超天災脳筋美少女(偽) 作:TSCのミメシス
「……また出ましたか」
――
対象データ
■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■
――
「捕まえますっ!」
「もう怖くねえぞかかって来いコラぁ!」
スケバンが目を覚ました後で3階の掃除を済ませ、一行は2階まで下りてきていた。
3階でもオーパーツの破片を核にしたなにかが現れたが、種が分かっていればもはや対処はそう難しくなく、アマリに核を握りつぶされ。
2階では3体同時に現れたが、もはや作業的にメイドさんが用意していた虫捕り網*1をぶんぶん振り回し核をひとまとめにし、4階で気絶させられた腹いせとばかりにスケバンが容赦なく踏み砕いて消滅させた。
ペロロぬいぐるみも自分が念動力を使うまでもないとわかっており、呑気に手近な窓を磨いている。
「……しかし、何なのでしょうね、これら。相変わらず一切読めませんし」
「わけわからな過ぎて、こんなの出没するなら普通の奴はそりゃ出ていくよな。幻影だって知らないとめちゃくちゃ怖ぇし」
「ペロロさんは、昨日までで目撃なさったことはないんですか?」
「ペロ」
「ないそうです」
「少なくともあれが出るようになってからは一番長く居るだろうになぁ……襲う、っていうか、驚かす相手は選んでんのか?」
「ふむ。特定の方を驚かす……私達も入っているのですよね。目的は……すぐに思いつくのはペロロさんとは逆に、出て行ってほしい、でしょうか?」
「そ、それが自然だと思います……あれ? でしたら……ペロロさんはこのビルから出られない……あの方たちがペロロさんの前に現れなかったのは……出すつもりがないから、でしょうか?」
「ペロロちゃん閉じ込めてる犯人がアイツラけしかけてきてるってことか?」
「は、はい……同一の方によるものの可能性はあると思います」
話しながらでも掃除は進んでいき、あっという間に2階での作業も終わりを告げた。
階段を使って1階まで下りていく。
「……あれ?」
「どうしましたか? ……おや」
「……おいおい」
1階廊下の様子を見て立ち止まり声を上げたメイドさんの視線を追ってみてアマリとスケバンも納得したように警戒しつつ立ち止まる。
そこには先ほど外へ運び出したはずの品々が整列していた。
特に先頭の毛羽立ったソファは見間違えようもない。
「一応聞くが、ペロロちゃんじゃねえよな?」
「ペロ……」
「ビル外には念動力も弱まってろくに使えないそうです」
「だよなぁ……」
であれば、それをやったのは当然……
「また出やがったな! もう怖くねえって言ってんだろオラぁ!」
スケバンが吠えるようにソファ近くのなにかに向けてずかずかと歩み寄っていくのを一瞬だけ眺めたあと、すぐにハッとした様子でメイドさんが声を上げた。
「いけませんスケバンさん! ものを運び込めたということは……!」
「お?」
忠告は一瞬だけ遅かったようで、スケバンから返ってきたのは、腕をつかまれて困惑する声だった。
「ほわぁ!?」
「美少女パンチ!」
確かな手ごたえとともにスケバンを離して後ろへ飛ばされるなにかを注意深く観察する。
あわよくば核を抜き取ってしまおうと思っていたが、存外に硬く、拳は表面で阻まれてしまった。
――
対象データ
■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■
――
「読めないのは他と変わらず……しかし今回も実体がないものとばかり……油断しました」
「ペロぉ!」
ペロロぬいぐるみが鳴き声とともに念動力を発動させると、なにかの動きは当然多少は鈍ったが、アマリが窓を開けた時のように少しずつ念動力を押し返して再び近寄ってきていた。
しかし隙はできたのでスケバンを助け起こして少し下がらせ、その後改めてなにかを観察する。
――
対象データ
・完全な髪伸び人形
高純度のヴォルフスエック鋼鉄製の箱に収められている
阿慈谷ヒフミ(偽)の念動力の影響を受けている
・
・
・
■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■
――
――
情報
オーパーツには状態により等級が定められている。
完全な髪伸び人形および高純度のヴォルフスエック鋼鉄は現在の基準で最高品質のもの
――
「なるほど……今までの幻影は粗悪品だった、と」
「粗悪……? アタシらがいくら驚かしても逃げないから真打ちが来ちまったって感じか……?」
「かもしれませんね。あの品々を回収していた、というのもあるのでしょうが」
「ぺ、ぺロぉ~……」
「む、すみませんペロロさん。ふたりとも、ペロロさんが限界です。すぐに念動力が切れてもう一度襲ってきますよ」
アマリと腕相撲が成立するパワーの念動力とはいえ、窓のロックハンドル程度ならともかくそれなりの大きさがある目の前のなにかを丸ごと押しとどめておくのは無理があるようで、なにかの動きは徐々に加速してきている。
ペロロぬいぐるみの方がアマリ達相手に力を使いすぎた、というのもあるだろう。
言葉を聞いたスケバンは慌てて、メイドさんは意外にも冷静に素早く銃を構え、戦闘態勢に入った*2。
「やったらぁ!」
「見ててくださいネル先輩……! ここにはいらっしゃいませんけど」
「ペロー!」
「では、行きましょう」
アタッカー兼タンクは当然のようにアマリが務める。
念動力を打ち破って再びスケバンの方へ突っ込もうとするなにかの前にさっと割って入り、両側から掴んで力ずくで進行を止める。
またしても動きを妨げられたなにかは邪魔をするなと言わんばかりに腕のようなものを体の真ん中から飛び出させ、そのボディを打ち据えた。
ガキン、と金属のような音を立ててはじかれる腕を痛そうにひっこめると、なにかは突撃をいったん諦めて後ろに跳び距離をとる。
「あのバケモンは何考えてんのかわからねえけど、今この瞬間だけはわかる。間違いなく”なんて硬い腹筋してやがるんだこの女”だ」
「すごいですねっ! アマリさん」
「すごいで済ますお前も相当だわ。やっぱマジの戦闘集団っぽいな、メイド部。見習いでコレ……おっと、せっかく離れたんだ、撃つぞ!」
「はい!」
2方向から浴びせられる銃弾を、なにかは体の末端を盾、あるいは壁のような形に変形させて防ぐ。
「銃弾は防げますか……む、盾を作った分、体積がそちらに寄って……今なら本体の防御力も下がっているのでは?」
試してみましょう、とつぶやき、アマリは先ほどのボディブローのお返しとばかりに核がありそうな体の中心部分へ拳を叩き込んだが、すぐに盾がもう1枚増えるという結果に終わった。
「……では、これならどうでしょう?」
正面に出てきた盾が引っ込む前にアマリはなにかを飛び越えて後ろに回り、キヴォトス外の人間の目には拳が増えて見えるほどの速度でラッシュを放った。
なにかはほとんど反射的に動いているのか、拳の一発一発に対して律儀に盾を展開していき、その体積を分散させていく。
「……アレは。スケバンさんっ! 一点集中で盾の突破を狙うのではなく、弾を分散させていろんなところに当てましょう!」
「なるほど、もっと盾出させて本体小さくすんだな、流石だメイド部!」
すぐ意図に気づいたメイドさんの指示でふたりの銃撃もばらけた位置を狙い始め、なにかの姿が大量の盾に囲まれた人の頭より一回り大きい球体、といった有様にまで縮小してしまう。
当然、この球体を狙えば役目を終えた盾がすぐに引っ込んで防御されるだろう。しかしそうさせない手段がアマリ一行にはあった。
「無理をさせて申し訳ありませんが……ペロロさん、お願いします!」
「ペロおぉ~!」
箒を魔法の杖かなにかのように掲げたペロロぬいぐるみの念動力によってなにかの姿が今の形で固定された。むろん先ほどよりも早く、数秒で元に戻ってしまうだろうが、
祈るように両手を組んで構える。
「勇者王になった気分です。呪文は忘れましたが」
――
最新情報
ゲム・ギル・ガン・ゴー・グフォ・ウィータ
ウィータを忘れると危険だが、勇気で補うことが可能
――
「本当にすごいですね全知さん。ではそのように!」
アマリが組んだ両手を力の限りなにかの中心部に叩きつけて侵入し、中にあったヴォルフスエック鋼鉄製の箱を引っ掴んだところで念動力の効果が切れ、盾として分散していた部分が一斉にアマリへと殺到する。
何としても核からその手を退けさせようと棘や最初に幻影で見せたようにワニのような大口に変化してアマリを攻撃し続けるが、すべて金属音とともに阻まれて有効打にならない。
やがてヴォルフスエック鋼鉄が悲鳴を上げるように軋む音とともに少しずつ核が引きずりだされていき……
「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオーッ!!!*3」
やがてなにかの核であった箱は完全に引きずりだされ、中の人形ごと圧縮されてオーパーツの体を成さないスクラップの球と化す*4。
核を失い霧散するなにかを背に、アマリはその球を高く掲げて他3名からの喝采を浴びた。