超天災脳筋美少女(偽) 作:TSCのミメシス
「到着しましたね」
「ペロー!」
「おー、盛り上がってんなぁ」
時刻は夕方。地上階すべての清掃終了と、地下室の存在についてオーナーへ報告したあとでアマリ一行はペロロぬいぐるみを連れてモモフレンズのイベントへ乗り込んでいた。
地下の品々については爆弾で損傷している事を追求されかけたが、盗むでもなくわざわざ破壊するのも不自然ということで「謎の爆発によって地下室を発見したが降りたときにはこうなっていた」という大嘘が通ってしまった。
金塊などは再加工で何とでもなるし美術品にはそもそも偽物が多かった(もしかすると全部)ため損傷が大した問題ではなかった、等の理由もあったのだろう。
「何も持ち出していないだろうね?」
という質問とともにナチュラルに所有権を主張する現オーナーの鈍く輝く瞳*1に「実はこれを……」とゴミ袋を見せて笑わせたあと、手を振ってバイト代を握りしめ立ち去るアマリ達の行く先にペロロぬいぐるみが待機していたのは言うまでもない。
持ち出してはいない。自分で出てきただけだ。
希少ペロログッズの記載があり読まれると厄介な台帳は紙吹雪に使えるくらい細かく破って燃えるゴミとして回収している。
「な、なんだか視線をたくさん感じるような……」
「そりゃ、イベントに着ぐるみ着てくる気合い入ったやつにしか見えないのが居るしな……」
「ペロ〜」
「ちょっと恥ずかしい、だそうです」
「だろーな。ま、楽しんでりゃ気にならなくなるって。行こうぜ!」
「ペロ!」
ショーのチケットなど持っていないため遠巻きに立ち見するしかないが、祭りさながらに輪投げや射的など露店が立ち並んでおり、当日の飛び入り参加でも十分に楽しめるようになっていた。
「……ペロロさん、いま輪投げで念動力使いませんでしたか?」
「ペロ?」
「全力ですっとぼけてもごまかされねーぞ。次からはナシな」
「ペロ……」
「はしゃぎすぎた……と反省していますね」
「や、やっと外に出られて、しかもイベントなんですから、仕方がないですよ。ルールの範囲で、思いっきり楽しみましょうっ!」
「ペロ!」
ペロロのぬいぐるみをゲットしてウキウキのペロロぬいぐるみというシュールな光景を作り出しながら、一行はバイト代を消し去る勢いで露店を回っては笑いあい、ペロロぬいぐるみの初めての外出を彩っていく。
そうしてしばらく過ごすうちにショーの時間が近づいてきたため一行は露店エリアを離れ、立ち見可能な位置を探して移動を開始した。
「ペロっ! ペロ~!」
「ん? おう、どうした?」
「今日は本当にありがとう、と言っていますね」
「ふふっ、どういたしまして」
心底嬉しそうに飛び跳ねるペロロぬいぐるみを満面の笑みでわしわしと撫でるスケバンとメイドさんだったが、後ろからかけられた声とともにペロロぬいぐるみから離されてしまう。
「いた! ダメじゃない、もうすぐショー本番なのにほっつき歩いて! ごめんなさいね、お客さん。ペロロちゃんは今からお仕事なので……」
「ペロ?」
「へ? あ、この子は違……」
「さあ行くわよ! キビキビ歩く!」
「ぺ、ペロ~!?」
「お、すっかり役に入ってるわね! その調子よ!」
イベントの係員にほとんど引きずるようにして連れて行かれるペロロぬいぐるみを呆然と見送った一行は数秒後に再起動し、顔を見合わせる。
「……い、行ってしまいましたね」
「よかったのか? 止めなくて」
「ショーに出られる! と満更でもなさそうでしたよ?」
「図太いなオイ!」
「うう、お友達が出るとなると立ち見より、ぜひとも席から見たくなってしまいます……」
「そうですね……ところで、本物のペロロさん役の方はどこへ……」
「……もしかしてアレか?」
見れば銃で武装した5歳児くらいの集団に群がられて袋叩きにあっている白い物体が地面に這いつくばってもがき苦しんでいた。
やんちゃな子供が着ぐるみにパワフルなスキンシップを行って困らせてしまうというのはキヴォトスでも起こるらしい。だが、日本とはレベルが違いすぎる。
「ま、待って……いまからショーが」
「ペロロが標準語喋るなよー!」
「撃つぞー!」
「ひぃっ! スラッグ弾は! スラッグ弾だけは!」
止めに入るべきか、と一歩踏み出そうとしたアマリ達だったが、それよりも先に割り込んだ存在に思わず足を止めた。
「あーっ、先生だ!」
「……先生?」
その
どこで誂えたのか、その規格外な大胸筋を収めてぴったりと閉じたシャツの胸元には”シャーレ”の文字*2。
アマリがキヴォトスに来て初めて見た、人間の男性。子供たちから先生と呼ばれるその巨漢に、思わずほう、と声を漏らす。
「やはりすごいですねキヴォトス人は。女子高生が銃弾に耐えるのですから、成人男性ともなれば当然こうなりますか。無論、並々ならぬ鍛錬を積んでいるのでしょうが」
しかもその筋肉から想像される圧倒的パワーを一切振るうことなく極めて理性的に子供たちを宥め、場を収めて見せたその手腕はなるほど先生と呼ばれるだけのことはある。
などと感心しているアマリだったが、先生を観察したことで全知さんからもたらされた情報に、完全にフリーズすることになる。
――
対象データ
先生
連邦捜査部シャーレの顧問。キヴォトスの外から来た人間。生徒と違い一発の銃弾が命に関わることになる。
最近鍛えなおした
――
「…………とうとう全知さんが嘘を」
――
対象データ
信じて……
――
「お久しぶりですっ! 先生!」
「おや、メイドさんはお知り合いで」
「はいっ! ミレニアムにはよくいらっしゃるので」
「ちなみにアタシも世話ンなったことがある。ども~」
「ふむ……」
自分は無言のままでメイドさんたちと談笑するという奇妙な現象を引き起こしている先生の方を改めて見てみると、和やかな顔でサムズアップ、次いで会場のある一角を指し示す。
「む……計測マシンを利用したパンチ力大会、ですか。優勝賞品は……ショーのチケット3人分。狙いすましたようなイベントですね」
「よし、行けアマリ」
「ポケモンか何かですか私は」
「どうか、どうかお願いしますっ……!」
(無言のエール)
「あ、はい……」
言われるままに参加申し込みを済ませ、マシンの前に立つ。
司会の妙なシャツの着崩し方をした生徒*3が意気揚々と進行する。
「さあさあ、新たなチャレンジャーの入場です! 現在の記録はパワーアシストスーツを利用した5t! これを打ち破ることはできるのでしょうか!」
「それアリなんですね……」
「はい! 計測マシンの耐久テストも兼ねていますので手段は問いません! ただしパンチという体裁は保ってください!」
「なるほど……では、ちょっと本気で殴ってみましょう♡」
アマリが宣言と共に前に出ると、観衆から歓声とヤジが飛ぶ。
パワーアシストスーツの記録に生身で立ち向かおうと言うのだからそれはそうだろう。
無論超えられると思っている者はほとんどいない。イベントのにぎやかしとしての心意気をたたえた歓声だった。
「さあ……行きます」
「その意気やよし!! では、どうぞ!!」
「……ふッ!」
その瞬間、観客たちはミサイルでも着弾したのかと錯覚した。
それほどの衝撃と爆音が会場を襲い、最前列の者は失神寸前でふらついている。
「な、何が……」
「ふふ、5tの威力というのは想像がつきませんが、おそらく超えていそうですね」
司会が煙の中、目を凝らすとそこには拳を振りぬいた体勢のアマリと、粉々に砕け散った計測マシンの残骸。
それが意味することはただ一つ。
「ま、マシンを素手で粉砕した!? ……これは計測不能! 文句なしの優勝でしょう! 皆さん! 拍手を!」
先ほどとは別種の歓声に包まれながら、アマリはショーのチケットを受け取り天に掲げた。
爆発物によるテロを疑われイベント中止の危機だったことは係員と、それを何とか説得して見せた先生、そして全知さんのみが知ることだ。
――
プロフィール
おバカ!
――
「えっ 何ですか急に」