ジャイアントスパイダーとの激闘を終え、真人はその魔石を手にしていた。蜘蛛のモンスターから生み出されたそれは、暗い青白い光を放ち、不思議な脈動を感じさせる。
「これが…魔石」
玲奈が側で慎重に言葉を選びながら説明する。
「お兄ちゃん、それ、ただの石じゃないよ。膨大なマナが凝縮されてる。多分、すごく重要なものになるはず」
真人はその言葉を聞きながら、再び胸中に湧き上がるあの感覚を覚えた――目の前が歪み、不思議な空間が広がっていく感覚だ。
気がつくと、またしても真人は青白い光の粒が漂う不思議な空間に立っていた。視界の前には透明なディスプレイが浮かび上がり、文字が現れる。
ダンジョンコアの生成が可能です。魔石を投入してください。
「ダンジョンコア…?」
真人は手にした魔石を眺め、それを示された台座にそっと置いた。魔石は青白い光をさらに強く放ち、空中に浮かび上がる。次第にそれは球状へと変化し、異様な存在感を持った「ダンジョンコア」として完成する。
玲奈が興味深そうにディスプレイを見つめながら口を開いた。
「お兄ちゃん、これがダンジョンの核になるんだと思う。これをどこかに設置して、ダンジョンを作れるんじゃないかな」
真人は迷いながらも頷く。
「問題は、どこに作るか…だな。」
真人の脳裏には、渋谷の惨状が浮かんでいた。混乱し、モンスターに襲われた人々。あの街は今、避難地区となっていて人が少なくなっている。一度モンスターが発生しているから、ダンジョンにも早急に対処してくれるだろう。
「玲奈、渋谷に設置するのが良いと思う。あそこならダンジョンの管理に本腰を入れてくれるはず」
玲奈は少し考え込むように視線を落とし、やがて頷く。
「分かった。でも、ダンジョンって人にとっては危険な存在だよ。バレたらただじゃ済まないかもしれない」
「それでもやるしかないんだ。マナの濃度を下げるには、こうするしかない」
ディスプレイにはいくつかの選択肢が表示される。
「設置可能なダンジョンのタイプを選択してください」
1. 「簡易ダンジョン」
規模が小さく、モンスターの数も少ない。最奥にいるボスを倒すと消滅する。
2. 「永続ダンジョン」
ダンジョンコアを中心にモンスターを生み出し続ける。最奥のボスを倒しても消滅しない。
「永続ダンジョンだな」
真人が選択すると、ディスプレイにさらに詳細が表示される。
「コアの生成に使用された魔石からダンジョンを構築」
「蜘蛛の巣」
ジャイアントスパイダーに基づく、蜘蛛型モンスターを中心としたダンジョン。
「蜘蛛の巣か…ジャイアントスパイダーの魔石が元だからか」
玲奈も同意するように頷いた。
渋谷の一角、既にモンスターの被害で立ち入り禁止区域となっている場所を選び、真人はダンジョンコアを配置する。
地面がわずかに振動し、コアから青白い光が溢れ出す。その光は周囲の空間に染み渡り、次第にダンジョンの入り口が形成されていく。
入り口は巨大な蜘蛛の巣を模した形状で、薄暗い空間の中に糸が無数に張り巡らされているのが見える。
玲奈が感心したように声を上げる。
「本当にできたんだ。これが、永続ダンジョン…」
真人はその光景を見つめながら、小さく息を吐いた。
玲奈が心配そうに彼を見つめる。
「でも、お兄ちゃん。これを作ったのがバレたら…」
「分かってる。でも、この力を使わなければ、俺たちはこの世界で生き残れない。マナを消費するにはダンジョンを管理していくしかないんだ」
玲奈は少し不安げな表情を浮かべながらも、最後には小さく頷いた。
「分かった。でも、私も手伝うからね。全部お兄ちゃん一人で抱え込むのはダメだよ」
こうして、神崎真人は渋谷の地に初めての永続ダンジョンを設置した。これが、後に世界を変える最初の一歩となるのだが、彼自身はまだそれを知らない。