超天災脳筋美少女(偽) 作:TSCのミメシス
「よーし、私の勝ち!」
「お見事です」
「ふふふ、戦闘では勝てる気がしないけど、ゲームなら負ける気がしないね!」
「すぐ調子に乗る」
例の世界を滅ぼしうる小動物が本物の算術妖怪に連れて行かれてから数日。バイトもないため様子を見にミレニアム本校舎を訪れたアマリを待ち構えていたのは訪問の口実として協力してくれたゲーム開発部による対戦大会であった。
当然、遠隔でヴェリタスやセミナー、特異現象捜査部。さらには
1P WIN! と表示された画面の前で両手を天に突き上げる*1モモイを半眼になっで見つめるミドリの隣で、絶賛連敗中のアマリは特に堪えた様子もなく微笑んでいる。
「お姉ちゃん、多分手加減されてるよ」
「なぬっ」
「は、反応自体は間に合ってるみたいなんだよね……でも時々、コマンド入力の直前で急に手が止まったり、妙に遅くなったりしてるみたい……遠慮? とも違うみたいだし、なんだろう……」
「ちょっとアマリ! やるなら本気でやってもらわないと! 接待で勝ってもうれしくないよ!?」
「ああいえ、
「では、何故ですか?」
「本気でやると恐らく、どこかで力加減を間違えてスティックが折れたりボタンが陥没したり……」
「ごめんなさい手加減して下さい地味に貴重なんですこんな骨董品……!*2」
鬼気迫る様子で両腕にしがみついてくる面々をどう宥めたものかと思考を巡らせていると、丁度よくと言うべきかドアがノックされ、対応のためモモイが立ち上がり一旦事態は収まった。
「はいはーい、何か用……あっ、先生とユウカ! ……と、ちっちゃいユウカ!」
「ぬ」
開かれたドアの枠に収まりきらないためしゃがみ込んだ先生の頭の上。
手を挙げて挨拶を返す例の小動物を、アマリも含めて警戒する様子もなく迎え入れる。
本物の早瀬ユウカに捕えられ、取り調べという名の優しい事情聴取を受け、能力はともかく性格面ではさほど危険性がないと判断されたのだ。
ゲームセンターで引き起こしていた事態もただ“誰が勝つか、という予想が全部当たって楽しくなっていた”だけで、そこに悪意はなかった。
“予想”を当てるために能力が転ばせた店員などのことはむしろ心配すらしていたくらいだ。その際の予想は“きっと大丈夫”だったようで、後日調べたところ件の店員は無傷を通り越して妙に調子が良くなったとのこと。
ちなみにモモイが滑って転んだ件に関してはそもそも知らなかったようで、完全に単なる不注意であったことが判明した。
アマリ達に発見された際に逃げ出したのは“予想が初めて外れて動揺していたところにこちらを指差して何事か騒いでいる集団に出くわし怖くなった”から。しかもそのうちの1人が後日、奇怪な縄まで持ち出して追いかけてくる始末。
謎の鳴き声しか発することができないため、コミュニケーションは難航するかと思われたが、そこはやはり規格外の能力。
“これで伝わるはず”という本人の予想と“何か伝えようとしている”というユウカの認識とが噛み合い、何を言っているかは分からないが何が言いたいのかは分かるという、特殊なコミュニケーション方法を確立。
それを介した話し合いの結果、能力の暴走を抑えるためユウカ同伴ではあるがこうしてミレニアム校舎内を堂々と出歩くことを許されていた。
「……さて、アマリさんだったかしら」
「はい。何かご用で?」
「私からも聞きたいことや言いたいことがいくつもありますが……まずはこの子から。ほら、シュウカ」
「ぬ……」
「そう名付けたのですね……それで、どうしましたか、シュウカさん?」
ゲームセンターでは散々怖がらせたので、できるだけ優しく問いかけると、小動物改めシュウカは緊張した様子で先生の頭の上から降りてきて、深々と頭を下げてきた。
「何を……」
「
「! ……ええ、気にしなくても大丈夫ですよ。これでも頑丈なのです。ほら、もう傷ひとつありません」
「
「こちらこそ、あの時は怖がらせてしまってすみません」
「
性格面での危険性はさほどでもない、と事前に聞いてはいたが予想以上に“良い子”らしい……あるいはすでに
どちらにせよ、ユウカさえついていればもうキヴォトス滅亡の心配をする必要はないだろう。
「せっかく来たんです。シュウカさんもゲームで遊んでいきませんか? ……ああ、もちろんモモイさん達が良ければですが」
「
「当然! フフフ……初心者だからって手加減はしないよ」
「それフラグ……」
開始数分で「死んだー!」と叫んで突っ伏すモモイを横目に、アマリは先生とユウカの近くに移動する。
「さて、お待たせしました」
「いえ……では早速。先生はあえて訊いていないようですが、色々と質問させてもらいますね」
「何なりと」
誕生してからこれまでの経緯を軽く説明する。現時点での目的である
火薬と同じ倉庫に保管されそうになって珍しく本気でキレていたメイド部見習いの姿を見て大切な物なんだろうというのを察し、そういうトラブルを避けるためすでにある程度選定はしていたが。
見返りというわけではないが、アマリの方もいわゆる特異現象への対処には喜んで手を貸すと約束し、2人は連絡先を交換した。
その他、使うわけにもいかずただ持っていた明星ヒマリの学生証(複製)を引き渡すなどしていると、ゲームを遊び終えたシュウカがとてとてとユウカの元へ帰ってくる。
その後ろには満足げなゲーム開発部の面々。
「それにしても、アレだね」
「なによ?」
「シュウカとユウカ。そうして並んでると親子連れみたい」
「私16なんだけど。せめて姉妹って……」
「そうかな? ああやってシュウカを頭に乗っけてると先生、パパみたいだし。ユウカママだ。ユウカママ」
「先生を巻き込まないの」
「え~? お似合いだと思うけどなぁ~」
ユウカが少しながら照れているのを感知したモモイはからかうチャンスだとばかりに食い下がるが、その肩にポンと手を置いて制止する者がひとり。
「そういう冗談はダメだよお姉ちゃん」
「先生も困ってるから。ね?」
「いや、でも」
「ね?」
肩に置かれた手に力がこもる。
今ならアリスと腕相撲をしても1秒くらいは保つ*3のではないかというほどの、普段からは考えられない力だった。
「はあ……もう帰るわよ?」
「……ぬ」
「シュウカ?」
手を取ろうとするユウカに少しだけ待って欲しいとジェスチャーしたあとアマリのところに駆け寄ってきたシュウカは満面の笑みを向けて、
「
と告げた。
「ふふっ ありがとうございます。ええ、絶対に目覚めさせて見せます」
ユウカとの話が聞こえていたらしい。本当に良い子だ。と、シュウカと同じようににっこりと微笑み手を振ってアマリはミレニアム校舎を後にした。
「私よ。あら、コユキ? どうしたの……はぁ? 巨大なロボがでっかい怪物と戦ってる? 世界の危機じゃあるまいし、平時にそんな馬鹿な話が
「ぬ?*4」
性格がどうであってもやはりその能力は凄まじい。ちょっとした激励のつもりで言ったことですらこの始末だ。
その後、自分以外の特異現象に遭遇する頻度が目に見えて上がったようだが、おそらく気のせいではないのだろうな、とアマリはどこからか湧いて襲い掛かってきた、ガスマスクをつけた青白く光るシスター*5を殴り飛ばしながら思った。
今回の事件も無事終わりです。
オーパーツは手に入りませんでしたがチャレンジの機会は増えたしミレニアムとの本格的な繋がりもできたのでプラスです! 多分。