなた」

「ハイ! ゴメンナサイ!」

「アレは1人用ではありますが、誰かとスコアを競うなどしていましたか?」

「アッハイ! ランキング上位狙ってました! あと1点で上の奴に勝てるところでした!」

「となるとやはり、全員何らかの勝敗に関わるところで妨害を受けているようですね。モモイさんもアリスさんや他の面々と日夜競っているでしょうし」

 

考え出したアマリを不思議そうに見つめる証言者たちの様子に気づくと、できるだけ怖がらせないようにそっと立ち上がらせてやる。

 

「ご協力ありがとうございます。ではこれで解散ということで」

「「「「「「ハイ! オタッシャデー!」」」」」」

 

一糸乱れぬ動きで6方向に散りながら走り去った証言者たちに手を振り見送る。

 

「あちらの目的はひとまずこの仮説をもとに探ってみましょう。あとはどこへどうやって隠れているか……明日は忙しくなりそうですね」

 

なにかトラブルがない限りはゲーム開発部が明日も来て手伝ってくれるという。

仮説をもとに様々な組み合わせで”勝負”をしてもらおうか、と検証に使えそうなゲームは何がおいてあったかと思案しながら、アマリはその場から歩き去った。




???「一応断っておくと小生は一切関係ありませんぞ!!!」
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