正義の味方になるしかなくて!   作:すかいスライム

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アーティファクト? いえ、全ての悪意を駆逐するものです。

 

 僕は幸せ者だった。

男爵の父と優しい母に育てられ、15年の間何不自由なく生きてきた。

 セイト男爵家は代々国に使える剣士を排出してきた家系で、僕もその例外に漏れず幼い頃から剣術の稽古を積まされていた。

お世辞にも超越した才能があるとかは言えないが、努力に似合ったある程度の実力は身につけたつもりだ。

明日からはミドガル魔剣士学園に入学して、父のように強く、母のように優しい魔剣士を目指して努力していこうと思っていた。

 

――日常が壊されるまでは。

 

 

「父様! 母様!

どこにいるのですか!?」

 

 目覚めたのはつい先程のこと。

普段は嗅がない何か焦げるような臭いが、眠っている僕を叩き起したのだ。

 

「シャワはここです!!

シャワ・セイトはここにおります!!

どうか返事を!!」

 

 火の上がる屋敷の中を僕は駆けている。

熱さも苦しさも全て、焦燥感が押し流す。

現状など全く把握できていないが、それでも動けているのは安心が欲しいから。

二人の無事を知りたいからに他ならない。

 

「どうか返事を!!

どうか……っ」

 

 両親の元へ向かっていた足がピタリと止まる。

火に臆した訳でも、屋敷が倒壊し通れなくなった訳でもない。

二人がそこにいたからだ。

 

「あ、ああああ、あ、あァ」

 

 両親の背中には剣が突き立てられていた。

 

「とうさま!! かあさま!!」

 

 呼びかけても体が動くことは無論、瞬きひとつしない――死体が二つそこには転がっていた。

 

(なんでなんでなんでなんでなんで!!!

こんな目に合わなきゃならないんだ!!!!

優しい2人が……なんでッ!!!!!)

 

『答えは明白だ。

人類に悪意が備わっているからだ』

 

 

「――っ!?」

 

 声が聞こえ、周囲を警戒するが人の姿はどこにもない。

 

『君の両親は何者かの悪意によって殺害された。

君もあと少しで同じ運命を辿ることになる』

 

 謎の声への不信感はやがて怒りへと変化する。

 

「……お前がやったのか?

お前が、父様と母様を!!」

 

 どこからか聞こえる声の主は怒る僕に対し、呆れたようにため息をついた。

 

『貴方の両親を殺害したのは私ではありませんので、貴方に恨まれるいわれは無い』

 

「じゃあお前はなんなんだ!!

姿を見せろ!!」

 

『……いいでしょう』

 

 声とともに動き出したの父様の体ではなく、父様の服の中にしまわれている()()だ。

何かは父様の服を突き破り、僕の前に姿を現した。

 

「白い…機械?」

 

 白と金を中心に装飾された何かの機械のような代物、それが声の正体だった。

 

『これで気は済みましたか?』

 

「は? あ、え、いや、お前なんなんだよ。

喋る機械なんて……アーティファクトでもそんなの……」

 

『アーティファクト?

いえ、私は善意から生まれた人工知能――ゼイン』

 

「善意から生まれたジンコーチノウ?」

 

『……失礼、この次元では科学技術が進歩していないのでしたね。

自律思考が可能なアーティファクト……そのような認識で構いません』

 

 聞き覚えのない言葉ばかり並べられ、混乱がさらに深まる。

 

「あの『待て』え?」

 

『私の予測によると遅くともあと数十秒で()()が戻ってくる。

その前に私はシャワ・セイト――あなたと取り引きがしたい』

 

「と、取り引き?

ちょっ――『あなたの身の安全を保証する代わりに、貴方の体を使わせてもらいたい』体……何言ってるんだ」

 

『本来なら慎重になるべき問題だが「見つけました! 例のアーティファクトです!」――時間切れです』

 

 ゼイン以外の声が聞こたので振り返ると、そこには剣を振り上げ、僕を叩き切ろうとしている男がいた。

 

「ガキも一緒とは手間が省けた、なッ!!」

 

 間に合わないと腕を重ねて防御の体勢を取る。

しかし、衝撃が襲ってきたのは僕の腹部だった。

 

「ぐっ、」

 

『加減はしました。

大したダメージではないはずです』

 

 うずくまっている僕に声をかけてくるゼイン。

どうやら衝撃の犯人はコイツだったようだ。

 

「急に何を「余計なことしてんじゃないよ、自律型アーティファクトちゃん。せっかく離れ離れになっちまった家族の元へ俺ちゃんが送ってやろうと思ったのにさぁ〜」――ッ!!!!」

 

『この男の言う通り、私が衝撃を与えなければ貴方は上半身を切り裂かれ、死亡していました。

貴方の両親と同じのように』

 

 ゼインとの会話はよく分からないことの方が多かったが、今の言葉の意味は混乱している僕の頭でもよく分かる。

 

「じゃあ……こいつらが父様と母様を」

 

『えぇ、それでどうしますか?

七体一のこの状況に加え、今切り掛ってきた男に関しては貴方より遥かに格上です』

 

 音がなるほど僕は強く、歯を食いしばる。

それはゼインが言ってることが嘘偽りなく事実だったからだ。

どんな攻防があったかは分からないが大前提としてコイツらは剣で父様に殺害しているのだ。

父様相手に試合で一本も取れない僕では文字通り話にならないだろう。

 

「お前に体を渡したらにこいつら全員殺してくれるのか」

 

『表現が良くない。

悪にはただ裁きが下るだけです』

 

「分かった。

ゼイン、僕は貴方に体を売ろう。

アイツらを殺せるなら体なんてどうなってもいい」

 

『そうですか。では――』

 

《ZEIN DRIVER》

 

 機械が腰に当たるとベルトが自動で巻きついた。

 

「ありゃりゃ、合体してくれちゃった!

こりゃ持ち運びやすくていいじゃん……と思たけど回収するのはアーティファクトちゃんだけだからガキ付いてたら邪魔じゃん!! クソが!!」

 

「どうしますか……二ーセアク様」

 

「どうするって胴体真っ二つにしてベルト取りゃいいだろ!!

バカちゃんですかお前は!!」

 

「『愚かな』」

 

「ん? もしかして今「愚か」って俺ちゃんに行った?

ナイツ・オブ・ラウンズ最有力候補の!!

この俺ちゃんに!!

この魔剣で何百人も切りまくってきた、優秀なこの俺ちゃんに!!!!」

 

「『やはり人類には私による救済が必要か』」

 

 奴が怒りに任せて剣を闇雲に振り回している最中にゼインはゼインプログライズキーを生成し、変身シークエンスに入った。

 

《ZEIN》

 

 様々な次元の映像がシャワとゼインの後ろで展開される。

その異様な光景に二ーセアク以外の敵は剣を構える。

 

「『悪意を持つものに天罰を下す』」

 

《ZEIN RISE》

《JUSTICE JUDGMENT》

《JAIL ZEIN》

《Salvation of humankind》

 

 現れたのは白い騎士に二ーセアクはだらりと剣を向ける。

 

「お前……一体何ちゃん?

もしかしてアーティファクト?」

 

「『アーティファクト?

いえ、私はゼイン。

全ての悪意を駆逐するものです』」

 

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