超天災脳筋美少女(偽) 作:TSCのミメシス
「到着しましたっ! この辺りのはずです……けど、見事に路地裏ですね」
「スケバンさんは現時点では指名手配されていないので、大通りで堂々と会えるはずなのですが……」
ミレニアム自治区某所。仲間のスケバンから呼び出しを受けて参じたアマリとメイドさんは顔を見合わせる。
指定された場所を見ればメイドさんの言う通りの路地裏。それも特に人通りの少ない、それこそわざわざここに狙いを定めて入ろうとしなければ通り道にもされないような場所だった。
防犯カメラの類の死角になっているのもあり内緒話にはぴったりと言えるかも知れないが、どちらかといえばターゲットを呼び出して待ち伏せし、囲んで棒で叩くのに適していると言うべき場所だろう。
「ふむ。スケバンさんの名を騙っての待ち伏せだった場合はお守りしますので、離れないでくださいね」
「自分の身は自分で守れます。戦闘になったら、背中はお任せを!」
「第一印象の数十倍は頼もしいですね」
奇怪な特異現象が相手ならともかく、単なる不良が見習いとはいえメイド部に敵うはずも無し。
ふんすっ! と気合を入れているその姿を横目に、アマリは路地裏の影になっている所へ隠れている人物に呼びかけた。
「それで、そこに隠れてらっしゃるのは私たちの知っているスケバンさんですか? ……む、メッセージアプリに通知が」
返事の代わりとばかりに振動するスマホをチラリと確認するとスケバンのアカウントからの”そうだけど、驚くなよ?”というメッセ―ジ。
「? やはりスケバンさん……おっと」
「あ、あれ?」
首を傾げるアマリとメイドさんの前に姿を現した人物は、しかし2人の知るスケバンと比べて随分と小柄で、その服装は漢字の刻まれた厳つい改造服とは似ても似つかない、子供向けアニメのヒロインのようなフリフリのドレス。
「驚くなっつっても無理だよな、まあ……」
完全にフリーズしたメイドさんを前に、頭の後ろを掻いて目をそらす女児。
姿も声も違うが、細かな挙動、雰囲気は確かにアマリの知るスケバンの物であり、何やら奇怪な現象に巻き込まれたことを予感させられる。
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対象データ
スケバン(アイドル)
■■■■■■の影響を受けて存在が変質した状態。
アプリゲーム”カツプリ・シャイニングドリーム”にて本人が使用していたマイキャラクターと同一の姿
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情報
カツプリ・シャイニングドリーム
女児向けアーケードゲーム”カツプリ”のスマホアプリ版。
シューズ・トップス・ボトムス・アクセの4枚、あるいはシューズ・ワンピ・アクセの3枚の衣装カードを組み合わせ作り上げた自分だけのコーデで歌って踊り、トップアイドルを目指していくという内容。
使用するアイドルはアニメ作品に登場するキャラクターの他、モンタージュのように顔のパーツを組み合わせて作る自分だけのマイキャラクターが選択可能
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「本人のようですね。しかし……ふむ。アイドルゲームですか。日本でも流行ってましたね、アイカツとかプリパラとか。女児にも、なぜか成人男性の間でも」
「どこだよ日本……しかし一目見ただけでそこまでわかるのか。相変わらずやべえな全知さん……まあアタシだって証明が要らねえのは助かるわ」
「確かに、普通は別人だと思いますよね。身長まで縮んでは」
「おう。高そうな服着たガキってんで、仲間に誘拐されかけたわ。ハハッ」
「……心中お察しします」
スケバンはあっけらかんと言っているように見せているが、目尻に涙の乾いた跡があるのをアマリは見逃さなかった。
信頼していた仲間から獲物として追われるのは相当堪えたらしく、またアマリの対応を受けてようやく緊張がいくらか和らいだ様子だ。
「す、スケバンさん……?」
「おう」
そこへフリーズから立ち直ったメイドさんがゆっくりと歩み寄りながら確かめるように問いかける。
返事を聞くや否や、パシャリとスマホのカメラアプリの音が鳴り響いた。
「お写真、よろしいでしょうか!」
「撮る前に訊こうな? いいけどよ……」
「ありがとうございますっ! ところでどういった経緯でそのようなキュートなお姿に?」
ひっきりなしに連発されるシャッター音と共に投げかけられる興奮気味な質問はさながらインタビューの様だ、などと益体もないことを考えながらスケバンの回答に耳を傾ける。
「あー、アマリがさっき言った通りコレはゲームのマイキャラでな。確かゲームやって暇つぶしてたら急に意識が……ほら、この間ペロロちゃんに洗脳されたときの感じ。アレに似てたな」
「それで、気づけばそのお姿に……スケバン連合の縄張りの真ん中で」
「そーいうこと……まあそんなわけで、急すぎて自分でも何が何だかよくわかってねえんだ」
「直前には何もなしと……では、それよりも前に何か変わったことはありませんでしたか?」
「もっと前かぁ……あ、巨大なロボがでっかい怪物と戦ってるって騒いでる仲間がいたな*1。見に行ったら何もなかったが。疲れてんだよってさんざん弄り倒されてたな」
「巨大なロボ」
「でっかい怪物」
思わずオウム返しにするふたりに一応頷いて見せながらも、スケバン自身それを目撃したわけではないので懐疑的だ。少なくともこの件と関係があるとは思っていない様子だった。
「ふむ。一応、その場所に案内していただいても?」
「? まあ、構わねえけど」
スケバンがこの現象に見舞われたきっかけ等は不明のままだが、何者かの干渉を受けた結果であることは全知さんにより判明している。
であれば直近で現れた謎の存在を調べないわけにもいかない。スケバンの仲間やヘルメット団に出くわさないよう注意しつつも一行はそのロボと怪物が目撃された地点へと移動を始めた。
「ここだ……まあ、
「……そうですね」
「なにか痕跡でもあればと思っていましたが……まさか
「覚悟しろ魔王の手先め! この私がいる限り、キヴォトスの平和は渡さない! どこだ! どこに隠れている!?」
「キヴォトスに平和なんてあんのかね……?」
「それなりにはあるはずですよ、ええ……」
――
対象データ
天童アリス(偽)/パワーローダーAI_15
全長10mの巨大人型戦闘ロボ。
口頭命令で制御する方式の無人パワーローダ―のAIが早瀬ユウカ(偽)の力の影響を受けて自我を獲得し特異現象と化した。
自我獲得の過程でネットを通し多数のアニメ、ゲーム作品に触れており己の目指す姿を「世界を守る勇者」と定めた。
名もなき神々の王女、ALー1Sの記号を有しており周囲の物質を自己改造のための資源として利用できる能力を持つ。
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その存在が早瀬ユウカの予測と矛盾したため活動開始早々に別次元へ幽閉されていたが、当の早瀬ユウカが複数の目撃証言から認識を改めたことにより帰還が可能となった
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アマリ達の視線の先にはフィギュアにでもなったら先生が喜びそうなデザインの人型ロボがファイティングポーズで周囲を見渡していた。
「……ムゥ、姿を現さないな……帰還できたのは私だけなのか?」
「失礼、少々よろしいでしょうか」
「お前アレに声かけられるのすげえな」
言動や読んだ情報からすると善の存在たろうとしているようなので、探している相手……目撃者曰くでっかい怪物とやらが現れない限りひとまず問答無用で暴れまわることは無さそうだと判断し、アマリは話を聞いてみるべく歩み寄っていく。
「ン? ああ、村人よ、なにか依頼だろうか? 私でよければ喜んで力になろう!」
「む、村人……?」
「ゲーム脳だな……いや、脳あるのか? AI?」
スケバンとメイドさんはしばらく顔を見合わせていたが、目線をできる限り合わせるためしゃがみこんだ*2ロボットとアマリが話し出すのを見て慌てて後を追った。