超天災脳筋美少女(偽) 作:TSCのミメシス
「……ふう、1階の掃除はそれなりに時間がかかりましたね」
「ほとんどアタシらがばらまいた弾と薬莢の回収だけどな」
「すみません……景気よく撃ちすぎました*1」
「必要だったのですから仕方がありませんよ。仮にもう1体現れた場合も躊躇なくお願いしますね」
「は、はい!」
ひと息つきつつ、チラリと出入口の方へ目を向ける。
もう一度運び出した、毛羽立ったソファなどの物品が戻されている様子はない。
実体を持つなにかの核に使われていた最高品質のオーパーツはオークションなどでも高値が付けられる貴重な品であるらしく、やはり先ほどの1体はあれらを生み出した存在にとって切り札とでもいうべきポジションにいたのかもしれない。
「……なんで回収しようとしてたんだろうな、あれ」
「全知さんによれば……あのソファも劣化してはいるものの有名なブランドの高級品。等身大のぬいぐるみというのも……ペロロさんに限らず、置き場所などを理由に購入者が限られるため生産数は抑えられ、時がたてば希少性からそれなりの高値が付くそうですね。再販の見込みがなければブラックマーケットとやらのアウトローが法外な値段で取り扱うほどだとか」
「だから誰なんだよ全知さん……まあ頼れる奴なのはわかった」
「では、ペロロさんがここから出られないよう、閉じ込められている理由は……」
「運び出されたソファなどを回収していたのと同じ……価値があるから、という可能性があります。古いデスクなど、安そうなものは回収されていませんでしたし」
「ペロ……」
「完っ全にこのビルの”物”として扱ってるってわけか……確かにぬいぐるみだけどよぉ」
「ひどいです……ペロロさんにもご自分の意志があるのに」
試しにペロロぬいぐるみを出入口に連れて行ってみるが、アマリの力で押したり引いたりしてもビル外に出すことはできなかった*2。
回収されるのと、そもそも運び出せないのとでどういった条件の違いがあるのか、犯人の判定した価値の高さによるものか、自分で動ける故に特別厳しく縛られているのか。
それらを少し考えてみるがやはり本人に聞いてみなければ、そんなことはわからない。
全知さんに頼もうにも何について“思い出す”のか指定できないのではどうしようもなかった。
「犯人……いやそもそも人なのかわかんねえけど。どこにいやがんだろーな? ビル内は全部見て回ったよな?」
「はい。ビルのオーナーからいただいた見取り図の場所はすべて……」
「そういえば、地下についての記載がありませんね、その見取り図。私も、下見の時には1階から上がっていくうちに忘れていましたが」
「へ?」
「お?」
「ペロ?」
「……む?」
何気なく言ったアマリの方へ、残りの3名が一斉に振り向く。
「地下があるなんて聞いてねえんだけど?」
「わたしもです……」
「ぺ、ペロ……」
「おや、ペロロさんも知らない、と……全知さん?」
――
対象データ
空きビル。今回の清掃業務に指定された場所。
地下1階から地上5階の構造
――
「記憶違いではありませんね……オーナーが隠していたのか、それとも知らなかったのか。困っている様子をみるに後者の可能性が高そうですね。では地下の隠し部屋か何かに不法居住者がいて、それが諸々の犯人、という線が有力でしょうか」
「じゃあ、どっかに階段か何かがあるって感じか」
文字通りに思い出した情報を元に、1階を再び注意深く見て回る。特に見取り図との差異、あるいは見取り図自体に不自然な箇所がないかどうか。
「あり
「これは、ハッチのようなものの上から床塗装を……」
「いかにも塞いだ跡って感じだな。元々隠し部屋だったのか?」
何かがあることを前提に探し回った結果、床に違和感のある箇所を発見できた。
うっすらとだが、床に四角い盛り上がりができている。かつては完全に平らに見えていたのだろうが、経年により継ぎ目に沿って膨れ上がってしまったようだ。
「でも塞がってるんじゃどうしようもねえよな……ここからは出入りしてねえのか?」
「……そうかも知れませんね。出てきたあれらの本体はあくまでオーパーツ……数センチから、大きくても両手で持てる程度です」
「ひ、人が通れる出入り口は必要ない……ということですね。予感はしていましたが、犯人さんは人では……」
「あれらと同類なのか、一生引きこもるつもりなのか……その辺りも含めて、見に行ってみる必要がありますね」
「見に行くったって、他に入り口は……おい、なんで袖捲った?」
このビルで度々見せたのとは別種の不安げな表情を浮かべるスケバンを横目に、アマリは塞がれたハッチ(推定)の前にしゃがみ込む…
「ここをこうして……えいっ」
バキィ! と派手な音が鳴ったと同時に床の四角い盛り上がりは四角い穴へと変貌した。
死んだ魚のような目のスケバンが、アマリの手に収まる、かつてハッチだったが今は単なる板に成り下がったそれを見つめる。
「掴む場所、なかったよな」
「真空を作りだして手のひらにくっつけました。全知さんにやり方を聞いてやってみたのですが、意外とできるものですね」
「もうツッコまねぇぞ……」
今まではまだ諦めていなかったあたりにスケバンの面倒見、あるいは付き合いの良さを感じつつ、出現したハシゴを降りてアマリは地下1階へと足を踏み入れた。
「まるで宝物庫ですね……いえ、実際そうなのでしょうか」
「うお……金の延べ棒なんて初めて見たわ」
「こ、この絵はっ! ……本物なら慈愛の怪盗が黙っていませんよ!」
「ペロぉ……」
「はえ〜、すっごい……だそうです」
「訳されなくてもなんとなくわかったわ」
降りてきた先は倉庫のようになっており、立ち並ぶラックやショーケースには所狭しと美術品に貴金属や少し古いブランド品、オーパーツ、さらにはキヴォトスでは入手困難な酒類など多種多様な“価値あるもの“が収められている。
普通に暮らしていればまずお目にかかれない逸品も多く、物珍しさからアマリ一行はしばらく美術館や博物館にでも来たような心地でそれらを見て回った。
「……さて、どうやらアレが“犯人“のようですね」
――
対象データ
隠し財産の台帳
ビルの前オーナーが地下1階に揃えた品々について記録したノート。
複数のオーパーツと持ち主の“価値あるものへの執念“の影響を受けて特異現象と化した
――
「人じゃねぇかもとは言ってたが、まさかマジでこんな感じだとは」
部屋の中心に備えられた、いかにも高級そうな机に乗せられたノートがこれまで襲ってきたなにかと同じ気配を纏っているのを感じて一行が構えるのと同時。
部屋中の“価値あるもの“が一斉に宙に浮かびあがり、渦を巻くようにしながらノートの元へと集まり始めた。
「ペロっ!?」
「おっと、させません」
ノートからそれらのうちの1品と判定されているらしいペロロぬいぐるみも同様に浮かび上がってしまうが、すかさずアマリが掴んで引き寄せ、阻止する。
「あわわわ……もしかして、今までで1番の……」
「そのようです。しかしまあ、巨大化は負けフラグとも言いますね」
「現実でもそうだといいがな! やべえぞアレは!」
ペロロぬいぐるみを引き寄せようとする力がおさまると同時、ノートがあった場所には一行の予想通り、今まで現れた中で最も大きく、気配も禍々しいなにかが誕生した。
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対象データ
隠し財産の台帳
ビルの前オーナーが地下1階に揃えた品々について記録したノート。
複数のオーパーツと持ち主の“価値あるものへの執念“の影響を受けて特異現象と化した
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「ではボス戦と行きましょう。このお金に汚いコービットを退治すればシナリオクリア、ペロロさんは自由の身です」
「誰だよコービット! ……ええい、やったらぁ! デカいのがなんだこのヤロー!」
「全力で参ります!」
「ペロ〜!」
ラックやショーケースが端に吹き飛ばされ手広になった地下空間をリングに、決戦のゴングが鳴り響いた。